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December 08, 2014

戦略的情報共有はできないのか? j-fashion journal(129)

1.業界団体の業務とは?

 日本国内において競合関係にある企業同士であっても、同じ団体に所属していることは多い。たとえば、日本百貨店協会は日本全国のほとんどの百貨店が所属している。また、日本アパレル・ファッション産業協会は、多くのアパレル企業が所属している。

 それらの団体では何をしているのだろう。日本百貨店協会の平成25年度の事業活動は以下の通り。(以下、日本百貨店協会のWEBから抜粋) 
 
1.営業活動と構造改革を支援する取り組み
(1) 売上回復・商機拡大を支援する事業
(2) ビジネスモデル改革を支援する事業
(3) コスト削減・業務合理化を支援する事業
(4) 人材育成・働き方改革を支援する事業
(5) 決済インフラ・カードビジネス関連事業
(6) 経営・営業に関する情報サービス事業
2.政策提言と規制対策の取り組み
(1) 政策提言活動
(2) 危機管理・コンプライアンス活動
(3) まちづくり推進事業
3.業態価値訴求の取り組み
(1) 環境対策推進活動
(2) 業界広報活動
4.地区協会の取り組み活動

 また、ここには書かれていないが、最も大きな活動は、百貨店売上高の集計と発表である。

 日本アパレル・ファッション産業協会には、以下の委員会があり、それぞれの活動を行っている。(以下、日本アパレル・ファッション産業協会のWEBから一部抜粋)
 
・販売促進委員会
 国際市場への進出とビジネス展開、国内市場での販売促進の強化をしていく。市場拡大を目指し、特に中国市場開拓へ積極的に取組み、国内では百貨店業界と共同で「KOROMOGAE」キャンペーンの強化充実を図る。
 
・人材育成委員会 
 アパレル業界における各職種に必要な人材の確保のため、「職種勉強会」「合同企業説明会」を開催。また、ファッション人材の育成のため、「モデリストフォーラム」「職種別研修」を開催。
 
・取引改革委員会
 関連業界と連携し、商取引慣行の改革、業務の改善を通し、流通構造全体の改革を推進。特にアパレル企業と百貨店間の新しい取引形態である「コラボレーション取引」の啓蒙、普及活動を行う。
 
・SCM推進委員会
 サプライチェーンマネージメントの実現のため、情報システム、物流の2方向から検討を加え、業界標準化を推進する。また、アパレル製品の品質管理についても標準化を検討し推進する。
 
・環境対策委員会 
 大部分が焼却処分されているアパレル製品のリサイクルを実現するため、関連業界と連携して回収システムについて研究し業界への普及を目指す。
 
・コンプライアンス委員会
 業界としての法令順守、社会的責任(CSR)に関する窓口として新設し、アパレル産業の質的向上に向けた活動に取り組んでいく。特に法制度や品質管理への対応について検討を行い、アパレル業界としての指針を作成し、普及を推進していく。
 
・通商問題委員会
 輸入割当クォータ制度撤廃、自由貿易協定(FTA)進展等、通商問題に関するアパレル業界としての対応を検討・審議する。
 
・企業活性化委員会 
 ファッション人材の発掘・確保・育成と会員企業との「交流の場」を創出し、自らの才能をフルに発揮する場、活動の機会を求めている若い有能なクリエーション人材と企業力、マネジメント力に優れ会員ファッション企業が出会い、相互で新しいビジネスモデの構築ができるよう「JAFIC PLATFORM」を本格的に稼動、推進していく。
 
・組織強化委員会
 収益基盤の安定及び協会活動充実のため、新しい共益事業の組み立て・検討及び新規会員の獲得に向けた活動の強化に取り組む。
 
 以上を読むと、とても充実した活動をしている様子が伺える。しかし、どこか本業と遊離している印象も受ける。本業は各社が努力し、本業以外の社会的事業を団体で行うということなのだろう。
 しかし、私は「本業でも交流すべきではないのか」と考えている。もちろん、会員企業は競合関係にあり、ビジネス情報の共有は難しい。しかし、その中の一部だけでも、情報を共有できないだろうか。それができないために、数百億の単位で損失が出ているのではないか。
 
