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June 11, 2014

2014年の道を探る j-fashion journal(109)

1.価格から質への転換

 90年代半ばに始まった激安商法は終盤に近づいている。「安さ」というサプライズは行き詰まっている。最早、安さはサプライズではないし、「こんな商品がこの値段?!」と思うこともなくなった。「この値段じゃ、この程度ね」という商品ばかりだ。
 「日本の技術は凄い」と思っている日本人は多い。しかし、その技術の粋を集めた商品を使っている人は少ない。「凄い凄い」と騒いでいるだけでは、技術も品質も失われる。技術や品質をほんの少し上げるには、非常に大きな努力とコストが必要になる。それを理解し、ある程度高価格な商品を購入しない限り、技術や品質も退化し続ける。
 中国生産が行き詰まり、国内生産回帰と言われるが、工賃水準は中国生産のままだ。国内生産に移行するならば、価格帯を上げなければならない。高い商品が売れるようなブランド戦略、店舗戦略、販促戦略、商品戦略、サービス戦略等が必要である。ビジネスモデルそのものを変革しない限り、国内生産回帰などあり得ない。

 私は日本企業に失望している。長期的ビジョンを持たず、意思決定が遅い。皆が目先の利益とリスクヘッジばかりを重視しているように感じる。ファッションビジネスで言えば、そこそこトレンドで売れ筋の商品を作っているだけ。そこそこビジネスに留まっているのだ。

2.ラグジュアリー生産

 私は「国内生産を守るべし」という手放しの意見には与しない。日本の繊維産業が低い人件費の時代に成長したように、人件費の低い国で繊維産業は発展するものだ。日本だけが、生産を独占するわけにはいかないし、富を独占するわけにもいかない。時代と共に、産業が変化するのは当然だ。誰しも慣れた仕事を継続したいと思うが、継続するためにはコストだけでない説得力が必要だ。そして、説得する努力も必要なのだ。
 メーカー自身がコスト最優先の価値観から脱しないのであれば、生産はコストの低い国に流れるのは当然だ。
 私は国内生産は贅沢なものだと思っている。国内製造業の当事者は、「昔から変わらないことをしているだけ」と言うだろう。しかし、国際水準から考えれば、人件費が高い熟練工が揃っている日本で生産することは贅沢なことだ。
 贅沢な生産から生み出されるのは、贅沢な商品である。日本のメーカーは、まず自らを「贅沢な生産」の担い手であると認識しなければならない。
 贅沢な商品を購入できるのは、富裕層である。あるいは、特定の趣味を持つマニアだ。日本国内のメーカーは、富裕層を狙うか、マニアを狙うしかない。双方ともに、大量生産の必要はない。むしろ、大量生産してはならないのだ。
 日本の国内生産を継続させるには、「ブランド」が欠かせない。そして、ブランド価値を高めるための活動を行うことだ。ブランド価値を高める活動とは、工程別の技術を磨くことではない。製品全体の価値を高めること。あるいは、製品を販売する店舗イメージを高めること。製品を購入してくださる顧客のステイタスを高めることなどが必要になる。

3.イベントとメディアとしての店舗

 ネット通販の成長と共に、小売店のアイデンティティが問われている。単に商品を陳列しているだけの空間に魅力はない。それなら、検索して安い商品を購入すればいい。「ショールーミング」という現象は、小売店のあり方を根底から変えるものだ。侮ってはいけない。
 小売店が取り組むべき最大のテーマは、ネット販売との差別化である。ネット販売にはない機能やサービスを店頭に持たせなければ、店舗に経費を掛ける意味がない。
 たとえば、量販店のセルフ販売は70年代中頃に日本に紹介されたが、これはインターネット以前の最新のノウハウだった。大量仕入れと大量販売するためには、規格化された巨大な店舗をチェーン化していく。そして、売場に商品を並べ、それを顧客が自由にピックアップしていく。そして、集中レジにより、販売員を削減する。
 インターネットの時代になると、「検索」が可能になり、大量生産の商品なら、価格を比較して購入することができるようになった。大量生産されない商品も検索し、お取り寄せができる。
 標準化された店舗展開というサプライヤー側の事情は意味を失おうとしている。大量仕入れによるコスト軽減よりも、専業メーカーの倉庫から直接宅配してもらった方がトータルで安くなるケースも多い。
 巨大な店舗は、サプライヤーの論理で構成されるべきではなく、顧客側の立場に立った編集が求められている。既に、食品売場ではアイテム別陳列だけでなく、料理の提案(レシピ)とその材料をコーディネート販売している。これを更に発展させれば、旬の素材による料理の提案と作り方が主となり、材料の販売は従になるのではないか。
 量販店の食品売場の中に、いくつものシェフのブースが設置され、そこで調理をしながら、素材も販売する。こんなスーパーなら、ネット通販にも勝てるに違いない。
 同様のことは、アパレルにも言える。単に商品を陳列するだけでなく、スタイリストが編集する売場。アイテム別展開と編集提案。売場の中で次々とコーディネートし、モデルが着用し、写真を撮る。その模様がネットを通じて、全国の店舗に紹介される。全国の店舗は、リアルタイムでスタイリストの指示通りに店舗を構成していく。
 これからの売場は商品を陳列する場に留めてはならない。そこでは常にイベントが行われ、驚きと発見がなければならない。店舗はメディアであり、イベントスペースである。そうならなければ、ネット通販に勝てないだろう。
 
