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December 14, 2013

アパレルの目に見えない無駄を取る j-fashion journal(81)

1.素人でも作れる商品が市場にあふれている

 昔のユニクロには驚きがあった。「こんな素材を使って、こんな縫製仕様でこの価格は凄い」と思ったものだ。当時のユニクロの素材、縫製レベルはGAPをはるかに凌いでいたと思う。しかし、現在はどうだろう。少なくとも、私の目に驚きはない。GAPと比較しても、それほど大きな違いはない。年々、中国の人件費と原材料費が上がり、少しずつ素材のレベルが下がり、現在では店頭を見ても買いたいと思う商品がなくなっている。これはユニクロだけではない。アパレルだけでもない。あらゆる商品の原価が下げられた結果、品質レベルが下がっている。
 なぜ、こんなことが起きるのだろうか。
 管理には二種類ある。数字で表せる定量的な管理と、数字で表せない定性的な管理だ。技術者や職人は定性的なセンサーを持っている。これ以上、素材を落とせないとか、これ以上縫製レベルを下げられないという基準を自分の中に持っているのだ。

 それが邪魔になる場合もある。企業方針と個人の基準が合わなくなれば、「あの頑固者がいるから、会社の利益が上がらない」とばかりに排除されてしまうだろう。職人の方も、昔なら「こんな酷い商品を作るくらいなら、転職して他の会社で良い商品を作りたい」と考えただろう。しかし、今ではそういう人も減ってしまった。発注する側も職人が必要とは思わないだろう。多くの人は工場に発注すれば商品は上がってくると思っている。そして、定性的管理力は著しく劣化している。
 この20年間は、それで良かった。企業も市場も価格優先、激安商法が評価された。しかし、その潮目が変わってきたのではないか。
 実際に、安いだけの商品は売れなくなっている。一方で、高価格でも品質の良い商品が売れ始めている。もちろん高額商品の販売量は少ない。しかし、安いボリューム商品も数量は減少傾向だ。私は、最早、国内市場で数量を伸ばすのは難しいと思っている。売上を上げるためには、単価を上げるしかないのではないか。
 国内市場で数量が伸びないのであれば、海外市場進出という考え方もある。問題はアジアの消費者が日本企業に何を求めているか、だ。
 アジアの消費者は、日本メーカー、日本ブランド、日本の小売企業に安物を求めているわけではない。安物なら国内にいくらでもある。日本企業に求めているのは安心安全、上質な商品である。
 私は、日本市場で販売されている多くの商品は、アジア市場で通用しないと思っている。あまりにも粗悪な安物が多いのだ。そして、恐ろしいのは、日本のバイヤーは粗悪な商品を粗悪だと認識できないことである。こんなことでアジア市場で成功するのだろうか。
 
2.なぜ、日本アパレルは常に忙しいのか?

 欧米のファッションビジネスは年2回のコレクションを基本にしている。最近は直営店が増えているので、デリバリーは細分化されているが、それでも基本的な企画は年2回のサイクルである。
 日本企業と欧米企業を比較すると、日本企業は圧倒的に会議が多い。これは、アパレルも小売りも同様だ。日本企業の意思決定システムは、全員参加が基本である。会議は総合職が主体である。専門職は総合職の人々に対して、専門的なことを分かりやすく説明しなければならない。そのために会議用資料を作成する。この作業に膨大な時間と人が投入される。
 会議では、「商品の善し悪し」や「素材や仕様の改善点」などの専門的な要素について議論されることは少ない。「個人の好き嫌い」「感想」「資料やプレゼンの不備」が中心的な議題となることも多い。結果的に、多くの会議は「上司からの伝達」や「抽象的な命令」が主たる目的であり、商品の責任を共有するという儀式である。
 私は「企画を引きつけてリードタイムを短くすれば売れる」という考え方も疑っている。企画を引きつければ、素材開発やサンプルの完成度を高める時間がなくなる。結局、間に合わせの素材で間に合わせの商品を作ることになる。工場のスペースにも配慮していないのだから、工賃が下がることもない。こうしたマイナス要素を考えると、単純にリードタイムを短くすることにあまり意味がないのではないか。
 渋谷系アパレルのように、顧客の動向を把握し、それを短サイクルで生産し、販売するというビジネスモデルもある。しかし、その場合も、総合職主体の会議で商品を決めているわけではない。販売員や店長を経た企画担当者が意思決定をしている。
 私は、アパレル、ファッションの小売業については、商品化の意思決定に総合職が関与すべきではないと思っている。分からないことに口出ししない。任せるところは任せる。
 欧米企業で会議が少ないのは、「責任を共有する儀式」がないからである。会議を行わなくても、各部署の責任者同士が直接確認を取れば済むことが多い。3分の確認で終わることを関係のない部署の人間も含めて1時間の会議を行うことは、企業の資源を無駄遣いしていることだ。
 定性的な部分は専門職に任せて、総合職は定量的な管理のみを行う。もちろん、専門職の評価は必要だが、それは実績と連動した報酬制度を考えるべきではないだろうか。
 
3.なぜ、日本のアパレルは売れ筋を追いかけるのか?

