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November 04, 2012

ファッションビジネスとプロモーション j-fashion journal(37)

1.ヨーロッパとアメリカのファッションの違い

 ヨーロッパ人は、ファッションの基本はソワレ(夜の服)であると言う。昼の服は実用的であり、夜の服こそ芸術性を発揮できると考えているのだろう。貴族社会ではパーティーが頻繁に開催され、貴族間の衣装の競い合いが行われていた。そこでは、目立たなければならない。「目立つ」ということは、主張するということである。主張が強いほど目立つ。主張の強さは、ある時には装飾であり、ある時は色であり、ある時はシルエットである。
 我々はバウハウス以降の合理主義的・機能主義的な近代デザインを基本に考える癖がついている。華美な装飾より、機能美を追求することが正しいと思っており、その価値観からすればあまりに自己主張の強いデザインは悪趣味と感じる。しかし、ファッションは建築のように長期間、社会の中に存在するわけではない。たった一度のパーティーで「目立つ」ことを競い合うという刹那的な美を追求する要素も持っている。

 「目立つ」と一言で言うが、目立つことは難しい。どんなに華美な装飾で飾りたてても、他人と同じでは目立たない。他人と異なる個性があり、しかもそれが美しくなければ評価されない。常に、美の新たな概念を追求しなければならない。
 目立てば話題になる。話題になるということは、評価されるということだ。単純に言えば、ファッションの本質は、目立ち、話題になることかもしれない。
 世界にはファッションに対する二つの価値観がある。オートクチュールを源流とするヨーロッパの価値観と、ファッションデザインをプロダクトデザインの一部と考えるアメリカの価値観である。
 ヨーロッパ人にとって、ファッションは大量生産するべきものではなく、手工業生産されるものだ。大衆に受け入れられるより、その価値を理解する特定の人達に受け入れられたいと考える。ここでは、ある意味で目立つことが価値を持つ。
 アメリカ人にとって、デザインとは大量生産を実現するための手段であり、大量に売れるデザインこそ良いデザインと考える。目立つことよりも、合理性、機能性、コストパフォーマンスが重視される。
 ヨーロッパ人にとって、最大のプロモーションはファッションショー会場に大勢のセレブを集めることであり、有名なファッション雑誌の編集長やファッション評論家から高い評価を受けることである。
 アメリカ人が考えるプロモーションとは、大量生産大量販売を実現するためのマスプロモーションである。一部のセレブより、一般大衆に強い印象を与えることが重視されるのだ。
 日本では、明治から戦前まではヨーロッパにファッションを学び、戦後になるとアメリカにファッションビジネスを学んだ。戦後は、ヨーロッパ式のオーダーメイドのビジネスモデルは淘汰され、アメリカ式の大量生産大量販売を基本としたビジネスモデルが勝ち残った。プロモーションについても、アメリカの思想を基本にしている。つまり、大量販売のためにコマーシャルを打つという発想である。
 21世紀になると、アメリカとヨーロッパのビジネスモデルが融合を始める。ヨーロッパのブランドは、アメリカのグローバルマーケティングにより、グローバルビジネスに成長した。当時に、ヨーロッパのクリエーションは、巨大なライセンスビジネスのシンボルとして、プロモーションの役割を果たすようになった。ファッションそのものが、プロモーションの手段になったのである。
 日本においては、ファッションをプロモーションの手段として活用するというビジネスモデルが存在しない。大手アパレルの多くは、ライセンシー(ブランドを供与され、ロイヤリティを支払う側)であり、ライサンサー(ブランドを供与し、ロイヤリティを受け取る側)ではない。アパレル企業のプロモーションとはアパレル製品を大量に販売するための販売促進に過ぎない。

2.東京コレクションが機能しない理由とは?

