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July 14, 2015

新しいファッションビジネスを考える学会 j-fashion journal(151)

*以下、紹介する学会は既にスタートしています。しかし、私の構想とはかなり違ったものとして動いています。私の構想は前時代的だったのかもしれません。現在は、もっと民主的で楽しい学会として機能しています。
新学会は「bd@Fashion Industry学会」です。立教大学の瀧澤哲夫教授と一緒に立ち上げました。


 突然ですが、新しい時代のファッションビジネスを考える学会を作ることになりました。
 学会と言っても、最初から学会発のビジネスを生み出せるような学会です。
 その概要をまとめましたので、ここでもお知らせいたします。
 正式には改めて発表いたしますが、今回はそれに先駆けての報告となります。

1.設立に至る背景と目的

 1980年代、日本の繊維アパレル関連製造業は、労働力不足、人件費高騰、地代の高騰、為替の変動等により、成長戦略が見いだせず、閉塞感に陥っていた。
 そうした状況の中で、大量生産大量販売モデルから脱却し、多品種少量短サイクル生産によるトータル流通コストの削減等が検討された。アパレル製造現場では、「カンバン方式」「ジャストインタイム」「多能工による一枚流し生産」「立ちミシンの導入」など、革新的手法が導入された。その結果、生産効率が10%近く上昇し、着実な成果を上げた。
 しかし、1990年代になると、中国生産が本格化し、生産コストは一気に70%以上削減された。流通小売企業が、多大な努力による10%のコスト削減より、中国生産による70%のコスト削減を選ぶのは必然だったと言えよう。

 そして、トータル流通コストの削減、生産システムのイノベーションは道半ばにして放棄されることになった。
 同時に、アパレル企業は社内の生産管理部門を大幅に縮小し、商社への生産委託を加速させた。製造卸業から小売業に近い業態へと転換する中で、生産システムへの興味は失われていった。
 こうして繊維アパレル製品のデフレスパイラルが始まった。アパレル製品の価格水準は7割近く下がり、単価の下落により市場は縮小し、より安いコストを求めて、益々国内製造業は空洞化した。繊維関連の国内製造業もまた、7割が淘汰されることになった。
 中国生産による激安商法は、1990年頃から2010年頃まで続いた。この20年間、日本の繊維アパレル、インテリア、流通小売業は「いかに安く作りいかに安く売るか」という命題に熱中していたと言える。
 2010年代に入ると、中国華南地区の縫製工場から労働力不足が始まった。それに伴って最低賃金も上昇を続けた。
 2013年、中国共産党は第18回党大会で2020年までにGDPと一人当たりの国民所得を2010年比で倍増させる計画を発表した。いわゆる中国の所得倍増計画である。この政策により、中国の最低賃金は継続的に上昇を続けることが明らかになった。
 同時に、2012年に大規模な反日暴動が発生し、一時的に対日貿易の税関も閉鎖された。これにより、日本企業はコスト上昇だけでなく、強いカントリーリスクを認識するようになり、ASEAN諸国への生産拠点移転が加速した。
 日本の繊維アパレル業界は、1980年代に世界に先駆けて脱大量生産の研究と実践をしていたにも関わらず、中国への生産拠点移転により、20世紀型生産システムを維持することになった。そして、ASEAN諸国への生産シフトにより、20世紀型生産システムの更なる延命を図ろうとしているように見える。
 一方、グローバルに目を転じると、90年代以降、日本発の「カンバン方式」「ジャストインタイム」「多品種少量短サイクル生産システム」は、欧米、中国等に拡大した。更には、デジタル技術、ロボティクス、インターネット、ソーシャルコミュニティ等とつながり、新しい次元の生産システムが構築されようとしている。
 こうした新しい動きを紹介したのが、クリス・ アンダーソン著 『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』である。本書の主たるテーマは、先進国製造業による「21世紀型製造業モデル」であり、個人でも製造業に参入できる「メーカーズ革命」である。
 本書では、繊維アパレルの事例はほとんど取り上げられていないが、2014年現在の日本市場においても、新しいムーブメントを感じることはできる。
 例えば、個人によるモノ作り、ハンドクラフトの人気が高まり、それを販売する人々が増えている。

(1)手作り愛好家が集まる「日本ホビーショー」は、2012年は13万3千人、2013年は12万2千人の来場者を集めている。
http://www.hobby.or.jp/hobbyshow/2014/

(2)ハンドメイド作品の販売サイトも増えている。「minne」「llchi」「creema」「dクリエイターズ」「ハンズ・ギャラリーマーケット」「tetote」「ユザワヤマーケット」「手作市場」「crapaca」「tsucuru」「cotte」「proory」「sowzo」等々だ。

(3)政府も新しいムーブメントに対応している。総務省は、2014年1月から5月まで計5回「『ファブ社会」の展望に関する検討会」を開催し、報告書をまとめた。報告書では、「デジタルファブリケーションの発展によるフィジタル空間の出現とものづくりの変化」「『ファブ社会』出現予兆」「ファブ社会がもたらす社会構造変化」「健全なファブ社会発展に向けた課題」がまとめられた。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/fab/index.html

(4)東京都内のファブ拠点は「TOKYO FABBERS」を組織し、拠点ネットワーク形成、情報発信、人材育成等に取り組んでいる。
http://tokyofabbers.com/about/

