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December 14, 2013

アパレルのビジネスプレゼンテーション j-fashion journal(84)

1.デザイナーはトップセールスマン

 日本のアパレル企業では、商談をするのは営業という役割が決まっている。しかし、この役割を固定してしまうのは問題だ。
 日本ではコツコツともの作りをする職人タイプのデザイナーが多いが、欧米ではプレゼンテーションに長けているデザイナーも多い。というより、欧米のデザイナーが契約を勝ち取るには、プレゼンテーション能力が不可欠である。
 日本の組織がポトムアップなのに対し、欧米の組織はトップダウンであり、重要な商談にはデザイナー自らがプレゼンするというケースが多い。デザイナーの仕事そのものの定義が、日本では「製品のデザインを担当」なのに対し、欧米は「ブランドのクリエイティブディレクター」という違いがある。
 デザイナーの仕事の本質はプレゼンテーションであると言っても過言ではない。なぜなら、デザイナーは、シーズンテーマをモデリスト、テキスタイル担当、アシスタントデザイナーに伝えなければならない。コレクションの制作は、チームプレイであり、デザイナーはその方向性を示す役割を担っている。

 欧米では、アシスタントデザイナーもチーフデザイナーにコレクションテーマ等をプレゼンする。プレゼンが良ければ、コレクションテーマとして採用されることもある。プレゼン能力がなければ、認められない。
 コレクションの制作も、その目的は「バイヤーや顧客へのプレゼン」である。学生であれば、自己表現としてコレクションを作れば良い。しかし、プロのデザイナーはクライアントのためにデザインをしている。バイヤーや顧客にその魅力が伝わらなければ意味がないのだ。「分かる人だけ分かればいい」などと考えていれば、1シーズンでクビである。コレクションとはビジネスプレゼンテーションの場なのだ。

2.売場攻略のためのプレゼンテーション

 現在のアパレル企業は、製造卸からSPA業態へと変化している。展示会で小売店に商品を売り込むのも大切だが、それ以上に百貨店、ファッションビルのデベロッパーに対するプレゼンテーションが重要である。
 製造卸の場合は、商品をプレゼンすれば良かった。商品サンプルをバイヤーに見せて、営業すれば良い。しかし、ショップ、コーナー展開の売場を取るには、「売場のプレゼンテーション」が必要になる。売場のプレゼンテーションは、その売場を設置することで、百貨店、デベロッパーはどんな利益があるかを訴求しなければならない。
 商品はショップを構成する一つの要素に過ぎない。商品はシーズン毎に変化する。しかし、ショップは数年間変わらない。そういう意味では、商品以上にショップデザインは重要である。また、ブランドそのものは更に重要である。そのブランドを導入することで、フロア全体はどのように変わるのか。あるいは、館全体の魅力が増すのか。集客力が上がるのかが問われる。
 バイヤーは、常に何かしら課題を抱えている。多くは、「時代の変化に対応した新しい売場を提案する」ことが求められている。そのニーズに応えることが、新しいブランドを売り込む時のポイントである。
 たとえば、館全体が顧客の年齢層を下げたいと考えているのであれば、より若いイメージを訴求することが重要である。逆に、シニアを志向しているのであれば、より大人っぽいブランドとして訴求しなければならない。
 ここで重要なのは、バイヤーは一つ一つのブランド導入を考えているのではなく、ある程度のゾーニングで考えているということだ。百貨店の場合、最低でも30坪程度のゾーニングが一つの単位となる。それに対して、5坪~10坪の自社ブランドだけを提案しても、バイヤーはゾーニングをどのように構成すればいいのか、分からない場合が多い。その場合には、ゾーニングのコンセプト、構成するブランド構成、商品構成等を提案し、その中における自社ブランドのポジションを提案することだ。
 
3.展示会、ファッションショーのプレゼンテーション

 最近、不思議に思うのは、若手デザイナーの展示会である。ブランド名とデザイナー名が書いてあり、製品が展示されている。いかにも作り込んだ、個性的なシルエットの製品が並んでいる。しかし、コンテストでもないし、アートイベントでもない。中には「作品は売りたくない」というデザイナーもいる。そういう人にとってはアート展示イベントなのだろう。それなら、ギャラリーでやってほしい。あるいは、非売品と張り紙をするべきだ。
 展示会とは商談の場であり、そこに展示されている商品が仕入れられないのでは意味がない。しかし、あまりに個性的でアバンギャルドな服を誰が買うというのか。もちろん、尖った店もあるので、少量の商品が売れるかもしれない。しかし、生産ロットに満たない少量の製品を展示会で出す意味があるのだろうか。
 ヨーロッパの展示会でも同様だ。尖った専門店もあるので、何点かはディスプレイ用に仕入れるかもしれない。しかし、そういう場合には、専門店はとてつもなく高い価格で販売するものだ。したがって、大量に売れるということはあり得ない。
 変わった形の服は、着る人が限られている。好きな人しか買わないし、価格が安くても売れない。したがって、それを好きな人にとっては、他にはない商品であり、いくらでも欲しいと思うだろう。したがって、高価格で販売するのは正解なのだ。
 私は、あまりに変わっているデザインの服は、一点ものとして現物で販売すべきだと思う。あるいは、オーダーを受け付けるべきだ。既製服として販売するのには余りにも無理がある。
 本当に個性的な商品を販売するなら、ネット販売が良いのかもしれない。その場合、展示会の目的は、商品を販売することではなく、ブランドとWEBのプロモーションということになる。それなら、そういうビジネスモデルの解説がなければならない。
 もし、デザイン企業として、ブランドライセンスを展開したいのなら、少なくとも商標登録をして、ブランドコンセプトを伝えなければならない。しかし、多くの場合、商標登録さえしていないのだ。それで、どうやって契約するというのだろうか。展示サンプルをコピーされて終わりではないか。
 私の見る限り、若手デザイナーのみなさんは、展示会に出展すれば、「何かが起きる」と漠然と期待しているのではないか。しかし、パイヤーは、自分のニーズを理解して欲しいし、自分の抱えている課題を解決する提案を期待しているのだ。
 双方が相手に期待しているだけでは、展示会の意味がない。どちらも展示会の目的が曖昧なままだ。旧態依然とした展示の方法で、自己表現のための服を作って展示しているだけで、何か起きるというのか。それでは、専門学校の発表会ではないか。
 私はそういう展示会を見ていると、この出展者を集めて、ビジネスの基本を講義したくなる。まず、ビジネスの構造を知ろう。まず、展示会の目的を理解しよう。まず、相手が何を望んでいるのかを理解しよう。その上で、展示会をして欲しいと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(84)を紹介しています。本論文は、2013.7.8に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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