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July 05, 2013

国際化=多極化×多角化 j-fashion journal(61)

1.瀧定大阪、オリーブ・デ・オリーブ買収

 2013年01月22日付の繊研新聞に以下のような記事が掲載された。長文ですが、以下に引用する。(以下、繊研新聞社より引用)

『瀧定大阪 オリーブ・デ・オリーブ買収』
 ~M&A事業に弾み~
 瀧定大阪は18日、オリーブ・デ・オリーブの発行済み全株式を取得すると発表した。オリーブの株主であるJ-STAR一号投資事業有限責任組合との間で、昨年12月19日付で株式譲渡契約を締結したもの。買収額は公表していない。
 1月末に株式を取得、瀧定大阪の新年度が始まる2月1日から新たな体制で再スタートを切る。瀧定大阪から役員2人を派遣するが、オリーブの経営陣、体制、経営方針は従来通りの予定で、独立運営を尊重したまま、サプライヤーと顧客という関係を継続する。

 オリーブは、09年にJ-STAR傘下に入り、経営再建を進めてきた。11年2月期は売上高69億円(単体)、経営利益1億3700万円、12年2月期は売上高72億円、経常利益4億4200万円と業績を着実に回復させている。
 日系アパレルの多くが苦戦するなか、中国販売事業も順調だ。現在約150店、中期目標として倍増の300店の計画を掲げている。昨年からは新ブランド「ワン・バイ・オリーブ・デ・オリーブ」の販売も開始した。
 瀧定大阪は、オリーブが傘下入りしたことで、国内外で製品ODM(相手先ブランドによる設計・生産)での企画提案力の強化やサプライチェーンの安定化を狙うが、「買収の一番の目的はオリーブの中国事業」(瀧直人取締役)としている。将来的には中国以外のASEAN(東南アジア諸国連合)での事業拡大を視野に入れる。
 一方、J-STARは、買収企業を再成長の軌道に乗せて企業価値を上げて売却することが既定方針で、入札金額の高い瀧定大阪に売却を決めた。期間に関しては「中長期的に保有する」としていたが、当初切り離されていたオリーブと上海の現地法人の経営統合が実現したことに加え、欧州の金融・財政危機を背景に、早期の売却が得策と判断したことがこのタイミングでの売却理由と見られる。
~中国事業を拡大~
<解説>瀧定大阪は15年度をめどに連結売上高2000億円をめざす事業構想を掲げている。12年1月期は本体と上海の現地法人の合計で740億円だから、大きな上積みが必要となる。
 2000億円時点では国内600億円、海外600億円、M&A(企業の合併・買収)で800億円をめどとしている。特にM&Aでは、この間、フランスのコンサルディング会社ミリビスの子会社化、アロマ空間デザインなどのアットアロマへの資本参加、はるやま商事からのミリオンカラッツ買収などを具体化してきたが、案件としては比較的小さいものにとどまっていた。今回のオリーブ買収で100億近い事業拡大となり、海外事業の拡大にもつながる。(以上)

 そもそも瀧定大阪の事業ドメインは、国内のテキスタイルビジネスだった。それがなぜ中国市場で店舗展開しているアパレル企業を買収するのか。こうした質問が出ること自体が、極めて日本的であると思う。
 瀧定大阪の売上高のピークは、1990年度の1,200億円だった。

