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July 05, 2013

電子書籍の時代がやってきた j-fashion journal(62)

1.ボイジャーのエキスパンドブックに憧れる

 2013年2月2日は、私にとって特別な日になった。初めての電子書籍を出版したのだ。この日が来るのを、どんなに待ちわびたことか。
 私は1986年から91年頃まで毎月、「ファッション販売(商業界)」や「チャネラー(チャネラー社)」に執筆していた。87年にはファッションビジネスコンサルタントとして独立し、同年、日本経済新聞社から「ポストDC時代のファッション産業」を上梓した。
 正に原稿を書きまくっていたが、私の中には常にくすぶり続けるものがあった。それは、出版社を通さず自分自身で出版したいということだ。
 その理由の一つは、「原稿料が安い割に自分の思う通りにならない」ことだ。今も覚えているが、西武のloftができた時に、『これは画期的な商品MDだ』と編集長に取材を申し出たのだが、「あれは雑貨でファッションではないでしょ」と言われた。こういう時に、私のモチベーションはたちまち下がるのだ。
 そもそも原稿料が安い。そして、雑誌に寄稿しても、本業のコンサルタントとしての仕事につながることも少ない。それなのに内容まで文句言われるなんて、と思ってしまうのだ。

 もう一つの理由は、「単行本の編集担当者に迷惑をかけたくない」ということ。雑誌に寄稿するのと、単行本とは全く質が違う。原稿用紙10枚程度の量なら全貌が把握できるが、単行本の長さになると全体が頭の中に入らない。
 それなのに、単行本のオファーが来ると、書きたくなって安請け合いしてしまう。書き始めると途中で挫折し、担当者に迷惑をかける。こういうことが何回かあった。内容や時間に縛られず自分で本を書きたいと思ったのだ。
 1995年、私は最初に「電子書籍」という概念に触れた。ボイジャー(米国ボイジャー社とのジョイント・ベンチャーにより設立された日本企業)が「エキスパンドブック・ツールキットII version1.5」をリリースした年だ。専用ソフトで本を作成し、専用ソフトで読める。しかも、縦書きやルビにも対応していた。エキスパンドブックという名前もカッコ良かった。これがあれば、自分でも本を出せるかもしれないと思った。
 1999年に同じくボイジャーから「T-Time ver.2.0」がリリースされ、これは実際に購入した。購入したが、少し実験しただけで、具体的に本を作成するまでには至らなかった。自分の中に本にするコンテンツが蓄積されていなかったのかもしれない。
 その後、Adobe Systems社によって開発されたPDF[Portable Document Format]が一般化した。メールに添付するのも、ネットから資料をダウンロードするにもPDFは便利だ。書体や図表まで、原本通りに再現して読むことができる。
 しかし、PDFは本ではなかった。その頃から、『本という形態も必要ないのかもしれない』と思い始めていた。

2.「Kindle Paper White」に触れる
 ところが、2011年、突然私の前にAmazon.comが開発した「Kindle Paper White」(キンドル ペーパー ホワイト)」が現れた。初代のキンドルが発売されたのは2007年なので、私が実物に触ったのは3代目か4代目だったろう。触った瞬間「これはイイ!」と思った。液晶の画面とは異なる電子ペーパーの質感、手にした時の薄さと軽さ、それと触感。電車の中で文庫本を読むよりも操作性が良い。その上、バッテリー駆動時間が長いのだ。
 2010年、タブレット端末のiPadが発売された時は、それほどの感動はなかった。使い途が分からなかったし、ノートパソコンとの違いも分からなかった。でも、キンドルには感動した。本を読むという単機能であり、構造がシンプルだ。
 キンドルの端末に感動した後、今度は「Kindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)」を知り、またまた感動した。誰でも出版が可能で、しかも印税の率が高い。これはやるしかないぞ。
 アップルのiTunesは、音楽の購入方法をパッケージからダウンロードに変えた。今度はアマゾンが出版から流通を変えようとしているのだ。
 2012年、日本でも待ちに待った「Kindle Paper White」(キンドル ペーパー ホワイト)の発売と、「Kindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)」のサービスが開始された。早速予約して入手した。いよいよ出版だ。

