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October 14, 2013

ブランドにおけるテキスタイルの重要性 j-fashion journal(77)

1.カラー、素材と服の関係
 
 ファッショントレンドは、色、糸、テキスタイル、アパレルの順に発表される。糸メーカーは色を見ることで、糸の企画をする。テキスタイルメーカーは糸を見ることで、テキスイタルの企画をする。そして、アパレルのデザイナーは、テキスタイルから服を発想する。こうしたことができるのは、お互いに密接に関係しているからだ。
 アパレルのデザイナーが、トレンドカラーを見るのは、店頭展開の一年前に開催されるテキスタイル見本市だ。その一年前にトレンドカラーは発表されている。
 まず、色と糸の関係を見ていこう。糸にはシルクのように光沢のあるストレートな糸と、ツイードに使う太番手のウールのように光沢のない粗野な表面効果を持つものがある。もちろん、その中間に様々な糸が存在する。シルクでも精錬しない生糸ならば、ウールや麻のような風合いになる。ウールやコットン、麻なども、高級な細番手の糸は光沢がある。

 トレンドカラーが彩度の高い鮮やかな色が主体なら、糸メーカーはそこから細くて光沢のある、シルク、合繊等を思い浮かべるだろう。綿紡績ならば光沢のある繊維長の長い超長綿、毛紡績なら光沢のある細番手のカシミヤを思い浮かべるだろう。
 その反対に、トレンドカラーが彩度の低いナチュラルなカラーが主体であれば、太番手の表面効果のある糸を思い浮かべるだろう。意匠撚糸などを考えてもいい。このよう、糸メーカーはカラーをヒントに自らの企画を固めていく。もちろん、前シーズンの実績や、数年来の素材の傾向も分析しなければならない。
 細くて光沢ある糸は、しなやかで高密度のテキスタイルを連想させる。太くて粗野な表面効果を持つ糸は、ラスティックなテキスタイルを連想させる。こうして糸のトレンドを意識しながら、実績を考え合わせて、自社のテキスタイルの企画を固めていく。
 アパレルのデザイナーは、しなやかでドレープ性の高い生地を見れば、そのテキスタイルを生かしたデザインをする。高密度の布はボディにフィットしたタイトなシルエットに適しているし、低密度の布はオフボディのシルエットに適している。
 こうした、色からアパレル製品までトレンドは伝播していく。トレンド情報とは、そのまま使えば売れる情報ではない。それぞれに個性的なブランドが、次シーズンにどんな変化をするのかを考える指針となる情報なのだ。

2.ブランドコンセプトとカラー、素材の選び方

 ブランドコンセプトは、シーズン毎に変化するものではない。ブランドリニューアルが行われるまでは、不変である。ブランドコンセプトは、顧客ターゲットと流通チャネル、ブランドの品格を決定する。そして、そのブランドにふさわしい価格帯を設定する。
 ブランドコンセプトの範囲の中で、デザイナーはシーズンテーマを設定する。このとき、未熟なデザイナーが大きな変化を打ち出すと、ブランドの固定客は逃げ出してしまう。対象年齢や顧客の趣味がシーズン毎に変化すると、そのブランドは常に不安定になり、安定したファンを獲得することはできない。シーズン毎に必ず確実に変化するが、顧客ターゲットを変更してはならないのだ。
 素材を選ぶときには、アパレル製品の価格を設定し、その範囲内で使える素材の価格を設定しておく。できれば、アイテム毎の素材価格を設定して欲しい。そして、素材を集める時には、最初から製品価格に合わないものは選ばないことだ。デザイナーはその範囲で生地を選ぶことにより、価格の統一が可能になる。
 また、展示会、コレクションの着分見本が取れること、予定している製品の納期に間に合うものだけを集めなければならない。それを管理するためには、一覧できる納期別、アイテム別の製品マトリクスを作ることである。テキスタイルを仕入れる担当者は、常にそのマトリクスを確認しながら、生地を選んでいく。また、同時に、それぞれのアイテムのカラーも設定していく。そして、各アイテムがコーディネート可能な構成になっているかを常にチェックする。
 
3.シーズンテーマとカラーパレット、トレンド素材

 デザイナーは、シーズン毎にシーズンテーマを設定する。そのテーマを元に、テキスタイル担当は生地をセレクトする。ここで、重要なことは、テキスタイル担当者はブランドコンセプトを理解し、その範囲の中でシーズンテーマを解釈することである。
 最初にカラーパレットを構成しておくことも重要である。カラーパレットが構成されていれば、無地、先染め、ジャカード、プリント、カットソー、ニット、服飾雑貨等も全てトータルで企画することができる。
 どんなブランドでも、ベーシックな無地に近い素材と、トレンドを表現する素材のバランスを考えなければならない。素材の構成次第で、商品構成はほぼ決定してしまう。あるイタリアブランドは複数アイテムを作れる基本素材で全体の6割の商品を作る。素材を集約することはコストダウンにもつながるし、生産計画の変化にも柔軟に対応できる。
 テキスタイル担当が優秀なら、最終的に製品の売上が大きく落ちることはなく、デザイナーの評価も上がるだろう。デザイナーは、テキスタイル担当と対立するのではなく、互いに信頼し合って、チームとして顧客に対応しなければならない。

4.素材開発と管理方法

 アパレル製品を構成する時に、素材開発と展示会等でのピックアップの比率をあらかじめ予定しておくべきだ。素材開発には長いリードタイムを確保しておかなければならない。ヨーロッパのメゾン等も、通常は2段階で素材開発、素材調達を行っている。
 現在の中国アパレル等は、見本市や香港でピックアップした素材サンプルを別のメーカーに渡し、それを安くコピー生産できるならそこから調達し、安くできないなら、ピックアップした相手から調達するという手法を採っている。しかし、この方法は長く続かない。真のオリジナル素材を開発し、他ブランドとの差別化を図ることはできない。
 多くの日本アパレル企業は、テキスタイル問屋が持っている見本帳から生地を選んでいるが、これでは店頭で他ブランドとバッティングすることは必至である。また、あまりにも企画生産のリードタイムが短いためにオリジナル素材開発ができないブランドも多い。素材開発の重要性を理解し、素材での差別化を図るならば、十分なスケジュールを確保することである。
 多くの場合、商品化の意思決定を遅らせても、あまり状況は変わらない。逆に引きつければ引きつけるほど、素材の調達の可能性が狭まり、商品が同質化してしまう。その結果、価格競争に陥る。
 例えば、開発を全体の4割、ピックアップを6割と決めておくことで、それらの課題は解決できるだろう。
 問題は、的確なシーズンテーマ素材を出せるデザイナー、そのテーマに基づく素材を開発し、ピックアップできるテキスタイル担当の人材育成である。同時に、テキスタイルメーカーにも原材料、機械設備、後加工等を理解しているテキスタイルデザイナーが不可欠だ。この両者が話し合いながら、素材開発をするので、ヨーロッパのメゾンでは、高度なテキスタイル開発を行っている。
 日本、アジアにはこうした体制が整備されていない。業務を通じて、テキスタイル担当の人材育成、テキスタイルメーカーのテキスタイルデザイナーの人材育成を同時に行うという取り組みが必要である。

*有料メルマガj-fashion journal(77)を紹介しています。本論文は、2013.5.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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