My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« ニットファブ、ニットフェスを考える j-fashion journal(156) | Main | 東京テキスタイルフェス(TTF)の提案 j-fashion journal(158) »

July 29, 2015

ICT起業家の発想について考える j-fashion journal(157)

1.デファクトスタンダードを目指す

 デファクトスタンダード(英語: de facto standard)は、「事実上の標準」を指す用語。パソコンのデファクトスタンダードは、「Windows」と「MacOS」、検索エンジンは「Google」、動画共有サイトは「YouTube」と言ってもいいのではないか。
 ICTの世界では、誰もがデファクトスタンダードを目指す。デファクトスタンダードになるということは、世界中の人々から支持を得るということである。また、無料のサービスであっても、それだけのアクセスがあれば広告を掲載することで経済的にも成功が約束される。
 「もし、先進的な優れたシステム、ソフトウェアを開発すれば、デファクトスタンダードになれるか」と言えばそんなことはない。多くの場合、優れたシステムを開発するには多額の資金が必要である。通常は、ファンドから調達することが多いが、ファンドから資金調達すれば、資本の支配権を奪われ、創業者が経営権を失うことも多い。
 資金がなければ、プロモーション、セールス、パッケージ、WEBデザイン等に投資することができず、システムの良さを顧客に伝えることができない。 

 システム開発の技術者は、セールスやプロモーションのことを考えるより、技術開発に専念したいと考えがちだ。特に、デファクトスタンダードを目指す画期的なシステムを開発した場合なら尚更だろう。

2.セールスの自動化とマルチ販売

 セールスをシステム化、自動化する場合、最も理想的なのは、ユーザーがセールスマンとなって、自分の知人友人にシステムを紹介してくれることである。システムが良いのだから、ユーザーは満足するに違いない。だったら、納得して推薦してくれるはずだ。
 しかし、自分の利益にならない限り、ユーザーは知人友人にシステムを紹介することはない。そこで新たなユーザーにシステムを販売したら報酬を与えることを考える。
 通常の物販ビジネスならば、粗利の中から、販売エージェントに支払える金額は限られている。しかし、既に完成しているシステムを販売する場合、極論すれば、原価は限りなくゼロに近い。ダウンロードなら、ほとんど経費は掛からないし、パッケージで販売する場合もデジタルデータをコピーするだけだ。サーバー、回線等の費用も低コストなので、売上のほとんどをセールスの報酬にすることも可能だ。
 しかし、限られた人に多くの報酬を支払っても、デファクススタンダードにはならない。重要なのは、自動的に販売数量が増えることなのだ。
 それには、最初のユーザーの既得権を認めながら、利益を配分することが必要だ。これは、マルチ販売(連鎖販売取引)のビジネスモデルである。こう考えると、マルチ販売は、人間のモチベーションを考えた優れた販売システムであることか分かる。
 それなら、なぜ、「マルチ販売、マルチ商法は悪いこと」とされているのだろう。
 第一に、利益を上げるには、商品を継続的に仕入れ続けなければならないケースが多いこと。結果的に、使わない商品、売れない商品を買ってしまうことがある。でも、これは、本人が買わなければ良いだけの話だ。
 通常の店舗でも、仕入れなければ利益は上がらないし、販売しなければ利益は上がらない。ここで脅迫とか、精神的な暴力行為が発生すれば犯罪になる。
 第二の問題は、加盟者が期待しているような高額な報酬は、ごく一部の人しか得られないこと。しかし、どんなビジネスも先行者利益は存在する。早い者勝ちの論理は当然なのだ。
 「誰もが莫大な利益を上げられる」と言って、加盟者から資金を集めれば、出資法違反や詐欺等の犯罪に該当するだろう。
 例えば、ICT企業が上場するにあたり、ストックオプション(自社株購入権)や新株予約権を与えられるということであれば、高額な利益を期待する人も多いだろう。しかし、いくら利益が上がるかは、上場してみなければ分からない。
 第三は、人間関係のしがらみ等で断りにくい勧誘方法であること。これも違法というわけではないが、迷惑を被る人がいることから、社会一般には「悪質商法」と認定されている。
 上記のように、連鎖販売取引は、特定商取引に関する法律その他関係する法律を遵守する限り、違法なものではない。日本では、「感情的に嫌悪感」を持たれているが、アメリカや中国ではそれほどでもないようだ。また、論理的思考が強いシステム開発者には、違法でもないのに、悪質商法と決めつけることが理解できないだろう。
 更に、その企業が上場を目指している場合、違法行為があれば上場はできない。また、アメリカには、企業やNPOの社会的評価を審査する認定機関がある。ここのランキングを見れば、その企業が社会的に問題があるかどうかが分かる仕組みになっている。
  
3.圧倒的なGoogleの存在感

 デファクトスタンダードを目指すにあたり、もう一つの重要な要素は、ネット検索とネット広告である。
 Googleは、巨額の開発資金と運営費用を負担しながら、検索エンジンを無償で利用させている。利益を上げるのは、広告収入である。
 ネットショップを作っても、アクセス数が増えなければ売上は増えない。アクセス数を増やすには、何らかの方法でネットユーザーを自社WEBに誘導しなければならない。
 かつては、アクセスの多いポータルサイトにバナー広告を出すことが有効だった。インターネットに接続すると、まずポータルサイトに行っていたからだ。
 しかし、現在は、ポータルサイトに行かずに、まずGoogleに行く人が増えた。ブラウザーにGoogle Chromeを使っていると、強制的に最初の一歩はGoogleになる。そして、Gmailでメールをチェックし、Googleカレンダーでスケジュールをチェックする。
 こういう顧客を呼び込むには、Googleのアドワーズ広告のように検索と連動した広告が最も有効だ。
 スマートフォンのOSもGoogleのAndroidのシェアが圧倒的である。2014年第2四半期の世界スマートフォン市場のOS別シェアは、Androidが84.7%と独占している。(2位のiOSは11.7%、3位はWindows Phoneで2.5%。4位のBlackberry0.5%)
 こうなるとプライベートから仕事までをGoogleに委ねることになる。
 既に、Googleはネット上の主要なサービスのデファクトスタンダードを独占しようとしているように見える。
 もし、自分がデファクトスタンダードを狙うなら、この巨人、Googleを超えなければならない。それには、Googleに変わる、検索から広告収入までの新しいビジネスモデルを作らなければならない。
 
