クラウドファンディングの手法で生産ロット問題を解決する j-fashion journal(150)
1.機械とコンピュータ、サプライチェーンとインターネット
80年代、大量生産に変わる生産システムとして、多品種少量生産、カンバン方式、一枚流し生産システムなどが注目された。
その頃、私は「現在の生産システムでは、そんなことは不可能だ」と主張した。当時の日本の繊維産業は、大量生産を基本にしており、私は日常的に生産ロットの問題に直面していたからだ。しかし、私のマーケティングの師匠は事も無げに、こう言った。「今の生産システムではできないけど、生産システムを変えればいいんですよ」
確かに、コンピュータと生産設備がつながることにより、少量生産も可能になった。
トヨタの生産ラインでは、一台一台別仕様の車が生産ラインを流れてくる。しかし、それは、基本となる車体は共通で、細部だけを変え、各部品は下請けの部品メーカーが在庫しているからできることだ。
また、生産ラインはクイックでも、自動車の企画開発には数年間かける。ファッション製品のように、数カ月で全く異なる製品を何十型、何百型と企画、設計、生産するのとは根本的に異なっている。
とは言うものの、欧米アパレルはその方向に動いていた。プロトタイプを設定し、そこからバリエーションのデザインを展開する。これにより、パターンメーキングの作業は効率化され、素材を絞り込むことにより、生産数量を調整することも可能にしている。
一方、日本のアパレル企業は、生産を商社に丸投げしているため、自社の業務として改善することはない。業務を合理化せずに、商品原価だけを下げようとするので、生産拠点はより低コストの地域に移転するしかない。
結果的に、アパレル企業は製品開発のフローを改革することはなかった。テキスタイル、アパレルの生産現場単位では効率化が進んだが、トータルなサプライチェーンの効率化は進まなかった。
その間、日本の生産システムの革新より、中国生産への投資の方が効果的であることが明らかになり、既存の生産システムは温存された。
当然のことながら、大量生産システムから、多品種少量生産システムへの転換も起こらなかった。しかし、生産システム革新を伴わない「QR生産」という無理な短納期生産だけが浸透していった。無理な方法であるために、縫製工場は次々と廃業した。最終的には海外のマンパワーでカバーするしかなかったのだ。
日本では、生産機器とコンピュータはつながったが、サプライチェーン全体は既存流通の既得権に阻まれて、コンピュータにつながらなかった。小売店はPOSシステムを導入し、物流センターでは物流システムが導入したが、それらがつながり、共有化されることがなかったのだ。したがって、サプライチェーン全体がインターネットにつながることもなかった。
日本が過去のシステムを踏襲し、生産拠点を移す中で、欧米、中国等の国々は、着々とサプライチェーンをインターネットにつなげていった。WEBとつながり、SNSとつながり、新しいビジネスモデルが生まれた。それらは、安売り商法ではなく、高付加価値商品を少量供給するシステムだ。その背景に、日本発の多品種少量短サイクル生産が含まれていたことは言うまでもない。
2.少量短サイクル生産対応の海外メーカー
話を戻そう。生産システムを変革することができなかったので、現在の状況も80年代とあまり変わっていない。
テキスタイル問屋が淘汰された結果、在庫リスクを持つところがなくなった。海外のテキスタイルメーカーなら、高付加価値の生地でも、一反から購入することが可能だ。
日本では、在庫リスクを持っている問屋は定番商品、価格訴求商品しか在庫しない。
オリジナル素材を開発しようと思えば、直接メーカーとやりとりする以外にはないし、その場合には生産ロットの問題が生じる。
ヨーロッバのテキスタイルメーカーは、基本的には受注生産である。但し、受注が生産ロットに満たなければ生産中止となる。もし、日本のアパレル企業がヨーロッパのテキスタイルメーカーから生地を仕入れるならば、半年分を一括で発注しなければならない。日本のように、パリコレを見て、トレンド情報を分析してから、商品企画を始めるのではとても間に合わない。
日本のテキスタイルメーカーもヨーロッパ同様、半年分まとめて受注し、生産ロットに満たなければ生産中止にできれば、苦労はないが、日本では生産ロットに満たなくても対応し、少量の追加生産でも同じ価格で販売するのが暗黙の了解となっている。メーカーにとっては、何とも不合理な商慣習なのだ。
そんな中で、中国やインドなどのテキスタイルメーカーが少量短サイクル生産に取り組んでいる。豊富な資金力を持つメーカーは、糸や生機をこ在庫することができるので、クイックな対応が可能である。
先日、インドのシルク専門のテキスタイルメーカーの話を聞いた。ここ、染糸を豊富に在庫している。無地も先染めで対応しているので、無地とチェックの色が合う。更に、100mから発注が可能だ。スルザーの織機を使って、この少量対応は日本にも見られない。
中国にもこうしたテキスタイルメーカーは存在しているが、多くは内販メーカーだ。日本の商社は輸出メーカーとのつきあいはあるが、内販メーカーとのつながりは薄い。
低コストを追求しているので、必然的に生産ロットは大きくなる。中小のアパレルやデザイナーは対応できない。そういう意味でも、日本はモノ作りがしにくい状況となっている。
日本製テキスタイルの技術レベルは確かに高い。しかし、価格も高いし、ロットも大きい。デザイナーも国内だけに目を向けていたのでは活動範囲が狭まるだけだと思う。
3.受注をWEBでまとめられないか?
クラウドファンディングは、多くの人々から少額の資金を集める仕組みを持っている。例えば、テキスタイルで同様のことができないだろうか。
例えば、前述したインドのシルクテキスタイルメーカーならば、100mの受注をまとめればいい。個人が自分の服を作るのに3m欲しいとか、パッチワークに使うから1m欲しいというニーズをまとめて、100m集まれば、発注する。
ショールームを設けて、ハンガーサンプルを確認できることも必要かもしれない。スワッチサンプル対応が可能ならば、有料で配布する。しかし、一般の人は画面で発注するのではないか。
こうした取引を何度か繰り返す内に、需要の予測もつくようになるだろうし、そうなればある程度先行して発注することも可能になる。
これは海外メーカーに限らず、国内メーカーにも活用が可能だ。日本の織物産地の機屋の多くは、受注生産である。元は問屋が自社在庫を持つことを前提に発注していた。しかし、次第に自社で在庫することはなくなり、アパレルからの注文をつなぐだけになっている。それならば、WEB対応も可能だろう。
もちろん、アパレルにとっては課題も多い。競合相手にも商品が流れてしまうのは嫌だろうし、営業担当が御用聞きのように会社に来てくれるのも便利だ。しかし、大手アパレルであっても、注文は細かくなっている。既に、営業経費が出る状況ではないのかもしれない。
これらの対応策としては、一般に公開する前に、展示会を行うとか、バイヤー限定のWEBを作成することで解決できると思う。
現在もWEBで受発注できる仕組みは存在するが、生産ロットをクリアするためのWEBは存在しない。あくまでテキスタイル問屋が在庫を持っている生地をネット販売しているに過ぎない。どちらかと言えば、定番商品、低価格商品に向いているサービスだ。
ここで述べているのは、むしろ、高付加価値の生地主体である。具体的にこうしたWEBを構築するのは可能なのか、については、今後調べてみたいと思っている。
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