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September 24, 2012

T.T.T.東京・テキスタイル・トゥギャザー j-fashion journal(30)

1.グローバルなテキスタイルビジネスのスタートライン
 世界のテキスタイル製品価格は中国製品が中心になっている。日本やイタリアのテキスタイルは非常に高額であり、通常の売り方では価格競争で負けてしまう。そこで、我々は高級品の売り方を学ばなければならない。
 高級品云々以前にやるべきことがある。それは生機(キバタ)の商売ではなく、染生地を販売することである。北陸、泉州、浜松等の機屋は、「合繊メーカー、紡績、産元から注文を受けて、機織し、白生地を納品する」形態だった。染色は、生地問屋、アパレル等から指示を受けて行う。つまり、自社でオリジナルカラーの生地を販売した経験がない。機屋とは「機織までの仕事」が守備範囲であり、染色は自分の仕事と思っていない。しかし、国際的なテキスタイル見本市では、自社オリジナルのカラーをつけた染め上がりの生地を販売する。そのため、欧米のテキスタイルメーカーは、テキスタイルデザイナーを雇い、トレンド情報を収集し、シーズン毎のコレクションを構成して、見本市に望む。

 一方、日本のテキスタイルメーカーは受注生産が原則である。見本市に展示するのは過去のアーカイブであり、それをたたき台に受注生産する。
 このスタイルのままでは、国際的なテキスタイルビジネスに参入できないし、高級品として価格を通すこともできない。「白生地を売る」のは、新興工業国の低コストメーカーの手法だ。企画力やブランド力がないから、工賃の安さで勝負するのだ。
 多くの日本のテキスタイルメーカーは、自社の技術を誇っている。しかし、ビジネスのスタイルが高級品に対応していない。テキスタイル製品とは染上がりの生地であり、白生地は半製品に過ぎない。ある意味では、単なる素材、部品なのだ。少なくともテキスタイル製品として完成させ、勝負する必要がある。
 ここで問題になるのが、「どんなカラーをつければいいのか」だ。欧州のトレンドカラーで染めればいいという考えでは、新興工業国メーカーと変わりない。オリジナルのコンセプトを持ったテキスタイルブランドを開発し、そのコンセプトに基づくオリジナルカラー、柄等を打ち出し、コーディネートを提案しなければならない。ここで、「テキスタイルブランド」が課題となる。
 テキスタイルブランドを構築するには、テキスタイルデザイナー、あるいは、クリエイティブディレクターが不可欠だ。一人の人間の感性で統一しなければ、ブランドとしてのまとまりが出ない。私は、日本の全てのテキスタルメーカーは、テキスタイルデザイナーと契約すべきと考えている。
 しかし、オリジナルのテキスタイル製品コレクションを打ち出しても、それが売れるとは限らない。オリジナルのテキスタイル製品コレクションを発表することは、海外のテキスタイルビジネスに参加するスタートラインに立っただけだ。そこから勝負が始まる。

2.テキスタイルデザイナー、アパレルデザイナーとのコラボレーション
 私は、日本のテキスタイル製品が、独自の色をつけたくらいで売れるとは考えていない。それでも国際水準から見れば、群を抜いて高価格なのだ。
 次に行うべきことは何か。たとえば、中国アパレル企業に売り込むことを想定する。彼らは通常20~50元程度の生地を使っている。日本のテキスタイルは軽く100元を超えてしまう。つまり、二倍以上の開きがある。これは欧州のアパレルに売り込む場合も同様である。彼らもまた中国製テキスタイルの価格を標準としているからだ。
 それほどの価格差がありながら、日本製の生地を購入するには、それなりのメリットがなければならない。私が中国アパレルの経営者と話していて感じるのは、彼らは自社を国際レベルに引き上げたいと考えていること。中国では人件費が上がり、輸出競争力が落ちている。また、中国の物価が上がるということは、海外資本との競合がより厳しくなることを意味する。
 中国人経営者が言う「国際レベル」とは、「海外企業に勝てるレベル」ということであり、海外市場進出を意味するのではない。具体的には、「商品企画」「マーケティング」「物流システム」「店舗管理」等のノウハウを欲しているのだ。それを入手できるならば、高額な日本製テキスタイル製品を仕入れるのも止むなしということだ。日本製品の価格水準は生地だけでは売れるレベルを超えている。様々なソフト込みでなければ売れないだろう。
 たとえば、生地をプレゼンテーションするにも、(白生地は論外だが、)無地の染生地とジャカード生地、プリント生地がコーディネートできるように提案する。それにより、テキスタイルを構成する企画力を訴求することができる。
 また、製品を提示することも有効である。製品を提示することは、製品デザイン、パターンを含めて訴求することになるからだ。
 上記のような売り方を実践するには、現在のテキスタイルメーカーだけでは対応できない。テキスタイルメーカー同士のグループ化が必要であり、その上で、テキスタイルデザイナー、あるいはテキスタイルのクリエイティブディレクターが不可欠となる。加えて、アパレルデザイナーとのコラボレーションを行わなければならない。
 更に、ビジネスを完結させるには、中国アパレル企業に詳しい代理商を獲得しなければならない。しかし、ここまで一度にはできない。一歩ずつ、ステップを上がり、国際ビジネスに対応できる体制作りを目指すことだ。
 
