My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« 百貨店の将来を考えよう(1) j-fashion journal(51) | Main | 日本ファッションは日本文化の表現である(上) j-fashion journal(53) »

July 05, 2013

「百貨店の将来を考えよう(2) j-fashion journal(52)

1.アンチ・チェーンストアの時代

 ヨーロッパの百貨店は産業革命により、市場に商品が大量に出回り、様々な専門店が出来て、それを大型店にまとめたところから生まれた。
 日本は明治以降、ヨーロッパの産業革命の技術を積極的に導入し、繊維製品を世界市場に輸出することで、近代国家日本の基礎を作った。そして、江戸時代から続く呉服の大店が百貨店に業態転換した。
 その後、産業革命は更に発展し、作業の標準化と分業化により、大量生産大量消費の時代に移行していく。ここで生まれたのが、店舗の標準化とチェーン展開による量販店である。
 しかし、アメリカのGMS(ゼネラル・マーチャンダイジングストア)と日本の量販店は流通形態やビジネスモデルが異なっている。アメリカのGMSは大量販売によるスケールメリットによりメーカーから大量に仕入れることでコストダウンを図り、小売価格を抑えて販売するビジネスモデルであり、商品そのものは百貨店で販売されている商品と同じだ。(コストコの品揃えを見れば理解していただけると思う)

 日本では、アメリカのようにメーカーから直接仕入れるというケースは少ない。問屋を通して仕入れることが一般的である。日本に量販店が誕生した頃は、百貨店の勢力が強く、百貨店で販売しているものと同じ商品を量販店に卸すことは許されなかった。そのため、百貨店卸と量販店卸が分離し、百貨店と量販店は全く異なるブランド、異なる商品を販売し、棲み分けるようになったのである。
 つまり、アメリカのGMSでは、百貨店と同じ商品を安く販売しているが、日本の量販店はそれなりの商品を安く販売しているのだ。
 その後、アメリカのGMSはPB(プライベートブランド)比率を高め、結果的に百貨店とは異なる商品を販売するようになった。日本の量販店もPB開発を進め、オリジナルの商品を展開するようになっている。しかし、長年の商習慣から量販店のPBは量販店卸の商品を基準に価格も品質も設定されている。
 アメリカから導入されたチェーンストア理論に基づき、日本の量販店は成長を遂げたが、チェーンストア理論が百貨店にも色濃く影響を与えたことは、これまで述べてきた通りである。
 結果的に、百貨店は標準化されない中途半端な店舗網しか構築できなかった。店舗数が少ないため、独自のPB開発も難しい。しかし、見方を換えれば、百貨店卸、つまり大手アパレル問屋がNBによる全国販売網を構築したのである。そして、1970年代から80年代にかけて、日本の大手アパレルは大きく成長した。まさに、アパレルの時代だったのだ。
 今後の百貨店のあり方を考えるには、小売店だけでなく、サプライチェーン全体を考える必要がある。最も重要なのは、ICT(情報通信技術)の進化と生産システムの変化だ。
 既に、日本の製造業は大量生産ではない。コンピュータ制御による多品種少量生産が主流であり、理論上は一品生産も可能だ。こうしたシステムで生産される日本製の製品は、「大量の商品を標準化された店舗で販売する」というチェーンストアのビジネスモデルには向いていない。チェーンストアで販売すべきは、新興工業国の大量生産の商品である。
 私は百貨店を考える時、日本のモノ作りも一緒に考えたい。それが可能ならば、日本の生産の問題と百貨店の問題が一気に解決することになるからだ。

2.百貨店を検索可能にする

我々は、何か調べる時に、まずインターネット検索する。それで分からなければ、他の手段を探す。それほどネット検索は一般的なものになっている。
「Googleで検索する」ことを「ググる」というが、何かあればググルのが一般的だ。たとえば、欲しい商品を探す時にもググる。しかし、百貨店店頭の商品は検索対象外である。インターネット時代に検索に引っかからないのは、存在しないに等しい。百貨店の店頭にある商品も検索できるようにしなければならない。
検索できるようにするには、百貨店に納品する問屋が商品の画像データベースを構築し、納品返品のデータと連携すれば難しいことではない。但し、現状の百貨店のシステムがあまりにも閉鎖的であり、仕入れ先との連携を前提にしていない。既存のシステムを全面的に再構築するとなると、経済的負担も大きくなってしまう。
現在の百貨店は、店頭で販売している商品と、通販事業部で販売している商品が全く異なっている。仕入れ先も商品も違うのだ。私は、ネットスーパーのように、店頭の商品をインターネットでも購入できるようにすべきだと思う。それにより、クリック&モルタルの相乗効果が生まれるからだ。
その構想の元で、百貨店のシステムをリニューアルすれば、店頭の商品も検索できるようになる。また、社外の仕入れ先ともデータ交換ができるようになれば、伝票レス、トレーサビリティ実現の可能性も高まるはずだ。
現在の百貨店は驚くほどネット上での存在感がない。このことは、顧客と百貨店のコミュニケーション手段が著しく限定 されているということだ。業務用システムとWEBの連携、そこから始まる新しいサービスの展開こそ、百貨店の業績回復の第一歩だと思う。

