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November 04, 2012

トータルアイテム展開から究極の単品へ j-fashion journal(38)

1.トータルアイテム展開とSPA化

 80年代に一世を風靡したDCブランドは、一つのショップの中でトータルコーディネートができるようにフルアイテムを展開するところに特徴があった。今では当たり前のことだが、当時の百貨店の婦人服売場はアイテム別売場であり、トータルコーディネートを訴求する売場はなかった。
 原宿のマンションメーカーがDCブランドに転換するには、トータルアイテム展開が必要だった。
 DCブーム前夜のマンションメーカーもまたアイテム別単品アパレルが中心だった。アトリエサブはシャツ単品とレザー、ファイブフォックスはボトム中心のアパレルだった。それがトータルアイテム展開を始め、直営店を展開するようになり、全国的に拡大していった。
 それと同時に、消費者も全身をお気に入りのブランドで固めることが流行したのである。

 大手アパレルも単品アイテム展開が中心だったが、80年代半ばからDCブランドに習い、トータルアイテム展開のショップを出店するようになる。
 アパレル企業は、単品アイテム展開からトータルアイテム展開に転換することで、直営店の出店が可能になった。このことが契機となり、「製造卸から製造小売への転換」を促し、SPA型アパレルへと進化を遂げた。
 トータルアイテム展開をするには、生地仕入れ、縫製工場の手当てが課題になる。ブラウス単品展開であれば、ブラウス生地専門の生地卸と、ブラウスの縫製工場を手当てしておけばいい。しかし、トータルアイテム展開になると、あらゆるアイテム用生地と、各アイテムの縫製工場が必要になる。
 こうなると、社内で生地を選び、縫製工場の管理をすることは困難だ。そこで商社に生産管理を丸投げするという手法が採用された。
 やがて、アパレルが採用した商社による生産管理と製品仕入れという形態は、専門店にも波及していく。それまではアパレル卸から商品を仕入れていた専門店が、アパレル同様に商社から製品を仕入れ、オリジナルブランドで展開するようになる。最早、アパレル企業もアパレル専門店も違いはない。どちらも実質的には小売店なのだ。
 いずれにせよ、店舗を運営するには、ある程度の商品MDの規模が必要である。それらの製品を全て自社ブランドで展開するか、それとも仕入れとオリジナルブランドのミックスで行くか、という戦略の違いはあるが、物理的な店舗を構え、販売員を雇うという形態を取る限り、一定の規模がないと採算が取れない。こうした流れは、全て物理的な直営店を展開するというビジネスモデルに由来している。そのことを確認しておこう。

2.お取り寄せ食品のアパレル版

 現在では、アパレル企業も専門店も、商社傘下の企画会社から提示されるサンプルを選ぶだけになりつつある。その結果、商品の同質化と品質の低下を招き、国内製造業は空洞化が進み、雇用が失われている。
 こうした状況は、次の芽が育つ時期が到来しているとも言える。才能豊かな若手のデザイナーも少なくない。しかし、繊研新聞によると、デザイナーアパレルのビジネスの上限は3億程度とのこと。私も経験上、その見方に賛成する。
 かつてのDCブランドは、卸から直営店へというビジネスモデルの転換を伴っていた。そのため急激に成長することが可能だった。時代も良かった。全国的に駅ビル、ファッションビル、地下街等への積極投資がなされ、出店の環境が整っていた。大手アパレル企業の本格的参入の前に、成長する時間的猶予があったのである。
 私は多店舗展開による成長は難しいと考えている。全国で多店舗化を図るには資本が必要である。実際に、マルキュー系のアパレル企業はファンドから資金を調達し、成長を加速している例もある。しかし多くの場合、成長は続かない。商品の同質化も変わらない。
 こうした生活者の不満を解消し、同時にビジネスを成長させるにはどうしたらいいのか?
 本紙でも何度も繰り返しているように、私はデジタル化への対応が不可欠と考えている。かつてのDCブランドの時と同様に、現在は大手企業にそのノウハウがなく参入が遅れている。
 たとえば、食料品ではお取り寄せが静かなブームだ。限定生産のプリンなどをインターネットで販売し、金額は大きくなくても、着実なビジネスを展開している。限定生産は、中小企業に向いている。大企業では採算が取れず、追随することができない。
 そのアパレル版はできないのだろうか、という問題提起である。

3.デザイナー、テキスタイル企業、縫製工場の連携による市場創造

 現在のファッションシーンを見ていて感じるのは、本当にトータルアイテム展開が必要なのか、という疑問である。全身を同じブランドで固めている人はほとんどいない。ベーシックなワードローブは安価なカジュアル専門店で購入し、そこに個性的なアイテムを加え、自分らしさを演出している。
 たとえば、ジャケットを1型だけ展開するデザイナーブランドがあっても良いと思う。その代わり、素材もデザインも全てオリジナル。世界で一つしかないオンリーワンの作品を発表する。限定生産あるいは、完全受注生産とする。
 そのためには、テキスタイルメーカー、縫製工場との連携が欠かせない。たとえば、縫製工場がアパレルとして自立したビジネスを展開することは大変だが、試験的に1~2型を展開するのはどうだろうか。実際に受注したら、デザイナーにはロイヤリティを支払う。
 テキスタイルメーカーも海外市場等に参入するのであれば、自社で色を染めて提案する必要がある。しかし、カラーについて専門教育を受けた人はいない。そこで、デザイナーと連携することで、色指示をしてもらう。勿論、その生地は独占ではなく、自社で販売してもいい。その代わり、デザイナーがコレクションで受注したら、小ロットでも対応する。
 こうしてデザイナー、テキスタイルメーカー、縫製工場が、これまでの商慣習や常識にとらわれず、新しい仕組みを生み出そうとすれば、毎年、新しいデザインのアパレル製品が世に出る。テキスタイル単体で販売することは難しい。日本の縫製工場が海外アパレル企業から受注することも難しい。それなら、製品でアピールすればいいのだ。
 これまでの自立化事業、産地支援等は、素人にアパレルビジネスや小売ビジネスを強要するところに無理があった。餅は餅屋。それぞれの立場で専門性を発揮し、少し柔軟に連携する。それによって、市場創造ができるのではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(38)を紹介しています。本論文は、2012.8.20に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
 

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