2.日本百貨店の中国進出

 私が、最も危惧しているのは、「百貨店やアパレル企業の中国市場進出」である。
 たとえば、百貨店では既に伊勢丹が撤退を経験している。2007年に済南店、2013年には瀋陽店を閉鎖した。
 そして、2012年高島屋は上海市長寧区古北新区に出店した。そのニュースを聞いた時から、「なぜ古北なのか」と疑問に思った。古北地区は、日本人や台湾人が多く居住する住宅地だが、商業地域のイメージはない。多分、上海人にとっても「古北に買い物に行く」というイメージはないだろう。足つぼマッサージには行くかもしれないが・・・。
 私は、高島屋の上海進出を失敗と断じたくはないが、現状を見る限り、成功とは言えないだろう。このことは、多くの友人、知人からも伝え聞いている。
 2014年4月24日には、エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)が、浙江省寧波市に阪急百貨店を2018年春開業すると発表した。総事業費30億元(約480億円)、延べ床面積16万㎡の巨大な百貨店を作るとのこと。官民ファンドのクールジャパン機構と、寧波市の拠点にする杉杉集団有限公司も出資する。
 このニュースも高島屋の時のような違和感を覚えた。なぜ、寧波なのか。なぜ、杉杉集団なのか。
 杉杉集団は寧波を拠点にしたアパレル企業で、不動産事業も行っている。したがって、杉杉集団が寧波の政府から、出資や開発を打診されることは十分に考えられる。
 また、中国には数多くの投資ファンドやデベロッパーが存在する。条件の良い物件は彼らが押さえてしまうのが常だ。一本釣りのように、エイチ・ツー・オー リテイリングに話が来たとすれば、私はそれだけで眉にツバをつけたくなるのだ。
 2014年、エイチ・ツー・オー リテイリングは、イズミヤと経営統合している。イズミヤは、2010年伊藤忠商事と資本業務提携し、2011年に蘇州市に「泉屋百貨」を出店している。また、伊藤忠商事は2009年に杉杉集団と資本業務提携を行っている。その杉杉集団は伊藤忠、三井不動産とアウトレットモールなど商業施設運営も手掛けている。こう見ていくと、これら一連の中国ビジネスには伊藤忠商事が色濃く関与していることが伺える。
 話を戻そう。寧波の開発はこれからだ。成功するか失敗するかは分からない。高島屋だって失敗と決めつけているわけではない。何年か後に黒字化する可能性がないわけではない。

3.海外市場進出には独資か?合弁か?

 私が言いたいのは、国内市場ならともかく、「中国市場のビジネスは百貨店同士が情報共有できないか」ということである。
 たとえば、上海の久光百貨店は、香港そごうのオーナー企業である香港利福國際集団と上海九百集団の合弁会社である。なぜ、香港企業は中国の元国営流通グループと合弁したのか?
 これは香港企業だけではない。欧米企業も台湾企業も中国企業と合弁している。もちろん、全てが成功しているわけではないが、彼らが合弁という形態を取るには理由があるはずだ。
 それに対して、日本の百貨店は独資企業が運営している。なぜか。
 かつて、中国生産のために、中国に多数の合弁企業が設立された。当時は合弁企業しか認可されていなかった。当時、日本の商社は経営面で非常に苦労した。その時のトラウマが日本企業を独資に駆り立てているように思える。
 私も生産は独資でいいと思う。しかし、流通業として進出するならば、合弁の方が適しているのではないか。我々は、あまりにも中国ビジネス、中国政府、中国人消費者を知らない。海外企業はそのことを熟知している。
 私は、以前、この件について商社の人間と議論になったことがある。彼は、かたくなに独資企業設立を主張した。私はそれに反対した。
 その後、私なりに常に独資か合弁かという問題意識を持ち、考え続けている。それでも、私は合弁の方が失敗する確率は少ないのではないか、と考えている。
 私の意見はどうでもいいが、日本企業同士が情報交換を行い、その結果、独資が良いならば、独資でいい。いずれにせよ、最初から独資ありきではなく、それぞれのメリット、デメリットを冷静に比較するべきだろう。
 同様のことはアパレル企業にも言える。どんなブランド構成で進出すればいいのか?中国消費者意識は日本人とどのように異なるのか?有効なプロモーション手法にはどのようなものがあるのか?
 こうした課題を情報共有することによって事前に察知し、対策を立てるべきではないか。進出して撤退することは、非常に大きな損失である。
  
4.業界団体を軸とした戦略的情報共有を!

 以上のような情報共有の場を設定できるとしたら、冒頭の業界団体ではないだろうか。それには、建前だけの交流だけでなく、ビジネスに根ざした本音の交流が必要になる。
 欧米にも業界団体は存在するが、多くの場合、その目的や活動が明確である。通常は競合関係にあっても、特定の目的のために連携した方が良ければ連携する。
 たとえば、日本でも海外市場開拓のための市場調査や研究は連携した方が良い。あるいは、中国の政府機関とのコミュニケーションも、単独企業が行うより、業界団体が行うべきだろう。
 日本の業界団体は、「目的ありき」と言うより、「団体ありき」のように見える。たとえば、百貨店やアパレルの業界団体の上部に日本繊維産業連盟(繊産連)という団体がある。繊産連は、1970年の日米繊維交渉の時に結成された団体で、現在は繊維関連政策等を経済産業省と密接に連携しながら活動している。
 経済産業省にとって、業界団体は情報収集の対象であり、政策を実行する時の実行主体である。また、補助金等の受け皿ともなる。このような趣旨で活動しているので、役所が関係しない日常的なビジネスに関する業務は行っていない。
 私が業界団体に提唱していのは、役所の問題意識だけでなく、業界や企業としての問題意識から活動して欲しい、ということだ。実際に困っていることをどのように解決するのか、を考えて欲しい。
 是非とも、海外事業だけを対象にした戦略的情報共有を進めて欲しいと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(129)を紹介しています。本論文は、2014.5.12に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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