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December 20, 2013

ノウハウをシェアしよう j-fashion journal(89)

1.情報共有も教育も不十分

 「自分の夢は他人に話さない」と言った学生がいた。自分の夢を他人に話すと「夢を盗まれる、夢を真似される」と思ったらしい。しかし、聞いただけで真似できるような夢は少ない。それほどユニークなアイディアなど、そうはないのだ。
 むしろ夢は他人に話した方がいい。夢の実現に手を貸してくれる人が現れるかもしれない。というより、たった一人で夢を叶えることなどできない。支えてくれる人、協力してくれる人がいてこそ、初めて夢は実現するのだ。
 社会人でも自分の仕事を大事にしまい込む人がいる。周囲と情報を共有せず、後輩を育てようとしない。本能的に自分のテリトリーを守ってしまう。意識しなくても既得権を守っているのだ。
 私のようなフリーランスも同様だ。知識や情報は商売のネタであり、それをシェアするのは不安だ。一方で、自分の仕事を理解してくれる人がいなければ仕事を依頼されることもない。言うのも怖いけど、言わなければ何も始まらない。そんなジレンマを感じている。

 学校は教育機関であり、知識、ノウハウ、情報を教えてくれる場所だ。しかし、大学も専門学校も、社会経験のない教師が多い。従って、ビジネスに直結した教育が行われていない。終身雇用の時代はそれで良かった。企業は「学校では基本だけを教えてくれればいい。具体的なことは入社してから教える」という姿勢を持っていた。しかし、終身雇用が維持できなくなり、即戦力となる人材を求めるようになった。しかし、企業も学校も何も変わっていない。
 何年も前から「グローバルに通用する人材が欲しい」「ビジネスを理解しているデザイナーが欲しい」というニーズは高まっているが、実際には対応できていない。学校は自らの正当性を主張し、企業も何の手も打たない。困るのは学生だけである。
 就職しても「先輩は仕事を教えてくれない」という人も多い。新卒の人材を採用しなかったために、先輩が存在しないという企業もある。あるいは、ビジネス環境の変化が激しく、後輩を教育できるような知識やノウハウを持っていない社員も多い。社内教育もできないままに、「仕事をやれ」「ノルマを果たせ」と言われても、どのように仕事をすればいいのか、どうすればノルマが達成できるのかがわからないのだ。
 欧米では業界団体、あるいは有志企業が学校を設立することが多い。金も出すし、講師も出す。情報もノウハウも出す。代わりに業界に貢献する人材を育成するのだ。
 私が伊勢ン視察したアメリカ企業は、販売成績が悪かった時に、「どのような指導をすればいいのか」というマニュアルも整備されていた。例えば、売上が上がらない販売員には、教育用ビデオを見せる。それでも駄目だったら、インストラクターが指導をする。それでも改善できなければ、退職を勧告する場合もある。日本のように単純に頭ごなしに叱るのではなく、具体的な方法を指導する仕組みが存在するのだ。
 こうした違いを考えると、日本企業は国際競争で勝ち抜くのは困難ではないか、と思えてくる。
 
2.ノウハウのシェアはPRにつながる

 学校にも業界も結局、自分の利益を優先している。教師の雇用を守ることを前提にすれば、教師をリストラして、外部から専門家を招くことはできない。不況に苦しむ企業は、社員教育への投資を行わない。「人材が大切だ」と言うものの、精神論ばかりで具体的には何の手も打たれていないのではないか。
 それなら、自分たちでやろうではないか。それが今回の主旨だ。
 まず、我々の意識を変えよう。ノウハウをシェアすることは、営業につながる。ノウハウをシェアすることは、自分の仕事が楽になる。こう考えられないだろうか。
 例えば、縫製工場のノウハウとは何だろう。準備工程、縫製ラインの組み方、あるいは、特殊ミシンを活用した工程の合理化。縫製工場のノウハウは高度だ。学生が勉強するような基本的なことであればノウハウの漏洩にはならない。
 もし、裁断、縫製の基本に加え、縫製工場で働く喜びややり甲斐を伝えることができれば、縫製工場の技術者として就職したいという若者も出てくるかもしれない。
 また、縫製工場が 人材育成のために動画を配信することは、自らの工場の広告宣伝にもつながる。人材育成にも力を入れている社会的な存在であることを訴求することができるだろう。
 同様のことは、テキスタイルメーカーにも言える。各工程を動画で解説をして欲しい。機屋、染色・整理加工、卸のそれぞれの業務について、工程毎に解説して欲しい。それは、メイドインジャパンの重要性を伝えることにもなるし、モノ作りの仕事をしたい若者への訴求にもなるだろう。
 現在のファッション専門学校は、家庭洋裁を基本にしている。それを産業レベルに置き換えなければならない。生地は生地屋で買うものではなく、開発するものだ。購入するにしても、オリジナルの色を指示する。あるいは、コーディネートを考えた色を選ばなければならない。
 また、生地の選択はシルエットを決めるだけではなく、小売価格を決定する要素でもある。こうしたことは学校では教えてくれない。アパレル企業で働く人が、ビジネスとしてのファッションを教えることは、自らの地位を危うくするものではない。良い人材を集める手段にもなり得るのだ。
  
