My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« ベンチャーの流儀 j-fashion journal(102) | Main | クリエイティブなテキスタイルを開発しよう j-fashion journal(104) »

February 17, 2014

日本・EU間のEPAに見る希望と課題 j-fashion journal(103)

1.日本EU間貿易の現状

 2010年の資料だが、EUから日本への輸出は総額で5兆7711億円、日本からEUへの輸出は7兆5292億円となっている。EUから日本への輸出の69%は既に無税であり、反対に日本からEUへの輸出では、無税が34.8%となっている。
 当然、日本側はEU側が関税撤廃するのを歓迎している。EU側が関心を寄せているのは関税撤廃より非関税障壁の撤廃である。
 また、原産国は2工程ルールを原則とのことだが、これは(1)原料採取、製造(2)糸の製造(3)織物の製造(4)縫製品の製造のうち、2つの工程を日本が行っているものを日本製とするという意味である。
 現在、日本国内の基準では、縫製だけ日本国内で行われれば、日本製となっているので、これも注意が必要だろう。
 日本の繊維産業は、原材料を輸入に頼っている。糸の製造もほとんどが海外に移転している。つまり、織物と縫製を日本国内で行われたものだけが、その対象となるのだが、全体に占める割合は小さい。
 日本は東南アジアとのEPAを既に発行済だが、EUは、東南アジアとのEPA交渉は休止中である。日本企業にとって、繊維製品の生産はほとんどが中国であり、中国製の商品については対象外である。また、最近増加している東南アジア製の製品についても対象外ということになる。
 日本全体として考えれば、EUとのEPAはメリットがある。特に、自動車、一般機械、電気機械、化学工業製品、精密機械等の分野のメリットは大きい。しかし、実のところ、繊維製品については大きなメリットはない。
 

2.日本とEUの非関税障壁

 繊維製品の場合、日本、EUの互いにとって非関税障壁の方が大きい。EU輸出の関税が撤廃されたとしても、EU域内で製品を販売するには、EUが定めるコンプライアンス(法令遵守)が義務付けられる。全てのサプライチェーンにおいて、環境や人権に配慮していることを証明しなければならない。
 アパレル製品で言えば、紡績、染色整理、機織、縫製等の工場を把握し、それぞれが法令遵守していることを証明し、同時にそのデータを公開しなければならない。「商社に生産丸投げしているので、どこの工場で作っているかは知りません」という理屈は通用しないし、全ての工場が国際的第三者機関による認証が必要になるだろう。
 EU側が非関税障壁撤廃事項として要求しているのは、「日本政府調達市場へのアクセス」と、「小売業における規制の透明性」である。
 つまり、「あらゆる官需について、公平な競争入札への参加を要求している」ということだ。もちろん、防衛などの特殊な分野であれば、日本企業に限定することは認めるだろう。しかし、「その他の透明性を確保してくれ」ということだ。
 小売業における「規制の透明性」という意味では、「一部の決まった取引先としか取引しない」というのは、「透明性がない」ということになる。日本では「取引口座の有無」が絶対的条件になっているが、これはEUにとってはアンフェアな規制ということになるだろう。「基準を設け、それを公表し、その基準をクリアすれば、取引の可能性を認める」ということにしなければならない。
 もちろん、商品を選ぶのはバイヤーであるから、取引しなければならない、というわけではない。しかし、「バイヤーが商品を選ぶ基準等も公開せよ」ということになるだろう。
 もし、政治的判断でEUとのEPAが認められ、EU側の主張が通り、官需、大型小売店の規制が透明になれば、最も恩恵を受けるのは、日本の中小企業ではないだろうか。
 日本の系列構造、大手企業の市場独占は、純粋な競争原理が適用されていない。既得権によるある種の特権階級を認めていることに他ならないのだ。それが外圧によって透明化されれば、日本のベンチャー企業、中小企業が成長する機会も増えるだろう。その意味で、私はEPAに賛成したい。

3.テキスタイルデザインの保護

 もう一つ、EU側が求めているのは「テキスタイルデザインの保護」に関する条項の強化だ。日本のマスコミやSNSで中国のコピー商法について盛んに批判しているが、テキスタイルデザインという視点で観れば、日本も他国のことを批判できる立場ではない。ブランドの商標をデッドコピーしたり、偽物キャラクターで商売することは少ないが、ヨーロッパのプリントデザインや先染織物のデザインをコピーするのは珍しくないからだ。
 あるテキスタイル業者が、他社の製品を観て、「あのデザインは、俺がヨーロッパで買ってきたサンプルをコピーしたものだ」と怒った、という笑い話のような話がある。ヨーロッパ市場で販売されている商品のデザインは公知公用だと思っているのだ。
 日本のファッションもテキスタイルもヨーロッパを手本にして発達してきた。だから、ヨーロッパのものをコピーするのは当たり前だと思っているのだが、グローバル化が進んだ現在ではその理屈は通用しない。
 もし、EU側が日本で流通しているインテリア関係の見本帳を入手し、詳細な分析をしてEUのコピーデザインを訴訟したとしたら、業界は大きなダメージを受けるに違いない。もちろん、アパレル製品も同様である。
 最近のようにWEB上に商品画像が溢れるようになると、突然、海外企業からデザイン盗用の訴訟を招くかもしれない。多くの繊維関連企業の経営者の頭はドメスティックに固まっている。おそらく、テキスタイルデザインの盗用問題など、少しも意識していないだろう。しかし、EU側が求めている「テキスタイルデザインの保護の条項強化」と言う文字を噛みしめてほしいと思う。
 これも逆の見方をすれば、日本の業界にとって悪いことではない。安易にヨーロッパのテキスタイルデザインを盗用することができなくなれば、オリジナルのテキスタイルデザインが必要になる。そうなってこそ、テキスタイルデザイナーという職業のアイデンティティが認知され、社会的地位も向上すると思う。
 日本のテキスタイルデザイナーは驚くほど減少している。テキスタイル卸の社内から企画室が消え、そこで働いていたテキスタイルデザイナーも消えた。多くのテキスタイルデザイン事務所は解散に追い込まれている。
 「日本の繊維産業が復活するには、製造業からソフト産業、コンテンツ産業、デザイン産業への転換が必要である」というのが私の持論である。そのためにも、テキスタイルデザイン保護強化というEUの主張には賛同したいと思う。 

*有料メルマガj-fashion journal(103)を紹介しています。本論文は、2013.11.18に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« ベンチャーの流儀 j-fashion journal(102) | Main | クリエイティブなテキスタイルを開発しよう j-fashion journal(104) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« ベンチャーの流儀 j-fashion journal(102) | Main | クリエイティブなテキスタイルを開発しよう j-fashion journal(104) »