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July 05, 2013

テキスタイル開発ワークショップ j-fashion journal(60)

1.テキスタイル開発が日本人デザイナーを育てる

 アパレルの商品企画のベースになるのは「生地の構成」である。
 顧客がショップを少し離れた位置から見ている。顧客の目には、洋服の細かいディティールは届かない。まず、目に入るのは色と素材感である。色と素材感を表現しているのは生地だ。自分の好きな色と素材感がバランス良く、ショップの中に構成されていれば、店内に足を運ばずにはいられないはずだ。
 レストランに例えれば、生地は食材である。美味しい料理は美味しい食材があってこそだ。美味しい食材ならば、素材の味そのもので十分に美味しい。しかし、素材が悪ければ、それをカバーするために様々なソースなどで味付けをしなければならない。
 アパレルの企画MD計画も素材の構成さえ間違えなければ大きな失敗はない。生地を決定することは、最終製品の価格を決定することでもある。デザインの問題ならば、やり直せばいい。しかし、仕入れた生地が悪ければ、どんなデザインにしても売れないのだ。

 ヨーロッパで高い評価を得た日本人ファッションデザイナーの多くは、日本の生地、あるいは日本の色柄を使っている。日本人デザイナーがどんなに才能豊かであろうとも、イタリア製の生地を使ってコレクションを作れば、ヨーロッパデザイナーとの差別化は難しいだろう。ヨーロッパにはない日本の素材を使って、ヨーロッパ人の発想にないデザインをするからこそ、ヨーロッパで高い評価を得られるのである。
 極端なことを言えば、生地のデザインが素晴らしければ、シンプルなシャツだけを並べても、素晴らしいコレクションができる。
 これほど重要な生地なのに、日本ではテキスタイルデザイナーという職種が確立していない。産地のテキスタイルメーカーにもデザイナーが存在しない。そもそも、テキスタイルデザイナーという職種が定義されていないのが現状だ。
 テキスタイルデザイナーを図案家のことだと思っている人も多い。また、美大等のテキスタイルデザイン科は、美術工芸としてのテキスタイルデザインが主流であり、産業としてのテキスタイルデザインは軽視されている。
 「日本のテキスタイルが素晴らしい」と言われるのは、第一に、合繊メーカー、紡績の原糸開発力。第二は、大手染色整理加工業者の技術力。第三は、マザーマシンとしての繊維機器の技術力。第四にそれらの技術を駆使する技術者の存在が上げられるだろう。
 それらの技術の多くは、素材や加工の技術であり、完成品としてのテキスタイル、つまり色柄を含めたテキスタイル製品、テキスタイルブランドとして見ると、ほとんど存在感がない。
 様々な工程に独自の技術は存在するが、それらを駆使して完成品としてのテキスタイル製品を企画開発する能力が欠如しているのである。

2.各テキスタイルメーカーに開発担当者を

 日本国内のテキスタイル産業が生き残るためには、価格競争に陥らない商品を作り、販売しなければならない。日本の人件費、為替を考えれば、日本のコストは世界で最も高いと言ってもいい。新興工業国の競合相手と価格競争することは不可能なのだ。
 しかし、日本企業の多くは薄利多売の大衆向け商品で成功体験を持っている。経済成長時代の日本市場は一億総中流と言われたように均質な大衆市場であり、そこで勝利するには薄利多売が原則だった。しかし、現在のように低価格の輸入品が何の障壁もなく輸入されるようになると、これまでの成功体験は役に立たない。むしろ、邪魔をしていると言っていいだろう。
 日本国内のメーカーは高級品を作らなければならない。しかし、中級品しか生産した経験しかないのだ。
 高級品を販売するのであれば、色柄を含めた完成品としてのテキスタイル製品を作らなければならない。しかしテキスタイルメーカーの多くは、企画開発機能を生地問屋、商社、アパレル企業のデザイナー等に依存してきた。
 私、日本のテキスタイルメーカーが生き残るには、各社に開発担当者を置くことが最低限の条件だと思う。
 開発の経験がないなら、全国的に展開できるテキスタイル開発担当者の人材育成プログラムを考えなければならない。

