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November 04, 2012

新しいデザイナー組織のあり方 j-fashion journal(39)

1.デザイナー組織の歩み

 中国の人件費上昇から、国内生産の見直し気運が高まっている。しかし、単純に国内生産したからと言って、小売価格を上げることは困難である。何らかの差別化が必要であり、ここにデザイナーズブランドに対するニーズがある。
 個々の企業が勝手にデザイナーと契約し、活動を開始するのも良いが、デザイナーの社会的地位を押し上げ、ビジネス慣れした企業に対等にパートナーシップを結ぶためにも、デザイナーの組織が必要ではないだろうか。
 これまでのデザイナー組織の課題を分析し、新しい時代のデザイナー組織を考えてみたい。日本で最初にデザイナーグループがコレクションを行ったのは、TD6(トップデザイナー6人)だった。この時の、メンバーとなったデザイナーは既に自分の会社、あるいは自分のブランドを持ち、ビジネスを開始していた。つまり、個人的つながりからオーナー企業が集まってコレクションを開催したのである。

 TD6のデザイナーアパレル企業は、単にコレクションだけでなく、売場開拓でも連携し、デザイナーブランドの集積として売場の面を確保していった。たとえば、ニコルに丸井から新規出店の誘いが来れば、それをビギにも連絡し、フロアを構成していった。セールの時期や方法についても、それまでのダラダラとしたセールを止めて、時期を決めて5割引きのセールを定着させた。後には、この手法がファッションビルから百貨店等にも波及し、婦人服のセールの手法として定着していった。
 やがて、TD6から発展し、CFD(東京ファッションデザイナー協議会)が発足、「東京コレクション」が生まれた。その後、常に問題になったのが、パリコレに出展しているデザイナーの問題である。東京コレクションというのなら、「日本の代表的なデザイナーが揃って、コレクションを行って欲しい」という意見が出るのも当然だろう。しかし、パリコレ出展デザイナーにとっては、パリと東京の両方でコレクションを行う意味が見出せない。「東京でコレクションを開いても、何の批評も受けることかできず、ビジネスにもつながらない」というわけだ。
 もう一つの根本的な問題は、「東京コレクションは何のために開かれるのか」ということである。デザイナーズアパレル自身のプロモーションのためであれば、必ずしもファッションショーの費用対効果が良いわけではない。権威のあるプレスが存在するわけでもなく、批評が存在するわけでもない。単に、ファッション雑誌にコレクション写真を掲載するのならば、タイアップ広告を出稿した方が効果的だろう。
 また、パリコレのように、有望な新人デザイナーを輩出することにも意義を見出せなかった。欧米のように、資本と経営、デザイナーが分離していない日本の状況では、ベテランデザイナーが自らの競合相手を育てることに積極的にはなれるはずもない。
 そうした曖昧な状況が続き、何の解決策も見出せないままに、東京コレクションは、ある意味で官主導のJFW(ジャパンファッションウイーク)に引き継がれた。開催時期だけが問題視され、ニューヨークコレクションより早く開催すべきだ、東京ガールズコレクションと連携すべきだ・・・云々の本質とはかけ離れた議論ばかりが先行し、本質的な問題解決はできなかった。
 バブル崩壊後のファッションシーンでは、デザイナーズブランドが急成長して、大企業になることはなくなった。デザイナー自身もビジネスの拡大を目指していない。当然、コレクションに出展する点数は少なくなり、ファッションショーの時間も短くなる。
 相変わらず、批評とも言えないコレクションの記事が雑誌や新聞に掲載されるが、最早、それが消費者や流通にどれほどの影響を与えているか、という検証さえできない。
 そして、官製の最大の欠点だが、継続性がなく責任がない。予算がなくなれば、「自立しなさい」の一言で予算を引き上げて終わりだ。もちろん、現在も事務局スタッフは懸命の努力をしている。しかし、今後どうするかという明確なビジョンを持てずに、苦しんでいるように見える。
 その中で新たなデザイナーズブランドブームが到来しようとしている。現在は、そんな状況だ。

