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July 05, 2013

中国有力代理商によるセレクトショップの可能性 j-fashion journal(49)

1.中国有力代理商が日本ブランドのセレクトショップを展開

 2012年11月1日付繊研新聞の1面に興味深い記事が掲載された。かなり長文の力作である。以下に引用する。

◆「中国の有力代理商『力誠』日本のデザイナーブランドを集積、成都にセレクト店」
 中国の有力代理商、力誠は来春、成都で日本のデザイナーブランドを集積したコレクトショップを立ち上げる。自社で運営する高級ファッションモール、成都美美力誠に550㎡のスペースを確保。「ジェイ・ドット・アイ」のショップ名でオープンする。
(中略)
 現段階で出店が内定しているのは12ブランド。「自分が導入したいと考えていたブランドのほとんどが良い返事を示してくれた」(力誠の陳龍プレジデント」という。来春のオープンに向けて、更に複数のブランドとの交渉を勧める考えだ。
 1号店に続いて、成都の新CBDエリアに650㎡の売場を確保し、来秋のオープンをめざす。2号店は、力誠が新たに開発を進めている売場面積3万8000㎡の高級ファッションモール内。~中略~市政府の移転先に近く、今後の消費拡大が期待されるエリアとなっている。

 日本のデザイナーブランドに着目したのは、「中国の市場や消費者は、個性的なブランドを求める傾向が強まっている」ため。「なかでも日本のデザイナーブランドへのニーズが高まっている」と説明する。ショップ内では、核となるブランドをコーナーで配置し、型数の少ないブランドはハンガーで販売する。コーナー展開で人気が高まれば、単一ブランドのショップを中国全土に広げ区ことも計画している。
 力誠の主な事業は、中国での高級ブランドの販売代理と高級ファッションモール、成都美美力誠3店舗の運営。販売代理を手掛けるブランドは24を数え、店舗数は132。ダックスの中国総代理をになっているほか、「サルヴァトーレフェラガモ」「ディーゼル」「プリオーニ」などのエリア代理権も保有している。
(中略)
◆マーケットあり、成功には自信(陳龍プレジデント)
 中国のマーケット、消費者が大きく変化し、日本のデザイナーブランドを好む消費者が増えている。必ずここにはマーケットがある。誰もアプローチしていなかっただけだ。香港系のショップはあるが、中国のマーケットをよく理解した本土企業が、日本ブランドのセレクトショップを手掛けている例はない。中国人の考え方で、日本のデザイナーブランドの良さをきちんと伝えることが必要だと考えた。日本のデザイナーブランドだから、中国で難しいということは全くない。成功させる自信がある。
 欧米の高級ブランドの販売代理を行っており、中国人のスペシャリストを揃え、全土をカバーしている。各地のショッピングモール、百貨店との関係も緊密で、ジェイ・ドット・アイでスタートしたブランドが単独店を出すにしても、スムーズに進むだろう。
 成都美美力誠のVIP顧客は7万人以上。無料での駐車代行、カフェの利用などサービス面も充実させている。販売員も全て自前で、独自のトレーニングを行っている。こうした人材、顧客サービス、顧客リストは大きな強みだ。ブランド企業とのパートナーシップで一番大事なのは、どれだけファッションが好きかということ。資金でも企業規模でもない。私は生まれながらのファッション好きだ。(以上、2012年11月1日付繊研新聞1面記事より引用)

2.曲がり角の来た中国アパレルの代理商システム

 私がこの記事に興味を持った理由を解説していきたい。
 第一に「セレクトショップ」という業態が中国では珍しいということ。一般的に中国ではメーカーが代理商を募り、ショップで展開する。そのため、多くのショップは1ブランドショップであり、異なる会社の複数のブランドを展開する事例は少ない。
 香港の「IT」は例外的な存在である。本土企業のセレクトショップは、少数のインポート商品かアウトレット的なものがあるだけだ。勿論、市場から仕入れて来るような小さな品揃え型専門店は存在するが、イメージの高いブランド商品を扱う大型セレクトショップは非常に少ない。
 しかし、セレクトショップのメリットも大きい。1ブランドショップの代理商は多店舗展開が義務づけられているし、半年毎にそのショップで販売する商品を買い取りで仕入れなければならない。ブランドの売上が悪くても、他の商品を販売することもできない。まさしく、メーカーと運命共同体だ。
 日本企業の商品を仕入れて構成するセレクトショップであれば、シーズンは細分化されており、多頻度で少量の仕入れが可能だ。売上を見ながら、ブランド構成比を変えることもできる。仕入れ作業が煩雑であるというデメリットもあるが、これまでメーカーから在庫リスクを押しつけられてきた代理商であれば、そのメリットは非常に大きく感じられるだろう。
 第二に注目したいのが、セレクトショップを運営するのが、「高級ブランドアパレルの代理商」であることだ。中国の代理商システムは、市場競争の激化と共に曲がり角を迎えている。メーカーに依存するのではなく、自社でブランドを立ち上げ、OEM生産工場から商品を仕入れるという取り組みも始まっている。需要過多の時代は、生産設備を持ち、商品を供給できるメーカーが優位にあったが、供給過剰となった現在では顧客を持ち、実際に接客販売している小売店側が相対的に強くなる。
 今回の事例は、まさしくその変化を体現しているものだ。

