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April 17, 2015

大人ファッション会議

1.「普通の服」が市場にない

 ファストファッション全盛の現在、アパレル製品の企画はトレンド分析からスタートする。次に、店頭のフェイス設計を行う。売り場に展開する商品の小売価格、数量を設定する。
 アパレル製品の企画は、トレンドと価格が基本になっている。
 この考え方が間違っているとは言わない。しかし、この手法では二つの問題が生じる。
 第一が「素材の質が低下しやすい」こと。小売価格から逆算して、商品原価を決め、更にそこから生地の価格を設定する。
 生地を安くするには、糸の質を落とすか、密度を低くして糸量を少なくするか、だ。どちらも、生地の風合いが落ちる。
 ファストファッションでは、生地の風合いよりも、視覚的な要素を重視する。外見の良さが優先されるのだ。
 若い世代であればペラペラの服を着てもおかしくない。肉体そのものが若々しく、視覚的なバランスも良い。しかし、高齢者に近づくにつれ、体型は崩れ、肌の色もくすんでくる。そんなボディでペラペラの服を着たのでは、全体が見すぼらしく見えてしまう。ボディそのものが劣化するに伴い、服の質感がそれをカバーする。ある程度、打ち込みが良くしっかりとしていて、質感が良く、色のきれいなテキスタイルが望ましい。

 第二の問題は、ベーシックなデザインの服がなくなること。トレンド分析を重視すると、ベーシックなデザインは減少する。また、各ブランドが共通のトレンド情報を見ているため、市場が同質化してしまう。
 トレンドを追いかけることは、服を使い捨てることにつながる。使い捨てになれば、低価格でなければ売れない。
 若い世代は、トレンドを追いかけることが楽しいのだろう。しかし、高齢者はトレンドより自分の個性やスタイルを重視する。
 自分の個性を表現し、スタイルを確立するには、変化よりも継続して服を着用することが必要だ。欧米の家具や食器のように、一つのものを使い続けること。壊れたら、同じデザインの商品を補充するという考え方があってもいいだろう。常に同じスタイルを保ち、同じ商品を買い足す。そう願っても、市場全体がトレンドを追いかけているために、上質なベーシック商品がなくなっている。
 
2.人は服で人格を表現している

 服はトレンドを表すだけではない。個人の社会的ステイタス、個性、生活スタイルを表現する重要なアイテムだ。
 人と服は一体となって、人格を表現する。
 例えば、最新のトレンドを身につけている人は、時代の変化に敏感な高感度な人だと思われる。常に情報をチェックし、それを表現することができる。時代の変化に敏感なセンスが必要とされる職業か、センスを売り物にしている人にふさわしい。
 流行に関係なく、個性的な服装をしている人は、明確な自我を持ち、自分流の生活を志向している人だ。周囲に流されずに、我が道を進む。組織人ではなく、個人で仕事をしている人。強烈な個性を持っている人である。
 上質でオーソドックスな服を身に付けている人は、自制心の強い良識のある人だ。軽率に流行に流されることもなく、長持ちするモノを選んで身につけている。
 環境意識の高い人は、ナチュラルな服装を好むだろう。プレスのきいた服ではなく、洗い晒しの服。オーガニックコットンとオーガニック食品を支持するような人。
 このようにファッションとは、それぞれの人格、人生そのものを表現するツールなのだ。トレンドを追随した安い服だけしか選べないというのは、なんと貧しいことだろう。
 伝統的な欧米の男性は、例えば、シャツなどは6枚、12枚の単位で購入する。そして、年間を通じて身に付ける。そういうスタイルを取り入れようとしても、日本のアパレル業界は対応していない。
 日本人は、季節に敏感であり、きものを着替えることで季節を表現していた。したがって、同じ服をまとめて購入するという習慣はない。しかし昔は、基本となるベーシックな商品がどこかにあった。しかし、現在は、コストと効率を追求した結果だろうが、普通の服がなくなってしまった。
 これでは、大人のファッションが成立しない。私は、そういう危機感を持っている。
   
3.小売店発想の大人服

 40歳以上の女性から、「欲しい商品がない」という声を耳にする。もちろん、それぞれの人にとって、欲しい商品は異なる。でも、共通しているのが、売れ筋を追いかけているような商品に魅力を感じていないということだ。
 先日も元百貨店バイヤーの女性と話していたら、「普通のベーシックな服がない」という話になった。
 例えば、Tシャツでも丁度良い襟のカッティングのものがない。若者向けのものは、襟ぐりが詰まっていて苦しい。大きくくっているものは、前かがみになると下着が見えてしまう。丁度良いものがないという。
 本来、大人の女性を対象に考えるなら、襟ぐりのバリエーションは欠かせないだろう。胸の谷間を見せたい人もいるし、見せたくない人もいる。V字のシャープなラインが良い場合と、U型、あるいはスクエアやボートネックなどから選びたいはずだ。
 加えて、袖丈のバリエーションも欲しい。ノースリーブ、フレンチスリーブ、五分袖、七部袖、八部袖など。
 素材も高級なコットンと言うと、超長綿の薄手に限定される。超長綿の太番手の糸が欲しいと思っても、販売されていない。コースゲージのニットは、カジュアルに限定されている。
 加えて、カラーバリエーション、ボーダーのバリエーション、サイズバリエーションも欲しい。
 しかし、同じ素材のプリントのパリエーションしか市場では展開されていない。これでは満足できない。
 同じことはニットにも、シャツにもパンツにもスカートにも言える。市場全体がトレンド偏重であるため、欲しい服を見つけることができない。
 市場全体を見れば、上質でベーシックな服がないわけではない。しかし多くは、ラグジュアリーブランドのように高額な商品に限定されてしまう。それでは、普段着として客用することはできない。もっとリーズナブルなもの。しかし、ファストファッションのように見かけだけの服では我慢できない。結果的に欲しい服がないということになる。
 こうした大人が望む上質なベーシック服は、デザイナーに任せても出来上がってこない。デザイナーは差別化を優先している。顧客は、差別化など関係ない。使い続けたくなるような服が欲しいのだ。デザイナーより消費者寄り、バイヤー寄りの商品企画が必要だと思う。

