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November 16, 2014

ロジカルシンキングは嫌われる j-fashion journal(128)

1.ロジカルシンキングと常識

 ロジカルシンキングは論理的思考、クリティカルシンキングは批判的思考と訳される。Wikipediaによると、ロジカルシンキングという言葉は、マッキンゼーなどの一部のコンサルタント会社由来の言葉らしい。
 私のマーケティングの師匠でもある藤原肇氏は「マーケティングの基本は論理的に考え、逆算することです」と語っていた。論理的に考えることは誰にでもできそうだが、意外に難しい。我々には常識が身についているからだ。しかし、常識も疑ってかからなければならない。それがクリティカルということだ。
 人は誰でも、自分の立場があり、その立場の範囲内で発言する。また、自分に不利になることは言わないし、自分に責任が及ぶようなことは言わない。
 私たちは、子供の頃から「嘘を言ってはいけない」と教えられる。嘘をついてはいけないというのは常識だ。
 しかし、大人になると事情が変わってくる。嘘を言わずに正直なことを言ったために失脚する政治家は多い。論理的に考えれば、良い結果を招くなら嘘を言うことも悪くない。もちろん、嘘をついた責任は自己にある。その責任を取る覚悟を持って嘘をつくことが大人の対応だ。失言問題で失脚する政治家とは、「まともに嘘もつけない人」とも言える。

 考えてみれば、「嘘をつくな」と教えられるのは、支配される側の立場だ。支配する側は嘘をつこうがどうしようが関係ない。
 大人は子供に対して「嘘をつくな」と言う。しかし、大人は嘘をつく。支配者は被支配者に「嘘をつくな」と言うが、支配者の嘘を咎める者はいない。
 「他人に迷惑をかけない」「相手の気持ちを考える」ことも、日本人にとっては常識に近い。しかし、海外には、そう考えない人も少なくない。人間は自分が最も大切だ。だから、他人に迷惑をかけられるのは嫌だが、他人に迷惑をかけることは構わない。論理的に考えるとそういうことになる。
 互いに迷惑をかけないようにすれば、その集団は平和な状態になる。これも論理的だ。しかし、多民族が集まっているような場合や宗教が異なる人々が一緒に生活している場合はどうだろう。それぞれの集団が敵対しているとしたらどうだろうか。
 「他人に迷惑をかけない」というのは、自分の身内、自分が所属する集団に迷惑をかけないという意味だ。日本という国全体が一つの集団と考えれば、日本国内にいる限り、他人に迷惑をかけないという常識は通用する。しかし、敵対している集団に迷惑をかけることは悪いと思わないだろう。
 長期間、国が乱れ、敵対勢力に囲まれており、信じられるのは身内だけという状況下では、「他人に迷惑をかけない」「相手の気持ちを考える」というのは常識と言うより、非常識なのではないか。そんなことを考えていたのでは、生き残れないからだ。
 
2.アパレル不振の原因は天候不順?

 アパレル企業の売り上げが悪い理由に「天候不順のため」というものがある。実際には、「商品企画が悪い」「販売員の接客が悪い」「PR不足」「営業の売り込みが弱い」などの様々な理由がある。
 しかし、日本の組織社会では、商品企画から商品決定に至る間に何度も会議を行い、責任を分散している。そのため、あからさまに「誰が悪い」という指摘はせずに、誰も傷つかない「天候不順」が理由として出てくる。
 しかし、外部からコンサルタントが入る場合は、「天候不順」は理由にならない。「天候不順」が理由なら、売り上げを改善するには、精度の高い天気予報会社と契約すればいい。
 店舗、商品、販売員を観察し、あらゆる部署の社員からヒアリングを行って、問題点を抽出する。
 問題点が分かれば、解決策も分かる。そこで、担当者に解決策を提示させ、具体的アクションプランに落とし込み、その経緯をチェックしていく。
 これで問題が解決すれば簡単なのだが、現実はそうはいかない。問題点が分かったとしても、「金がない」「人がいない」「時間がない」等の理由から実現できないことが多い。
 そこからが本当の解決策を探る作業となる。できる範囲で最大限の効果を上げるに、どうすればいいのか。
 どんな対策であっても、過去の業務を踏襲すればいいということはない。必ず新しいことに挑戦しなければならない。場合によっては、それまでの組織の秩序を破壊しなければならない。大胆な人事異動や組織の再編成により、かつての序列が崩壊することもあるだろう。
 ロジカルに考えれば、それが正しい。正しいだけに厳しい。逃げ場がなくなる。


3.会社と自分の生活のどちらを優先するか?