3.日本のデザイナーも国際ビジネスを目指そう
 次にアパレルデザイナーの立場で考えてみたい。日本のアパレル市場は非常に特殊な状況にある。
 大手アパレル等は、ライセンスブランド比率が高い。ブランドライセンスにより、ブランドコンセプト、シーズンテーマは海外から与えられる。企業内デザイナーはその枠の中で、日本市場に合うようにデザインを編集したり、商品バリエーションを展開するのが仕事である。国際的な仕組みで見れば、日本の企業内デザイナーはアシスタントデザイナーであり、ブランドを構築するスティリストではない。そのため、大手アパレル企業はオリジナルブランドを開発する力が弱い。外部デザイナーと契約することもあるが、多くの場合、ライセンスブランドの方が成功する確率は高い。ライセンスブランドとは、既に海外市場で実績のあるブランドから選ぶのだから、ゼロからスタートするブランド開発より成功の確率が高いのは当然だ。また、外部デザイナーと契約しても、社内にデザイナーの才能を引き出すような仕組みがないことも問題である。
 一方で、独立系のデザイナー企業は、規模を大きくすることができない。まず、金融機関やファンドも実績のある企業には投資するが、ベンチャー企業、特にファッション系のベンチャー企業に投資しようとしない。
 また、日本のファッション市場全体を見ても、拡大成長する見込みはなく、飽和状態である。売場の多くは、大企業により分割されており、その隙間に出店するか、小規模のセレクトショップに卸すしかない。必然的に、ビジネスの規模は小さくなり、マニアックなデザインが主流になっている。
 デザイナーはビジネス規模が小さいために、オリジナル素材を使うことができず、見本帳にあるような、誰でも使える生地でコレクションを構成している。そのため、高級ブランドは展開できず、カジュアルなリアルクローズが主流になる。それでは、日本の強みでもある独自のテキスタイルを使うこともできない。日本のテキスタイル製品は、既に若手デザイナーが使えるような価格帯ではないからだ。こうした状況下では、世界市場で勝負できるデザイナーは育たない。国内で小さなビジネスに終始するしかないのである。
 こうした閉塞状況を打破するには、デザイナーも新しいビジネスモデルを考えなければならない。テキスタイルメーカー同様、国際的なビジネスを展開し、海外市場でも通用するようなビジネスモデルを構築することだ。それには、単独ではなく、テキスタイルメーカーとの連携が必要になると思う。
 日本の高級テキスタイル製品から、世界市場で通用するようなアパレル製品をデザインし、それを海外市場に向けてプレゼンテーションする。それにより、海外のアパレル企業と契約ができるかもしれない。また、海外の生産機能を活用することで、世界市場で勝負することも可能だ。
 日本ではファッションベンチャーに投資するファンドはいないが、中国ではファッションビジネスへの投資も盛んである。国内だけに閉じこもらずに、スケールの大きな視点を持つことで、活路が開ける可能性がある。
 いずれにしても、一度にグローバルなビジネスモデルが構築できるわけではない。まずスタートラインに立たなければならない。スタートラインとは、日本独自のオリジナルなテキスタイルを駆使して、日本独自のオリジナルコレクションを作ることだ。

4.テキスタイルメーカーとデザイナーのWIN-WINの関係
 以上の構想を実現することはできるのだろうか。ここまで読んだ方も「到底実現できないだろう」と思っているかもしれない。
 しかし、私は実現可能だと信じている。というより、この程度のことは、先進国の企業は皆やっていることだ。これができないのならば、座して死を待つのみである。
 私は、現在のビジネスを全て、国際的なビジネスモデルに転換せよ、と言っているのではない。むしろ、国際的なビジネスモデルを目指すことは、その過程の中で、国際化する日本市場においても有効だと考えているのである。
 テキスタイルメーカーが色をつけた生地を展開するのも、品番を絞ればいい。そして、受注生産とは異なるビジネスモデルで国際市場に訴求する。高額なテキスタイルを使えるブランドは限られている。しかし、高級ブランドとの取引ができれば、その下のランクの企業に訴求するのも容易になるだろう。自社のブランドコンセプトが固まり、それが高い評価を受ければ、中国等のテキスタイルメーカーに企画ライセンスによるセカンドブランドを展開できるかもしれない。そこでは、リーズナブルな価格の製品を展開することができるだろう。
 日本のデザイナーも同様である。オリジナルのブランド、デザインが海外で評価されれば、それが日本市場にも役立つだろう。また、海外企業との契約により、海外でコレクションを発表するチャンスが出てくるかもしれない。
 こうした可能性を一度話し合ってみよう。今後は、日本のテキスタイルメーカーは日本のデザイナーとの連携を強めていくのだ。そして、それはWIN-WINの関係にならなければならない。
 そのキックオフ・イベントが、今回のテーマである「東京・テキスタイル・トゥギャザー(仮称)」である。
 今回の「東京・テキスタイル・トゥギャザー(仮称)」は、展示会ではない。私はあえて展示会というスタイルを外した。産地メーカーは、皆展示会をやりたがる。展示会は商談につながると考えるからだ。しかし、ここで述べたような大きな構想に基づけば、小さな展示会を開くよりも、デザイナーとテキスタイルメーカーとの出会いの場を設け、そこで、こうした構想を共有することの方が大切なはずだ。
 そこで、第一部はシンポジウムを開催しようと思う。テキスタイルメーカーの開発担当者、テキスタイルデザイナー、アパレルデザイナー、ファッションメディア等のパネリストを集め、私がコーディネーターとなって、パネルディスカッションを行う。
 第二部は交流パーティーである。通常だと小さなアパレルには供給されない日本のハイテクな合繊素材を展示し、そのメーカーとデザイナーが情報交換をしてほしいと思っている。
 今回は合繊織物だが、様々な産地から様々な素材を選りすぐり、同種のイベントを展開していきたいと思う。
 正式なイベントの通知は、SNS等を通じて公開する予定である。8月20日15時スタートは決定なので、興味のある方は予定に入れておいていただきたい。よろしく!

*T.T.T.東京・テキスタイル・トゥギャザーは、8月20日に無事終了いたしました。ありがとうございました。

*有料メルマガj-fashion journal(30)を紹介しています。本論文は、2012.6.25に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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