My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« 滅びる技術・生まれる技術 j-fashion journal(130) | Main | 2015年新春セミナー「パラレルワールドのソーシャルマーケティング」 »

December 08, 2014

忍者きもの j-fashion journal(131)

1.ホンモノの忍者の衣装とは?

 外国人観光客を取材する番組が増えている。驚くのは、彼らの多くが「さむらい」「忍者」「古武道」等に強い興味を持っていることだ。しかも、興味本位ではなく、生き方や生活態度、思想や哲学にいたるまでを深く理解している。先日、テレビに出演していた外国人は、来日の目的は、「日本料理を勉強すること」と答えたが、実はそれ以上に重要な目的が「剣術の先生に弟子入りすること」であり、日本を理解するために職業として日本料理を選んだとのこと。そして、彼は髷を結えるように髪を伸ばしていた。
 これほど、熱心に日本を勉強し、日本にやってくる人々に対して、みやげ物のような忍者の衣装や安い浴衣ばかりを販売しているのはいかがなものだろうか。繊維業界に身を置く者としても忸怩たる思いである。我々は日本人の繊維業界人として、江戸時代の日本の暮らしに生かされていた技術、あるいは本物の布や衣服を提供する義務があるのではないか。
 江戸時代、日本人の8割は農民だった。農民が来ていたのは野良着だ。その多くは、藍染めの木綿製だった。
 忍者の衣装も野良着が原型と言われている。忍者の黒装束は、後世になって演劇等で定着したものであり、本来は藍染めか柿渋染めのようなものだったらしい。 

2.天然発酵建て藍染めとインディゴ染め

 藍染めと言っても、現代のデニムに使われているようなインディゴとは異なる。インディゴは豆科の植物から沈殿法で作られたものだ。
 ヨーロッパでも古来より、ウォードというアブラナ科の藍が使われていたが、16世紀からインドの沈殿藍(インディゴ)が輸入されるにつれ衰退し、18世紀には完全に姿を消した。インドから来た藍なのでインディゴという名前になったという。インディゴは純度が高く、簡単に鮮やかな青を染めることができたので、ヨーロッパ全体を席巻することになった。
 日本の藍染めに使われているのは、蓼藍(たであい)というタデ科の植物である。蓼藍の葉を堆肥のように発酵させ、「すくも」にする。この段階では、藍は顔料の状態であり、染色することはできない。
 すくもを井戸水に入れ、ふすま等を加え、アルカリにするために木灰を加える。藍染めは、蓼藍にいる還元菌を使い発酵させるが、還元菌はアルカリの環境でなければ発酵しない。ふすまは、還元菌の餌になる。そして、温度を最適に保ちつと発酵が始まり、染液となる。藍染めは、染液に糸や布をつけただけでは発色しない。それが空気に触れることにより酸化され発色する
 この技法を「天然灰汁発酵建て」と呼ぶ。
 この染液は藍瓶に入れられる。白い生地を藍染めすることもできるが、野良着で使われていたのは、「青縞」と言われる先染め(糸染め)の生地だ。藍瓶の染液は、若く濃いものから、古く薄いものまでを数種類用意し、枷上げした綿糸を薄い藍から順に濃い藍へと、30回近く、浸しては絞るという作業を続ける。
 こうしてできた藍染めの糸は、ある種のコーティングされた状態となり、白い綿糸とは異なる性質を持つ。汗を良く吸い、しかも乾きやすく、臭いも防ぐ。かつての野良作業のように、過酷な環境の中での重労働には特にその快適性を発揮するようだ。
 その藍染め糸をタテ糸、ヨコ糸に使い、織り上げたものが青縞である。青縞という名前だが、縞模様ではなく、無地の生地だ。しかし、糸で染めているので、使い込んでくるとかすかに格子模様に見えることから、青縞と名付けられた。(格子も縞の一種である)

3.衣薬同源の健康着

 藍染めは、美しい発色だけが目的ではない。草木染めはの原料は多くが漢方薬の原料でもある。食べ物でも医食同源という言葉があるが、着るものも、健康に良い染料を使ったのである。衣薬同源とでも言おうか。
 たとえば、藍で染めた肌着は、昔から冷え性や肌荒れ、汗もなどに効果があると言われている。防虫効果も高く、大切な着物は、藍の風呂敷で包んでしまったと言われる。抗菌作用もあるので、臭いがつくことも少ない。手甲、脚絆を藍染めの生地で作ったのは、マムシ避けの効果もあったらしい。
 中国や日本に昔から伝わる薬学書、『神農本草経』『本草拾遺』『開宝本草』『本草綱目』といった書物には、藍の利用法や効果、効能が事細かに記されている。
 また、近年も藍の抗炎症作用、抗菌作用、抗酸化作用等、改めて藍の効果効能に注目が集まっている。

4.日本の伝統的生活着

 きものは、普段着から姿を消していった。野良着や職人の作業着。そして、綿のきもの、セル(ウール)のきもの、スフ人絹(レーヨン)のきものなど。最後に残ったのが、単価の高いフォーマルのきものと、サマードレスとしての浴衣だった。
 忍者装束は野良着を原型にしていたと言われるが、そもそも忍者は普段は農民としての自給自足の生活をしていたのだから、それも当然だろう。
 野良着の基本は、短い丈の筒袖のきものと股引き。作業によって、手甲・脚絆などをつけていたと思われる。
 武士は、儀礼的な場面では、裃、袂のあるきもの、長袴を着用していたが、旅行などでは、細身の野袴や軽衫(かるさん)袴を着用していた。また、剣術の稽古などでは、筒袖の機能的なきものを着用した。
 忍者の装束も、筒袖のきものにズボンのような野袴が基本だ。内側に鎖帷子を着用し、手甲脚絆を装着する。
 覆面のような頭巾は、三尺手拭いを二本使ったものだが、これと全く同じ構造を持っているのが、山形県南部に伝わる「はんこたんな」である。目の部分だけを露出した、忍者のような頭巾で農作業の時に日焼け止め、虫除けのために使った。これも、藍染めこそ相応しい。
 さて、現代生活においても着用できる機能的な「忍者きもの」としては、以下のように整理したい。
(1)通常の袂のついた長着(裾まである通常のきもの)
(2)筒袖あるいは船底袖の半着(短いきもの)
(3)羽織、半纏
(4)股引き、半股引き
(5)野袴、軽衫袴、もんぺ
(6)手甲、脚絆
(7)足袋、地下足袋
(8)褌
(9)はんこたんな、三尺手拭い
 以上を基本的には藍染め木綿で製作する。生地は、高級な剣道袴に使用する高密度の平織から、野良着に使われていた平織、剣道着の上着に使用される刺子織など。
 バリエーションとしては、唐山縞や、ヨコ糸に麻やウールを使ったもの等が考えられる。色も藍を基本に、藍に茜を混ぜた紫、藍とクチナシを混ぜたグリーン。または、柿渋染や他の草木染めとも合わせられるだろう。
 忍者きものと言っても、忍者のコスプレではない。本物の日本の伝統的生活着であり、日本の伝統文化の表現である。
 そして、スーツを脱いだシニア層向けの新しい生活着の提案であり、日本を愛する世界中の人に着てもらいたい「本物」である。

*有料メルマガj-fashion journal(131)を紹介しています。本論文は、2014.5.26に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« 滅びる技術・生まれる技術 j-fashion journal(130) | Main | 2015年新春セミナー「パラレルワールドのソーシャルマーケティング」 »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 滅びる技術・生まれる技術 j-fashion journal(130) | Main | 2015年新春セミナー「パラレルワールドのソーシャルマーケティング」 »