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September 24, 2012

(製造業+輸出)発想からの脱却 j-fashion journal(29)

1.円高が不利になるビジネスとは?
 円高とは海外の通貨と比較して、円の価値が上ることである。1ドル200円の時に、1000円の商品は5ドルだが、1ドル100円になれば10ドルになってしまう。日本の輸出メーカーにとっては、同じコストで生産しているのに、海外の輸入業者にとっては2倍の価格になってしまう。従って、少しでも円高になると日本全体では莫大な損害が出るとされているが本当だろうか。
 確かに、安い原材料を輸入して、国内で加工して高い製品として輸出するという加工貿易のモデルで考えれば、円高になると輸出競争力が落ちる。
 また、海外観光客にとって、訪日旅行のコストは割高になるので、海外からの観光客も減るだろう。
 しかし、海外から製品を輸入して日本国内で販売する場合は、円高の方が割安で仕入れられるので有利だ。日本から海外旅行に行く場合も円高は有利。また、海外の企業を買収したり、海外企業の株式を取得する場合も、円高が望ましい。日本国内に円で資産を持っている人も国際的には資産が増えることになる。円高になることは、相対的に日本の資産価値が上がることなのだから、輸出モデルだけで換算して1円円高になると何千億の損害と言うのは、一方的な気がする。

 たとえば、製造業モデルであっても、海外生産の場合は為替の影響より工場の人件費の上昇が問題になるはずだ。グローバルな小売企業は、世界各国の工場を比較しながら、最も安い地域で加工している。こういう体制が取れるならば、為替の影響は最小限に抑えられる。また、企業が多国籍化することでも為替の影響は軽減できるはずだ。
 通貨が国という地域に縛られているのであれば、複数の地域で双方向のビジネスモデルを構築すれば、為替の影響は相殺される。また、一つの業種業態にとらわれず、常に変化する柔軟なビジネスであれば、やはり為替リスクは軽減されるだろう。
 つまり、円高で不利になるビジネスとは、通貨が強い国だけを拠点に製造業を展開し、輸出によって利益を得ているビジネスモデルということになる。
 それを防ぐには、グローバルに製造拠点を持つこと。あるいは、海外とのネットワークを基盤にビジネスを行うこと。そして、輸出だけでなく、その国で生産した商品をその国で消費するようなビジネスモデルを構築することである。
 私のような個人企業でも、輸出企業だけと付き合っていたら、円高の影響を受けるだろう。しかし、一方で輸入型の企業と付き合っていれば、その影響は半減できる。変化に順応するには、多様性を持つことである。多様で複雑なビジネスを構築することで、変化に対応することはできるだろう。

2.加工貿易から観光立国へ
 私たちは、小中学校の社会科で、「日本は資源のない国だから、資源を輸入して、製品に加工して輸出しないと、国の経済が成り立たない」と教えられた。
 しかし、バブル経済の頃は、「日本は資源がないからこそ、世界から最も安い資源を輸入することができて有利だ」と言われていた。また、日本の資源は人的資源であり、エネルギー資源よりも価値が高いとも。
 こうした製造業モデルが成立したのは、コストの安さと円安の為替の後押しが大きかった。しかし、現在のような、円高の為替、高いエネルギー費、高い原材料費、高い人件費、高い法人税等をトータルで考えると、少なくともビジネス環境という意味では、日本はこれまでのような中級品の製造業には向いていない。 一方、現在は日本文化のコンテンツが注目されている。小説、マンガ、アニメ、ゲーム、キャラクター、ストリートファッション等々。
 また、食の分野では和食や寿司が世界中で高い評価を得ている。鰹節や昆布から取る出汁、醤油、味噌。そして、日本酒、焼酎等。
 加えて、自然豊かな日本の風土、歴史が残る町並みや神社仏閣等の建築、歴史的な仏像などの彫刻、絵画、陶磁器、漆器等も大きな魅力だ。そして、人的資源とも言えるが、日本人独特の他人を思いやる気遣い、接客サービス等も優れた無形資産である。
 こう考えていくと、現代の日本は日本製品を輸出するよりも、世界中から日本に人を呼び込むことが重要ではないだろか。日本という国そのものを、世界のテーマパークと考える。日本の商業施設はテーマパークの売店である。日本には、日本でしか買えない、「日本」というブランド商品がある。それは非常にユニークで、価値のあるもの。決して大量生産しないし、海外に輸出もしない。頑固なまでに日本国内で販売する。
 重要なのは、日本で独占販売することであり、日本国内で生産することでない。ブランディング、商品企画は日本でコントロールする。商品を輸出するのではなく、日本に顧客を呼び込む。もし、ブランドが確立したら、海外に店舗展開を行ってもいい。しかし、商品をコントロールするのは日本企業でなければならない。

