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April 17, 2013

アパレル製品がつまらない理由 j-fashion journal(47)

1.計数管理しかできない総合職が意思決定する日本企業

 実はアパレル製品に限ったことではない。あらゆる製品がつまらない。製品がつまらないのは、デザイナーの能力がないからだろうか。そうではあるまい。日本国内には優秀なデザイナーは多数存在している。
 私は企画が本業なので、常に新しい商品やサービスを考えている。そして、常に新しいアイディアをいくつか抱えている。しかし、それを披露する機会は意外に少ない。
 本当に新しいアイディアというのは前例がない。新しいアイディアを求められる場合でさえ、そのアイディアを聞いた後で、「どこかに成功例はないのか」と聞かれる。前例がないから新しいのだから、成功例などあるわけがない。しかし、前例がないアイディアを評価できる人は少ない。
 アイディアに限らず、デザインでも同じことが起きる。画期的なデザインには前例がない。しかし、デザインそのものを判断できる人は少ないのだ。私も若いときには、バイヤーはデザインがわかると思っていた。しかし、百貨店や専門店業界を見る限り、多くのバイヤーはデザインなど評価できない。売れるブランド、売れ筋情報を知っていても、それは結果情報を覚えているに過ぎない。評価が固まっていないブランドや商品を評価できる人は極めて少ないのだ。

 本来、バイヤーという職種は素材や色彩、デザインなどの専門知識が欠かせない。欧米では、こうした専門知識を大学等で習得してから就職する。しかし、日本では専門教育を受けていない一般の四年制大学を卒業した男性を採用して、売場管理担当を経由してバイヤーに就く。アパレルのMDも同様だ。営業担当を経由して、MDに就く。両者に共通しているのは、職能としてはデザイン等の専門知識が必要なのにも関わらず、計数管理しかできないこと。そういう人が商品政策、商品企画の意思決定を行っている。
 つまり、日本は管理職、意志決定者は総合職(ゼネラリスト)が就くのが基本であり、専門職はゼネラリストの下に位置づけられる。この構造が全てをつまらなくしている。プロの専門職の上に、素人が君臨し、プロは素人を説得しなければ商品はできないのだ。そのため、商品化を決定するには分かりやすさが求められる。
 総合職にとって「分かりやすい」こととは「数字で表せる」ことである。最も分かりやすいのは「価格」だ。次には「利益率」「消化率」と続く。そして「実績」である。これでは、創造的な商品開発など望むべくもない。

2.POS管理依存が売場の同質化を招く

 バーコードによるPOS(販売時点売上)管理システムが普及した時に、「売れ筋」「死に筋」が計数化され、見えるようになった。売れ筋商品は拡大し、死に筋商品は売場から撤去する。それにより売場効率が上がり、売り上げの最大化が図れるという考え方である。
 しかし、POSはあくまで結果情報に過ぎない。そこに予測情報は含まれないのだ。POSへの過度な依存は需要予測能力を減退させてしまう。百貨店が委託商法によりバイイング能力を失ったように、アパレル企業が生産の丸投げによりモノ作りのノウハウを失ったように、POS依存により予測能力を失う可能性が大きいのだ。
 もう一つの落とし穴は、あらゆる店舗、あらゆる企業がPOSを導入したことである。市場全体がPOS依存を強めたことにより、小さな商品の動きが増幅されてしまう。市場全体が加速度的に売れ筋に集中し、非常に短期間のうちに商品が同質化、価格競争を招くのである。
 かつて専門店企業S社が親会社から社長を招き、徹底したPOS管理とPB開発を行った。急速に業績は回復し、流石に科学的な経営手法だと高い評価を受けた。しかし、好調は3年間しか続かなかった。変化の少ない商品であれば、POS管理は無駄をなくす。しかし,変化の激しいファッション市場においては、ファッションの流れが変わった途端に、過去の売れ筋商品は死に筋商品に変わってしまう。POSに依存したために、ヒットのサイクル。終わった段階で、売れ筋商品のない売場になってしまったのだ。
 更に、NBメーカーは自社製品がコピーされることを嫌い、次々と取引を停止していった。当初はPB比率の向上につながり、利益率を押し上げたのだが、同時に新しい商品情報の入手もできなくなったのである。
 かつては、デジタルなPOS情報よりも、販売員のアナログな情報を優先していた。POS情報だけでは、どんな人がどのように購入していったのかは分からない。しかし、販売員が感じているのは結果だけではない。販売員が感じる競合他店の商品情報、販売員自身の評価、顧客へのアプローチから購入までのプロセス情報も含まれるのである。
 また、販売員の意見が企画に取り入れられれば、販売員のモチベーションも上がる。顧客の変化は直ちに企画チームに伝わり、常に顧客と同じ視点を保つことができるようになるのだ。

3.企画室は盛り上がっているか?

 デザイナーを目指す人の多くはファッションが好きだ。そして、自分が選んだ生地に、自分のデザインが乗せられ、新商品のサンプルが上がってくる。パターンナーは技術職であり、自分で着飾るよりもバターンの機能性を追求したり、シルエットの出し方にこだわる。多少、視点は異なるが、新しいサンプルが上がってくるのは待ち遠しいものだ。売れているブランドの企画室は、サンプルが上がる度に大いに盛り上がる。「カワイイ!!!」となり、皆で順番に試着し、社員割引で購入するための予約を行う。
 しかし、売れないブランドはサンプルが上がっても盛り上がらない。売れ筋商品をコピーしたサンプルが上がっても、小売価格を下げるために安い素材に乗せ変えたサンプルが上がってきても、げんなりするだけである。デザインやパターンメーキングという仕事もやらされている感ばかりになる。
 デザイナーもパターンナーも自社ブランドの服を着なくなる。こういう企業は末期症状だ。最も服に敏感な企画室のスタッフが自社商品に共感できなくなれば、顧客が共感するわけがない。義務で作っているようでは、顧客に感動を与えることはできない。
 そもそもアパレル企業の経営者は顧客に感動を与えようと考えているのだろうか。それとも、利益さえ確保できれば、どんな商品だろうと、顧客が何を考えようといいと思っているのだろうか。
 もし、感動を与えようと考えているならば、もっと商品にこだわりを持つのではないか。あるいは、商品企画のスタッフや販売員とのコミュニケーションを密にするのではないか。あるいは、顧客を会社に招いて、意見を聞くのではないか。
 「価格」と「利益率」だけから作られた商品は本当につまらない。全く魂が入っていない。その見分けがつかないようなら、誰かに仕事を譲り、別の仕事を探した方が良いのではないか。それは、本人のためでもあり、スタッフのためでもあり、顧客のためでもある。
 アパレル企業は、顧客に服を提供するだけではない。ファッションを提供しているのだ。喜びや夢を提供しているのだ。その情熱を提供しているのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(47)を紹介しています。本論文は、2012.10.22に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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