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August 19, 2014

中国の山寨(さんさい)マーケティング j-fashion journal(120)

1.山寨製造とは何か?

 2014年3月7日、専修大学神田校舎において、国際アジア共同体学会の国際研究シンポジウムを聴講した。いくつかの興味深いセッションがあったが、その中でも、創価大学大学院博士課程の崔進さんが発表した「もう一つの発展の道を探る」というスピーチがとても印象に残った。
 以下に崔進さん研究発表の概略を紹介したい。今回のテーマの「山寨」という言葉も彼が教えてくれたものだ。
 元々「山寨」とは、盗賊などが山で立て籠もった城塞の意味。それが転じて、現代中国では「ニセ物」を指す流行語になっている。「これは山寨品だ」と言えば、「これはニセ物商品だ」ということになる。語源は、広東語から生まれた。広東省の深センをShenZhenと表記するが、山寨はShanZhai。深セン製造が、山寨製造となり、ニセ物製造の意味になった。深センは、香港や広州と比べて田舎のイメージがあり、それが山寨のイメージに重なったとのこと。

 「山寨製造」の、「山」は、山に立て籠もって取り締まりにくいという意味であり、「寨」はある程度の規模があり組織的に動くことを意味している。そして、「製造」とは、品質、サービス、保証のきかないニセ物を作っているという意味だ。
 2005年まで、中国ではJUE(日本、アメリカ、EU)向けの輸出品を製造していた。2005年以降は、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)、VISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)等の新興国への輸出品を製造している。
 崔進さんは、「知的所有権や法令遵守に厳しいのは、世界中でJUEだけだ」と断言する。その他の国は、品質、サービス、保証に問題があっても、価格が安い方が良いという市場であり、規模からすれば、それらの新興国市場の方がはるかに巨大だ。
 もちろん、崔進さんは、「山寨製造」を正当化しているのではない。率直に事実を述べている。そして、その事実によって中国の製造業は成長しているのだ。
 「山寨製造」は、高度な分業体制から生まれた必然でもある。「VAIO」は、ソニーが設計し、生産し、販売している。「iphone」は、appleが設計し、Foxconnが製造し、appleが販売している。「山塞品」は、高い生産能力を持つ工場によって、裏設計、裏製造、裏流通で販売されている。正規な手続きを経ず税金も払わないので、圧倒的なコスト競争力がある。
 崔進さんは、バングラデッシュで購入したニセ物の「iphone」を見せてくれた。パッケージもロゴも全てコピーされている。画面は、「iphone」そのものだがOSはアンドロイド。バングラデッシュの市場で販売している商品のほとんどは中国製の「山塞品」であり、現地の人は本物に触れることなしに、最初からニセ物を使っている。彼らにとっては、最初に購入した「山塞品」こそが実用的なホンモノと認識している。この現象を崔進さんは、「RF(リアルフェイク)」と名付けていた。ニセモノがホンモノという現象だ。
 新興国市場は、「品質より低価格」「サービスより迅速な商品提供」「ブランドより基本性能」を重視している。そして、「山塞品」はその条件を満たしている。「ブランドなし、納税なし、サービスなし、広告宣伝なし」による低価格を可能にし、製造ノウハウを持つ工場がクイックに生産する。そして、新興国のニーズは先進国メーカーよりも、「山塞メーカー」の方が熟知している。
 崔進さん曰く、「山寨製造は中国の商習慣そのものだ。即ち、ノールールである」
 
2.山寨製造からグローバル企業へ

 戦後、しばらくの間、「Made in Japan」は粗悪で安価な商品の代名詞だった。日本にも、世界中で売れている商品を夢中でコピー生産していた時代がある。それらの商品を輸出しては外貨を稼いでいた。外貨を稼ぐことは国益だ。当時、日本国内でコピー生産を非難する人はいなかっただろう。
 戦後のアメリカの百貨店は、パリモードの最大のバイヤーだったが、アメリカのアパレル業界は、パリモードをコピーして、大量生産大量販売していた。パリのメゾンはコピーを恐れて、アメリカ向けのデリバリーを一カ月遅らせていたほどだ。
 戦後の高度経済成長時代を迎え、消費者の所得が上がるにつれ、日本メーカーは高機能商品、高付加価値商品に生産をシフトしていく。そして、安価な輸出品の生産は、韓国や台湾に移転し、やがては中国に根付くことになった。
 アメリカのアパレル業界も、高付加価値商品にシフトし、ニューヨークコレクションを立ち上げた。そして、安物の大量生産は中南米に移転していく。
 低コストの粗悪商品、ニセ物商品からスタートしたのは、中国だけではない。日本もアメリカも同様だ。
 異なるとすれば、新興国が「世界の工場」から「世界の市場」となり、巨大なBOP(Bottom Of Pyramid)市場、貧困層市場が誕生したことだろう。
 かつて、輸出の対象となる市場は先進国にしか存在しなかった。したがって、品質やデザイン、サービスを向上かせない限り、ビジネスを成長させることはできなかった。しかし、BOP市場の誕生により、山寨ビジネスは継続可能なビジネスモデルになろうとしている。
 我々日本人は、ルールを守ることが当然と思っている。ルールを守らない人々、ルールを守らないビジネスは非合法ビジネスとして無視している。
 もちろん、ルールを守らなかった「日本の過去」「アメリカの過去」も無視している。しかし、産業の発展、経済の発展の現実を直視すれば、非合法からスタートした企業が大企業に成長した例は数えきれない。
 崔進さんは、その一つの例として、中国の携帯電話メーカー「天宇朗通」を紹介していた。
 「天宇朗通」は2002年に設立され、サムソンの販売代理店として事業をスタートする。2004年になると、自社で「山寨品」を製造するようになる。2007年からは、正規の自社ブランドの製品を製造し、販売台数が2000万台を超える。2009年には中国最大手の携帯電話メーカーとなり、現在は社員2万人、世界22カ国で販売する巨大企業だ。

3.中国企業はBOPマーケティングを目指すのか?

 崔進さんは、先進国と新興国を次のように分析している。
 先進国の経済発展のスピードは遅く、長期的な経営を重視している。新興国の経済発展は急速であり、短期的な経営を重視している。
 経済イデオロギーは、先進国が「経済自由主義」であるのに対し、新興国は「迅速開発主義」。
 経済政策は、先進国が「自由競争・自由貿易」であるのに対し、新興国は「政府経済介入・保護貿易」である。
 そして、日米欧の先進国は5億人の市場に過ぎないが、BRICs、VISTAの新興国市場は50億人の市場である。中国企業は、知的所有権や法令遵守が厳しい先進国市場を狙うのではなく、巨大な新興国市場、BOP市場を狙う方が有利ではないか、と結論づけていた。
 私が知っている中国のアパレル企業の経営者たちは、数年前、世界の一流ブランドを目指すと言っていた。その背景には、中国国内市場で高級ブランドが飛ぶように売れていた事実がある。
 習近平首席が倹約令を打ち出した今、中国では高級ブランドの売上が落ちている。中国企業の経営者は、今、何を考えているだろう。富裕層マーケティングから、BOPマーケティングへと目を転じているのではないか。
 日本やアメリカが中国離れする中で、中国も先進国離れしているのかもしれない。そうなると、ASEAN、インド、アフリカ等の市場に積極攻勢をかけるだろう。日本企業と中国企業のビジネス競争は、次の段階に入ろうとしている。

*有料メルマガj-fashion journal(120)を紹介しています。本論文は、2014.3.10に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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