3.デザイナーブランドにアジア市場進出の可能性
 第三に注目したいのは、日本のアパレル企業が「現地法人を設立しなくても、中国市場進出ができる」可能性である。
 これまで中国市場進出と言うと、「とにかく現地法人を設立しなければ何もできません」「やはり現地法人なら独資に限ります」という商社担当者に乗せられて、現地法人設立からスタートするケースが圧倒的だった。
 私は以前から「現地法人う設立するにしても、合弁の可能性も残しておいた方がいい。あるいは、現地法人設立をしなくても、中国市場で商品を展開する方法を考るべきだ」と主張し続けてきた。中国で法人を設立することは、何もしなくても経費が掛かる。あらゆる案件に許認可が必要であり、雇用も難しい。下手をすれば労働訴訟が起きるし、事業に失敗して撤退する時にも、様々なアクシデントがつきものなのだ。
 今回の「中国の有力代理商による日本ブランドのセレクトショップ」という構想は、私が理想としていたものだ。しかし、相手が現れなければ絵に描いた餅である。それが相手が現れた。いよいよ時代は動きだした、という印象である。
 もし、この流れが加速すれば、日本のアパレル企業の中国市場への浸透もスピードアップされるだろう。他力本願と言えばそれまでだが、やはり中国市場は中国企業、中国人しかコントロールすることはできないのだ。
 第四に注目すべきは、彼らが選んだのが「日本のデザイナーブランド」であることだ。陳龍プレジデントの発言の通り、中国の消費者は個性的なデザインを求めている。しかし、ユニクロや無印良品、日本の大手アパレルのブランドにしても、そのニーズには応えられなかった。しかし、日本のデザイナーブランドは、そのニーズに応えられる。
 これにより、日本のデザイナーブランドには新しい可能性が膨らんだと思う。自ら、海外市場へのマーケティングができなくても、アジア市場のバイヤーが仕入れに来る時代が到来するかもしれないのだ。

4.アジアのアイデンティティを表現する先輩デザイナーのポジションを

 中国本土企業が日本のデザイナーブランドに着目した。その動きはとてもありがたいことであり、日本のデザイナーブランドにとっては大きなチャンスである。しかし、市場での評価が出なければ、このチャンスは潰れてしまう。それを防ぐためには、是非、デザイナーに中国市場に向き合ってほしいと思う。
 私が中国市場を重視しているのは、中国本土だけを考えているのではない。中国市場は中国語圏市場に通じている。グレータチャイナと呼ばれる香港、台湾を加えた中国だけでなく、シンガポールや東南アジア等の華僑経済圏も含まれる広大な市場である。
 今回のケースが成功した後に、日本のデザイナーブランドは積極的にアジア市場にアプローチすべきだと思う。合同展示会も日本国内だけで開催するより、アジアで開催した方が良いのかもしれない。
 中国政府の対日政策がどのように変化するかは分からないが、アジア全域を見渡せば、北京、上海だけでなく、香港、シンガポール等も視野に入れておくべきだろう。
 そして、アジアのプロモーション戦略は、TGCとは一線を画すべきだと思う。日本では既にデザイナーブランドと一般のブランドとの境界線が曖昧になっているが、アジア市場では、むしろデザイナーブランドのアイデンティティが確立していくのではないかと思われる。その理由は、アジア各国がそれぞれの国で国内デザイナーブランドが注目されると思うからだ。
 急激な経済成長により、最初に消費を牽引するのはごく一部の富裕層であり、その対象はヨーロッパのラグジュアリーブランドが中心になる。しかし、その後誕生する中間層の中から現れるであろう、新しいファッション世代は必ずアジアのアイデンティティを問い直すだろう。
 その理由は、日本でデザイナーブランドブームが起きたのと全く同じ理由である。若い世代は、その上の成り金趣味的富裕層とは同じファッションを身につけることはない。もっと個性的でヨーロッパファッションと差別化できる、自らのアイデンティティを表現するファッションを選ぶからだ。
 今回の動きはその先駆けである。私は日本のデザイナーは明確なポジショニングを必要とされると思う。最も避けるべきは、欧米デザイナーを追随していると思われることである。私は、日本人デザイナーが率先してアジアのアイデンティティを表現し、アジア各国のデザイナーの先輩格として位置付けられることを望んでいる。そして、先輩として、若きアジアのデザイナーと積極的に交流、連携して、アジアのファッション市場を活性化させる使命を負うべきだと思うのだ。 そういう意味でも、冒頭の記事は注目に値する。今後の動向に注視したい。

*有料メルマガj-fashion journal(49)を紹介しています。本論文は、2012.11.5に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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