 2012年04月16日付の繊維ニュースの記事を引用したい。

『瀧定大阪 売り上げ2000億円へ』
 ~M&Aにグローバル化~
 瀧定大阪の瀧隆太社長は現在の連結売り上げ740億円を、2015年度までにM&Aや海外事業、製品事業の拡大によって約3倍の2000億円にまで引き上げる考えを示した。
 2000億円のうち、800億円をM&Aによるものと想定。具体的な内容は明言しないものの、「ライフスタイル」などをキーワードに、今期もM&Aの投資として数十億円を用意する。2000億円の国内外比率は、現法含めてほぼ等分を想定している。
 既存事業を1200億円まで拡大することになるが、そのため海外事業の深耕と製品事業の拡大に力を注ぐ。海外事業深耕では、現段階で現地法人を保有する上海、ニューヨーク、パリ、香港を中心に、現法開設手続きに入ったインド、事務所を構えるベトナム、拠点設立を検討するタイ、インドネシアが対象。これら8つの拠点で製販を拡大する。
 製品事業は、生地との融合という観点で2年前から進めており、すでに成果も表れている。以前と比べて製品への自社生地使用比率も飛躍的に高まった。ファッション衣料だけでなく、タオルや寝具といったライフスタイル関連製品も好調に推移する。
 今後もファッション衣料にとどまらず、生活雑貨や寝具など多岐にわたる製品事業で販売拡大を志向する。(以上)

 今回の買収を一言で説明すれば、この戦略の一環である。以下、もう少し詳しく解説したい。

2.国際市場に対応するには多極化が必要
 戦前、瀧定は中国の主要都市に支店を開設していたという。終戦を迎え、それらの資産は全て没収された。このトラウマが海外進出に対して消極的だったのかもしれない。
 1990年に1,200億あった売上は、2012年には740億円に減少している。多くのテキスタイルコンバーターが次々と淘汰されていく中で、瀧定大阪は健闘していると言われているが、それでも約6割の規模になってしまったのだ。この数字は、国内テキスタイル生産量の推移と比例している。日本のテキスタイル生産も6割になり、テキスタイルコンバーターの売上も6割になっていたのだ。
 この間、アパレル企業の売上が6割になったわけではない。ユニクロに代表されるように、中国生産のアパレル製品が増加し、急激に成長した企業もある。ユニクロの売上推移を見ると、1992年の売上が143億、2012年は9,286億である。
 この数字を見る限り、テキスタイルコンバーターは仕入れ先とビジネスモデルを変えなかったと言える。一方、販売先のアパレル企業は、海外生産と海外素材調達にシフトしていった。テキスタイルコンバーターは、顧客が逃げているのに、何の対応もできなかったのである。
 国際化する繊維ファッションビジネスの中で、繊維企業としてどのように生きていくのか。
 その一つの答えがプルミエールビジョンへの出展であり、オリジナルテキスタイルブランドの「C.O.T.O.」である。
 2012年12月05日付の繊維ニュースに『瀧定大阪「C.O.T.O.」 チャンスは今』というタイトルで、「C.O.T.O.」を担当する近藤文夫クリエイティブディレクターのインタビュー記事が掲載された。その文末に書かれた「C.O.T.O.」の解説を以下に引用したい。

 ※「C.O.T.O.」とは
 2010年7月に米・ニューヨークで開かれた「プルミエール・ヴィジョン」(PV)で瀧定大阪が海外市場開拓に向けた基幹テキスタイルブランドとして初披露したのが「C.O.T.O.」。世界のハイエンドブランドの潜在ニーズに応え、「まさにこれが欲しかった!」を実現し、多くのブランドから継続して採用されている。他の国で簡単にまねできない、希少性の高いものとして評価されている。年に2回のシーズンごとに200点前後の新作を産地企業とともに開発する。内訳はジャージが3分の2を占め、レディース向けが中心だが、今後はメンズ向けも拡大していく。(以上)

 実は、瀧定大阪はプルミエール・ヴィジョンの最大のバイヤーだった。バイヤーが出展したいと言ったのだから、プルミエール・ヴィジョン側も驚いたろう。プルミエール・ヴィジョンはメーカーしか出展できない。そこで独自ブランドを立ち上げ、メーカーとして出展したのだ。
 海外市場を開拓するには、展示会、見本市の出展だけでは不十分である。現地に営業拠点を置き、クライアント企業とのコミュニケーションを図る必要がある。
 同時に、海外市場でテキスタイル製品を販売するには、高価な日本製テキスタイルだけでなく、国際的にリーズナブルな製品を品揃えしなければならない。そこで、中国生産、東南アジア諸国生産、インド生産の商品調達のための拠点が必要になる。
 グローバルビジネスを展開するには、販売拠点、生産拠点を世界のどの地域に設置するのかが問われるのである。

