My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« シングルライナー、再び j-fashion journal(114) | Main | ファッションのパッション j-fashion journal(116) »

June 17, 2014

ネクタイを外した男のファッションを考える j-fashion journal(115)

1.男のスタイルには細かな段階がある

 日本の男性は、会社、企業に所属している間、スーツにネクタイ着用が基本だ。スーツとネクタイはサラリーマンの象徴。多くの男性は、約40年間をスーツで過ごす。
 海外のビジネスマンの多くは、スーツではなく、ジャケット&パンツを着用する。スーツを着用するのは、保守的な金融関係の会社でマネージャー以上の人達など、一部に限定される。ほとんどのビジネスマンは、単品のジャケットと単品のパンツを着用している。ジャケットとパンツは同色同素材ではなく、上下のコーディネートが個性の表現にもつながる。
 男のスタイルは、アイテムの組み合わせ、素材、色、ディティールにより、フォーマルからカジュアルまで、細かく序列が規定されている。「カジュアルフライデー」や「クールビズ」といっても、どの程度のカジュアルかが問われる。

 最もきちっとしたビジネススタイルは、上下同色梳毛素材のスーツに白いシャツとネクタイ。同素材のベストを加えれば、尚、改まった印象を与える。
 スーツでも、梳毛より紡毛の生地になるとカジュアル。シャツも白のブロード(平織)が最も正式で、先染めのストライプは少しカジュアルで、チェックはよりカジュアル。カラーも派手になるほどカジュアル。プリントのシャツは先染めよりカジュアル。デザインも普通のカラーよりボタンダウンがカジュアル。
 それなら、「白のブロードのボタンダウンとツイル(綾織)の普通のカラーはどちらがカジュアルか」という問題になるわけだが、最終的には全体のイメージで決まる。ちなみに、ブロードでボタンダウンのシャツを作るのなら、オックスフォードでボタンダウンの方がしっくりするし、ツイルならカジュアルなデザインが向いているので、明るい色や大胆な先染めを選ぶのも良い。
 スーツより、ジャケット&パンツ、シャツにネクタイの方がカジュアル。ネクタイを外せば更にカジュアル。ジャケットを脱げば、もっとカジュアルになる。
 「クールビズ」は、スーツのビジネスマンに対して、いきなり「ネクタイを外しましょう」「ジャケットも脱ぎましょう」といい、それを飛び越えて「布帛のシャツではなくポロシャツでもいいですよ」と言っているのだから、最早、ビジネススタイルの枠さえ捨てているようだ。あまりにも極端であり、ファッションの基本を無視している。
 たとえば、ネクタイ着用でも、ニットタイはよりカジュアルだ。綿のジャケットとパンツ、ポロシャツにニットタイという組み合わせなら、涼しげで清潔なスタイルになる。もちろん、靴も梳毛のスーツに履くような靴ではなく、よりカジュアルな素材とデザインのものを選ぶべきだ。
 こうした細かなコントロールをせずに、「最も保守的なスーツか、ゴルフウェアや休日用のワンマイルウェアのようなカジュアルウェアかの二者択一を迫る」のは、あまりにも非常識である。メンズファッション業界はこのことを認識すべきだし、きめ細かいファッションのあり方を提言すべきだろう。

