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September 24, 2012

現物支給の新人デザイナーコンテスト j-fashion journal(27)

1.既存のデザインコンテストの問題点
 その昔、「装苑賞」はデザイナーの登竜門だった。装苑賞を取れば、雑誌の装苑に作品を発表できる。当時の装苑は、全国の文化服装学院連鎖校の学生が購読しており、その影響力は多大だった。そこから、オーダーメイドの仕事を始めるデザイナーも多かった。高田賢三やコシノジュンコは装苑賞受賞がそのキャリアのスタートとなっている。
 しかし、既製服の時代になり状況が変わった。装苑に掲載されるイージーソーイングのデザインと、既製服のデザインが乖離し始めたのだ。家庭洋裁をする人が少なくなり、装苑賞を取得したデザイナーが活躍できる場が狭まってしまった。
 もう一つの問題は、審査員である。審査員の多くは有名デザイナーであり、バイヤーや顧客ではない。売れる売れないという判断ではなく、純粋に面白いデザインを選ぶ。そのため、どうしても選ばれるデザインは奇抜なものになっていく。応募する学生も、審査員の判断を敏感に察知する。そのため、ますます奇抜なデザインを応募する。そして、その中でも際立つ奇抜なデザインが選ばれる。

 私も文化服装学院の卒業生であり、学生時代は装苑賞にも応募していた。私は学生の頃から、コンテストに入賞する学生は、ある種の職人だと思っていた。コンテストで入賞する学生は、コンテストに集中している。手間を惜しまないデザインを個性的に描き、審査員デザイナーにアピールするのだ。あまりに奇抜なデザインが、実際のビジネスに適さないのは当然である。
 勿論、この傾向は装苑賞に限ったことではない。あらゆるデザインコンテストに共通している。そして、デザインコンテストに入賞しても、就職できない学生が増えている。学生にとってコンテストは、学校の授業以外で何かに挑戦する唯一の機会であり、手段である。しかし、現実はそうではない。ここに大きな問題が横たわっている。

2.お笑い業界に見るデザイナー育成のヒント
 私は、新人の才能を見出し、開花させ、ビジネスにするという点で、吉本興業を高く評価している。吉本興業は「牧場経営」だとか。牧場の柵は低く、出入りは自由。そして、牧場の中には餌(仕事)が用意されている。勿論、最初の仕事の報酬は低い。売れるようになれば、マネージャーもつく。はるか雲の上には長者番付に出るようなスターも見える。そういう環境を創り出しているのだ。
 デザイナーにも、こういう環境は整えられないものか。出入りは自由だが、必ず仕事があるような仕組み。最初は低い報酬でも、それがチャンスとなってスターになれるかもしれないという仕事を用意できないだろうか。
 コンテストの権威を与えるのではなく、低い柵の牧場を与えるという発想である。それには、権威的な審査員は必要ない。むしろ、全国の専門店の販売員100人が審査員になる。あるいは、同世代の学生100人、原宿、渋谷でスカウトしたファッショナブルな若者100人でもよい。これら300人を審査員にすれば、よりビジネスに近づくだろう。
 もう一つのヒントは、やはり「お笑い」にある。たとえば、「M-1グランプリ」だ。「M-1グランプリ」の優れている点は、賞金だけでない。メディア戦略が巧みで、グランプリを取るとスポンサーのオートバックスのCMに起用され、ワイドショー等の出演も増え、確実にメディアの露出度が高まる。 ファッションのデザインコンテストでは、残念ながらメディアに露出することがない。そのため、受賞者の知名度も上らないし、仕事も増えない。かつての装苑賞は、「装苑」というメディアの力が大きかった。しかし、現在ではそのポジションが変化している。
 現在なら、テレビ局、雑誌社、あるいは、ゲーム業界、インターネット関連企業の協力が必要だろう。あるいは、SNS上で何らかのイベントを行うのも良いかもしれない。いずれにせよ、現代の生活の中でリアルなメディアとの連携が不可欠である。
 あるいは、デザインコンテストでグランプリを取れば、エグザイルのステージ衣装や、AKB48のコスチュームをデザインできるというのもいい。確実に露出度は高まるだろう。もし、レディガガの衣装をデザインできるならば、世界的な登竜門になるはずだ。

3.副賞はビジネスチャンス
 もう一つのポイントはビジネスにつながることである。「M-1グランプリ」のように、コンテストでグランプリを取れば、少なくとも1年間程度の仕事が保証されると良い。仕事を与えることは難しくても、ビジネスチャンスを与えることはできると思う。
 たとえば、各企業ができることで支援する。たとえば、賞金で日本と中国に商標登録をする。テキスタイルメーカーは生地を提供する。付属メーカーは付属品を、織ネームメーカーは織ネームを提供する。縫製工場は縫製をする。そして、会場を提供してくれるところがあれば展示会はできる。あるいは、百貨店やSCが販売イベントスペースを提供する。
 雑誌やインターネットメディア、モデルエージェンシー、ヘアメイクの協力が得られれば、ファッションショーも可能だ。
 これを1年間、2シーズン続ける。その間の活動は、密着取材を行い、ドキュメント放送としてテレビあるいはUSTREAM等で放映する。これが実現すれば、着実にデザイナーは育つだろう。

4.コンテストを通じた中国市場戦略
 たとえば、同様のコンテストを日本だけでなく、中国で行う。中国の新人デザイナーを対象にするが、素材提供、縫製、プロモーション等は日本企業がスポンサーとなる。そして、中国でファッションショー、展示会を行う。中国側には、日本企業が中国人デザイナー育成の支援をすると言えばいい。非常に美しいコンセプトであり、感謝されることは間違いない。
 しかし実際には、日本のテキスタイルのプロモーションであり、日本の縫製のプロモーションである。また、日系百貨店等をファッションショー会場にすれば、百貨店のプロモーションにもなる。
 審査員に中国アパレル企業の社長をお願いできれば、テキスタイル等は直接的なビジネスへとつながるかもしれない。
 コンテストのコンセプトを権威付けではなく、あくまでデザイナーを世に出す手段と捉え直す。デザイナーの育成はアパレルの全てのサプライチェーン企業の利益につながるのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(27)を紹介しています。本論文は、2012.6.4に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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