3.業務の標準化と職業に対する思想

 アパレル企業のノウハウのシェアは、業界団体で取り組むべき課題である。遅ればせながら、日本も労働力の流動化が始まっている。各企業が独自に運営していたのでは、外部人材、途中入社の経験者を有効活用することができない。これは、アパレル業界にとって大きな問題だろう。
 そろそろ日本のアパレル業界も、欧米のようにアパレル業界として業務の標準化を図るべきではないだろうか。それを映像化すれば、教材として使用できるだろう。
 企画のMD、デザイナーの仕事については、仕事の定義そのものを変えなければならない。デザイナーはデザイン画を描き、パターンを修正する仕事ではない。ブランドのイメージを具体化し、それをプレゼンテーションする仕事だ。従って、技術だけではなく、プレゼンテーション、コミュニケーションの技術を身につけなければならない。また、デザイナーといえども、基本的な経営の理解も不可欠だ。
 パターンナーは、個々にパターンを引くことが仕事ではなく、ブランド全体のシルエットやゆとりの統一感を表現しなければならない。デザイン画に似せればいいのではなく、ブランド全体の商品群を設計するという姿勢が求められる。デザイン画があってもなくても、ブランドのプロトタイプを設定し、それをパターン展開していく仕事である。
 パターンナーは、ブランド全体のシルエットをコントロールし、縫製工場と企画室をつなぐ役割を果たす。その意味では、パターンだけでなく、縫製の知識も必要だ。デザイナー、技術者とのコミュニケーションも欠かせない。
 現在のファッション専門学校のように、好きな服のイラストを描いて、それを個々の体型に合わせてパターンを作り、自分で縫製するという手法は改めるべきである。デザイナーは発想からプレゼンテーションまでのクリエイティブ部門のプロ,パターンナーはパターンから縫製までの技術部門のプロを目指すべきであり、双方の職能を混同してはならない。家庭洋裁では一人で全てを行わなければならないが、産業としての服づくりは分業が前提になる。互いに求められる知識、技術、能力、思想の違いを認識し、プロとしての目標を設定しなければならない。
 もちろん、2~4年の在学中に、全てを習得するのは不可能だ。しかし、学生の時から職業、職種に対する思想を正しく持つことは、その後のキャリア形成においても非常に価値がある。教育機関は在学期間だけの教育を考えてはならない。学生が卒業して、一生をかけてキャリア形成をしていくための、スタートアップと位置づけるべきである。

4.動画をシェアしよう

 ノウハウをシェアする具体的な方法は、動画のシェアである。これは、若い世代の協力が不可欠である。全国から画像を集め、編集して、アップロードしなければならない。
 既にYouTube上には縫製を教えてくれる動画がある。原寸だと大きすぎて動画に服全体が映らないからと、縮小した型紙を使い、服のどの部分を縫製しているのか、視聴者に分かるように配慮している。しかも、ポランティアで。
 既存の学校や企業の教育体制を責めても、状況を変わらないだろう。既得権はそれほと強い。既得権を引き剥がして、人材を置き換えるのは至難の技だ。それより、草の根的に、一つでも参考になる画像をアップした方がいい。
 受験予備校では、動画配信を有効活用している。大学も専門学校も、ほとんどの授業は
ライブ配信、ビデオ配信で代替えすることが可能だ。むしろ、チャットやツイートを活用した方が質問もしやすいし、理解しやすいのではないだろうか。
動画を基本に考えれば、教師の問題も解決する。全国のプロが力を結集すれば教材作成は可能だ。教育は学校が行えばいい、と考えがちだが、教育は学校のために存在するのではない。日本という国のためでもなり、業界のためでもあり、学生個人の幸せのためでもある。それを実現する第一歩は、一人一人がノウハウをシェアしようという意志に他ならない。

*有料メルマガj-fashion journal(89)を紹介しています。本論文は、2013.8.12に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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