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August 19, 2012

グローバルなクリエーション、ドメスティックなMD j-fashion journal(26)

「グローバルなクリエーション、ドメスティックなMD」

1.日本のテキスタイル、アパレルは欧米のキャッチアップが基本
 欧米のファッション市場は年2回のサイクルで回っている。勿論、テキスタイルも糸もカラーも年2回のサイクルで回っている。
一方、日本のアパレル市場は4~12サイクルで回っている。梅春、春、初夏、夏、晩夏初秋、秋、冬、クリスマスで8シーズン。春と秋を2つに分け、春夏セール、秋冬セールの2を含めると、12シーズンでマンスリーMDとなる。
年間2シーズンの場合は、店頭の半年前にアパレルのコレクション、その半年前にテキスタイルのコレクション、その半年前に糸のコレクションがある。
日本のリードタイムは短い。基本的に店頭の2~3カ月前にアパレル展示会を行う。オリジナルの生地を開発する場合、アパレル展示会の1カ月前に着分、展示会から一カ月後に原反が必要になる。常に在庫があれば、更に一カ月リードタイムを短縮できる。

たとえば、春夏ものを2月に店頭立ち上げるとすると、11月展示会。2カ月前の9月にデザインと生地が決定、その後、一カ月でパターンからサンプル生産。本来、このサイクルだと9月末のパリコレの結果を見て修正は難しい。しかし、多くのアパレルはここで修正を加えることが多い。そうなると、在庫してある生地を使うしかなくなるだろう。
パリコレに出展するアパレルは、プルミエールビジョンの3~4カ月前からテキスタイル開発を始める。開発が間に合わなかった場合、最終的にプルミエールビジョンで拾うという感じだ。
日本のテキスタイルメーカーの中には、プルミエールビジョンに出展することを勲章のように思っているところも多いだろう。しかし、プルミエールビジョンの時期では、開発は間に合わない。展示会で現物に近い商品を販売するしかないのだ。
また、多くの日本のテキスタイルメーカーは、プルミエールビジョンのトレンドや傾向を確認してから、テキスタイル企画に入る。
つまり、日本ではアパレルはパリコレの結果を見て、テキスタイルはプルミエールビジョンの結果を見てから企画を進めている。日本市場だけを視野に入れるのならば、このサイクルで良いが、世界市場に進出するとなると、これではオリジナルの素材開発ができない。本当のオリジナル企画ができないということだ。 日本のアパレル産業は、アメリカの既製服産業をモデルに成長してきた。アメリカの既製服企業は、パリコレのデザインをコピーして大量生産して成長した。また、日本の大手アパレルは、現在でもライセンスブランド比率が高い。ここでも、欧米のコレクションを確認してから、企画がスタートする仕組みになっている。
そして、このサイクルは、ファストファッションと同様である。というより、ファストファッションとは、日本やアメリカの売れ筋後追い型企画を世界スケールで展開したビジネスモデルなのだ。
多くの日本アパレル企業は、欧米のラグジュアリーブランドと肩を並べることを諦めているのかもしれない。日本市場に限定し、最適化した高品質のファストファッションを展開するというビジネスモデルも考えられる。
日本のテキスタイルメーカーは、日本のアパレルのサイクルに合わせている限り、欧米のラグジュアリーブランドのテキスタイル開発チームに入ることはできない。いつまで経っても、拾い買いを待つだけであり、売上も安定しないだろう。

2.「クリエーション型」と「量産型」のビジネスモデル
 日本のアパレル、テキスタイル企業は、クリエーション、オリジナル企画を追求するよりも、売れ筋から外れないことを優先している。個性を出すのではなく、いかに売れ筋情報をキャッチして、それを踏襲することを考えている。最も信頼できるのは店頭実績であり、できれば店頭実績を見てから生産したい。それには、いかにリードタイムを短縮して、期中追加生産できるかが勝負になる。そして、競合他社よりも低価格で販売することかできれば、優位に立てると考えているのだ。
こうした考え方の基盤となっているのは、過去の成功体験である。個性的なアパレル企業やデザイナーよりも、二番手で追いかける方が利益を上げ、経済的成功を手にすることが多い。これは事実である。しかし、この成功体験は永遠に続くのだろうか。前述したように、この成功体験を踏襲しているのは、ファストファッションである。しかも、日本企業よりもアップスケールでグローバルな展開を実践しているのだ。
私は、アパレルビジネスを二つのモデルに分けて考えたいと思う。
第一は、「クリエーション型」。パリコレに参加するような高級アパレルのビジネスモデル。こちらは、素材から開発し、ブランドの個性、オリジナル性を追求し、利幅を多く確保し、高額商品を販売する。オリジナルブランドを展開しているので、様々なライセンスビジネスの可能性もある。
第二は、「量産型」。ファストファッション、一般的な日本アパレル企業のように、コレクション情報、トレンド情報、店頭の売れ筋情報等を確認してから、その傾向を分析し、短サイクル生産し、なるべく低価格で提供するビジネスモデル。こちらは、ライセンスビジネスの広がりは期待できない。むしろ、ライセンシーになって、ブランドの名前を活用した量販ビジネスを展開する。
アパレルが二つに分類できるのならば、テキスタイルメーカーのビジネスモデルも、同様に二つに分けられるだろう。
第一は、「クリエーション型」のテキスタイルメーカー。オリジナルブランドにより毎シーズンのコレクションを構成し、個性的で付加価値の高いテキスタイルを高級アパレルに提供するというモデル。更に、高級アパレルと共にテキスタイル開発を行う開発型と、展示会で自社企画の商品を販売する自社ブランド型に分かれる。
第二は、「量産型」のテキスタイルメーカー。幅広い品揃えと在庫を持ち、なるべく低価格で販売する。あるいは、売れ筋の生地をクイックにコピー、量産するメーカー。
そして、「クリエーション型」と「量産型」の大きな違いは、企画、生産サイクルであり、スケジュールである。日本のアパレル、テキスタイル市場でも、オリジナルブランドを展開し、高付加価値の商品を目指している企業は少なくない。なぜなら、日本企業は高コスト体質であり、日本生産は世界の中では群抜くように高コストだからである。最早、中流狙いの「量産型」では、中国に勝てない。しかし、企画までのプロセス、生産サイクルやスケジュールが量産型と差別化できていない。同じ時間軸の中で行動していなければ、いつまで経っても「クリエーション型」として認知されないだろう。もし、クリエーション型を目指すならば、それなりのスケジュールで動かなければならない。

