My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« 戦略的カラーMDの勧め j-fashion journal(87) | Main | ノウハウをシェアしよう j-fashion journal(89) »

December 20, 2013

量販店PBの死角 j-fashion journal(88)

1.安いだけのPBでいいのか?

 かつて、量販店は問屋から商品を仕入れるのが一般的だった。しかし、現在は問屋を通さず直接メーカーから商品を調達するPBの比率が高まっている。
 もし、量販店が問屋を買収し、必要な人材、設備、ノウハウ等を徹底的に分析し、必要のない部署や人材を整理し、合理的な組織をつくり上げるならば、商品の質が落ちることもないだろう。また、必要な人材の雇用も失われないはずだ。
 多くの場合、PBは単なる問屋外しに過ぎない。問屋が使っている工場から直接商品を調達する。そうすれば、問屋の利益分だけコストが下がる。小売店にとってはとても簡単なことだ。しかし、問屋に蓄積されている商品企画、商品開発、工場とのコミュニケーションという機能は吸収していない。売れる商品をコピーしてより安く生産するなら、商品企画や商品開発チームは必要ない。しかし、それでいいのだろうか。

 かつて、ファッション専門店のS社が、異業種からの社長を迎えた。POS管理を徹底し、NB商品の売れ筋を分析し、コピー商品を自社PBで展開した。売上も利益も好調に推移し、業界マスコミも賛辞を送ったものだ。しかし、それが続いたのは3年までだった。「あの専門店はコピーされるぞ」ということで、NBが商品を引き上げたのだ。ファッションの変化と共に、店頭には古くさい商品だけが並ぶようになり、トレンドの変化と共に売上は極端に落ちた。同時に、ショップのイメージも落ちてしまった。
 「POS管理&コピー」という手法は、結果を追い掛けているに過ぎない。売れた商品を追い掛け、安く販売する。しかし、売れ筋はいつか変化する。変化した時に、大量の在庫を残すのだ。
 もう一つの問題は、商品の質である。価格を落とすということは、自らの利益を削るか、製造原価を落とすしかない。製造原価を落とすには、原材料を落とすか、工賃を下げるかである。大量に発注することで原価が下がるのは、工員が作業に慣れ、作業効率が上がるからだ。準備工程が合理化できることもあるだろう。原材料が大量に仕入れられれば、ディスカウントも期待できる。
 しかし、小売店が大量注文と考えている量は、メーカーとしては決して大量ではない。日本国内ならば、少量生産が当たり前になので、ある程度の量が確保できれば、コストも下がる。しかし、中国の大規模な工場は、元々生産ロットが大きい。多少の数量アップだけではコストは下がらない。ここに、メーカーと小売店の意識の差がある。
 また、コスト引き下げ交渉には、相手の実情、原価構成を理解することが必要だ。果たして、量販店PBの担当者に、そうした知識や情報が蓄積されているだろうか。
 私が見る限り、量販店PB工場の効率を上げるような技術指導が十分に行われているようには見えない。ユニクロの匠チームのような仕組みはないのだろう。できることは、メーカーにコストを下げるように指示するだけだ。その結果、原材料の質が落ちる。
 バフル崩壊以降、日本の繊維製品は確実に質が低下しているが、中でも量販店の商品は酷い。品質管理に通れば良いという考え方だ。目の肥えた日本人消費者が満足する水準ではない。
 
2.買物の選択肢が減っている

 市場全体で市場原理が働いているなら、量販店がどんなに粗悪な商品を販売しても文句はない。消費者は別の店で買物をすればいいからだ。
 しかし、地方百貨店、中心街商店街は既に淘汰が進んでいる。量販店しか買物の手段がないという地域も多い。量販店がまともな商品を展開しなければ、消費者の生活の質が下がる。量販店は「国民の生活の質」をコントロールしているのだ。
 救いは通販である。但し、通販は送料が掛かる。送料が気にならないくらいの価格であれば、有力な購入手段となる。
 量販店の立場に立てば、通販との競合に勝つことが最重要課題である。これまで量販店が得意としていた低価格戦略も、通販との価格競争となると厳しい。通販は店頭在庫を持つ必要がない。地方の倉庫を本社にすれば、本社経費、人件費も抑えられる。印刷物のカタログは経費が掛かるが、WEBならば低コストで運営することも可能だ。
 現在の高齢者は、インターネットに接続できない人も多い。しかし、今後はスマホ、タブレット、テレビ等を通じて、高齢者もインターネットにつながっていく。そうなれば、量販店に文句を言う必要もない。ネット通販を利用すればいいのだ。逆に言えば、量販店にとって重大な危機である。
 