4.元気が出るオジサンのファッション

 私の友人が「元気が出るオジサンのファッション講座」を開くと言う。彼は、元アパレルの営業マンで、還暦を過ぎた現在は別の仕事の会社を経営している。とても、お洒落な男性で、同年代の異性の友人も多い。
 彼女たちは、自分の旦那さんをほとんど見限っている。それでも、一緒に外出する時に、恥ずかしいので、旦那さんのファッションを何とかしたいと思っているらしい。
 友人が憤慨して語っていた。、「自分は服に何万円も掛けているのに、旦那には十分の一しか予算を与えない。それでカッコ良くしてくれ、と言われても無理だ。俺は、自分と同じだけの予算を旦那に使え、と言ってやるんだ」。
 私も常日頃から考えているのだが、シニアの男性でくすんだ色を好む人が多いが、これが全く似合っていない。本人は、目立ちたくないとか、地味な方が上品だ、と思っているのかもしれないが、くすんだオジサンが益々くすんでしまう。
 自分が中学、高校生の頃に選んでいたような服を選んでしまう人もいる。本人は、若々しいと思っているのかもしれないが、高齢者が安いカジュアルな服を着ると、見すぼらしく見えてしまう。
 そもそも、オジサン達は、ファッションの教育を受けていないし、いろいろと試着したこともないのだろう。だから、服を自分で選ぶこともできない。
 白髪が増えてくる年齢になると、明るい色が似合うようになる。顔がくすんでいるのだから、服は明るいきれいな色にした方が若々しい。しかし、今まで、グレー、紺、黒、茶色しか着たことがないので、赤、ピンク、ブルー、イエロー、グリーンなどは選べない。
 また、コントラスト配色が苦手だ。全てを地味な色にしてしまうが、ソックス、ベルト、スカーフだけでも、アクセントの色を入れると印象がガラリと変わる。
 こうしたことを、トレーニングする機会が必要だと思う。その意味でも、友人の講座は良い企画だ。
 
4.「大人のファッション会議」構想

 大人のファッションの悩みは尽きない。
 40~50代の子育てが終わって時間もゆとりもある女性たち、50~60代で着られる商品がないと感じている人達、60代以上で趣味に合う服装を模索している人達、リタイア後、スーツ以外の服装に悩む男性たち・・・。
 それぞれの世代、男女、職業、趣味嗜好によって異なるものの、ファッションに悩みや不満を持つ人は意外に多い。
 これらを解決するには、まず、ファッション業界、アパレル業界のOBの力を結集することから始めたい。元アパレルのMD、デザイナー、パターンナー、営業、販売の人達。元百貨店や専門店のバイヤー。
 50代以上のバブルも激安ブームも経験した人達である。そして、「大人のファッション会議」を組織化する。
 そして、「大人のファッション会議」というWEBマガジンを作る。独自のメディアを持つことは重要だと思う。
 会議メンバーの対談、エッセイなどを紹介し、大人のファッションについて、一緒に考えていきたい。
 例えば、こんな内容はどうだろうか。
 「捨てられないコレクション」。捨てようと思うのだけど、いろいろな思い出やこだわりの詰まった服を持っている人は多い。その中には、トレンドとは異なる、大人のファッションの要素が見つかるのではないか。
 「こんな服を作って」。会議のメンバーで商品企画を固め、百貨店、専門店、アパレル等と連携して、商品化する。例えば、前述した多様な襟ぐりを持つTシャツ企画を百貨店とカットソーメーカー、紡績とコラボして実現させる。
 「リフォームの達人」。洋裁ができて、趣味でリフォームを楽しんでいる人も多いだろう。一から服を作るだけでなく、既存のブランドの服で満足できない部分をリフォームして紹介する。ここから「こんな服を作って」に発展することもあるだろう。
 「勝手にブランドリニューアル」。大人のファッション会議にはプロが集まる。そこで、勝手に既存ブランドリニューアル企画を作り提案する。実行するかしないかは、企業次第である。
 「大人のファッション会議パーティー」。大人のファッション会議のメンバーとファッションが好きな大人のためのパーティーを定期的に企画実行する。その中で、プロによるワンポイント・ファッションアドバイス等を行う。パーティーの様子を含めて、その結果をWEB上で紹介する。
 「こんな生地の服が欲しい」。商社やアパレル企業は、コストを基準に生地選びをすることが多い。その結果、物足りない生地の服しか市場に並ばない。
 そこで、テキスタイルメーカーと共に、良質の生地を開発し、様々なアイテムを試作し、紹介する。これは、パターンナーや縫製工場とコラボすることもできるのではないか。試作だけならば、個人で縫製することもできる。
 「大人のファッションブランド紹介」。通常のファッション雑誌のように、大人のファッションとしてふさわしいブランドや商品を紹介する。
 以上、「大人のファッション会議」構想のラフ案である。一人では実現できないが、何人かで協力すれば、実現の可能性も出てくると思う。

*有料メルマガj-fashion journal(135)を紹介しています。本論文は、2014.6.23に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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