 究極の選択は「会社のために個人を犠牲にしていいのか」という判断になる。たとえば、社長を交代しなければ業績の改善が図れない場合、社長は自ら退陣するだろうか。それは役員やマネージャーでも同様だ。
 社員は会社のためと同時に自分の生活のために働いている。通常は、自分の生活維持を優先するはずだ。したがって、会社のためとはいえ、自分の生活が犠牲になるのなら、徹底的に抵抗するだろう。
 自らを犠牲にすることができるような客観性と論理性を持っていれば、業績の悪化を放置することはない。互いに傷を舐めあい、組織の秩序を優先してきたからこそ問題が解決できないのである。
 日本の組織はロジカルであることを禁じる。「言われた通りにやれ」というのが日本の基本的なやり方だ。これは、小学校の授業でも、クラブ活動でも、企業組織でも同じことだ。先生や上司の言ったことを批判的に聞くことは許されない。
 それに対して、コンサルタントは徹底的にロジカルに迫る。組織の掟は関係ない。個人の生活より、会社の業績を優先して考える。したがって、コンサルタントは嫌われる。「理屈ばかり言いやがって」ということになるのだ。
 しかし、理屈を言うことが論理的ということである。それを否定するならば、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングを否定することになる。これは、ビジネススクールの教えを否定することに等しい。
 実は、コンサルタントにもいろいろいて、ロジカルではない人も少なくない。社長のご機嫌を取るという役割のコンサルタントもいるからだ。そして、こちらのタイプの方が契約は長続きする。
 
4.中国ビジネスはロジカルだ

 「中国人は常識がない」という人がいるが、本当は、「中国人には日本人の常識がない」ということであり、当然のことだ。日本人だって、中国人の常識はない。常識はないように感じるかもしれないが、中国人の方がロジカルに感じることは少なくない。
 最近は聞かなくなったが、日本企業が中国に進出した当時は「商品を販売しても回収できない」という問題が多発した。
 日本の商習慣では、商品を先に送って、後で請求書を送って料金を支払ってもらう。日本のやり方で商品を先に送ると、中国では料金を支払わない人が出てくる。これに対して、日本人は「中国人は非常識だ」と怒る。
 しかし、中国では、先払いが一般的だ。あるいは、分割払いや保証金を取る場合もある。日本人は「相手を信用する」ことを基本にしている。中国人は「相手を信用いない」ことを基本にしているのだ。
 ロジカルに考えれば、金を払わないで商品を受け取っているのだから、最も有利なのは、そのまま料金を払わないことだ。次に有利なのは、値切るか、支払いを遅らせることだ。
 日本の繊維業界は信用取引が中心であり、取引の度に契約書を交わすことはない。電話一本、口約束で売買が成立する。
 一方の中国は、アメリカ同様の契約社会、訴訟社会に向かいつつある。日本の商慣習を理解している中国人は、わざわざ契約書を交わすことをしない。「契約書はあるのか」と質問しても、「日本と同じでそんなものはない」と答えるだろう。
 中国人は「契約書を交わしても契約を守らない」と言われるが、「契約書を交わさないことは、契約を守らなくても罪に問われない」ことを意味する。だから、契約書を交わそうとしないのだ。
 また、中国の工場に「あなたの工場でこの仕事ができるか」と質問すると、大多数の工場が「できる」と答える。「できない」と答えれば、そこで商談は終わる。だから、できなくても「できる」と答える。そして、注文を取ってから、「どうすればできるか」を考える。ある意味で論理的かつ合理的な判断である。
 日本では「相手に迷惑をかけてはいけない」という常識があるので、そういう回答はしない。中国にはその常識はない。あるのは、ロジカルシンキングのみだ。
 こうした中国人、中国企業の発想、思考に慣れてくると、中国ビジネスは分かりやすくなる。全て自分の利益を優先して考えるのだ。そして、論理的に説得すれば納得するのだ。
 ある意味で、日本企業の方がやりにくい場合がある。それは、論理的に説明しても納得しないことが多いからだ。組織の掟や組織の常識など、論理ではない要素が多分に絡んでくるのが日本のビジネスなのだ。
 
5.グローバルビジネスはロジカルシンキング

 日本はロジカルシンキングよりも、義理と人情シンキング、談合シンキング、封建的絶対服従シンキングが好まれる。しかし、グローバルビジネスではロジカルシンキングがベースになる。
 最近、学校関係では「グローバルな人材育成」が流行している。当然、語学力が重要と言われるのだが、私は、語学力よりもロジカルシンキングが優先だと考えている。
 言葉が分かり合えても、考え方が分かり合えなければビジネスは成立しない。日本人同士でも、外資系企業でキャリアを積んできたビジネスパーソンと、ドメスティックな日本企業の組織にどっぷりと浸かったビジネスパーソンでは話が合わないだろう。
 極論すれば、ロジカルシンキングとは、日本の常識を捨て去り、一から理詰めで考えることである。言い換えれば、「非常識力」を養うことかもしれない。

*有料メルマガj-fashion journal(128)を紹介しています。本論文は、2014.5.5に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。


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