3.キンドル出版の本を読み漁る
 「キンドルで出版するには、経験者の話を聞くに限る」ということで、キンドル出版の本を何冊か読んだ。
 全体像を知る上で参考になったのが、「Kindle自費出版ガイド~米アマゾンの先例から学ぶ電子書籍の作り方(雄山洋)」。電子書籍の基本的な知識をまとめてあり、「ワードよりもGoogle Documentを使うといいよ」と教えてくれた。
 次に役に立ったのが「いちばん簡単なKindle本の作り方(石高都桜)」。ここでは、「BCCKS(http://bccks.jp/)を使ってepubファイルに変換するといいよ」と教えてもらった。こうした小さなノウハウの積み重ねが重要であり、それが100円程度で入手できるのだからありがたい。
 実用的という意味ではないが、電子書籍の考え方について参考になったのが、「超小型出版~シンプルなツールとシステムを電子出版に(クレイグ・モド)」。この本を読んで、大体のページ数や価格設定について決めることができた。
 皆さんも電子出版に挑戦するなら、参考になると思う。全部読んでも500円以下だ。

4.電子書籍のボリュームと価格設定
 電子書籍の特徴の一つは、「コストが安い」「販売価格が安い」こと。
 昔の文庫本は薄いものも多かった。しかし、次第に文庫本は一定の厚さ以上のものだけになった。それは、紙の本の性格とコスト構造にある。あまり薄い本では店頭で目立たない。また、どんなに薄くても、出版社、取次業者、小売店のマージンや、物流費、倉庫費がかかる。あまり低価格では採算が合わないのだ。
 そのため、文庫本や新書も次第に価格が上がった。価格を上げるために、表紙カバーのデザインや厚さが求められた。元来、文庫本とは何の装飾もなく、安いことに特徴があった。
 こうした事情は単行本も同様だ。一般のビジネス書でも400字詰の原稿用紙で300枚程度は必要だろう。私の能力が低いこともあるが、これだけのボリュームを全て、自分の意見や提言で埋めるのは非常に大変だ。結局、統計資料や他の文献の解説などで増量することになる。
 日本では、個人の意見よりも、客観的な事実を求める傾向が強い。統計資料等を引用した方が資料価値があると判断するかもしれないが、それは私の理想ではない。
 私の専門であるファッションビジネスでは、情報が次々と陳腐化していく。ファッションビジネスのコンサルタントの中には、朝令暮改の人が少なくない。そういう人にとっては、文献に自分の意見を残したくないと思うかもしれない。しかし、ファッションとは変化と予測のビジネスであり、その本質に向き合わないと面白い本はできない。
 私の理想は、ボリュームは少ないが、内容のある本だ。その分安く売ればいい。厚い本を買っても,本当に役に立つのは一部に過ぎない。「この10ページだけ売ってくれないかな」と思うことも多い。
 400字詰の原稿用紙で300枚の内容で小売価格が1500円の紙の本なら、電子書籍で内容を切り分けたいと思う。電子書籍では100枚で500円、50枚なら250円で販売することも可能だ。そして、必要な部分だけを読めばいいし、紙の本として出版するなら、いくつかの本を合本すれば経済単位になるだろう。
 私は、電子書籍の販売価格は、50枚(2万字)で100円程度が妥当と考えている。これなら読者も納得してくれるだろう。
 考えてみれば、紙の書籍も発売後1年もすれば、ブックオフで100円程度になってしまう。電子書籍は正価販売が基本なので、最初から価格は低く設定すべきだ。日本の出版社が電子書籍の価格を紙の書籍の2~3割引きに設定しているのは、理不尽というほかはない。

