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August 19, 2014

個人から発想する商品MD j-fashion journal(119)

1.「3C分析」と「個人の発想」

 量販店の商品計画は、3C分析を基本にしている。3Cとは、Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の3つの頭文字であり、市場調査、競合店調査、自店の実績等を分析し、商品計画等に生かすというもの。
 3C分析で留意すべきは、「予測する視点」である。市場や顧客の変化を予測していれば、実際のリサーチの結果で予測を修正することができる。競合店の戦略も同様だ。予測した上で、調査することで、競合店の戦略を理解することができる。
 「予測する」という視点が欠如したまま、3C分析をすると過去のデータを元にした、実績踏襲型の商品計画になってしまう。

 3C分析の基本となるのは、全て過去の実績データだ。したがって説得力がある。「昨年売れたジャンルを拡大し、売れなかったジャンルを縮小する」という論理構成は文句のつけようがない。しかし、需要は変化する。昨年売れたものが、今年は売れないかもしれない。昨年、売場に存在しなかったものが、今年になって爆発的に売れるかもしれない。そうなると「3C分析をしたのに、商品予測が当たらない」ということになる。しかし、それは間違いだ。3C分析だけで商品計画を組むので商品予測が当たらないのだ。
 予測という視点があれば、真の競合店を調査するよりも、自社よりもトレンドに敏感なショップを調査することが重要であることが分かるだろう。量販店なら、高感度な専門店や百貨店を調査すべきだ。
 しかし、量販店は競合他社の量販店かホームセンターばかりをリサーチしている。リサーチの中身は、棚割りとSKU、商品の価格、品質等である。全て計数化できる定量的な調査である。
 なぜか、定性的な調査は、海外市場調査をする。大手企業ほど、海外の展示会や欧米市場の調査には熱心だ。多分、担当者が海外に行きたいのだろう。
 しかし、欧米市場と日本市場の性格が異なることや、欧米で売れた商品が日本でそのまま売れないことは衆知の事実だ。
 それでも、「3C分析という手法が間違っている」とは考えない。「リサーチする対象が間違っているのではないか」、あるいは、「分析手法が間違っているのではないか」と考える。更に本音を言えば、3C分析すら信じていないのかもしれない。建前の分析はするものの、最終的には自分の勘で行動するバイヤーも少なくない。
 3C分析と正反対の手法が、ラグジュアリーブランドの企画手法である。ラグジュアリーブランドはトレンドを生み出す存在であり、外部のトレンド情報を基本に企画を組み立てることはない。むしろ、デザイナーやクリエイティブディレクター自身が何に興味を感じるか。どんなことを新鮮に感じるかが基本になる。あくまで個人の感覚が基本になるのだ。
 もちろん、ビジネスなのだから、商品計画には枠がある。ターゲットとする顧客は変わらないし、商品価格の水準も変わらない。ブランドコンセプトが変わるわけではない。ブランドという範囲の中で、いかに新鮮なテーマを打ち出し、それを元に商品を提案するかが問われるのだ。
 3C分析は、客観性と実績を信望している。ラグジュアリーブランド等は、個人のセンスを信望している。個人が時代に空気を感じながら、自分の感性というセンサーを働かせて、時代を解釈する。そして、新鮮なテーマを発想し、それを元に商品展開を行う。
  一方に「結果を観てモノ作りをする会社」があって、一方に「個人の内面を見つめてもの作りをする会社」がある。どちらが正しいとは言えないが、どちらで面白い商品ができるかは明白だ。
  
