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December 19, 2013

戦略的カラーMDの勧め j-fashion journal(87)

1.ブランドの統一感、店舗の統一感

 ブランドを統一するには、「顧客ターゲット」「ブランドコンセプト」をしっかりと固めることが必要だ。しかし、社内で顧客ターゲットやブランドコンセプトを決めても、それが店頭に表現されなければ何もならない。ブランド企画書は、商品や売場環境、サービスに反映されてこそ意味がある。
 ブランド統一感を表現する最も有効な方法はカラー計画である。ショップ環境の色彩が個性的で、そのカラーが全店舗に共通していればと、ショップの共通イメージを訴求することができる。
 商品についてもカラーの統一感があれば、ブランドらしさを演出することができる。しかし、商品の場合は、ショップのカラーより複雑である。ブランドらしいカラーを設定しても、カラーはトレンドと共にも変化し続ける。
 黒で統一、白で統一、無彩色で統一するのは簡単だ。あるいは、ビビッドカラーで統一する。どれも容易だが、同じ色の商品ばかりでは、コーディネートが単調になってしまう。
 アイテム毎にカラーは異なるし、素材毎にカラーは異なる。そして、シーズン毎にも変化する。それでも、ブランドのイメージを保つようなカラーコントロールが必要だ。 

2.カラーパレットとは何か?

 油絵を描く時にパレットに絵の具を並べる。次に、絵の具を混ぜて、独自の色を作る。その色で絵を描く。パレットに並んだ色を見れば、その絵の「調子」が分かる。画家のパレットを見れば、その画家の作風が分かるのだ。
 同様に、商品企画、テキスタイル企画において、最初にカラーパレットを設定し、そのカラーパレットのバランスが良ければ、そのパレットの色を使うことで商品も調和が取れる。
 カラーパレット設計とは、全ての商品カラー計画の基本となるものだ。先染のウール、后染のコットン、ニット、カットソー、雑貨に至るまで、全てのアイテムに色指示をする時には、カラーパレットから指示する。
 先染の場合、複数の経と緯が混色し、彩度が下がるので、基本的には彩度が高めの色を設定する。無地の場合は、その色そのものが表現されるので、彩度のコントロールが必要だ。また、同じ色を指定しても生地そのものの光沢によってもまるで違って見える。その場合も調整が必要になる。それでも、基本的なカラーパレットが設計されていれば、色出しの時間も短縮できるだろう。
 カラーパレットは、基本パレットとシーズンパレットに分けられる。基本カラーはブランドの定番色である。売れ筋を追い掛けているブランドには必要ないのかもしれないが、オリジナル企画を重視するブランドならば、独自のカラーパレットを設計しなければならない。
 シーズンパレットは、シーズン毎に変化するカラーパレット。トレンド変化を取り入れながら、基本カラーと合うようにシーズンカラーを設定する。注遺棄すべきは、トレンドカラーをそのまま使ってはならないということ。トレンドカラーをそのまま使うのでは、他ブランドと同質化してしまう。
 
3.カラーパレットの色数

 カラーパレットを決めなくても、一人のデザイナーが常に色彩を決定していれば、ある程度の統一感は表現できる。しかし、デザイナーが複数存在したり、アイテム別に別の人が企画をする場合、カラーは混乱する。カラーほど、嗜好、好みが反映されるものはない。ある人にとって、素敵な色でも、他の人の目にはセンスが悪く映る。
 また、単独で色を見るのと、複数の色を組み合わせて見るのとでは印象が異なる。パントーンやスコットディック等で色出しをする時には、最初は単色のチップを見て色を探す。しかし、その色を先染めやプリントに使うと、カラーの調和が破綻することがある。個々の色を見る時と、他の色と組み合わせて見るのとでは、全く別の色に見えてしまうからである。
 カラーパレットとは何色くらい決めておけばいいのか。
 先染めやプリントのアクセントカラー、雑貨のカラーまでカラーパレットに含ませるのであれば、最低でも40~50色は必要になるだろう。多い場合には、その二倍以上になるかもしれない。その中で、基本カラーが6割、シーズンカラーが4割程度だろうか。インテリアなどでは、基本カラーが7割、シースンカラーが3割でもいい。
 ブランドの性格によって、カラーパレットの色数は決まってくる。なるべく絞り込んだ方が良いのだが、アウターとインナー、ウールと合繊、先染とプリント等を考えると、10~20色では間に合わないだろう。
 
