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February 14, 2014

高級の流儀 j-fashion journal(101)

1.偽装が起きる理由

 世間を騒がせている食品偽装問題。高級ホテル、一流レストランと言われている企業が顧客に対して平然と嘘をつき、信用を失墜させている。
 一流、高級とは何だろうか。高い食材を使った料理が高級料理なのか。高い内装費を掛けた店が一流なのか。
 コストをかけた方が高級という考え方は分かりやすい。高額な食材を使えば高級料理というわけだ。しかし、コストとは需給バランスで決まるものであり、必ずしも質や味の善し悪しを表すものではない。コストの高い食材を使った料理が美味しいという保証はない。旬の食材は価格は下がっているが味は良い。
 究極の料理とは何だろう。料理人自らが、山に入り山菜を採り、川で魚を釣る。そんな料理を出す店もある。こういう食材のコストは、どう計算すればいいのか。
 反対に、「ブランド食材を使えば高級である」という考え方もある。素人でも分かる安易な発想だ。しかし、企業組織内では「素人でも分かる」ことが評価される。経営者は素人だからだ。

 料理人がプロの目で食材を選ぶよりも、ブランド食材を評価する。そして、ブランド食材をメニューに書けば、価格が通る。そういう思いから、ブランド食材を列記するメニューが作られたのだろう。
 先にメニューと価格を決める。メニューと言っても、「ブランド食材をいかに使うか」が勝負になる。そして、利益率を計算してから、原材料を指定する。この段階でブランド食材は使えなくなる。次に、「ブランド食材も一般の食材も大差ない」という言い訳が出てくる。「味の違いは分からないのだから、バレルことはない」として偽装がまかり通る。
 こうした背景を考えれば、「誤表記」とは何事か、と思う。今回の問題は、表記だけの問題ではない。料理に対する意識の問題である。素人の理屈を優先した二流の会社の二流の料理を高級に見せかけたということだ。もちろん、「小さな海老は芝海老と呼ぶのが業界の常識」と言う料理人も二流だ。
 今回摘発された「一流ホテル」は、二流の中身しかないホテルが立派な建物を建てたに過ぎない。ホテルの格式とは建築だと思っているのだろう。 
 
2.効率追求という思想

 顧客にもいろいろある。高い食材で作った高い料理を選ぶ顧客もいれば、ボリュームがあって安い料理を好む顧客もいる。価格よりも質を優先する顧客もいれば、価格を優先する顧客もいる。
 ブランド食材をメニューに記載するのは、価格よりも質を優先する顧客に対応しようとしこということだ。しかし、提供する側のホテルやレストランは、価格を優先して考えている。だから、偽装をする。ブランド食材を使うと高くなるのなら、価格を高く設定すればいい。「高いと売れない」と思うなら、ブランド食材など使わなければ良い。ブランド食材をメニューに書いて、しかも原価率を優先するという行為は詐欺以外の何者でもない。考え方そのものを偽装しているのだ。
 利益率と回転率を優先するのなら、冷凍食材をうまく使えばいい。今回問題になったレストランの上層部は、効率追求のファミレスと同じ意識を持っている。その意識で、見せかけの高級品を出していたのだ。
 私は高級に見せかけた偽物が嫌いだ。高級レストランでなくても、真心のこもった家庭料理は好きだ。B級グルメも大好き。もちろん、本物の高級レストランの食事も好きだ。しかし、見せかけの高級品ほど唾棄すべきものはない。効率追求が悪いというのではない。効率追求を選ぶ顧客もいるし、効率よりも質を追求する顧客もいる。偽装をするということは、顧客をだまし、顧客の選択肢を奪う行為である。
 効率追求という思想は量販店の思想、中流の思想、大量生産大量販売の思想だと思う。そのおかげで、消費者は標準化された低価格で費用対効果の高い商品が入手できる。それはそれで価値がある。
 一億総中流と言われていた時代は、全体が貧しかった。大量生産大量販売の枠組みの中で、少しだけ高級なものを「高級品」と呼んでいたのも事実だ。しかし、時代は変わった。日本全体が豊かになり、一方で格差社会と言われるように階層化が進んでいる。昔より高級な商品やサービスが増えると同時に、昔より安い価格の商品やサービスも存在する。それがグローバル経済がもたらした市場なのだ。
 現代社会における高級品とは、量販の思想と対立する概念でなければならない。効率よりも質を優先しない限り、高級とは言えないのではないか。
 今回の偽装騒動は、ある意味で世代交代を意味している。かつての一億総中流の貧しい世代が、グローバルな階層化社会を十分に理解していないから、こうした馬鹿げた事件が起きるのである。真の階層社会を理解していれば、偽装が命取りであることは理解できるはずだ。言い訳している彼らの発言は限りなく貧しい。まるで時代に対応していない。
 
