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September 24, 2012

中国市場向けインパナトーレ j-fashion journal(28)

1.イタリアプラート産地のインパナトーレ
 インパナトーレをご存じだろうか。日本にはない職種であり、イタリアでもプラート産地周辺だけに見られる職種のようだ。元々、イタリアのプラート産地は再生ウール等を多用した紡毛中心のウール産地だった。現在と違って、高級品ではなく、低価格商品が中心であり、テキスタイルメーカーに企画力もなく、高付加価値商品を扱うことができなかった。そこで、テキスタイルメーカーは、自らの工場機能を外部の人間に開放することにした。インパナトーレと呼ばれる人々は、テキスタイル企画ができて、自分でアパレル企業に販売も行う。日本のテキスタイルコンバーター(生地問屋)のようなものと考えれば良いだろう。
 日本のテキスタイルコンバーターや商社は、テキスタイルメーカーに指図して商品を仕入れる。そして、自らが価格決定をしてアパレル企業等に販売する。価格決定権は問屋が持ち、メーカーは持たない。

 プラートでは、あくまで取引はテキスタイルメーカーとアパレル企業間で行われる。インパナトーレは企画営業の報酬として、テキスタイルメーカーから売上の一定歩合を受け取る。ここでは、価格決定権はメーカーが持っている。優秀なインパナトーレであれば、テキスタイルメーカーの社長より高給を取ることも珍しくはない。
 インパナトーレという職種が日本に紹介され、産地活性化の切り札として紹介された時に、私は懐疑的な論文を発表した。
 まず日本は問屋を中心とした商習慣があること。メーカーは価格決定権を持ったことがないし、企画営業の報酬として売上歩合を支払ったこともない。従って、インパナトーレのような個人に対しても問屋の機能を要求しがちである。
 また、個人と個人のネットワークよりも、企業間の関係を重視する日本では、,一度はインパナトーレに報酬を支払って、次からは直接営業することが予想される。日本の商談は、完全に企画が完成した商品でなくても可能だ。不完全なサンプルを持って行って、少しずつ改善していけば最終的に商品になる。イタリアのように、年二回のスケジュールで回っているのではなく、毎月のように行われる展示会に対応した商談が中心である。即ち、集中的な企画をする習慣がない。
 また、日本のテキスタイルメーカーの社長は、もしインパナトーレが自分より高額な報酬を受け取れば反感を持つに違いない。実力主義の評価や報酬が根付いていない日本では、問屋がメーカーより儲けることは理解できても、ブローカーのような立場(多分、インパナトーレをこう解釈するだろう)の人間が自分より報酬を受け取ることは、儲け過ぎであり、商道徳に反すると考えるからだ。
 実際、日本ではインパナトーレは根付かなかった。これはインパナトーレとしての資質を持つ人材がいないのではない。日本の商習慣や経営者の考え方と合わないことが理由である。

2.シーズンに対応した新作サンプルを
 中国に限らず、日本以外の市場で商品を販売しようと思うのなら、企画機能を持たなければならない。メーカーは相手から言われた通りに作るのではなく、何を作るべきかを考えることが必要だ。そして、繊維業界に多い「メーカーだから企画は必要ない」という考え方を改めなければならない。企画機能を持たないメーカーは、コストの安さが勝負するしかない。
 もし、日本が低コストの国であれば、企画機能を持たなくても構わないだろう。しかし、今の日本製の製品は国際的に見て非常に高額であることを認識すべきだ。高額商品であるほど、独自性が必要である。そして、海外市場で販売するのならば、ヨーロッパのように年二回のスケジュールに対応しなければならない。 ヨーロッパ、中国等の展示会に出展している日本メーカーは、本当にそのシーズンの商品を開発して、新作商品だけを展示しているのだろうか。多くは、過去の実績商品を展示しているのではないか。それでも、最初は珍しがって見てくれるだろう。しかし、毎年同じサンプルを並べているようでは、次第に飽きられる。高額商品には新しい提案が必要なのだ。