4.VMDの再定義とデジタルVMD
 
 VMDという概念も再定義が必要かもしれない。現在のVMDという概念は80年代のアメリカで構築されたものだ。当時のVMD理論の中で、いくつかの基本的要素だけが日本に定着している。その代表的なものが「VP・PP・IP」という概念であり、これは中国でも一般化しており、知らない人はいないほどだ。つまり、当たり前のVMDは差別化の手段になり得ないということである。
 日本や中国に欠落しているのは「劇的空間の演出」である。売場を演劇空間のように演出する手法は、アメリカのショービジネスのノウハウに負うところが大きい。演劇的な照明とマネキンの使い方は、日本ではほとんど観られない。
 当たり前の商品をいかに劇的に見せるか?いかに商品に込められた情報やコンテンツを引き出すかが問われている。
 VMDは店舗の差別化の手段であると同時に、販売員の人件費を削減するために戦略でもあった。80年代は、デジタルサイネージもスマホも存在しなかったので、マネキンの活用など、アナログな手段で、接客販売を補ったのだが、現在であればICTを活用した接客支援ができるだろう。
 店頭に販売員がいなくても、モニターで動画や静止画を流すことができるとしたら、どんなコンテンツを流すだろうか。つまらない商品説明では購買意欲を刺激できない。商品説明も楽しくなければならないし、興味を引く内容でなければならない。
 これは、優秀な販売員の接客に似ている。顧客は何を言って欲しいのか。顧客を何を求めて、わざわざ売場までやってきたのかを理解しなければならない。
 
5.コンシェルジェ・カフェ

 そう考えていくと、究極の売場は「コンシェルジュのデスク」になるかもしれない。顧客は、最初にコンシェルジュのデスクに立ち寄る。
 コンシェルジュは、店頭の商品だけでなく、ネット上の情報にも精通している。そして、買物の手続きも代行してくれる。
 たとえば、「旅行コンシェルジュ」のデスクに行って、「今度の休暇に旅行に行く」ことを告げる。旅行コンシェルジュは、旅行先の情報を手早く収集し、教えてくれる。旅行先の気候に合わせて、どんな服を来て行けばいいのか、を教えてくれる。旅行の便利グッズの情報。お勧めレストランの情報。そして、本日のお買い得情報とクーポン券の発行も。
 「健康コンシェルジュ」のデスクに行けば、サプリメント、健康食品、快適な睡眠を得られる寝具、トレーニングウェアやスポーツシューズなど、健康に関する情報が揃っている。
 「趣味のコンシェルジュ」は、曜日毎にそれぞれの趣味の専門家が揃っている。
 「収納コンシェルジュ」「清掃コンシェルジュ」「洗濯コンシェルジュ」がいてもいい。
 これらのコンシェルジュは、デスクで待っているだけではない。セミナーや勉強会など、様々なイベントを行い、ブログやSNSで情報発信をしている。
 商業施設は、商品を求めて来店するのではなく、人を求めて来店するようになるだろう。そして、売場はオフ会の場所でもあるのだ。そうならないと、ネットと連携した売場にはならない。
 そもそも何でもネットで購入できる時代に、わざわざ店頭まで足あ運び、買物してくれる顧客は貴重な存在であり、顧客は贅沢な買物をしていると思わなければならない。

6.ブランド開発と業態開発

 2014年はメーカーもリテーラーも変わらなければならない。2013年までのビジネスを継続するだけでは、じり貧になっていくからだ。メーカーはブランド開発が必要になる。私は、素材や部品メーカーもブランドが必要だと考えている。
 「インテル・インサイド」のように、自社の素材やブランドを使っている製品を優れた商品として認定するような発想が必要である。
 そして、リテーラーは業態開発が必要だ。顧客も価格も商品もサービスも、店舗の機能も店舗デザインも一新しなければならない。既存のリテーラーのビジネスモデルを継続するだけでは、ネット通販に負けてしまうだろう。そして、ショールーミングは益々加速する。
 今のままの小売店、商品を陳列するだけの小売店は存在意義を失うだろう。ある意味で、小売店のブランド化が必要である。
 いずれにせよ、イノベーションが必要な年になる。この変化に目を背けるのか。それとも、自分が変わるのか。覚悟が問われている。

*有料メルマガj-fashion journal(109)を紹介しています。本論文は、2013.12.30に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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