3.もの作りの優先順位

 今回の偽装レストランは、最初に価格とメニューを決定し、それから利益率を優先した原価を設定し、その上で原材料を調達したに違いない。これは量販店の仕入れと同じである。そして、この考え方は、原材料の質の低下を招く。
 しかし、多くの経営者やマネージャーは、この手法が正しいと信じている。マーケットを重視するなら、小売価格から逆算するのが正しいと信じているのだ。彼らにとって、原材料の価格から積み上げ方式で小売価格を決めるのは前時代的な手法なのだ。
 しかし、ブランドビジネスやラグジュアリービジネスを観ていると、彼らの発想だけが正しいとは言えない。そもそも、原価から積み上げた小売価格が相場に合わないのは、中級品の価格を基準にしているからだ。本当の高級品は、原価から積み上げても余りある価値を持っていなければならないし、それを顧客に納得させなければならない。高くても構わないという富裕層は必ず存在する。その顧客を攻略する戦略を持たないから、価格が合わなくなるのだ。
 私は、中級以下の商品なら小売価格優先で構わないと思う。しかし、高級品は原材料にこだわらなくければならない。小売価格から設定するという考え方そのものが中流であり、上流ではない。。
 原材料から積み上げて余りある価値を商品以外の要素で付加するのがブランドビジネスであり、ラグジュアリービジネスであると思う。そのための投資や戦略がない企業が背伸びして、偽りの高級イメージだけを訴求していたのが、今回の騒動である。
 
4.プライスレスの価値

 本物のシェフがこだわって選ぶ食材は無名であっても、そのシェフのブランドを冠することになる。農家の人達にとって、「あのシェフに選ばれた」ということをブランド価値があるということであり、堂々と自慢していい。
 本物のシェフの料理を理解するには、ある程度の訓練が必要だろう。顧客も経験を積むことで、より深い味覚を感じることができる。そこに「分かりやすさ」は必要ない。分かりにくくていいのだ。それを分かるシェフと顧客が存在してこそ、高級品市場が成立する。
 訓練を積んでいないサラリーマンのマネージャーが「分かりやすさ」を求めるようでは、高級品市場は成立しない。最も分かりやすいのは価格であり、次がブランドだ。だから、安いブランド商品という結論が出てくる。
 現在、シニア市場が注目されているが、シニアビジネスにも同様のことが言える。シニアは「上級者」であり、経験を積んでいる。そんなシニアに対して、経験の少ない素人が「分かりやすさ」で勝負しても、顧客満足は得られないだろう。
 顧客満足とは、本来プライスレスなものだ。たとえば、シェフがこだわりの料理を振る舞うレストランがあり、顧客は価格を自由に決めることができるとする。5千円たと思えば、5千円を払い、2万円だと思えば2万円を払う。それで経営が成り立てば、価格なりの価値があったということだ。もし、赤字になってしまうのなら、シェフの腕がそれだけのことだったに過ぎない。
 本来、価格とはそんなものではないか。価格積み上げもおかしいし、小売価格から原価を割り出すのもおかしい。それでビジネスが成立すれば、偽装の必要などない。
 かつて、ヨーロッパの貴族は、お抱えの料理人、お抱えの仕立て人を雇っていた。彼らは生活を保証される代わりに、妥協のない最高のもの作りを志向していた。格差社会、階層社会が進むと、これに近い形態が生まれるかもしれない。ある意味のパトロネージである。
 シニアビジネスとは、パトロネージを基本としたビジネスモデルのなるのではないか。そんな時代への移行が予想される今、とても貧しい時代後れの時間が起きてしまった。それが偽装事件だと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(101)を紹介しています。本論文は、2013.11.4に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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