3.流通は物流が鍵を握る

 今後、「送料、物流賃」が非常に重要になる。中国生産で安い製品を作っても、各店にデリバリーする費用が掛かったのでは何もならない。逆に、国内生産であっても、物流費を考えると、割安になることもありうる。
 その意味では、農産物直売所のような地産地消の仕組みを取り入れることは重要だ。アパレル製品も地元の工場と連携して、直接仕入れれば、面白い売場ができるだろう。
 多頻度物流網を整備しているコンビニはまだまだ成長する余地がある。現在でも、インターネットで買物をして、コンビニで受け取るサービスはあるが、これが更に成長するだろう。あるいは、コンビニの駐車場の一部を使って、時間限定の生鮮市場のようなイベントも考えられる。
 コンビニと量販店の根本的な違いは、量販店が中央集権的なシステムで動いているのに対し、コンビニは各店の売上に合わせて品揃えをしていることである。コンビニの方が柔軟であり、量販店は硬直している。その意味では、コンビニの方に可能性がある。
 もう一つの違いは、郊外型SC、大型量販店は自動車での買物を前提にしていることだ。コンビニは生活圏の近くにあり、徒歩、自転車、自動車に対応している。最近の若者は、自動車を持たない人が増えている。運転免許証を取得しない人も多い。日本ではアメリカのように一週間分の食料をまとめて買い求める習慣もない。毎日、生鮮食品を買い求めるのだから、自動車でなくてはならない理由はないのだ。そこにも量販店の厳しさがうかがえる。

4.量販店のアイデンティティとは何か?

 量販店が成長したのは、70年代である。その頃は、百貨店の力が強く、百貨店で販売しているブランドを量販店で扱うことはできなかった。
 アメリカの量販店は、大量仕入大量販売によるディスカウントが基本であり、取り扱いブランドを棲み分けているわけではない。百貨店と同じ商品を安く販売しているのだ。それに対し、日本の量販店は百貨店と取り扱い商品を棲み分けている。百貨店の商品と量販店の商品は全く異なるのだ。その結果、日本の量販店は、それなりの安い商品をそれなりの安い価格で販売する業態となった。
 もちろん、それなりの安い商品にも存在価値がある。特に、80年代、90年代までの量販店の商品は、現在より価格も品質も高かった。それがバブル崩壊と激安商法の時代を経て、価格も品質は低下している。
 その中で、ユニクロ、ニトリのような大型専門店が低価格、高品質を武器に成長した。その路線を踏襲しているのが、量販店PBと言ってもいいだろう。
 ユニクロ、ニトリと量販店PBは何が違うのだろう。
 量販店PBは、NB商品の中で、大量販売が見込める商品をコピーしてPB商品として生産した。「生産した」と言っても、実際には工場から商品を仕入れているに過ぎない。自社で原材料を仕入れるとか、工場に投資することは、ほとんどない。あくまで商品を仕入れて販売するという小売店の立場を崩していない。
 ユニクロ、ニトリは、中国生産を基本に商品を組み立てている。極端な言い方をすれば、中国で生産できないものは扱わない。つまり、専門店といいながら、企画、生産、販売をリンクしてビジネスを組み立てている。したがって、商品レベルを上げるためには技術指導も行うし、素材開発も行う。オリジナル素材を中国工場で加工することにより、オリジナル製品を販売できるのだ。
 量販店PBは工場調達であっても、技術指導や素材開発まで踏み込んでいない。コストが合わなければ、次々と新しい工場を開拓していく。これは仕入れ先を変える発想に過ぎない。メーカーの発想が少しでもあれば、コストダウンのためには、素材調達や合理化のための技術指導が欠かせないはずだ。現段階では、量販店は小売店から脱していない。SPAには程遠いのだ。
 今後、量販店には二つの道がある。小売店として生きるならば、NBとPBの比率を考えなければならない。一方的にPB比率を高めることは、商品の陳腐化、顧客満足の低下を招く。
 第二の道は、本格的にSPAを目指すことである。この場合は、企画、生産から販売までをトータルに考えた商品MDを組み立てる必要がある。その場合は、必然的に専門店MDにならざるを得ない。生産できない商品、競争力のない商品は扱わないのだ。
 ここで問題になるのが、量販店のアイデンティティである。
 消費者は量販店に何を期待しているのか。量販店はどのような社会的役割があるのか、を考えなければならない。
 これは私の希望だが、「量販店は日本人の平均的ライフスタイルを支えている」という意識を持ってほしい。一企業の売上や利益の問題ではない。量販店が質の良い商品を販売すれば、日本人の生活の質は上がる。量販店が価格優先の商品を販売すれば、日本人の生活は価格優先になるだろう。シニア人口が増える中で、量販店は「日本人の生活とはどうあるべきか?」と考えているのか。それは量販店のアイデンティティであると同時に、量販店の義務でもあると思うのだ。
 その意味で、冒頭の問いを繰り返したい。量販店PBは安ければいいのか?

*有料メルマガj-fashion journal(87)を紹介しています。本論文は、2013.8.5に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« 戦略的カラーMDの勧め j-fashion journal(87) | Main | ノウハウをシェアしよう j-fashion journal(89) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 戦略的カラーMDの勧め j-fashion journal(87) | Main | ノウハウをシェアしよう j-fashion journal(89) »