3.「日本」というブランディング
 日本人は「職人気質」と言われる。確かに、教育レベルが高く、協調性が高く集団行動が得意な日本人は工業製品に向いているのかもしれない。しかし、これは日本の教育の賜物であり、日本人の本質と言っていいのかは分からない。
 私が考える日本人の特質は、新しいものに敏感なこと。同じモノを作り続けるのではなく、それぞれの人がそれぞれの工程で常に工夫し、改善すること。その結果、日本製品は多様性に富んでいる。しかし、日本の流通の多くはアメリカをモデルとしている。つまり、大量生産大量販売であり、標準化、規格化を考える。そのため、サンプル段階で没になるものが非常に多いし、それが産業全体では大きな無駄になっている。しかし、この大量のサンプルを作れる能力こそ、日本の特徴ではないか、と思うのだ。
 ヨーロッパのアパレル企業が感じる日本テキスタイルの魅力は、イタリアに類を見ないその多様性とバリエーションの豊富さだろう。反面、無駄が多く、非合理的でもある。しかし、非合理的なことに価値があるのかもしれないのだ。
 私たちに求められているのは、欧米のキャッチアップという思考を捨て去り、真のオリジナルを追求することではないだろうか。
 私は、今後のジャパンブランドのヒントは京都にあると思っている。どんな商品でも頭に「京」をつけるとブランド価値が出てくる。漬け物は京漬、紅も京紅というと高級で由緒正しいイメージだ。京料理、京人形、京野菜、京友禅等々。 これを日本で考える。そして、それぞれのコンセプトを決め、基準を決めていく。日本編、日本織、日本染、日本皮革、日本スーツ、日本ジーンズ等々。
 更に、日本の都市、日本の街、日本の景観、日本の建築、日本のデザインとは何か、を考える。日本全体が日本オリジナルを追求する。それにより、日本のコンテンツと日本のソフトウェアが商品化できるはずだ。商品の流れだけを見て、輸出だ輸入だと言うのではなく、文化、コンテンツ、ソフトの流れを見ることが大切なのではないだろうか。

4.ビジネスをプロデュースする
 日本のモノ作りが優秀であると自慢するメーカー経営者は多いが、彼らのイメージするモノ作りの多くは部品、部材、素材である。メーカーとしての自分の会社が担当する工程だけを対象にしており、最終製品にはあまり興味がない。その結果、アップルやサムソンの商品の中身は日本の部品が数多く使われているにも関わらず、国際市場において完成品としての日本製品の位置は決して高くない。 そして、部品、部材、素材の製造業の多くは下請けであり、OEM生産である。多くの日本メーカーは、消費者にダイレクトに情報発信を行い、市場を創造し、流通全体をコントロールするという発想が弱い。自分を主張せずに、控えめに世界最高水準の素材や部材をバイオーダーで作ることに誇りを持っているのだ。 しかし、こうした消極的な姿勢が、国内生産の空洞化を招いた一因でもあると思う。そして、現在の閉塞感を招く一因でもある。
 私は、ビジネスとは主体的であるべきだと思っている。そして、顧客が満足する利益の高いビジネスを展開することが重要である。利益を圧縮して安価な商品を作るよりも、利益を確保して、経営者にも従業員にも外注工場の人にも、豊かな生活を保証する。それが皆の幸福につながるのだ。そして、顧客が満足すれば、顧客もまた幸福になる。
 ビジネスはモノだけでは完結しない。それはビジネス全体をプロデュースして初めて分かることだ。プロモーションやコミュニケーション、情報発信など、形のないものが、より重要であり、それらが顧客の感情に働きかけるのである。ファッションビジネスとは感情に訴えるビジネスである。
 モノ作りの技術を誇るだけでなく、感情に訴え、感動させる技術が問われているのだ。 

*有料メルマガj-fashion journal(29)を紹介しています。本論文は、2012.6.18に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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1円円高になると何千億の損害・・・というのは想像できない世界ですね。

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