 パリコレの背景には、巨大なグローバルビジネス、巨大なライセンスビジネスが存在する。それらの巨大なビジネスのプロモーションとして、また、ブランド資産の格付けとして評価されているのである。パリコレで評価が上がれば、ブランド資産の価値が上がり、ライセンスビジネスのスケールも拡大する。
 一方、東京コレクションの背景には何もない。グローバルビジネスへの影響もないし、そもそもライセンサーとなりうるブランドが少ない。ほとんど全てのデザイナーは、自社のアパレル製品の販売促進を行っているに過ぎない。
 ニューヨークコレクションには、アパレル以外のアメリカ企業がスポンサーに付いている。これは、ニューヨークコレクションの開催は、ニューヨークという都市の魅力を向上させ、ニューヨーク市のプロモーションにつながり、それがアメリカ企業の利益に貢献すると考えているからである。
 現在の東京コレクションには、メルセデスベンツがスポンサーについているが、そこに日本側の戦略は感じられない。スポンサー企業のメルセデスベンツは、日本のデザイナーのコレクションを支援するということで、企業イメージが向上すると判断したのであろう。それだけだ。
 もし、東京都が東京コレクションを東京の都市経営戦略の中に位置付けるビジョンが持てれば、支援する必然性も出てくるだろう。最近の業界紙によると、デザイナーアパレル企業は3億円の売上が上限だとのこと。10人で30億、20人で60億円に過ぎない中小企業のビジネスを支援するだけの理由では、東京都がスポンサーにつく可能性もない。
 日本のファッションビジネスは縦割りであり、自己完結している。ファッションブランドがバッグ、靴、時計、香水、アクセサリー等の巨大なマーケットのシンボルになることはなく、従って、コレクションを開催する意義も曖昧なのだ。 極論すれば、ファッションショーとは、とても高額だが効果的なプロモーションなのだ。東京ガールズコレクションは、興業としての採算を取ることに成功した。しかし、自己完結しているという意味では、東京コレクションと変わらない。そこから、巨大なビジネスを動かすという仕組みがない。参加企業の集団プロモーションに過ぎないのである。

3.プロモーションとしてのファッション

 私は、プロモーションとしてのファッションを提案したい。
 ヨーロッパのブランドは、オートクチュールから続く脈々とした伝統がある。そのブランド価値が、多くの周辺産業を巻き込む形で巨大なビジネスネットワークを形成している。しかし、日本のデザイナーやブランドにはそうしたネットワークはない。従って、ファッションは単にファッションで完結するだけで、他産業への影響力を持っていない。
 そこで、発想を逆転する。最初から他産業のプロモーションとしてのファッションはできないか、という発想である。
 たとえば、観光産業のプロモーションとしてのファッションを考える。京都では西陣会館でキモノのファッションショーを開催して、外国人観光客の集客に成功している。それなら、原宿や秋葉原で、コスプレやロリータのファッションショーを開催して、外国人観光客を集客できないだろうか。あるいは、そこからライセンスビジネスは生まれないのか。
 あるいは、京都で日本の伝統工芸をテーマにしたファッションショーはできないのか。
 日本の主要な企業とのコラボも考えられる。日本の自動車をプロモーションするためのファッションショーはできないか。日本の家電メーカーをプロモーションできないか。携帯電話はどうか。あるいは、日本の農業とのコラボはできないだろうか。
 日本企業が海外進出するのであれば、そのプロモーションとして、日本ファッションのファッションショーは有効ではないのか。
 ファッションショーには、観客を陶酔させる要素が詰まっている。まず美しいモデルが存在し、照明と音楽と舞台装置でブランドイメージを訴求する。最近のステージではBGVのように静止画や動画を使うこともできる。テレビCMよりもはるかに効果的で感動を与えることが可能である。
 ファッションにはポテンシャルがある。東京という街にもポテンシャルがある。日本のコンテンツにもポテンシャルがある。なぜ、それらを融合できないのだろうか。ファッションを実用衣料と考えず、ファッションを大量生産大量販売モデルと考えないこと。そして、ファッションは目立つこと。目立つことはプロモーション効果がある。インターネット時代になり、マスプロモーションの効果が希薄になる時代だからこそ、ファッションそのものをプロモーションの手段として使うという戦略があり得るのではないか、と思うのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(37)を紹介しています。本論文は、2012.8.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。
 

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