3.自主販売とイベントスペース設置

現在の百貨店は、ブランド単位の「箱売場」とアイテム別の「平場」で構成されている。セレクトショップは、統一した売場環境の中で複数のブランドが構成されている。伊勢丹のメンズ館から始まったブランドの壁を取り払った売場改革も、基本的にはセレクトショップと同じことをしたに過ぎない。
大きな違いは、セレクトショップは社員が販売しているということ。百貨店は、ブランド単位で派遣販売員を配置しているために、平場では必要以上の販売員が立つこともある。売場、商品にマッチした販売員の質、量をコントロールするには、派遣販売員ではなく、自前の販売員が必要だ。
百貨店では、問屋に依存しない自前の品揃えという意味で「自主MD」について語られることが多いが、それ以前に自主販売である。私は、自主販売は小売店の最低条件だと思っている。それができないのなら、テナントビル化するしかない。これはもう一つの選択肢だ。まずは、小売店としてのアイデンティティを守り、自主販売を行うという前提で考えてみたい。
売場構成は、前述したようなブランドの壁を取り払った売場とする。しかし、必ずしもアイテム別編集だけがベストではない。様々なリミックス、編集が可能であり、それらは定期的に見直すべきだ。そして、どんな商品構成にも対応できる体制を作らなければならない。


4.半年に一度、百貨店はテーマを更新する

現在の売場リニューアルは、ブランドの入れ換えと内装工事を意味しているが、私はテーマや編集を変えるリニューアルで良いと思っている。たとえば、そのリニューアルを半年に一回行う。これはある意味で百貨店のコレクションである。百貨店は半年に一回のコレクションを発表するのだ。
更に、各フロアにイベントスペースを設ける。イベントスペースでは、二週間から1カ月単位で運営される。たとえば、シーズン立ち上がり時期には、トランクショーが重要なイベントとなるだろう。これは、優良顧客を招待し、シーズン頭にフロアショー、展示会を見せて予約販売するというものである。
また、新人デザイナーのイベント、伝統工芸の実演売場、産地単位のプロモーションイベント、観光地の広報イベント、映画やドラマ、アイドルや歌手などのエンターテイメントとのコラボイベント、インターネット通販で販売している個人事業主のイベント等を企画し、年間の売場を回していく。この様子をUstreamやSNSで配信することで、集客につなげる。
 私は以前から、東京ビッグサイトで行われているような展示イベントの中から選りすぐり、百貨店でテストマーケティング・イベントはできないものかと考えていた。たとえば、介護用品、ガーデニング用品、デジタル製品、食品や飲料に至るまで、あらゆる商品を紹介し、実際に試してもらうのである。それを百貨店の店頭で行うことにより、百貨店には常に最新の情報、最新のトレンドが表現されることになるだろう。 
 世の中には、レギュラー売場を構えて、年間販売することは難しいが、年に1~2回の限定販売ならば可能なジャンルは多い。しかも、販売員を派遣しなくても、百貨店側で用意してくれるならば言うことはないだろう。これにより、あらゆる業種業態の企業が仕入れ先になりうるのである。百貨店を売場だけではなく、メディアとしての機能を持たせること。これにより、日本中の企業が元気になってくれれば言うことはない。

5.日本のプライドを表現する

 かつての百貨店は、世界中から最新の物産を輸入し、紹介する店だった。最新の情報を発信するメディアだったのだ。現代の日本はグローバル化が進み、世界中からの商品があふれている。そうなればなるほど、我々は自らの内面、自らのアンデンティティに向き合うことに意義を感じる。グローバルな時代こそ、自らのアイデンティティを再発見することが求められるのだ。
 百貨店は、歴史的に見ても、日本のアイデンティティを掘り下げるにふさわしい流通企業である。この役割は大量生産大量販売を基盤にしたチェーンストア流通にはできない。
 日本について知りたい人は百貨店に行けばいい。そこでは様々なイベントが開催されており、様々な地域の様々な職人の商品が販売されている。常に、売場の品揃えは変化していて、行く度に発見がある。
 日本に観光に来た外国人観光客にとっても、百貨店は絶好の観光スポットとなるだろう。いや、ならなければならないのだ。
 「日本のプライド」というコンセプトであれば、環境デザインも日本のアイデンティティを表現したものにしたい。もちろん、ベタベタの和風が良いと言っているのではない。各百貨店の個性に合わせて、無国籍風、ミニマム風、モダーン風等のバリエーションがあっていい。環境整備には一流の建築デザイナーやグラフィックデザイナーに参加してもらう。
 「無印良品」が世界で評価されているのは、いかにも日本らしく、しかも現代的で優れたデザイン故だ。その要素を百貨店にも導入して欲しい。(了)

*有料メルマガj-fashion journal(52)を紹介しています。本論文は、2012.11.26に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« 百貨店の将来を考えよう(1) j-fashion journal(51) | Main | 日本ファッションは日本文化の表現である(上) j-fashion journal(53) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 百貨店の将来を考えよう(1) j-fashion journal(51) | Main | 日本ファッションは日本文化の表現である(上) j-fashion journal(53) »