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June 11, 2014

テキスタイルからスタートするブランド開発 j-fashion journal(106)

1.モノクロの墨絵テキスタイル

 トレンドを追い掛ける企画、売れ筋を追い掛ける企画は、必ず同質化を招く。それを防ぐのはスピードだ。他社より早く情報を入手し、他社より早く店頭に投入する。これができるならば、徹底的に売れ筋を追求するというビジネスモデルもあり得る。
 しかし、それで満足できない顧客層もいる。そもそも私自身が満足できない。この感情は、多分シニア層にも共通しているだろう。DCブランドを経験し、バブル経済とインポートブームを経験した世代にとって、売れ筋を追い掛けコストダウンを考えた商品はつまらない。トレンド追随よりも、しっかりとしたコンセプトを持った商品が欲しいと思う。
 コンセプトが際立つということは、何かにしぼり込むことだ。絞り込むとは、何かを捨てるということでもある。自ら制約を設け、その中で創作を行う。それでも十分な個性表現ができることが、優れたクリエイティブディレクターではないだろうか。

 そういう意味では、制約こそコンセプトとも言えるだろう。
 服を構成する材料は、テキスタイルとボタンやファスナーなどの付属。それらのバランスを考えるのがデザイナーとパターンメーカーだ。
 服のシルエットはパターンで決まると言われるが、実際には、パターンだけではない。、同じパターンでもテキスタイルの風合い次第でシルエットは変わる。縫製仕様が違っただけでもシルエットは変わる。アパレルデザインとは、それらの要素を総合的に調和させる作業でもある。
 テキスタイルは、糸(紡績、撚糸)と組織(密度、組織)と染色、整理加工で決定する。テキスタイルは平面のように見えるが、実際は立体だ。立体なので、厚みと重量、風合いが重要になる。
 こうした様々な要素のうち、何を削って、何に集中するのか。
 アパレル製品の印象で最も強く顧客に訴求するのはカラーだと言われている。カラーのコントロールだけでも、かなりのことはできるのでないだろうか。
 カラーは、色相、彩度、明度で表せる。その中でも、最も基本となるのは明度だ。夕暮れ時、景色は色彩を失い、グレーになる。あるいは、モノクロ写真の世界だ。
 モノクロ写真で芸術的な表現ができるのだから、テキスタイルでもできるのではないか、というのが第一のコンセプトである。
 テキスタイルでモノクロというと、白と黒で表現されることが多い。白と黒の先染めだけでも、糸の並べ方と組織で何通りものグレーを表現することも可能だ。
 しかし、だからこそ、何段階かのグレーの糸を揃えれば、もっと鮮明なモノクロの世界が表現されると思う。
 モノクロに絞り込むことで、素材の質感は強調される。また、コーディネートもしやすい。原材料の準備、前工程等でも合理化が可能である。
 最初は先染のシャツ地からスタートし、できれば、ウール等もトータルで展開してみたいと考えている。
 
2.カラーで遊ぶベーシック素材の服

 第二のコンセプトは、カラーで遊ぶベーシック素材の服である。こちらは、カラーを絞り込むのではなく、テキスタイルを絞り込む。 テキスタイルのモノ作りもトレンドと価格が優先している。その結果、最終的に納得できないテキスタイルになることが多い。価格に合わせて、原料を落とし、打ち込みを甘くするからだ。
 一方で、ロングセラーの定番素材がある。こちらは、何年も継続して販売しているテキスタイルであり、価格と品質のバランスが良い。物性的にも問題はないし、品質試験等も通っている。色数も多く、常に在庫されている。
 もし、このテキスタイルを使って、付加価値の高い商品ができれば、とても合理的だ。これを生かすにはどういうコンセプトが考えられるのか。
 第一は、カラーで見せることだ。この場合、色の絞り込みと構成が問題になる。使えない色と使える色を分け、その中でカラーの構成を行う。その上で、たとえば、ニットのような配色が楽しい布帛の製品。上下あるいは左右のバイカラーの製品を企画する。
 第二は、アパレルとトートバッグ、雑貨のコーディネート。同じ素材とカラーだけでもコーディネート感は出せるが、更に強調したいのならば、プリントや捺染を共通にする。
 第三は、リバーシブルとボンディングである。バイカラーのパーシブル仕立ての服。あるいは、異素材、同素材色違いのボンディング。更には、キルティング。これにより、オールシーズンの商品展開が可能になるだろう。
 
3.オリジナルデザインによるテキスタイルブランド

 三番目は、オリジナルデザインによるテキスタイルブランド開発である。商品に制限はなく、インテリア、アパレル等の展開が可能になる。
 テキスタイルブランドといえば、フィンランドの「マリメッコ」が有名である。世界中から優秀なテキスタイルデザイナーが集まっており、素晴らしいデザインの製品を扱っている。
 日本発でマリメッコに負けないテキスタイルブランドを開発するのは容易ではない。
 日本のインテリアファブリックス業界の人達は、「日本のインテリアデザインは遅れている」と考えている。「日本にはインテリアデザインが定着しなかった」と言う人もいる。
 日本の和風建築には、インテリアデザインという概念がなかった。でも、インテリアデザインがなかったわけではない。木材が持つ木目や色の美しさ。白壁、土壁の美しさ。障子、襖、畳の美しさ。日本の住宅は木と紙でできていると言われたが、それが日本独自のデザインに他ならない。
 日本の住空間には素材の質感と色彩が存在しているだけで、色や柄は排除されている。それでも、テキスタイルブランドというからには、何らかの色柄を展開する必要はあるのかもしれない。
 日本の住空間の中で季節を感じさせるものは、床の間の掛け軸、活け花、そして、きものの色柄だろう。それらに共通するテーマは季節である。
 空間のベースとなる素材は、素材そのものの質感と色彩だが、その中で季節を表現するのが日本の暮らしとは言えないか。
 それならば、商品MDもそれに習う必要がある。
 木材、石、土、和紙等の質感と色彩を基本にした年間のベースとなる商品。
 そして、衣替えのように春夏、秋冬で変化するもの。ファブリック商品はこのジャンルが中心になるだろう。
 そして、毎月変化する、あるいは週単位て変化する季節を感じるセンサーのような商品。季節センサー商品と呼んでもいいだろう。
 この考え方をベースに、カラーとモチーフを設定する。

 私にできるのは、ブランドの基本となるコンセプト的なデザインディレクションまでである。その先は、才能のあるデザイナーの協力が必要になる。

 以上紹介した三つのプロジェクトは、実際に進行している。果たして、ゴールまでたどり着けるかは分からない。トレンドや売れ筋を追い掛けるのではなく、世界に発信できるブランド開発。難しい道だが、楽しく取り組んでみたいと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(106)を紹介しています。本論文は、2013.12.9に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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