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April 17, 2013

日本からアパレル企業が消える日 j-fashion journal(44)

1.アパレル企業はメーカーから卸、小売店業態に変化

 アパレル(被服)企業という呼び方は、既製服産業に所属する企業という意味である。ヨーロッパの服づくりは基本的に手工業であり、その中心はメゾンと呼ばれる工房。そのデザインを取り入れて、大量生産大量販売したのがアメリカの既製服産業だった。そして、アパレル企業は縫製設備を持つメーカーからスタートしている。
 日本に本格的に既製服産業が紹介されたのは、1970年初頭である。アパレル産業、ファッションマーケティング、マーチャンダイジング、マーチャンダイザー、デザイナー、パターンメーカー等の用語や、アメリカのアパレル企業の組織や業務分担等が紹介された。併せて、既製服の縫製工場のラインの組み立て方や接着芯を使った合理的な縫製仕様等、技術的なノウハウも導入された。
 60年代までも既製服メーカーはあったが、実用衣料のメーカー、あるいは小規模な洋装店の延長のようなメーカーに過ぎなかった。それがアメリカの既製服産業のノウハウを導入することで、アパレル企業は大企業に成長したのである。

 その契機となったのが、独自のナショナルブランドの展開である。百貨店との取引も「委託仕入れ+派遣販売員制度」を定着させ、価格決定権と売場での在庫コントロールを手中にした。
 この頃から、アパレル企業は、縫製工場を下請けに使う「アパレル製造卸」業態を確立した。自社工場を持っているアパレル企業もあったが、次第に縫製工場を持たない企業が中心になる。
 1970年代、1980年代はアパレル製造卸の黄金期だった。わずか20年間で日本のアパレル企業は世界ランキングの上位を占めるようになったのだ。
 1990年代になると、製造卸業態から製造小売業態への転換、つまりSPA型アパレルへの転換が始まる。
 製造卸、製造小売の「製造」とは、自社工場で縫製するという意味ではなく、商品企画を行い、外注の縫製工場で加工することを意味している。厳密に言えば、この時点でアパレル企業はアパレルメーカーではなく、アパレル卸である。
 しかし、アパレル以外の分野でも、工場を持たないファブレスという考え方が一般化している。「自社オリジナルの製品を、自社のデザイン、生産管理の元で製造し、製造責任を負う場合はメーカーと言ってもいい」という考え方である。アイフォーンのアップルもファブレス型のメーカーである。
 SPA型アパレルの特徴は、直営店を持ち、製造小売を行うことだが、もう一つ大きな特徴がある。それは生産管理、品質管理等の機能を商社や外部企業に移管したことである。当初のSPA型アパレルは、デザイナー、パターンメーカーを擁し、オリジナルデザイン、オリジナル仕様の商品を製造していた。しかし、資源の選択と集中により、小売店頭に資源を集中させた。その結果、次第にデザインを商社傘下の企画会社に移管し、提示されたサンプルを製品仕入れするようになる。実質的に製造卸機能を持つのは商社であり、アパレル企業は小売業態に限りなく近づいていく。
 一方、ユニクロ、無印良品、H&M等のように、オリジナルブランドのみを展開する大型小売業が出現する。
 また、国内専門店チェーンもSPA型アパレル同様、商社から製品を仕入れ、独自ブランドで展開するようになる。
 こうなると、最早、アパレル企業jは小売業態を指すことになったと言ってもいいだろう。製造卸出身か、小売出身かという違いはあっても、実質的には何も変わらないのだから。

2.アパレルは百貨店の二の舞にならないか?