3.グローバルビジネスと事業多角化
 テキスタイルコンバーター、アパレル製造卸といった業態分類は、日本独特のものであり、そのまま海外で通用するとは限らない。海外には卸売という業態はほとんど存在しない。メーカーとユーザーが直接取引するのが原則だからだ。
 従って、テキスタイルコンバーターがメーカーになるのも自然な姿だし、テキスタイルメーカーが製品を手掛けるのも自然な姿である。その延長に、アパレルブランドを展開するのも、直営店を展開するのも極めて自然なことなのだ。
 イタリアのエルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)は、一流ブランドとして有名だが、糸、毛織物、製品のOEM生産も行っている。これも自然な姿と言えるだろう。
 テキスタイルコンバーターとしての瀧定大阪という見方をするならば、オリーブ・デ・オリーブを買収したのは、自社のテキスタイルを使わせるためと考えるかもしれない。産地メーカー、ニッター、縫製業者が直営店を出店するのは、自社工場の稼働率を上げるためであることが多い。しかし、この考え方で成功することは少ない。一店舗で売れる量と、工場の生産ロットには格差があるからだ。
 中国市場で店舗展開しているオリーブ・デ・オリーブが、瀧定大阪が扱う日本製のテキスタイルを使用する可能性は低い。グレードも価格も合わないからだ。勿論、瀧定大阪もそんなことは考えていない。売上72億規模のアパレル企業が使うテキスタイルなど知れているし、それで経営が傾いたのでは、買収した資産を減らすことになる。オリーブ・デ・オリーズは、現在同様、中国調達の素材を使い、中国生産するはずだ。
 日本国内においては、今後も瀧定大阪はテキスタイルコンバーター業務が中心になるだろう。しかし、グローバルな事業展開はその範囲に留まらない。会社の資産であるノウハウ、人材、資本、国際的ネットワークを活用し、成長の可能性の高い事業に投資していくはずである。

4.海外で新事業に挑戦する
 国内の製造業者も、海外進出する時に事業ドメインを見直すのは珍しいことではない。本来は、日本国内でも流通を短縮したり、直営店を出店したいと思っているのだが、日本国内では商道徳という美名の元で、新規業態開発、新規参入に対して圧力を掛けられることが多い。日本では、未だに自由競争ではなく、既得権を守った談合構造が温存されているのだ。
 海外に進出すれば、そうした圧力がなくなる。縫製工場がオリジナルブランドを持ち、直営店を出店することも自由だし、テキスタイルメーカーがアパレルメーカーを経営しても良い。実際に、そういう狙いで海外進出するメーカーも少なくないのだ。
 また、当初は日本国内と同じ業態で事業をしようとしたのだが、現地に行くと、日本国内のようなビジネスができないことも多い。そうなると必然的に新業態に踏み込むことになる。
 これは中国資本の企業だが、エステティックサロンが学校経営をしている事例がある。既存の学校に依存していたのでは、自社で必要な人材が確保できない。そこで、自社で学校を設立して、人材育成をしなければならないのだ。
 この企業は、次に化粧品メーカーを買収した。中国のエステティックサロンは、オリジナルの化粧品販売が収益の柱になる。日本ならOEMメーカーで委託生産することが多いが、中国には条件に合うOEM専門メーカーを見つけるのは難しい。自社で開発した方が早いし、自社で一からスタートするよりは、既存の企業を買収した方が素早い対応が可能になる。そういう合理的な判断で買収するのだ。 日本企業も海外で事業展開するなら同様である。事業を成長させるために、必要な分野があれば参入すべきだし、それを一から創業するのか、既存企業を買収するかは方法論の問題に過ぎない。
 グローバルビジネスでは、経営者だけでなく、投資家としての視点が重要になる。しがらみのない新天地で思う通りのビジネスを展開すればいいのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(61)を紹介しています。本論文は、2013.1.28に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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