4.カラーパレット設計とCGシミュレーション

 そもそもファッションデザイナー、テキスタイルデザイナー、グラフィックデザイナーの教育機関では、色彩を科学的に解説しているに過ぎない。デザイン構成、色彩の平面構成実習はあっても、一つの作品の中でカラーパランスを取る訓練に終止している。数多くのカラーをコントロールする訓練は受けていないのだ。
 デザイナーとして就職して、生地や製品にカラーを指定する場合も、個人が好きな色を出すか、トレンドカラーを基本にするか、定番色を出すのがほとんどである。
 多くは、基本色にトレンドカラーを「アクセントカラー」「利き色」として加える。あるいは、トレンドカラーをそのまま使うというものだ。私が提唱するように、基本カラーパレットを作成し、シーズン毎にシーズンカラーパレットを加え、全体のカラーパレットを構成するケースは少ない。
 その理由は、何十色もの色の調和を考えて構成するという作業が非常に困難な作業であること。カラーをまとめて扱う訓練を受けていないこと。カラーパレットが提案されても、誰もそれを評価することができないこと等が考えられる。
 結局、実際に先染生地とプリント生地、無地を構成して見せなければ理解できないし、評価することができない。そして、現在のように見本帳から生地を選んでいるだけなら、カラーパレットなど必要ない。オリジナルのカラー、柄展開をするケースだけに必要なのである。
 CGシミュレーションがない時代は、プリントも先染めもポスターカラーで手描きをして判断していた。したがって、何十色もの色を作り、それをいくつもの柄に再現していたら、莫大な費用が掛かった。
 テキスタイルデザインのCGシミュレーションが実用で使えるレベルに達したのは最近であり、そのテクノロジーを活用することで初めてカラーパレット設計が可能になったとも言えるだろう。

5.カラーマーチャンダイザーは成立するか?

 先日、スタジオジブリの新作映画のプロモーションを兼ねたテレビ番組を観た。興味深かったのは、背景以外のキャラクターや小道具、大道具等の色彩構成を一人の担当者が行っていたことだ。
 アニメというのは高度な分業作業だ。キャラクターを描く人、背景を描く人、アニメーションにする人、そして、色彩をコントロールする人。テキスタイル、アパレルの世界よりはるかに高度な分業体制が出来上がっている。
 スタジオジブリに習うならば、ファッションブランド、テキスタイルブランドには色彩構成をする専門家が欠かせない。テキスタイルの現場でも、糸を作る人、撚糸する人、織組織と糸密度を考える人、実際に機織する人、生地の風合いを出す人、色を指定する人、指定通りに染色する人等が存在する。しかし、それらは、映画の一場面だ。そこには、映画全編の色彩の調和を考える人はいない。
 それでも、展示会には複数のサンプルが並び、シーズン毎に試作を行う。アパレルなら、一つの店舗に継続して商品が並べられる。しかし、いつもカラーはバラバラである。カラーが統一したカッコイイ展示会ブース、ショップを目にすることはほとんどない。
 本来、カラーマーチャンダイザーは必要不可欠な職種だと思う。しかし、その存在を知らないし、想像できない。したがって、必要性も感じないし、そこに予算を掛けるという発想もない。

6.カラーマーチャンダイザー養成講座の提案

 私は、日本の製造業が生き残るには、技術だけでなくデザインが不可欠と考えている。アパレル、テキスタイル分野で言えば、デザインの基本となるのがカラー計画、カラーMDと言えよう。
 また、発展著しい中国やアジアの国々でも、オリジナルブランドの構築、オリジナル商品企画が重要な課題となっている。その基本となるのもカラーMDだろう。
 前述したように、これまでもカラーMDという概念はあったかもしれないが、それを実践するツールが整備されていなかった。しかし、現在では、トヨシマビジネスシステム、島精機等でテキスタイル、ニット、アパレルのCGシュミレーションソフトが開発されている。これを活用することで、効率的かつオリジナルのブランド開発、商品企画が可能になる。逆に言えば、システム、ハード、ソフトは揃ってきたが、それをどのように使うかというノウハウが欠如している。そのノウハウを体系的にまとめ、教科書を作成し、それを基本にした教育プログラムを開発するというのが私の提案である。
 もう一つ並行して、カラーMDのアウトソーシングに対応する人的ネットワーク構築も推進しなければならない。テキスタイル、アパレル企業は、基本的に半年に一回カラーパレットを見直し、再構築することになるだろう。そのためだけに、システム投資と専門家の雇用を行うかは疑問だ。
 カラーMDの専門家を育成し、ブランドアイデンティティとトレンドを考え合わせて、各ブランドにカラーパレットを供給する機関が必要になるだろう。
 教育プログラムと同時にカラーMDアウトソーシングの受け皿作りを行うことで、日本及びアジアのオリジナルブランド開発、オリジナル商品企画に資することになるに違いない。

*有料メルマガj-fashion journal(87)を紹介しています。本論文は、2013.7.29に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

 

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