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November 16, 2014

大企業ができること、できないこと j-fashion journal(126)

1.偏差値で判断してはいけない

 大企業は強くて、中小企業は弱い。人、モノ、金の全てにおいて、大企業は有利だ。そう考えがちだが、本当だろうか。
 たとえば、「大企業病」という言葉がある。これは大企業の弱点を表す言葉だ。組織が大きくなるにつれ、組織を維持することに労力が使われる。ビジネスの合理性より、組織の合理性が優先される。組織は増殖し、複雑化していく。その分、意思決定に時間がかかる。職務分担と責任が曖昧になり、どこからでも結論をひっくり返せるようになる。
 こうなるとイノベーションへのモチベーションは下がる。新しいことなど考えなくていい。組織の秩序の中でルーチンワークに集中することを選ぶのである。
 それでも、大企業が圧倒的に有利なビジネスを展開しているのは、日本の系列構造にあるのではないか。大きな仕事、利益が期待できる仕事は中小企業には回ってこない。これは実力というより関係性の問題だ。

 たとえば、大手流通企業の物流費は他社に比べて割高だ。それは、子会社の物流会社の活用を義務づけられているからだ。この物流会社は、大手流通企業の系列というだけで、安定した仕事を手にしている。
 ビジネスとは必ずしも、経済原理だけで動いているわけではない。全てが競争入札で動くわけでもない。多くの場合、仕事を出す先は決まっている。その関係性を覆すことは容易ではない。
 日本社会は、身内にはやさしいが、外部には冷たい。同じ会社の社員なら、仕事と給料が見合わなくても文句は言わない。しかし、外注先、下請けに対しては厳しく値切る。そういうものだ。
 しかし、こういう既得権の保護があるから、日本社会は安定している。全てが競争入札になり、実力主義になれば、日本全体が常に緊張したギスギスした社会になるだろう。
 どんなことでも絶対的な善はない。良いところもあれば、弊害もある。
 学校の成績、偏差値も同様だ。学校のテストで良い点を取るには、記憶力が重要だ。そして、言われたことを疑うことなく、信じることだ。遅刻をすることもなく、友達とも仲良くする。それが優等生だ。
 しかし、実社会に出れば、他人にはない発想が求められることもある。あるいは、他人に嫌われても、推進しなければならないプロジェクトを担当することもある。上司の命令を素直に聞いていても、所属している派閥のトップが左遷されれば出世の見込みがなくなることもあるだろう。
 それでも、組織の中では、優等生タイプが優遇される。周囲の人間も優等生だし、同じ価値観を持っているからだ。
 人材の質を学校の成績や偏差値で判断することはできない。それは企業も同様だ。売り上げが大きいからといって、経営者が優秀であるとは限らないし、立派な会社とは限らない。
 何よりも、個人の給与だけを比較するならば、大企業も中小企業もそれほど大きな差はない。もちろん、平均すれば、大企業の方が給与水準は高い。しかし、中小零細企業でも、個人でも大企業の正社員より収入が多い人は少なくない。価値観は多様なのだ。
 
2.大企業の強みは「資本」「信用」「情報」

 大企業の力の一つは、「資本力」である。たとえば、アパレルブランドを立ち上げるだけでも、かなりの先行投資が必要だ。
 チームを揃えて、利益が上がるまでの間の人件費、事務所家賃、通信費、光熱費、資料費などの経費。ブランドコンセプトから、ブランドロゴ、ショップデザインまでの費用。そして、デザイン、パターン、サンプル縫製にいたるまでの経費。ショップ開設に掛かる費用。そして、商品の原材料の仕入れと加工。店頭在庫と物流在庫の負担。物流経費。
 WEB構築、店頭販売管理システム等の経費も必要になる。
 これらを行うためには、資本力が必要だ。アパレル業は個人で小さくスタートすることもできるが、ショップや商品を差別化し、ブランド訴求しようとすれば、かなりの資本が必要になる。
 第二は「信用力」だ。大企業は社会的信用がある。与信能力があるので、どんな仕入れ先からも原材料を仕入れることができるし、縫製工場なども取引に応じてくれる。また、販売先と取引口座を開くにも苦労はいらない。
 しかし、起業したばかりで与信がなければ、現金で取引しなければならないし、そもそも取引口座さえも開いてくれないことも少なくない。
 日本の繊維ファッション業界では、商品を先に渡し、後から請求書を送り、代金を回収するというのが商慣習である。そのため、信用できない相手とは取引できない。そのために、与信管理という仕組みがあり、相手の信用調査を行う。これは、商品のデザインが良い悪いの問題ではない。どんなに良い商品であっても、与信がなければ取引をしてもらえない。
 第三は「情報力」である。大企業は組織も大きく、取引先も多岐に渡っている。それだけ入ってくる情報も多いし、何かを調べたいと思えば、どこの誰に問い合わせれば答えてくれるかを教えてくれる人がいる。企業の信用があるので、社内だけでなく、金融機関や商社、取引先からも情報を入手することができる。
 資本と信用と情報があれば、一人でも大きな商取引が可能である。実際、商社の商取引は、担当者個人が仕切っていることが多い。それでも、会社の資金と取引口座を使えば、あらゆるビジネスを展開することができるのである。
 
