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December 14, 2013

なぜ、アパレルビジネスのICT化が遅れているのか? j-fashion journal(85)

1.複雑で曖昧な商取引

 日本の繊維アパレル業界は、本当に特殊な商取引を行っている。値引き、歩積み、委託、返品、掛率、セール時の売価変更等々。もし、欧米のように小売店が完全買取(これも変な言葉ですが)なら、売価が変わっても仕入れ値は変わらない。メーカーの方も、基本的に販売価格が統一されていれば、とてもシンプルになる。しかし、販売先との力関係によって、掛け率が変わるようなビジネスでは、一品一価という原則は通用しない。
 しかも、百貨店のように委託仕入れとなると返品も存在する。更に約束手形による取引がある。その手形も45日、60日、90日、120日、呉服業界のように210日の台風手形なんていうものもある。こうなると、商品の所有権がどちらにあるのか。この商品の価格がいくらなのか、仕入れ値がいくらなのかさっぱり分からない。
 あまりにも帳簿が複雑なために、コンピュータ処理ができない。できたとしても、完全な自動処理は非常に難しい。担当者が自分でエクセルで計算して、会社のシステムに入力することも多い。
 これほど複雑にして何かいいことがあるかと言うと、何もない。こんなものは「エイヤ」と変えてしまえばいいのだ。経済産業省でも、業界団体でも、トップ企業でもいいから、変えてしまう。それに従わないと、グローバルな時代に生き残れないのだから。

 逆に、ネット販売に期待しているところもある。ネット販売のシェアが拡大すれば、商取引も変わるかもしれない。
 百貨店も商品をキャッシュで完全買取して、自前の販売員が販売すれば、世界中から商品が調達できる。いくらでも可能性はあるのだ。世界中の小売店が普通にやっていることができない。それでは潰れるのも仕方がない。
 中国のアパレル企業と代理商(特定地域の独占販売権を持つ小売店)の取引は、基本的に前払いだ。しかも、完全買取の返品なし。メーカーにとって、掛け率は低くても、とても合理的なシステムである。資金繰りに悩む必要もない。
 一方の代理商は独占販売権を持っているので、安心して店舗展開ができる。それでも、昨年あたりから競合が激化し、在庫過多で苦しんでいる。一部の代理商はオリジナルブランドをOEM工場に発注するようになった。
 日本でも小売店がアパレルを通さずに、商社から商品調達するケースが増えている。商品を生産するところと売るところが重要なのであり、その中間は排除されるのは、ある意味で当然だろう。
 取引がシンプルならば、情報システム導入も楽だ。欧米のシステムをそのまま導入できるし、コストも抑えられる。現状のままでは、中国企業の方が合理的な経営に進化していくだろう。中国企業は世代交代で劇的に変わるのではないだろうか。
 
2.展示会をどうにかできないのか?

 日本の展示会も非常に独特だ。欧米や中国では、基本年2回のコレクション。日本のアパレル企業は、4~10回も展示会をしている。展示会が多い理由は、売れるか売れないか分からない商品をできるだけ引きつけて企画生産したいからだ。小売店もあまり先の商品を仕入れたくないと思っている。つまり、業界全体が、ファッション商品は売れるか売れないか分からないと思っているということ。そして、売れる商品が見えてから、追い掛けようと思っている。
 この体質が変わらない限り、日本のファッションはクリエイティブにはならない。そして年がら年中仕事に追われ、徹夜が続くだろう。物真似やコピーが主体では、価格も通らない。商品の同質化と価格競争に陥るのは必然だ。利益率も低い。だから、社員の給料も上がらない。そんな業界には優秀な人材も集まらない。業界全体がブラックなイメージになってしまうのだ。
 先日、インドの縫製工場に行ったら、ヨーロッパのデザイナーのブランドが展示されていた。デザイナーはシーズン一回2週間ほどインドに滞在してコレクションを作るそうだ。それだけで生活できるならば、日本のように時間に追われる必要もない。
 その工場はデザイナーの作品を展示会で展示して、受注生産している。欧米的に考えれば、展示会で最低生産ロットに満たなければ、発注先に連絡して生産中止にするだけだ。そのことは契約書にも記載されているので、文句を言われることもない。
 また、メーカーはOEM生産も受託しているので、そのサンプルを元に受注することも可能だ。デザイナーへの報酬を歩合にしておけば、それほどの負担にもならない。ある意味、メーカーもトントンで良いのだ。デザイナーも自己責任なので、トントンでも良い。互いにハードルを上げず、メーカーとデザイナーの取り組みができているのだ。
 こんなことが日本でもできないのだろうか? 
 
3.直接、顧客に売れないのか?

 日本の繊維ファッション取引でも、消費者への販売はクリーンだ。多くは現金取引か、クレジットカードであり、回収できないということはない。
 最近のヤング向けアパレルは、タレント、モデル、アイドル等を展示会に招待している。受注を取り、卸売価格で販売している。昔は、アパレルが小売店を飛び越して消費者に販売するのはタブーだった。その壁を突破したのは、彼女たちのブログである。商品をプログで紹介する広告メリットを期待しているのだ。
 また、ネット通販のブランドがショップを出店する例も出てきた。店舗は試着したり、店のスタッフとおしゃべりをするコミュニケーションスペース。商品の購入はネットからどうぞ、というわけだ。
 こうなると、店の形態も変わるだろう。電源があって、検索ができて、飲み物や軽食が取れる場所。となると基本的に、ショップはカフェでいいのかもしれない。
 全国にカフェがあり、そこでイベントを行う。そして、動画配信する。それらがWEBと連動している。最早、店舗としてファッション専門店が成立するのだろうか、と思うのだ。
 
4.CADとインターネットで何かできないの?

 パターンCADは、本来、パターンメーキングをする機械だが、パターンデータをインターネット経由で送ることもできる。日本のアパレルは欧米アパレルに比べても、CAD導入比率が低い。欧米のアパレルは、基本的に一人一台のCADでパターンを制作している。
 日本のアパレル、企画会社はパターンの送受信機としてパターンCADを使っている。たとえば、機械的なグレーディングなら、中国等にマスターパターンを送信し、中国人技術者に入力作業を委託することもできる。
 デジタルプリントの図案もインターネットで送ることができる。つまり、スカーフ等なら、各国にデジタルプリントの機械を置いておけば、データを送ってそこでプリントし、販売することができるのだ。そうなれば、輸出入の必要がなくなる。たとえば、日本のテキスタイルデザイナーの図案も中国やインドでプリントアウトすることもできるし、イタリアのデザイナーの図案を日本でプリントすることもできる。
 同様に、パターンデータ、縫製仕様書データをネット経由で送り、現地で製造販売することもできる。デザイナー、パターンナーにはロイヤリティをバックすれば、継続的な収入になるだろう。
 海外ブランドが日本の優秀なテキスタイルメーカー、縫製工場と提携し、日本で現地生産し、日本販売することも可能だ。もちろん、日本のアパレルが中国やインドのテキスタイル、縫製メーカーと連携することで、現地生産現地販売が可能なのだ。
 以上のように考えれば、新しいビジネスモデルが見えてくるのではないか?

*有料メルマガj-fashion journal(85)を紹介しています。本論文は、2013.7.15に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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