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July 14, 2015

自作ファッションムーブメント j-fashion journal(149)

1.メーカーズ革命への対応

 日本のアパレル業界は、20年近く、中国生産に熱中していた。いかに安い商品を作るかを競い合っていたのだ。中国の人件費が上昇するにつれ、今度は東南アジアに生産拠点を移そうとしている。
 日本のアパレル業界が行っていることは、20年近く変わっていない。80年代~90年代に取り組んでいたジャストインタイム、多品種少量生産、クイックレスポンス等は放棄し、大量生産による廉価品生産に集中していたのだ。
 欧米各国、あるいは、中国においても、この20年間で考え方が変わっている。私は、イタリアでも、中国でも「JIT(ジャストインタイム)を知っているか」という質問を受けた。「トヨタのカンバン方式を学んでいる」という声も数多く聞いたものだ。
 そして、イタリアも中国も新たな設備投資を行い、生産ラインを改善し、ブランディングを磨いてきたのだ。
 私は、クリス・ アンダーソン 『MAKERS―21世紀の産業革命が始まる』を読み終えて、日本が取り残されているのを感じた。この本の中に「10年前なら、中国に出掛けて生産を委託しなければならなかった。しかし、現在は国内で生産ができるようになった」という表現が出てくる。インターネットとデジタル技術、ロボッティクス、ソーシャルなコミュニティを活用した、新しい生産システムに転換しているのである。

 日本はこの10年間で何が変わったのだろうか。中国生産が成熟し、東南アジアへの生産移転を進めているだけではないか。
 ビジネスモデルの革新もなければ、新しいベンチャー企業が誕生しているわけでもない。既存の企業は、衰退を続けながら、改革を先延ばしにしたに過ぎない。
 我々はメーカーズ革命に対し、真剣に取り組まなければならない。売れ筋商品の追随ではなく、もっと個性的な製品を作り、世界に向けて販売するべきなのだ。
 そのヒントの一つは、ファッション専門学校学生が作る作品にある。プロではなく、アマチュアの作る服。専門の縫製工場ではなく、直線縫いとロックミシンで縫製する服。大量生産に飽きたファショニスタが、手作りの服、自作の服に向かう可能性は低くない。こうした価値観の転換こそが重要になる。
 
2.実験的、独創的な服は埋もれている

 ファッションを学ぶ学生は、実験的、独創的な服を数多く作っている。それら多くの作品は、文化祭や卒業制作ショーで発表されることはあるが、製品化されることはない。また、その作品を気に入った学生がいたとしても、デザインやパターンが公開されていないので、同じ製品を作ることはできない。パターンを改良し、磨き上げることもできない。
 仮に、優れた作品を作った学生がデザイナーとして就職したとしても、企業内では商業的に売れる服を期待される。社会人になってから、実験的な服を製品化し、販売する機会はほとんどない。
 結果的に、何千、何万のデザイン、パターンは埋もれている。
 しかし、世の中には、実験的、独創的な服を着用したいというロングテールのニーズも存在する。大量生産ではなく、オーダーメイドのように小さなニーズに対応することがメーカーズ革命なのだ。
 かつては、装苑やハイファッションに、イージーソーイングに適したデザインやパターンが公開されていた。装苑賞、遠藤賞、カルダン賞を受賞した新人デザイナーの最初の仕事は、そうしたイージーソーイングのデザインだった。
 もし、ファッション専門学校や大学の学生がデザインしたパターンがシェアできるとしたら何が起きるだろうか。そして、自作だけでなく、サンプル業者や洋裁を趣味とする人がオーダーメイドを受け付けてくれたら。
 もしかすると、グローバルトレンドに乗った大量生産ではない、新しいムーブメントが生まれるかもしれない。

3.パターンをシェアする仕組み

 現在のインターネット環境、CAD等を駆使すれば、パターンを共有することも可能だ。
 パターンをスキャナーで読み取り、CADデータとしてデータベース化する。デザイン画、作品の写真、縫製仕様書も、同様にデータベース化しておく。
 バターンは、CC(クリエイティブ・コモンズ)を付与し、原作者のクレジットを表示し、改変した場合は、同様のCCライセンスを付与して公開することを義務づける。
 デザインが気に入った企業があれば、デザイナーと個別に契約を結べばいい。
 そうすれば、思い出だけでなく、確実に作品が残るし、場合によっては、ビジネスにつながるかもしれない。
 多くの学校には、パターンCADの設備を有しているので、それを使ってデータ化することができる。そして、専用WEBを開設し、そこからパターンデータをダウンロードできるようにする。ファブ拠点にプロッターを設置すれば、そこでパターンを受け取ることができるし、宅配するという方法もある。
 
4.自作前提の独創的デザインのコミュニティ

 3Dプリンタが静かなブームを起こしている。かつては高額だったマシンが、特許の期限が切れ、個人でも手の届く価格になった。
 3DデータをCADで作成するのは簡単ではないが、ネット上には大量の3Dデータが公開されている。だから、好きなデータを選んでダウンロードし、3Dプリンタで出力すれば、オリジナルの作品を作ることができる。
 同様のことは、ファッションでも言えるだろう。
 アパレルのファブができても、ソフトが公開されなければ、使う人は限定されてしまう。
 しかし、ネット上に大量の独創的、個性的な作品のパターンアップされれば、それをダウンロードし、自作しようという人も出てくるに違いない。
 現在、市場にあふれている商品は「大量生産の商品」である。特殊ミシンやプレス機が揃っている工場で縫製しているのだから、複雑な仕様も可能だ。
 市場にあるような定番商品のデータが公開されても、それを自分で縫製しようとは思わないだろう。縫製するよりも、購入した方が安価だからだ。しかし、市場に存在しないような独創的な服であれば、縫製が下手でも個性を表現することができる。
 つまり、量産前提のデザインと、自作前提のデザインでは、デザインのアプローチが全く異なるのである。
 自作といっても、自分で縫製しなくても良い。洋裁ができる人のネットワークがあれば、縫ってもらえばいいし、「縫製オークション」サイトを作って、洋裁ができる人に登録してもらうことも可能だろう。
 そして、それが売れると思えば、生地と付属を仕入れ、縫製工場に依頼すればいい。
 それを実現するには、「縫製工場ネットワークサイト」を作ればいい。最低ロット、標準的な工賃、納期等を公開してもらう。そうすれば、誰でも、量産品をオーダーすることができる。
 資金がなければ、クラウドファンディングで出資を募る。
 販売面でも、ネット販売の方法を教える。これらは、ワークショップ形式で行えばいいと思う。こうして考えると、既に仕組みは整っていることがわかるだろう。あとは、誰が実行するかだ。

*有料メルマガj-fashion journal(149)を紹介しています。本論文は、2014.9.22に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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