3.テキスタイル開発ワークショップ構想

 繊維産地で決定的に欠けているのが、色に関する知識と技術だろう。指示された色に合わせて染色することはできても、市場の動向を読みながらオリジナルの色を出すという作業をしたことがない。
 しかも、アパレル業界にも色の専門家は存在しない。そのため、日本のアパレル市場に展開される素材の多くは、単純な配色に偏っている。
 たとえば、白相手、黒相手の配色。先染でも、タテ糸に白と黒を経てているケースが多い。しかし、白のタテ糸では白っちゃけて見えてしまう。黒のタテ糸では重くなり過ぎる。
 油絵の下塗りでも、白や黒を塗るよりも、茶系かブルー系で塗った方が色彩が豊かに見える。これは織物にも応用できるはずだ。
 少し高度な配色でも、ベージュ相手かグレー相手。あるいは、同色相の濃淡、同系色の配色である。ヨーロッパのように、補色同士の色を彩度で調整して合わせるというものはほとんど見られない。
 これを解消するためには、CGのテキスタイルシミュレーションを使って、実際に配色したものを見てもらうしかないと考えている。産地毎にカラーパレットを設定し、シミュレーションで確認する。そして、数社のメーカーがグループとして共通色を使用する。それによって同じ産地の別会社でもコーディネートが可能になる。勿論、各メーカーは「グループ内の他社の企画をコピーするのは厳禁」として覚書を交わす。
 カラーはアパレル製品が店頭で展開される2年前に設定するのが基本だが、日本では1年半前で十分だろう。そこから半年で素材開発をすることになる。
 その間、最低でも1カ月に一回は開発素材を持ち寄り、開発の方向性と進捗をチェックする。この場では、単純な色だけではなく、特に、トレンドを意識したアパレル製品を想定して、糸使い、撚糸、密度、組織等によって風合いを作り上げていく作業が中心になる。そして、ワークショップ参加企業で情報を共有し、生地の段階でコーディネート可能な企画を組み立てていくのである。
 本来ならば、アパレル企業、デザイナーを対象にアパレル企画の素材構成のワークショップを同時に開きたい。それによって、素材開発の手法を学んでもらう。生産ロットが少ない場合でも、オリジナル素材を開発するにはどうすればいいかを考える。そして、産地と連携して、開発途上の素材、最新の素材を教材に商品構成を作り上げる。
 そして、開発途中の段階で、若手デザイナーの産地見学会や意見交換会を開きたい。そこで二つのワークショップを合同で行い、最終的な開発を行う。この交流により、若手デザイナーはコレクションの発想が広がるだろうし、テキスタイル産地の開発担当者も新しい発想に触れることができるはずだ。

4.テキスタイルとデザイナーのコラボによる展示会

 さて、オリジナルのテキスタイル開発ができて、それと連携した若手デザイナーの作品ができるようになれば、ビジネスの形が出来上がる。
 そこには、オリジナルのテキスタイル、オリジナルのアパレルデザイン、それらによるサンプルがある。
 デザイナーに資金力があれば、自社で小売店に販売するための展示会を開催する。しかし、縮小し続ける日本の専門店市場ではビジネスの単位にならないかもしれない。
 ここで、ビジネスモデルの発明が必要になる。たとえば、縫製工場との連携を考える。縫製工場にある程度の資金力があれば、ファクトリーーブランドとしてセレクトショップ等から受注する。
 あるいは、ファッション雑誌等とタイアップして、顧客に直接発注してもらい、1反分の受注が入れば本生産に入るというのも良いかもしれない。
 また、小売店との取り組みでOEM生産として受注することも可能だ。その場合は、デザイン料をデザイナーに支払う仕組みが必要になる。
 アパレル製品としてのビジネスが難しければ、テキスタイルの展示会として成立させる。その場合は、テキスタイルメーカーがサンプル制作の実費は負担することになるだろう。
 このように、誰が主体となってビジネスを展開するかは、柔軟に考えれば良いと思う。問題はオリジナルのテキスタイルとアパレル製品を試作して、提案することだ。そして、市場を刺激することだ。それが需要創造につながるのだ。
 これら一連の構想を具体化するには、みんなが主体的に行動しなければならない。補助金に依存するようでは何も進まないのだ。そういう意味では、若い世代に期待したい。構想を組み立てることは可能だ。あとは、どのように具体化するかである。

*有料メルマガj-fashion journal(60)を紹介しています。本論文は、2013.1.21に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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