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October 13, 2013

]欠品の誤謬 j-fashion journal(76)

1.小売店が欠品を嫌う理由

 小売店が利益を最大化するには、売り場効率をいかに高めるかにかかっている。小売店がどんなに頑張っても、簡単に売り場面積が増えるわけではない。限られた面積の売り場の中で最大の売上を図ることこそ、小売ビジネスのポイントだ。
 その限られた面積の中で、顧客が求める商品が品切れでないということは確実に取れるはずだった売上をみすみす逃したことになる。これは、小売店にとって許しがたいことだ。
 発注した商品が入荷しないという事態になれば、仕入れ先に対しては怒り心頭だ。「取引停止」になることもある。
 発注していない商品でも足りなくなれば、期中の追加生産を迫る。しかし、製造メーカーにとって、少量の追加生産は採算が合わない。計画的な企画生産にも支障をきたす。売れたとしても、大したことはないし、売れ残る確率も高い。メーカーは、そう考える。

 委託仕入れの百貨店アパレルや、SPAのような製造小売業では、在庫リスクがあるので、小売業のように売上だけを追求するわけにはいかない。単位面積あたりの売上を最大にしても、大量の不良在庫が残れば、売価変更による損金が発生する。売上よりも利益を優先しなければ、倒産してしまう。実際、売れているブランドでもキャッシュフローが回らなくなって倒産することもある。
 小売店は売場効率を追求する。SPAはプロパー消化率を追求する。そこに基本的な対立がある。
 
2.表面的な欠品と本質的な欠品

 顧客が店頭で「これの色違いはないの?」と質問する。販売員が「あいにくと品切れしています」と答える。「あら、そうなの」と売り場を出て行く。この様子を見ると、小売店の人は「品切れがなければ売れたのに」と悔しがる。しかし、本当にそうなのか。
 確かに、その色があれば、試着したかもしれない。でも、軽い気持ちで聞いただけかもしれないし、試着後に断念したかもしれない。また、その顧客は他の売り場でもっと高額の別の商品を購入したかもしれない。
 私が最も疑問にと思うことは、小売店の人は自分たちが品揃えした商品については、欠品を追求するが、品揃えしていない商品については気にしていないことだ。例えば、顧客が通路から売り場を見て、「私の好きそうなものはないな」と心の中でつぶやいて店に入らない場合、欠品とは思われない。
 私は売り場をリサーチする時に、「その売り場にあるべきなのに、品揃えされていない商品」を考える。しかし、多くの人は、売り場に展開されている商品だけを見て、商品が良いとか悪いとか言っているに過ぎない。欠品問題も同様だ。バイヤーやMDが消費者のニーズを読み違えて、最初から欠品している商品は欠品にカウントされていないのである。
 商品MDの改善とは、既存の商品の改善ではなく、品揃えされているべきなのに、品揃えされていない商品を発見することである。既存の商品の中で、売れるもの、売れないものは、POSで把握することができる。しかし、売り場にない商品はカウントされない。そして改善されることもないのである。POSは変化のないコモディティ商品に関しては、有力なツールとなる。しかし、変化が起きた場合、POSに依存することは非常に危険だ。
 それを防ぐには、常に見えない商品を発見する努力が必要である。
 
3.「欠品」するから前倒しで購入する

 有名ブランドで「限定商品」を発売すると、ファンは行列を作って買い求める。限定商品は欠品を非難されることはない。
 かつて、日本でQR(クイックレスポンス)がブームになっていた頃、あるイタリア人がこう言ったそうだ。「日本人はアメリカ人に騙されている。QRでいつも製品が店頭に並んでいたら、早い時期に買う顧客がいなくなるではないか。品切れしたら、次の商品を売ればいいんだ」
 これは真理である。「早く買わないと品切れする」と思うから、まだ寒い季節に夏物の商品を購入し、まだ暑い季節に秋物を購入するのだ。常に売り場に商品が山積みされ、バーゲンの期間でも商品が豊富に揃っているなら、誰が早い時期に商品を購入するだろうか。実際に使う季節に、店頭に行けばいいし、その時にはバーゲンになっているのだから。
 SPAの発想で行くと、「欠品」は計画通りに売れた証明だ。売上予算を達成するには、売れる商品だけ売ればいいというものではない。売れる商品は最初になくなる。次には、残った商品をいかに販売するかを考えなければならない。売れない商品を売れないままに残しておくのでは、全体の消化率が上がらない。売れるものだけ売ればいい、という考え方は、返品ができる問屋商売を前提にした小売店の姿勢である。
 
4.時代の転換点には扱っていない商品に注目すべきだ

 市場の速度にはムラがある。毎年同じ商品が売れる時期と、変化が続く時期がある。現在は、時代の転換点であり、次第に需要が変化している時期である。
 売れる商品を真似しても、次の年には売れなくなることが多い。売上が下がる傾向が見えた次の年には全く売れなくなる。同時に、これまで売れていた商品の売上が止まってしまう。
 こういう状況になるのは、既に需要が変化しており、そこに供給側が追いついていないということである。それなのに、これまで同様にPOSで売れ筋、死に筋を見つけようと思っても不可能である。
 むしろ、これまで扱っていない商品を扱わなければならないし、過去に取り扱いを止めた商品を発掘しなければならない。その意味では、商品MD計画というより、新業態開発を行うという意識が必要になる。改善ではなく、イノベーションが必要になるのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(76)を紹介しています。本論文は、2013.5.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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