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April 17, 2013

低コスト追求と継続可能なビジネス j-fashion journal(40)

1.価格訴求に依存する日本のホームテキスタイル製品

 日本と中国の人件費の格差についてはご存じの方も多いだろう。上海近郊の縫製工場、テキスタイルメーカー等の工員の給料は3万円から4万円程度で、日本の5分の1程度。ベトナム等では人件費が7~8千円だから、中国の5分の1程度である。しかし、人件費の格差ほどはコストの格差はない。物流費、関税等を考えると、その格差は縮むからだ。また、生産ロットの大きさ、リードタイムの長さ等による無駄を考えると、更に格差は縮む。しかも、日本はデフレが継続し、中国、アセアン諸国はインフレが継続している。
 しかし、私が言いたいのはこうしたコスト格差ではない。日本企業が望むコストと中国企業のコストの格差である。
 今回、インテキ上海ホームテキスタイル展の生地値の相場は、20~50元程度だった。これは以前、紹興の軽紡城の生地卸商に聞いた価格とほぼ同じであり、アパレルもインテリアもそれほどの差がないことが分かる。為替にもよるが、日本円では260~750円程度だろうか。

 因みに、日本のテキスタイルメーカーが生産する生地の価格は1000円を切るのが難しい。それを中国に輸出するとなると、1.3倍程度の価格になってしまう。 私は中国生産生地価格がほぼ国際価格と考えている。欧米の企業も中国内販の企業も、20~50元の生地を仕入れて、加工し、販売し、ビジネスを成立させている。ここで勝負になるのは、ブランド力であり、デザイン力であり、営業力である。私は、日本企業はブランド、デザイン、営業の各分野で十分に中国企業と戦えると信じている。
 しかし、今回分かったことは、日本の量販店が探しているホームテキスタイルの生地値は中国の標準以下の水準であること。つまり、インテキ上海に出展している生地のほとんどは使えない。おそらく、量販店、ホームセンター、インテリア専門店も同様なのだろう。
 量販店が日本製の生地を使えないのは分かっている。しかし、中国製の普通の生地さえ使えないのが実情なのだ。私は、日本の量販店、ホームセンターのホームテキスタイル製品は安過ぎると思う。同様に、日本のインテリアライフの水準も低過ぎる。ポリエステル70%/綿30%、ポリエステル80%/綿20%、ポリエステル100%のギリギリまで規格を落とした粗悪品が当たり前のように使われており、消費者もそれに慣らされている。
 中国のコストが上がっていると言うが、中国内販メーカーは、中国の素材を中国で加工している。勿論、安物商品は東南アジアに生産をシフトしている。しかし、その安物製品の多くは日本市場への輸出向けなのだ。
 かつての「激安ブーム」は、中国と日本のコスト格差により、良質で安価な製品を供給するというものだった。だから魅力があったのだ。しかし、中国のコストが上がるにつれ、次第に粗悪な製品を安価に販売するだけになっている。これは激安でも何でもない。単なる粗悪品商法である。