3.大企業の弱みは「スピード」「イノベーション」

 大企業の強みは組織力だが、弱みも組織にある。巨大な組織では意見調整に時間が掛かる。
 欧米や中国(つまり日本以外の国)は、トップダウンの意思決定なので、決定に時間はかからない。トップが決定すればいいのだ。
 日本企業の意志決定システムは、ボトムアップであり、経験していない事象や新しいことには慎重だ。そのため時期を逸してしまうこともある。
 その点、中小零細企業、個人はトップダウンであり、意志決定が早い。海外ビジネスで成功している事例を観ても、現地に意思決定のできる人材がおり、その人が即断即決の判断をしていることが多い。これは企業の規模に関係ない。
 何でも日本の本社の確認を取っている現地企業は意思決定が遅く、ビジネスに乗り遅れることが多い。中小企業の社長自ら現地に乗り込んで、陣頭指揮を取る方が成功する率は高くなる。
 企業のイノベーション、変革も大企業より中小企業の方が取り組みやすいだろう。
 但し、中小零細企業でも、他社に依存している下請け企業は、経営者自らが意思決定することが少ない。意思決定する必要がなければ、情報収集や市場調査も行う必要もない。気がつかないうちに時代に取り残されてしまうのだ。
 中小零細企業や個人が有利なのは、経営者が自立しており、正しい意思決定が下せる場合に限る。それには能力と努力が必要だ。
 逆にいえば、中小零細企業ほど自立しなければならない。そして、常に時代の変化、市場の変化を敏感に感じ取り、積極的にイノベーションを起こさなければならない。そうでなければ、中小零細企業の良さは発揮できないのだ。
 もちろん、簡単ではない。簡単ではないけど、やらなければ生き残れない、ということだ。中小零細企業の経営者は優秀でなければ潰れてしまう。大企業の経営者は、時に優秀でなくても会社が潰れることは少ない。だから、中小零細企業はやり甲斐があるのだ。安定を求めるならば、偏差値の高い大学を卒業して、大企業に勤めることをお勧めする。
 
4.中小企業はベンチャーを目指そう

 大企業と中小零細企業のWIN-WINの関係はあり得るのか。それについては、アメリカのICT企業が参考になると思う。
 優れたアイディアを具現化するのは、ベンチャー企業だ。しかし、ベンチャー企業は資本力がない。あるいは、企業がある一定以上の規模になると、必要な人材が変わってくる。組織を維持し、拡大していく能力は、ベンチャーを興す能力とは異なるからだ。
 そこで、ベンチャー企業の経営者は企業の売却を考える。日本には企業の売買という文化がないので、買収というとマイナスのイメージがつきまとう。しかし、柔軟でアイディアに溢れ、小回りが利く企業が創業し、それを資本力、経営力のある大企業が買収し、さらなる成長を目指すことは理に叶っている。ベンチャー創業者も企業売却により、大きな資本を手にすることで、更なるベンチャーに挑戦できるのだ。
 むしろ、問題は企業売却を認めず、ビジネスモデルを盗むこと。創業者のアイディアの価値を認めずに、大企業がベンチャーのビジネスモデルを真似て、企業規模で押し潰してしまうことだ。結果的に、ベンチャーも潰れ、大企業も新規事業を軌道に乗せることができない。そのうちに、ベンチャーを興そうというモチベーションさえ奪ってしまう。
 結果的に、大企業もベンチャーもリスクヘッジを優先し、イノベーションとは正反対の既存のビジネスを踏襲するだけになってしまう。これは、国の経済にも、業界にも大きな損失とは言えないだろうか。
 それでも私はベンチャーを目指すべきと考えている。日本が駄目なら、海外という方法もある。

*有料メルマガj-fashion journal(126)を紹介しています。本論文は、2014.4.21に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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