3.「販売エージェット+ブランドライセンス」のビジネスモデル
 海外市場でビジネスをするには、まず企画機能を持たなければならない。しかし、日本の問屋流通で育ったメーカーに企画機能を持てと言っても困難である。これまで、企画担当者やデザイナーを雇用したこともないし、どのように仕事をさせて良いのかもわからない。デザイナーを採用しようとしても、そのデザイナーの資質や実力を見抜くこともできないだろう。
 そこでインパナトーレが必要になる。日本国内のビジネスでは、機能しなかったインパナトーレだが、中国市場等の海外市場ならば機能するのではないか。
 まず、中国の流通では販売エージェントは一般的な存在だ。つまり、営業を代行する代わりに売上の歩合を報酬として受け取るという仕組みである。販売エージェントが顧客を回り、いろいろな要求や希望を聞いて来る。その情報に基づいてメーカーがサンプルを作り、それを販売エージェントが営業に回る。そして売れれば成功報酬を受け取る。勿論、成功報酬だけでは営業する経費がでない場合もあるだろう。その場合は、基本報酬+成功報酬ということになる。
 この条件は、中国で営業担当者を雇用しても同様だ。中国では欧米同様、一般的に営業職は「基本給+成功報酬」が一般的である。しかし、中国に現地法人を設立し、事務所を借りない限り、社員を雇用することはできない。また、最近は労働条件も改善されているため、無闇に解雇することもできない。それならば、現地法人を設立せず、社員も雇用せずに販売エージェントと業務委託契約を選ぶ方が良い。
 顧客のニーズを聞いて試作するところまで行けば、次はオリジナルの企画である。この場合、日本企業で理解しやすいのは、ブランドライセンス契約ではないだろうか。つまり、企画会社が持つプランドの製品をOEM生産し、売上歩合でライセンス料を支払う仕組みである。
 販売エージェットは営業の成功報酬を受け取り、企画会社がオリジナルブランドを持ち、成功報酬としてライセンス料を受け取る。このモデルであれば、抵抗は少ない。企画会社と販売エージェントを兼任しているのがインパナトーレだが、最早インパナトーレと言う必要もないだろう。

4.展示会の次の一手は代理商獲得
 中国市場の扉を明けるには、まず展示会への出展と考えている企業が多い。実は、これも疑問だ。展示会は誰でも出展料さえ支払えば出展できる。しかし、そこからビジネスが始まるという保証はない。
 一般的には、次にショールームの開設を考える。しかし、ショールームを開設したからといってビジネスはスタートしない。これは展示会と同様である。
 むしろ、個別の商談を進めた方が効果的である。この時に、日本企業は直接アポイントを取って、販売先を訪問することを失礼と考えがちだ。しかし、そんなことはない。どんどんアポイントを取って会いに行くことが重要なのだ。
 日本メーカーが販売する商品は高額品なので、それなりのブランディングやプレゼンテーションが必要である。また、魅力的なオリジナルブランド、オリジナル商品を訴求しなければならない。そのために、企画機能を持たないメーカーは前述したような企画会社との取り組み、ブランドライセンス、またはインパナトーレと契約することが必要だろう。
 商品が売れる見込みがつけば、次は代理商の獲得である。必ずしも、ここで現地法人を設立する必要はない。日本から輸出し、代理商に独占輸入販売権を与える。代理商との契約は、当然、期間を限定することも可能である。もし、売上が見込めて、直営店展開が必要になってから、現地法人を作ればいい。最初から法人を設立すると経費が掛かるだけだ。無駄な経費を掛けるならば、企画や販売エージェット獲得に投資すべきである。
 ここで代理商と販売エージェットを混同しないようにしたい。販売エージェントとは、営業の業務委託である。販売エージェントの仕事は、良い代理商を見つけることだ。代理商は、独占販売権を持ち、商品を仕入れてくれる顧客と認識すべきだろう。
 メーカーが成長するには、代理商との二人三脚が必要である。文字通り、メーカーと代理商は運命共同体であり、メーカーは代理商を非常に大切にする。これは会社としてというよりも、家族のように接することが重要である。(この辺りについては、また機会があれば解説したい)
 いずれにせよ、展示会出展、ショールーム開設、現地法人設立という手順を絶対視しないことが重要である。これはセオリーでも何でもないのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(28)を紹介しています。本論文は、2012.6.11に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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