2.コレクションを行う明確な理由が必要だ

 私は世界中の都市で行われるコレクションがパリコレと同様のファッションの先進性を競い合うものでなくても良いと考えている。パリコレだけが正当であるとするならば、東京コレクションは常にパリコレのマイナーリーグに過ぎない。パリコレに出たければ、パリコレに出ればいい。これには、異論もあるだろうが、私は東京コレクションをパリコレのマイナーリーグにしてはいけないと考えている。むしろ、パリコレにはない価値観が必要なのだ。
 考えてみれば、パリ、ミラノ、ニューヨークの各コレクションはそれぞれの特徴が明確である。パリは世界の最先端のステージであり、ニューヨークは大量生産を基本としたマス製品のコレクション、ミラノはモノ作り機能を背景にクオリティを訴求している。ある意味で、パリはクリエーション、ニューヨークはマーケティング、ミラノはクオリティという価値観を打ち出していると言える。
 東京コレクションにも、こうした明確なコンセプトが必要である。
 たとえば、東京の特徴は夜のファッションがほとんど存在せず、昼の服が中心だ。そういう意味では、カジュアルが基本になるだろう。また、階層社会ではなく、ストリートからファッションが生まれるのも特徴である。宗教的なタブーもなく、無国籍で自由でアバンギャルドでポップだ。カジュアル、ストリート、ポップ等のキーワードで東京コレクションを定義しても良いのかもしれない。
 また、コレクションの開催には、明確な理由が必要だ。その理由とは、デザイナー側の論理だけではなく、コレクションを支える側の理由が存在しなければならない。たとえば、東京都が外国人観光客を誘致するためのファッションイベントとして東京コレクションを考えることもできる。その場合は、パリのジャパンエキスポのようなコスプレ等が登場するイベントを同時開催しても良いかもしれない。
 あるいは、イタリアとは異なる意味で、日本のモノ作りを背景にしたコレクションも考えられる。ハイテク素材とスポーツを基本にしたコレクションである。この場合には、合繊メーカー等が経済的支援する理由が出てくる。
 また、大手アパレル企業、SPAアパレル、専門店チェーン等がデザイナーコラボを営業戦略の核と考えるようになれば、新しいデザイナーの発掘が必要になる。そうなれば、それを目的としたコレクションが成立するに違いないし、共通した利害関係を持つ企業がスポンサーになるかもしれない。
 最初からインターネット販売を基本にしたコレクションもあり得るだろう。この場合には、楽天やゾゾタウン等が主催するコレクションになるかもしれない。あるいは、ICT企業の協力を得て、コレクションそのものをネット上で行い、そのまま受注するというコンセプトも良い。
 全てに共通するのは、コレクションとは参加するデザイナー企業のPRだけではなく、周辺にも波及効果が出なければならないということだ。そうでなければ、デザイナーが自分の資本で勝手にコレクションを行えばいい、という話になってしまう。
 本来は、その構想力をデザイナーが持たなければならないし、デザイナーが自らの社会的役割を明確に規定しなければならない。そして、周囲の企業を巻き込む新しいビジネスモデルを提案しなければならない。