2.問屋・商社のモノ作りとメーカーのモノ作り

 もうひとつ、別の視点で考えてみたい。「問屋、商社のモノ作り」と「メーカーのモノ作り」の違いである。
 問屋や商社は自社工場を所有していないことが多い。外部の工場や仕入れ先から自由に原材料や商品を調達することができる。商品企画の方向性に合わせて、原材料の仕入れ先を選定し、加工する工場を選定する。様々な組み合わせが可能であり、商品企画の幅は広い。
 一方のメーカーは自社工場を所有している。自社工場の設備を稼働させることがビジネスの基本だ。毛織物の機屋は、ウールの糸を基本に織物を設計するし、合繊織物の機屋は、合繊の糸で織物を設計する。毛織物の機屋が合繊の糸だけで織物を設計することはないし、合繊織物の機屋がウールだけで織物を設計することはない。
 縫製工場も同様だ。パンツ工場はパンツに最適の設備を有している。だから、ジャケットやブラウスは縫わない。反対に、ブラウス工場がパンツを縫うこともない。
 メーカーは、原材料や自社工場の設備という制限の中でモノ作りをする。
 制限がない問屋や商社よりも、制限のあるメーカーの方が高度な商品を作ることが多い。制限があり、一つのことに集中することで、高度な技術が磨かれる。
 商社や問屋は、市場動向やトレンドに合わせたモノ作りをする。最初に市場ありき、情報ありきのモノ作りである。トレンドに対応しているが、品質や技術面で磨かれることが少ない。
 メーカーのモノ作りは、トレンドではなく、原材料、設備、技術が起点になる。そのため、技術レベルは高いが、トレンド性、デザイン性が欠如している場合も多い。
 こう考えていくと、「オンリーワンで世界に通用するモノ作り」とは、メーカー起点でスタートし、そこにクリエイティブディレクターのような人材がディレクションすることで達成で言えばきるのではないか。
 私は「高く売れる商品」を目指すべきだと思っている。「高い商品」を作るのは誰にでもできる。しかし、「高く売れる商品」を作るのは難しい。高くても売れる商品とは、生産者側の都合だけでなく、顧客の支持を得ることだ。
 メーカーが持つこだわりと技術。それにマーケティング的発想と時代のトレンドを加える。それには、分野の異なるプロがコラボレーションすることがポイントになると思う。

3.機屋さんが着てみたい織物を作る

 機屋さんの多くは男性だ。婦人服地を作っている機屋さんは、自分の作品、商品を自分で着用することができない。しかし、多くの機屋さんは、自分の作った織物を自分で着てみたいと思っている。しかし、彼らにとって、自分が着用できる紳士用の生地を作ることは仕事につながらない。あくまで趣味の世界だ。それでも、機会があれば、やってみたいと思っているのだ。
 それぞれの機屋さんにはこだわりがある。普通のものを作っても意味がない。市場に出ているような商品なら、自分で作る必要はない。市場にはないオンリーワンの商品を自分で着るから価値があるのだ。
 私は、経験も十分でベテランの機屋さんが、「自分で着たい織物」というのは、それだけでも価値があると思う。オンリーワンに違いないし、必ず他の商品と差別化ができているはずだ。その商品の蘊蓄をつくらでも語れるだろう。
 それに、多くの機屋さんはシニア層であり、現在最も注目されている市場に対応した製品になる。シニア向け商品の開発に苦労している企業にとって、非常に面白い提案になる。
 機屋さんが自社の織物で服を作れば、必ず着用して、他人に自慢するだろう。一般の消費者が自分の服を他人に自慢することは少ないが、機屋さんなら、ファッション業界の関係者、地域の関係者に積極的に話すに違いない。その自慢は、ある意味で強力なメディアになる。
 もう一つのメリットは、機屋さんが自分で考えるので、なるべく負担のない生産方法を考える、ということ。商売ではなく、趣味で作るという前提なら尚更、あまりコストを掛けられない。原材料の仕入れや染色加工にもコストはかかる。しかし、何人かの賛同者が集まれば、経費とトントンの売上にすることはできるかもしれない。あるいは、それが会社の宣伝になれば、宣伝広告費と割り切ることもできる。
 そう考えていくと、機屋さんが自分で着たいと思う織物を作り、それを服に仕立てて着用することは、広報戦略、広告戦略として考えても非常に有効だと思う。何よりも、この仕事は目茶苦茶楽しい。仕事とは全く異なる発想でモノ作りをするし、それが本業の織物作りにも役立つだろう。それが売れれば、こんなに良いことはない。

*有料メルマガj-fashion journal(119)を紹介しています。本論文は、2014.3.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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