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October 11, 2013

シニア市場には右脳で j-fashion journal(70) 

1.混沌とした市場動向
 アベノミクスで消費が刺激されている。先行きの期待から円安・株高、不動産高が起きている。また、TPP交渉参加も決定した。
 アベノミクスでは、2%程度のインフレを目指しており、物価は上がるのだろう。アベノミクスがなくても、中国の原材料費、人件費は上がり続けている。加えて、円安。輸入品の価格が上がり、ガソリン代が上がっているので、物流経費が上がっている。
 一方で、TPPが締結されれば、食料品を中心に価格は下がるかもしれない。我々の生活には、値上げと値下げの両方の圧力が掛かっている。
 その上に、消費税が上がる。消費税が上がるの見込んで、景気刺激策の補正予算が組まれているが、財政赤字が解消される見込みについては不透明だ。
 流通企業は、中国生産一極集中の見直しが進んでいる。昨年末の反日暴動以来、商品調達先の分散化が必要になっているのだ。この動きにも、二つの方向性がある。東南アジアシフトと国産シフトである。ここにも値上げと値下げの二つの動きがある。

 今年は戦後ベビーブーマーの団塊世代が65歳定年を迎える年でもある。リタイヤすれば、収入が減少する。統計をみても、リタイヤ世代は月々赤字である。しかし、多額のか貯蓄があり、それを取り崩しながら生活をすることになる。
 一方、若い世代の消費パワーは落ちている。スマホ、タブレット端末等は売れていても、一般の消費財の消費は落ち込んでいる。衣食住、どれを取っても、消費には消極的である。
 このように、市場は混沌としている。閉塞感というより、視界がきかないのだ。
 
2.シニア市場の消費は質的に変化する
 2013年は、団塊世代が一斉に65歳の定年を迎える年だ。消費者の最大ポリュームとなる世代がリタイアすることから、顧客ターゲットをシニアにシフトする動きが流通企業を中心に目立っている。
 家計調査等の統計を見ても、60歳以上の消費は旺盛だ。反面、20歳代の消費は減少傾向にある。
 男性は65歳で人生の大きな転機を迎える。しかし、女性はそれ以前から徐々にシニア生活に少しずつシフトしている。子供の自立、親の介護、親の介護からの解放。周囲の環境変化により、生活も劇的に変わる。そして、夫の定年もまた、女性に大きな変化を与える。毎日、夫と一緒にいる生活を過ごさなければならないのだから。
 とりあえず、男性に焦点を当ててみたい。会社勤めは、基本的に毎日の仕事が与えられる生活だ。今日、一日何をして過ごそうと思い悩むこともないだろう。
 多くのビジネスマンにとって、仕事で使うのは左脳が主体である。論理と分析、予算と実績。そんな生活を数十年続けてきた。しかし、リタイヤすると、右脳中心の生活になる。個々の事象の分析よりも、人生の全体像を考えなければならない。計数管理よりも心の満足が優先するのだ。
 勤めている時には、会社なら決算があり、半期、四半期と分割される。予算と実績を比較しながら、時間は過ぎていく。先のことを考えると言っても、会社のプロジェクトならせいぜい3年程度である。しかし、リタイヤしてからの人生は10年単位で考えなければならない。10年単位の生活を考えた上で、商品を購入し、毎日の生活を楽しむのである。
 
3.美しいデザインは楽しい時間消費につながる
 人生は収支バランスだけで決定するのではない。同じ経済規模で生活していても、幸せな人生も不幸な人生もある。人生とはクリエイティブなものだ。自分の人生を決定するのは自分自身である。自分自身がどんな人生を送るのか、というシナリオが必要になるのだ。
 小売業は商品を売ろうとする。製造業は商品を作ろうとする。しかし、顧客は商品が欲しいわけではない。その商品を購入することで、どんな人生のシナリオか描けるのかが問われるのだ。
 なぜ、消費者は安い商品を買うのか。それは収入が少ないからだ。月々の給料が決まっていて、他に使うものが決まっていれば、その他の出費は抑えなければならない。ビジネスマンは、月給制なので月々の収支を考えている。毎月の収入よりも支出を抑えることが正しい生活なのだ。
 シニアは基本的に月々の収入は年金程度である。しかし、平均的に見ると2000万程度の貯金がある。安い商品を使って節約しても、来年死んでしまうのならば、何の意味もない。お金の使い方はその人のストーリー次第だ。その人の考え方で、安い商品を買うのか、良質な商品を買うのかが決まる。
 安いだけの商品を店頭に並べることは、「あなたの人生は安い商品を使えばいいのだ」というメッセージになる。そのメッセージに共感すれば商品を購入するし、共感しなければ購入しない。安い商品を購入するのはいい。しかし、それで節約した上で何をすればいいのか。それが用意できなければ、顧客は他店でお金を使うことになる。
 例えば、どんな商品でも人生を豊かにする要素はある。美しいデザインの商品は、それをコレクションすることで喜びになる。実用的な価値とは、それを使う時間だけ満足すればいい、という考え方だ。しかし、使っていない時間の方が長い。鍋もフライパンも使っていない時間の方が長い。使わない時間に見ていても楽しい鍋やフライパンが求められているのである。時間消費とは旅行や観劇だけではない。毎日の静かな時間が豊かに過ぎていくことも時間消費である。

4.社会保障としての仕事を考える
 余生をどのように過ごすのが幸せなのか。アメリカ人はカントリーライフに憧れがある。西部開拓の頃からの遺伝子かもしれない。大金持ちの理想的なリタイヤ生活は、西部の牧場を買って、カントリーライフを楽しむことだという。
 日本人はどんな余生を理想と考えるのだろう。
 現在の段階では、趣味をして過ごすのが理想的だと思われているようだ。ウォーキング、ダンス、手芸、写真撮影、カラオケ等々。しかし、それらを20年も続けられるのか。
 日本人は仕事を単なる労働とは思っていない。生きがいだと思っている。生涯現役を目指したいという人も多い。現在の年金制度は、高齢者、障害者、生活保護を受けなければ生活できない貧困層の人々を生存させるという発想である。
 年金には、できる仕事を与えるという発想がない。仕事になると、市場原理だ、弱肉強食だというように、厳しいことばかりを言い、効率を追求する。しかし、これからは効率を優先しない仕事、人生の自己実現のための仕事をどのようにプロデュースするかという発想が大切になるのではないか。
 これは、震災の復興支援にも共通している。仮設住宅に閉じ込めて、食料だけを与えても、生きがいがなければ自殺してしまう人が出てくる。これは高齢者問題にも共通している。
 貧しい国に手工芸などの仕事を与え、支援のためにその商品を輸入し、販売することをフェアトレードと言うが、今後は国内の高齢者向け、社会的弱者向けのフェアトレードがあってもいいのではないだろうか。そして、その商品を販売するのも仕事になる。
 こうした社会保障に準じる仕事と、市場原理に基づく仕事をどのように調整すべきか、は今後考えていかなければならない。若い世代に仕事を配分せずに、高齢者が職場を独占するのも問題である。日本全体、全世代にどのように仕事と報酬を配分するかを再構築するという発想が必要になるだろう。

*有料メルマガj-fashion journal(70)を紹介しています。本論文は、2013.4.1に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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