 行政や大企業の経営者は、ファッション商品は予測不能だと考えている。かつて、QR(クイックレスポンス)が提唱された時も、「ファッション商品は何が売れるか分からない」ということが前提だった。「何が売れるかわからないから、リードタイムを短くする必要がある」という論理展開である。そして、トヨタのカンバン方式が引き合いに出された。
 しかし、トヨタも新車開発のリードタイムは長い。CGの導入により開発期間が短縮されたと言っても、やはり3年程度は掛かっているだろう。
 トヨタのカンバン方式は、企画開発のリードタイムを短縮するものではない。開発が終わり、商品化した後、ディラーからの受注に対して、クイックに生産しているのだ。原材料の調達について、「時間がないから調達できるもので間に合わせる」ということはあり得ない。「下請けの部品メーカーが在庫を持つ」という大前提があってこそ、カンバン方式が成立しているのである。
 アメリカのQRは、元々物流センターと店頭との間の話が中心だった。こちらも企画開発の時間を短縮するものではない。そして、アメリカは大量生産という枠組みを崩してはいない。生産の合理性は保ちつつ、QRに取り組んでいるのである。日本のように、小売店の都合だけを考え、企画開発に必要な時間も確保せず、生産設備に関係なく少量短サイクル生産を強要することはあり得ない。
 大手アパレルは、自社ブランドの企画は引きつけるが、欧米ライセンサー企業の企画は信じている。彼らは年2回のサイクルで企画している。しかも、日本市場を十分に理解しているわけではない。それでも、ランセンサーの商品企画を土台にして商品MDを組み立てている。そして、日本企画のブランドよりも、ライサンスブランドの方が売れるケースは少なくない。この事実は、「企画のリードタイムを短縮すれば売れる」という論理と矛盾している。
 私の経験から言えば、商品企画のリードタイムを短縮したからと言って、商品のプロパー消化率が上がることはない。商品企画のリードタイムを短くして、引きつければ引きつけるほど、売れ筋情報に集中し、他社と同質化するからだ。そして、価格競争が待っている。
 売れ筋を追い掛けるなら、会社の体制を全てそれに集中すべきである。そして、3日で企画して、1週間で生産する。それを一年間繰り返す。そこに、無駄な総合職は必要ない。会議も必要ない。売れ筋を追い掛けるというのは、そういうことではないか。現在の追い掛け方は、あまりにも中途半端であり、結局、完成度も低く、タイムリーでもない製品を作り続けているのではないか。

4.ビジネスモデルの選択が必要だ

 アパレル業界は、新しい商品を扱うが、自らのビジネスモデルは古くさく保守的だ。日本のアパレル企業は、製造卸から始まった。メーカーから始まった欧米アパレル企業とは成長モデルが異なる。
 70~80年代のDCブランドブームの時に、製造卸から製造小売へのビジネスモデルの転換が行われた。それに追随し、SPA業態が生まれた。DCブランドブームとは、製品の新規性だけで売れたのではない。新しいビジネスモデルを採用したからこそ、爆発的に成長したのだ。
 その後、「ファストファッション」が登場した。この動きは、生産地移転に伴う、新興国の経済成長と、そこに誕生した新中間層に起因している。これまでファッションを楽しむ余裕のなかった層が、ファッションを楽しむようになった。ファッショントレンドに則した低価格商品が新しい市場に評価されたのだ。
 加えて、先進国のデジタルカルチャーの進化と、ファッション離れも作用した。それまでファッション消費に使っていたお金をデジタルに使い、ファッションは安くて見栄えの良いファストファッションで十分と考えるようになったのだ。
 現在、日本ではブログやSNSという新しいメディアを活用するビジネスモデルと、インターネット通販を基本とした新しいビジネスモデルが成長しつつある。これらの新しいビジネスモデルと、新しい顧客層や新しい商品群が組み合わされれば、次世代の成功モデルとなるだろう。
 アパレル業界は、いたずらに海外市場に進出したり、生産拠点を移転する前に、自らのビジネスモデルを再構築しなければならないのではないか。その上で、社内の無駄をなくし、売上と利益確保に直結する組織作りと人材育成が必要だ。
 現在の組織を見直してみよう。仕事のできない人に仕事を任せていないか。商品が分からない人間に商品を任せていないか。昔の基準で商品を評価していないか。社員は、新しい時代に対応した知識や情報を身につけているか。そのための教育は行われているか。
 これからのファッションビジネスは、欧米の模倣では発展しない。もちろん、旧来通りの手法も通用しない。日本企業は日本企業のオリジナルの経営手法やビジネスモデルを確立しなければならない。遠回りなようだが、ここにこそイノベーションの元があると思う。

*有料メルマガj-fashion journal(81)を紹介しています。本論文は、2013.6.17に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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