 アパレル企業が消える前に、風前の灯火となっているのが、百貨店業態である。百貨店そのものが完全になくなるわけではないが、百貨店業態はいくつかの業態に分化していくのではないか。たとえば、新宿伊勢丹のようにファッションに特化する専門大店。銀座松坂屋や新宿三越のようなテナントビル化のように。そして、百貨店という業態は次第に曖昧になっていくと思う。
 百貨店が衰退した大きな原因は、自らの「仕入れ販売機能」を放棄し、アパレル企業に委ねたことにある。前述した「委託仕入れ+派遣販売員制度」により、百貨店は短期的には在庫リスク、販売員経費リスクを回避することに成功した。しかし、その代償として価格決定権を失い、小売店のアイデンティティである仕入れと販売機能を失ったのである。
 同様に、アパレル企業は、商社や企画会社に企画、生産管理機能を移管したことにより、アパレル企業のアイデンティティであるモノ作りのノウハウを失おうとしている。
 勿論、世界のアパレル企業の中心が小売業態に移行しつつあるので、小売店として生きていくという選択肢もある。
 現実に、素材からの差別化ができているのは、ユニクロや無印良品といった大型専門店であり、一般のアパレル企業ではない。素材からの差別化を行うには、それなりの生産ロットが必要となるからだ。
 むしろ、一般のアパレル企業は、セレクトショップや専門店チェーンとの差別化が難しくなっている。商社、企画会社にモノ作りを委託するほど、商品は同質化していくのである。
 私が危惧しているのは、日本のアパレル市場特性である。日本市場は個性的なデザインよりも、ほとんど同じシルエットで細部の違いだけで特徴を出すことが多い。しかも、素材やカラーも同質化している。
 私は日本市場で売れている商品が世界の市場で通用するとは思えない。もし、通用するのであれば、その同質化した商品を中国の素材、生産に依存した場合、それらの商品は中国のアパレル企業から世界市場に流れていくだろう。
 つまり、日本企業がビジネスの主導権を握れないということだ。日本企業が主導権を握るには、確固としたブランドを構築することが必要だ。そういう意味でも、ユニクロ、無印良品に並ぶブランドは簡単には見当たらないのである。
 商社、企画会社が提案するサンプルを選ぶだけなら、デザイン、パターンメーキングの手間も掛からない。経験豊かな人材も必要ない。そういう意味では,コスト削減が可能である。しかし、目先のリスクヘッジが長期的に見ると、自らのアンデンティティ崩壊につながることは百貨店が証明している。
 それでも、アパレル企業が全て消えるわけではない。しかし,日本のアパレル市場が大規模なアパレル企業により寡占化が進む可能性は大きいのである。

3.独自のファッション発信は消えないが・・・

 私は大手アパレルや中堅アパレル企業の淘汰が進む可能性は高いと考えている。それでも、ベンチャー企業が次々と表れ、世代交代が行われるのであれば問題ない。むしろ、日本のアパレル産業は活性化するだろう。問題は、一部の国内大型小売店チェーンや海外資本に寡占化されることで、日本のアパレル業界が活力を失うことである。
 日本国内のアパレル小売市場は一部の大資本と、数多くの中小企業が分け合うだろう。しかし、アパレル生産はどうか。既に紡績や合繊メーカーは海外に生産拠点を移転している。既に、国内で独自の糸を作ることは難しくなっている。独自の糸がなければ、独自のテキスタイルを創造することは難しい。それでも、一部のハイテク合繊分野、高級デニム分野は海外からも高い評価を受けている。また、規模は小さいが、個性的な化合繊複合のジャカード織物等も生き残っていくだろう。
 アパレル縫製になると、更に状況は厳しい。一部のプレタポルテ、あるいは、オーダーやイージーオーダー、小規模で海外生産ができないアパレルやデザイナーの商品のみが国内生産を支えている。しかし、更に小売市場の寡占化、海外資本比率が高くなれば、今後も淘汰が続くのではないか。
 国内生産ではないにしても、渋谷や原宿のファッションが消えることはないだろう。生産地がどこであろうと、オリジナルの素材が作れないとしても、それなりの工夫でオリジナルの服やアクセサリーをオリジナルのコーディネートで訴求していくに違いない。但し、これらの企業が急成長したり、海外市場に進出することは難しいのではないだろうか。
 そして、相対的には、国内アパレル企業のシェアは減少していくだろう。そして、現在の百貨店のように、様々な形態に分化し、曖昧な形になっていくのではないだろうか。

4.淘汰と解体の後に来るものは?

 結論として、これからも日本のアパレル企業は淘汰が進むだろう。日本の繊維産地は産地単位での分業体制は崩れ、日本国内が一つの産地として連携する時代になる。つまり、大企業も産地も淘汰と解体が待っているということだ。 淘汰と解体により、市場ニッチが増えれば、新世代の起業家、経営者が登場するはずだ。彼らは、最初から国際的な視点を持ち、アナログとデジタルを融合させるようなビジネスを展開するのではないか。
 その時に、世間は彼らの会社を「アパレル企業」とは呼ばないはずだ。こうしてアパレル企業というジャンルは静かに消えていくのだろう。日本からファッションの灯が消えることはないのだが・・・。

*有料メルマガj-fashion journal(44)を紹介しています。本論文は、2012.10.1に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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