(5)アパレル企業のシアタープロダクツは、型紙や、生地、服の作り方、プリントパターンなど、服作りのプロセスを共有しながら、新しい単位で服を楽しむ仕組みの実験として、「THEATRE,yours」プロジェクトを2012年10月より継続してイベントを開催している。http://theatreyours.tumblr.com/

(6)日本ファッション協会のストリートファッション紹介サイト「スタイルアリーナ」のブランド調査によると、最近、ファッショナブルな若者も、自作の作品を身につける若者が増えてきているとのことだ。コスプレに見られる「自作」が、日常のストリートにも現れているのである。
http://www.style-arena.jp/

 以上の事象から、新しいムーブメントは感じられるものの、ビジネスや産業に結びつくには多くの課題とミッシングリンクが存在している。
 それら具体的な事象を解明し、補完することで、日本の繊維ファッション産業に、新しいビジネスモデルを提示し、同時に、21世紀型のベンチャー・メーカーズを生み出すことで、国内外の生活者に新たな価値を提供することが、本学会設立の目的である。
 
2.研究テーマ

*以下の分野のコンテンツ、ソフトウェア、ハードウェア、マーケットプレイス、コミュニティ等が、デジタル化、ファブ化、シェア化、グローバル化によって、どのように変化するか。どうしたら、新次元の生産革命が実現するのか、等を研究する
 例えば、以下のような研究テーマ案が考えられる。

1.テキスタイル
・デジタルテキスタイルデザインの企画手法、CC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンス活用、オンラインマーケットプレイス
・デジタルプリントの企画手法、デジタルプリントを活用した新ビジネス及びビジネスモデル開発
・デジタルテキスタイルデザインと連携したコンピュータジャカード織、コンピュータジャカードニット、コンピュータジャカード刺繍
・テキスタイルのオンライン取引、生産ロットをとりまとめる仕組み
・テキスタイルファブのあり方
・テキスタイルに関するコミュニティ
・その他

2.アパレル
・アパレルデザインCADの活用、アパレルデザインデータのオンラインマーケットプレイス
・パターンメーキングCADの活用、パターンデータのオンラインマーケットプレイス
・アパレルデザインのCCライセンス活用
・パターンのCCライセンス活用
・3Dスキャナーによる採寸とオーダーメイド
・オンラインオーダーメイドのWEB、アプリケーション開発
・ユニバーサルデザインに関するデータシェア
・デジタル技術を活用したホームソーイング
・その他

3.インテリア
・建材へのデジタルプリント
・デジタルプリントによるインテリアファブリックス開発、オンラインマーケットプレイス
・インテリア空間のカラーコーディネート設計
・インテリアデザイン、ショップデザインに必要な材料の画像データベース化
・手作りインテリア雑貨キット開発
・その他

4.伝統工芸
・伝統工芸のオンライン受注販売
・デジタル技術を活用した伝統技術の継承
・伝統工芸とデザイナーのマッチング
・その他

5.付属、副資材
・付属の画像データベース、オンライン受発注システム開発
・3Dプリンタによるボタンアート
・個人向け織ネームの受注販売システム
・CCライセンスの脇ネームへの印字
・その他

6.繊維機械
・低速高付加価値の繊維機器
・ファブ用ミシンの開発
・ホビー用途機器の開発
・その他

7.WEB&アプリ
・クラウドファンディング型受注取りまとめサイト開発
・デザインCADデータのオンラインマーケティングプレイス
・パターンCADデータのオンラインマーケティングプレイス
・アパレルファブ向けソリューション開発
・その他

8.CAD、CAM
・ホームソーイング用パターングレーディング(ネット上の基本パターンから自分のサイズパターンに転換)
・アパレルファブ向けCAD/CAM開発
・オンラインオーダーメイド用CADプログラム開発
・その他

9.コミュニティ
・テキスタイルデザイナーデザイナーコミュニティ
・アパレルデザイナーコミュニティ
・パターンメーカーコミュニティ
・テキスタイルメーカーコミュニティ
・縫製メーカーコミュニティ
・サンプルメーカーコミュニティ
・洋裁技術者コミュニティ
・デジタルプリンターコミュニティ
・刺繍メーカーコミュニティ
・付属商コミュニティ
・繊維機器メーカーコミュニティ
・CADオペレーターコミュニティ
・その他

10.教育、人材育成
・デザイン、パターンメーキング、縫製の生涯学習プログラム
・デザイン画、パターンメーキング、縫製の動画教材開発
・クラウドファンディングを活用したファッションビジネス教育プログラム
・WEBデザイン教育プログラム
・ファッションに関するスマホアプリ開発教育
・その他

3.研究方法

 本学会では、産業モデルの転換、新しいビジネスモデルの提言、ベンチャー起業家の育成等を目的にしているため、ケーススタディが全ての研究のベースになる。
 ケーススタディを元に、日本独自の産業資産、ビジネス慣習、市場の特性、生活者の嗜好等を含めた上で、具体的な仮説を立案し、産学連携による検証を加え、論文にとどまらず、書籍、動画、シンボジウム、ワークショップ等、多様な方法で情報発信を行うものとする。
 本学会で研究されて内容は、積極的に産業界、企業、行政等に働きかけ、啓蒙活動を続けていく。
 そうしたサイクルにより、実践的な研究活動を継続するものとする。

*有料メルマガj-fashion journal(151)を紹介しています。本論文は、2014.10.6に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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