4.a社の革新的な戦略

 Googleの牙城を切り崩そうと新しいビジネスモデルを引っさげて登場したのが、a社である。(本当は、実名を紹介したいのだが、この会社は上場前で情報統制が厳しい上に、ネット上で「マルチ商法」の中傷を受けているので、あえて匿名にしたい)
 a社は、自社でオリジナルの検索エンジンを開発している。既に公開しているが、まだ、全てのメニューが揃っているわけではない。したがって、見ても面白くない。とりあえず、準備しているという段階である。日本ではほとんど馴染みがないので、知っている人も少ないだろう。
 次に収益事業である新しい広告事業だかこれが非常にユニークである。
 通常の広告は、自社の商品やサービスを顧客に伝えることを目的としているが、a社の広告は、SEO(Search Engine Optimization)、サーチエンジン最適化により、サーチエンジンの検索結果のページの表示順の上位にWebサイトが表示されるように工夫した広告なのである。これにより、Googleの表示が上位に上がれば、当然、アクセスも増え、売上が上がる。
 通常、本気でSEOに取り組むなら、WEBコンテンツ、WEBデザイン、SEO対策をトータルに行うことが求められる。
 しかし、中小零細企業は、WEBを上げるのが精一杯であり、ほとんどがコンテンツもデザインもレベルが低い。それをカイゼンしろ、と言っても、予算がないと断られるに違いない。
 そこで、WEBはそのままで、アクセス数とSEO効果を高めようというのが、a社の戦略である。
 いくつかの要素が複雑に絡んでいるが、最も基本になる考え方は、アクセス数を上げたいユーザーがグループを組み、互いにクリックする。
 例えば、自社のサイトの訪問者数を一日30人上げようと思ったら、30クリック分のポイントで広告費を支払って、グループメンバーに30回クリックしてもらう。
 その代わり、自分もグループ内企業のWEBを30回クリックすることが義務づけられ、30回クリックすることで、30回分のポイントが返ってくる。これを繰り返せば、ポイントは減らずに互いにメリットが生じる。
 勿論、クリックだけでSEO対策になるわけではないし、その他のノウハウもあるのだろうが、実際にアクセス数が上がり、Googleの検索順位が上がっているのだ。
 このクリックポイントを余分に購入しておけば、URLが分かってさえいれば、サーバー等の操作をすることなく、簡単に広告効果が得られる。
 例えば、行きつけのレストランが「WEBを作ったんだけど、全然検索に引っかからないんだ」と悩んでいれば、「では、一日20名ずつアクセスを増やして、検索順位を上げましょう。時間は掛かるかもしれないけど、もし、成功したら、その時には、有料の広告を出してくださいね」とアドバイスすることができる。
 Google広告は、顧客がクリックする度に、数十円から数百円がGoogleに支払われる。a社は、広告を出した企業が、クリックした人に広告料を支払う。しかし、自分もクリックすれば、ポイントが返ってくる。ある意味のクリック互助会のようなものだ。
 その他にも、様々なインセンティブや課金が絡んでくるので、全貌を把握することは難しいが、基本的に損をしない仕組みを作り上げている。同時に、ファンドの資本を受けず、多額のプロモーション費用をかけず、着実にメンバー(広告主兼広告ビジネスのセールス担当)を増やしているのである。
 a社は、来年には上場する予定らしい。上場すれば、また、マーケティングシステムを変更するかもしれない。また、現在開発中のサービスも多く、未知なる部分が多いだけに魅力的とも言える。勿論、未知なる部分を疑えば怪しいとも言えるが、そこは、自己責任で判断するしかないだろう。
 ただ、私の直感だが、本気で中小零細企業を対象にするなら、大企業の資本頼みにしたり、リスクヘッジばかりでは実現できない。そもそも、多くのICT企業は、最終消費者個人か、大企業しか相手にしていない。
 a社は、「中小企業のための」という言葉をわざわざ使っている。それを実現するには、違法ではないが多少トリッキーな手法が必要なんだろう。それに、「本気でGoogleに立ち向かうなんて、痛快ではないか」と思うのだ。

[その後のご報告。当初は、面白いアイディアだと思ったが、Google側のシステム変更に対応できず、a社の活動は停滞してしまった。マルチに勧誘した会員のビジネスを支援するために、検索とは全く関係ないビジネスに参入し、私にとっては興味のないものになってしまった。ICTビジネスのビジネスモデルを継続することは困難であることを実感した]

*有料メルマガj-fashion journal(157)を紹介しています。本論文は、2014.11.17に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« ニットファブ、ニットフェスを考える j-fashion journal(156) | Main | 東京テキスタイルフェス(TTF)の提案 j-fashion journal(158) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« ニットファブ、ニットフェスを考える j-fashion journal(156) | Main | 東京テキスタイルフェス(TTF)の提案 j-fashion journal(158) »