3.アジアの企画開発拠点としての新東京コレクション構想

 私のテーマは、「デザインとモノ作りの融合」である。日本の強みである糸、テキスタイル、縫製加工等の技術とファッションを融合させることで、日本の繊維製造業と流通小売業全体を活性化したい。
 そのための小さな小さな第一歩として「T.T.T.東京テキスタイルトゥギャザー」というイベントを企画し、8月20日に開催した。私はこの延長に新しい東京コレクションができないものかと夢想している。
 このコレクションは基本的にメイドインジャパンの作品だけを出品する。デザイナーにとっては、多少窮屈かもしれないが、メイドインジャパンに絞ることで、様々な波及効果が期待できる。
 勿論、各デザイナーがビジネスとして海外生産のものを展開するのは何の問題もない。しかし、コレクションに登場するのは、全てメイドインジャパンにしたいのだ。このコレクションは、デザイナーの新しいデザインを発表する場であると同時に、新しいテキスタイルの発表の場でもある。できれば、合繊メーカー、紡績、テキスタイルメーカー等は、コレクションに合わせて、新製品を開発して欲しい。そして、デザイナーの作品と共に、世界中にプレス発表するのだ。東京コレクションが新素材のプロモーションとして機能すれば、大企業とデザイナー個人の接点も増えるだろう。それにより、新しいビジネスモデルも生まれるのではないか。
 また、このコレクションをたとえば、中国のOEM産地で発表する。テキスタイルメーカーは生地売りのチャンスが生まれ、縫製企業は技術ライセンス等の可能性が生まれる。勿論、デザイナーにもデザイン契約の可能性が出てくる。日本のデザイン、コンテンツ、技術がアジアのファッションを活性化させ、その売上の一部をロイヤリティという形で日本に還元し、そこで更なる開発を進める。ある意味で、中国は量産生産で、日本は企画開発機能を担うのである。こうした国際分業により、日本のデザイナーや中小製造業者にも新たな仕事を生み出せるのではないか、と考えている。中国と同じ土俵で勝負をしても、コスト競争力等で勝つのは難しい。むしろ、彼らが必要とする機能を提供することで、共棲するという発想である
 日本がアジアの企画開発機能を担い、そのステージが東京コレクションであれば、アジアの繊維業界必見のコレクションになるだろう。
 そして、これを実現するための機関が必要であり、それが私の考えるデザイナー組織なのだ。つまり、デザイナー組織と言っても、デザイナーだけで構成されるわけではない。むしろ、糸メーカー、テキスタイル、縫製加工等のモノ作りに関わる企業が広く参加する組織であり、当然、デザイナーが主要なメンバーであり、プロジェクトを企画運営していく。日本の繊維ファッション業界には、プランナー、デザイナーが必要であり、その機能を補完する意味も含まれる。デザイナーは自分の作りたい服を作るだけではなく、日本の繊維ファッションビジネスをもデザインして欲しいのだ。そういう広い視点を持てるデザイナーと一緒に、新たなコレクションを構築していきたいと思っている。

*有料メルマガj-fashion journal(39)を紹介しています。本論文は、2012.8.27に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
 

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Comments

本日、初めて、記事を拝見致しました。
どの記事も大変勉強させていただきました。

私は、現在30歳、アパレル企業への転職活動中です。
今年1月に4年4ヶ月務めた帽子のメーカーを解雇のため辞め、
本日の段階でヤングアパレルの中国で安価製品を製造、小売りするメーカーに内定をいただきました。
私としては、日本のこだわりをもって、もの作りをしていらっしゃらるデザイナーさん、パタンナーさん、職人さん等、専門職の方々に尊敬、憧れの念があり、同じようにこだわったもの作りをすることが一つの目標です。
実際、雑用からでもと思い、現在知人アトリエにバイトにもいかせてもらっています。
しかしながら、今日内定先の社長さまからは、上記のような方達は、身近にもいたけどみんないなくなったとおしゃっていましたし、ファッションビジネスの時代はおわり、アパレルビジネスの時代だと言われました。
実際、前職を含め、時代背景はそうだとも思いますし、会社が潤っているところは、
大体そのようなところだとも思いいます。
しかし、このまま利益だけをとることだけに重点をおき、ゲーム感覚でやっていけばいいのかに、躊躇しています。(こちらの業態様も、けして簡単なことだとは、思っていません。)
両極のような道で、正直、進む道に葛藤しております。

しかし、今日色々と読ませていただき、一つの道しるべを示していただきき、一つの希望をもつことが出来ました。
(他に働き先は無いので、結論はまだ考え抜きたいと思いますが…)

それから、業界に対する愛情と情熱を感じ、感動いたしました。

ですから、取り組みの内容など深く存じず、突然失礼かと思いましたが、
メールを送らせていただきました。

何かご縁、一言叱咤激励いただけたら、幸いです。
勝手申し上げますが、何卒よろしくお願い致します。

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