2.量の追求から質の追求に転換し、継続可能なビジネスをしよう

 今回、展示会で配布していた中国の業界雑誌、視察に行った中国の工場には、共通するスローガンが掲げられていた。それは「量の追求から質の追求に転換し、継続可能なビジネスをしよう」というものだ。中国のメーカーもコスト高に苦しんでいる。コスト高に負けないためには、ブランド力、企画力、営業力を高めなければならない。インテキ上海の会場でも、いくつかのブースは「デザイナー募集」の張り紙を出していた。それだけ、企業力アップに熱心なのだ。
 一方の日本企業は、コスト高への対応として、相変わらず、価格一辺倒の商品政策を押し通している。商品企画の充実ではなく、企画機能を外注に依存しようとしている。そして、更なる低コストの国や地域に生産基地を移転させようとしている。
 このまま行けば、確実に中国市場より粗悪な商品が日本市場に溢れるだろう。本当にそれでいいのだろうか。本当に安価な粗悪品を消費者は喜んでいるのだろうか。
 もう一つ心配なことがある。それは「持続可能なビジネス」という視点の欠如だ。低コストを追求することは、常に生産基地を移転し続けるという姿勢だ。こちらが切り捨てたと思っている企業は、企業レベルを上げ、新たな競合相手として台頭するだろう
 中国の工場に行くと、工場の前に高級外車が止まっていることが多い。社長や経営幹部が所有している車である。中国工場は採算の合わない仕事は引き受けない。自社の利益を守り、利益の多くは株主、つまり経営幹部で配分する。
 中国のビジネスは人脈次第と言われる。しかし、これは中国だけではない。経営トップの個人的人脈がビジネスと直結しているのは、東南アジアも欧米も共通している。個人の付き合いが重要なのでパーティーを開くのだ。
 日本は中国に投資し、中国で生産するだけでなく、多くの中国人経営者との人脈を築いている。本人が意識しているかどうかは別にして、これだけのビジネスをしているのだから、何らかの人間関係は存在しているのだ。人件費の低い地域に生産拠点を移すということは、この人間関係を破棄することに他ならない。
 しかし、日本の流通企業、商社は個人的な人脈でビジネスをしているわけではない。合理的な判断でコスト削減を追求する。これは、日本国内のメーカーをあっさり切り捨て、中国生産に転換したことにも表れている。勿論、中国人との人脈を切り捨てて、東南アジアに生産基地を移転することに逡巡はないだろう。
 しかし、本当にそれでいいのだろうか。継続可能なビジネスということは、人的つながりも継続することを意味しているのではないか。中国のコストが上がっても、中国市場は成長を続けるだろう。日本の流通企業が本格的に中国市場に進出するのはこれからだ。その時に、中国の人脈は必要ないのだろうか。完全に独立資本で、日本人だけでビジネスができるのだろうか。中国人消費者に信頼されるのだろうか。中国で雇用を確保している企業の方を信頼するのではないだろうか。

3.人的関係、地域との関係を継続するビジネス

 私は中国ビジネスについて考える時、人的関係を第一に考える。「中国のどの都市からビジネスをスタートすべきですか」という質問にも、「信頼できる中国人がいるなら、その人の地元からスタートすべきです」と回答している。
 勿論、最初からそんな考えだったわけではない。しかし、多くの中国人と話しているうちに、そう確信するようになったのだ。
 極論すれば、人間関係が構築できなければ、ビジネスをしてはいけない。人間関係がしっかりしていない相手と仕事をするから騙されたり、トラブルを抱えることになるのである。日本企業が中国で成功できない理由の第一は、中国で仕事のできない日本人に権限を与え、仕事のできる中国人を雇用せず、信頼できない相手と取引をすることである。
 人間関係や地域との関係を基本にビジネスを考えるのであれば、今は中国でビジネスをする好機である。中国企業はレベルアップを図り、デザイン、ソフト、ノウハウを必要としている。そして、「我々に必要なノウハウは日本企業が持っているのではないか」と考えている。彼らは、合理的であり、人材育成に時間を掛けようという発想はない。それよりも「お金で時間を買う」ことを考える。つまり、日本企業と連携することで企業レベルアップを図ろうと考えるのだ。
 日本の商社やメーカーが生産拠点を中国に移転したことで、日本国内の製造業が淘汰され、雇用は失われた。その一方で、日本企業は日本国内で失われた以上中国での雇用を創造した。そして、その雇用が所得を押し上げ、市場を成長させた。そして、その市場に日本企業が進出しようとしている。
 私が流通企業の経営者ならば、中国生産をすることで、中国社会に貢献していることをアピールするだろう。そして、中国の大学などとも積極的に交流し、人材育成を行う。それは、優秀な人材を確保することにつながるからだ。そして、積極的に中国国内で社会貢献活動を展開する。それこそが信頼につながると思うからだ。
 同様に、日本国内の製造メーカーのコストが高いというだけで、その商品を仕入れないのは社会性に反しているのではないか、とも思う。どんなにコストが高くても、一定の比率で日本製品を仕入れ、販売することを継続すると発表すべきではないだろうか。そして、日本の雇用を守り、日本社会に貢献する。それを支持する顧客もかならず存在するはずだ。
 経済合理性の追求は、時に非人間的な行動につながる。公害問題などで、我々はそれを学習したはずだ。経営者は、「ビジネスとは何か」という基本を再度、考え直すべきではないだろうか。

*有料メルマガj-fashion journal(40)を紹介しています。本論文は、2012.9.3に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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