 
2.ネクタイ業界活性化の方策

 ネクタイ業界は、「クールビズは我々の業界にとって死活問題だ」と言っている。実際に、夏物のネクタイ市場はほとんど消滅してしまった。
 また、クールビズとは関係なく、世界的にカジュアル化の波が押し寄せている。ネクタイをつけない人が増えており、私もその一人だ。しかし、カジュアル化と言っても、グレードがあり、カジュアルの程度も様々であるさとは既に述べた通りである。
 ある意味で、クールビズは、日本の男性が画一的なスーツスタイルから、解放される良いチャンスかもしれない。そう解釈すれば、より多様で個性的なファッションを楽しむことができる。
 日本の国内市場がシニア化していることも、カジュアル化を後押ししている。団塊世代が定年の時期を迎え、スーツを着用しなくなった。彼らに何を提案すればいいのか。ポロシャツとチノパンツという単純なカジュアルスタイルか。あるいは、多様で多彩な新しい大人のカジュアルファッションを提案するのか。これは消費者の問題ではなく、業界の問題だろう。
 多様なファッションの一例をあげよう。私のアパレル時代の知人曰く、「ネクタイをしないようになって、その代わりにポケットチーフとピンバッジでおしゃれをしようと思うんだけど、良いものがない。ポケットチーフは安い中国シルクの無地だけ。ピンバッジも面白いものがない」
 ネクタイ業界はネクタイのことしか考えない。しかし、消費者側から考えれば、新たなスタイル提案が欲しい。
 たとえば、ネクタイはしなくても、ポケットチーフとピンパッジで何かのストーリーになっている。
 女性とレストランで食事をしている時に、ポケットチーフをさりげなく手にとって、テーブルの上に拡げ、「これは何でしょう?」と見せる。もし、そこに高度な数式が書いてあれば、「難しそうな数式ね。何かの公式なの?」という会話が続く。
 あるいは、見知らぬ町の地図が描かれている。「これ、どこの地図か分かる?」と質問する。「フィレンツェかしら」と答える。「そう、だからラペルのピンはフィレンツェの紋章にしたんだ」とラペルを見せる。こんなシーンを体験できるような商品を提案してほしいと思う。
 ネクタイ業界はスーツ下のネクタイだけでなく、ジャカードの生地を使って、あるいはプリント生地を使って様々な表現ができるし、様々なアイテムを展開することが可能だ。ネクタイをしない時代に、ネクタイにこだわっていても仕方がないし、それを政府に陳情してもどうなるものでもない。大切なことは、自らが発想を変えて、新たな提案を行うことだ。
 
3.サスペンス小説のような服
 
 男のファッションには、様々な歴史や文化、蘊蓄やストーリーが散りばめられている。しかし,それらは姿を消し、単なる価格と単品アイテムに分解されてしまった。
 スーツはビジネスユニフォームと化した。ウイークデーは大型専門店の安いスーツ、休日はゴルフウェアかユニクロ、家に帰るとスウェットの上下で過ごす。こんな貧しいファッション環境の中で40年以上も暮らしていたら、ファッションに対する興味を失っても当然だ。
 団塊の世代は定年を迎え、お仕着せを脱ぎ捨てている。彼らに何を提案するのか。現在のメンズファッション市場は隙間だらけであり、それを少しでも埋めて魅力を訴求しなければならない。
 たとえば、日本のメンズファッションは明らかにスーツ偏重である。メンブウェア=スーツと思っている人も多い。その発想を転換して、メンズでもコーディネートが基本と考えたい。
 現在、もしシニアの男性(多サイズ展開が必要な男性)がジャケット&パンツを購入しようとすれば、「エディ・バウアー」「ランズ・エンド」「LLビーン」あたりから選ぶ以外にはない。あるいは「ユニクロ」だ。
 リッチな人なら、イセタンメンズ館か阪急メンズに出掛けることもできるが、かなり高額になる。
 若い人に人気のセレクトショップは、サイズバリエーションがないし、全体にサイズが小さめで着ることができない。
 「着られる」という尺度だけで服を選ぶのはあまりにも悲しい。できれば、服を楽しめるようになりたいものだ。
 ブランドストーリーというと難しく聞こえるが、謎解きサスペンス小説のような服で良いと思う。前述したように、ポケットチーフとピンがストーリーになっている。もちろん、ネクタイとポケットチーフでもいい。単純に同じ素材ではなく、なぜその柄なのか?なぜその色なのかを語れるような服だ。
 和をコンセプトにするなら、万葉集や古今和歌集の恋の歌が仮名で書かれている。加えて、色も襲色目にする。一つのチーフから会話が生まれ、恋が生まれるような、そんな服があってもいい。

*有料メルマガj-fashion journal(115)を紹介しています。本論文は、2014.2.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« シングルライナー、再び j-fashion journal(114) | Main | ファッションのパッション j-fashion journal(116) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« シングルライナー、再び j-fashion journal(114) | Main | ファッションのパッション j-fashion journal(116) »