5.とにかく出版してみる!
 私、単行本にまとめることを目的に、メルマガを連載したことがある。毎週原稿用紙6枚程度を書いていけば、1年で300枚程度になる。しかし、出版社は見つかりそうもないので、自分でA4用紙にプリントアウトし、バインダーにまとめたものを5千円程度で販売した。タイトルは「ジャパンファッション再生への提言」。売れるかどうか半信半疑だったが、5冊程度は売れたと記憶している。 その原稿を加筆訂正し、小さなボリューム(2万字程度)に切り分け、電子書籍として出版することにした。その第一弾が「アジア時代のファッションビジネスを考えよう」である。
 前述した参考書を元に、まずBCCKSの専用エディターに原稿を流し込んでいく。このエディターの便利なところは、常に出来上がりのプレビューを確認しながら作業ができることだ。私は新書サイズを設定したので、小見出しを入れる間隔を確認する必要があった。見出しの文字の大きさも設定できるので、プレビューを見ながら決めていく。
 また、リンクのついた目次も自動生成してくれるのも嬉しい。特に迷うこともなく、作業を進めることができた。全ての確認が終わったら、非公開で発行する。ここまで来ると、epubファイルをダウンロードできるようになる。
 次に、Kindleプレビューツールをダウンロードする。このソフトでepubファイルを開くと、自動的にKindleの形式であるmobiファイルに変換され、プレビューで出来上がりを確認することができる。
 いよいよKindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)による出版の作業だ。その前に、アカウント情報を全て記入しなければならない。私はここでつまずいてしまった。アマゾンは世界各国の会社があるので、世界各国で売れる場合がある。その中には、日本の銀行に振り込めない銀行があるのだ。私の口座はみずほ銀行だが、ブラジルからの送金かできなかった。その場合は、「小切手を受け取る」を選べばいいのだが、最初はその意味が分からず、一度挫折してしまった。
 「仕方がない。今回はBCCKSで出版しよう」と考え、その作業に入った。ここでは出版設定が必要になる。本の内容の説明文や価格を決めなければならない。私は105円を設定した。
 ここで驚いたのは、BCCKSの印税は70%であること。(アマゾンは35%が基本)また、BCCKSでは、紙の本を一冊からオーダーできる。価格は、原価に印税を加えた価格が設定される。「アジア時代のファッションビジネスを考えよう」は新書判で662円になった。
 BCCKSの手続きはスムーズに進み、本が発行された。それが2月2日というわけだ。一息ついたので、再び、Kindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)に戻ってチャレンジ。先程の口座の問題を解決して、次に進んだ。
 参考書通りにmobiファイルをアップしようとすると受け付けない。epubファイルで試したら、今度は成功。この辺りは自分で確認しないと分からないところだ。(次の出版では、mobiファイルを問題なく受け付けた。参考書は正しかったです)
 まるでゲームのように、一つ一つクリアしていく感じだ。次につまずいたのが、BCCKSで作成した表紙の画像ファイルが小さ過ぎて受け付けてもらえなかったことだ。もしかすると、画像ファイルをダウンロードする手続きが間違っていたのかもしれない。
 ここで素人ならではの対応となった。パワーポイントで表紙デザインを作ることにしたのだ。私はフォトショップやイラストレーターが使えないので苦し紛れの選択である。表紙デザインをグループ化してコピー。「形式を選んで貼り付け」でJPEGで貼り付ける。そのJPEGを保存し、それを読み込んだところ、今度は成功。
 ここで価格を設定する。Kindleではアマゾンの海外法人別に価格を設定することができる。基本1ドル、日本では105円という設定にした。これで出版の作業は全て終了。
 [2月3日、無事アマゾンよりKindle本として出版されました。日本では105円、海外からだと1ドルです。]
 (今回はここまでとしたい。この後、出版内容のアイディア等を加え、原稿を整えて、電子書籍にしたいと考えている)

*有料メルマガj-fashion journal(62)を紹介しています。本論文は、2013.2.4に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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