3.同じ時間、同じ価値観の中で動く
日本のテキスタイル、縫製、ニット等の技術レベルは高い。それにも関わらず、中流階層狙いの安物製品ばかりを作っている。どんなに技術が高くても、安物の大量生産を志向しているのでは、欧米のラグジュアリーブランドと付き合うことはできない。
まず、重要なのは、気持ちであり、志である。私は欧米のラグジュアリーブランドと取引がしたい。あるいは、ラグジュアリーブランドのような商品を作りたい。あるいは、高所得層だけを対象にラグジュアリーなビジネスモデルを構築したい。そう考えているのならば、それを表明することだ。そして、それを証明するために、同じ時間軸で動くべきである。
高付加価値の高級品ビジネスは、大量生産大量販売であってはならない。むしろ、生産設備が限定されているか、生産量が限定されていることが望ましい。日本の短サイクル小ロット生産は、何度もリピートするためである。しかし、高級品ビジネスでは基本的にリピート生産はない。次々と新しいモノを創っていくのだ。
クリエーションとは無から有を生み出す作業である。有から有を生み出すのではない。有とは既に存在するもの。つまり、雑誌に掲載されている商品や店頭で売れている商品である。それらを基本にモノ作りをしているのならば、どんなに技術レベルが高くても、それは品質の良い中級品のメーカーに過ぎない。無から有を生み出すのであれば、売れ筋が見えない段階で企画、開発ができるはずである。だから、同じ時間軸で動けるはずだと考える。それができないのは、創造性がないという証なのだ。
中小零細企業でも、個人のデザイナーでも、もし、クリエーション型ビジネスを目指すならば、欧米のラグジュアリーブランドと同じ価値観を持ち、同じタイムテーブルの中で行動することである。それすれば、世界中のどんな市場でも、どんな展示会でもビジネスすることができる。
一方、「量産型」ビジネスはある程度の規模、資本力が必要である。マネジメント能力も必要である。「クリエーション型」と「量産型」は、同じテキスタイルや、アパレル製品を作っていても、全く別のビジネスである。別の価値観、別の時間、別の宇宙で生きているのだ。

4.クリエーション型ビジネスのためのサプライチェーン
「クリエーション型」と「量産型」のビジネスはモデルが異なる。経費配分も求められる人材も、何もかもが異なる。僕が知る限り、量産型ビジネスについては、様々なビジネス書が役に立つが、「クリエーション型」ビジネスについての書籍は見たことがない。周辺のことを解説したり、エッセイで語っているものはあるが、論理的に分析し、体系化したものは目にしたことがない。
この違いは、オートクチュールとプレタポルテの違いではない。オートクチュールとプレタポルテは同じ世界の住人だ。プレタポルテとファストファッションの違い、欧州とアメリカ・日本ファッションの違い、レディガガとAKB48の違いとでも言おうか。
ファストファッションのビジネスモデルが新しく、ラグジュアリーブランドのビジネスモデルが古いという人もいるかもしれないが、それは違う。別世界の二つを同列に論じることはできない。
元来、ヨーロッパにおけるファッションとは、手工業の延長にあった。主たる対象もピラミッドの頂点に君臨する特殊な顧客クラスターである。そこで認められることが重要であり、経済的なスケールの大きさが問題ではないのだ。
アメリカにおけるファッションとは、工業デザインの延長であり、大量生産大量販売を支えるのがデザインだと考えている。従って、ある程度のボリュームが重要であり、ピラミッドの頂点を目指すという価値観は希薄だ。一部のセレブの支持を得たいのも、それによって大衆層に訴求できるからである。
日本はヨーロッパのクチュール文化とアメリカの大量生産文化が整理されずに混在している。明治以降、ヨーロッパを手本にし、第二次世界大戦後はアメリカを手本としたために、アメリカ的な考え方の方が進んでいるという思想も根強い。しかし、両者は全く異なる文化なのだ。
日本の繊維産業が空洞化したのは、大量生産大量販売のアメリカ型の思想によるものだった。しかし、その空洞化がある意味で希少価値を生み出そうとしている。また、日本の職人気質はアメリカ的というより、ヨーロッパ的である。日本のビジネスマンはアメリカ的発想で量を目指すが、中小零細のメーカーは量ではなく、付加価値を目指すべきだと思うのだ。そして、高付加価値の素材、加工、縫製、デザイナーが独自のサプライチェーンを構築する。
ここでは、大企業の系列ではなく、SNSでつながるような個人ネットワークが中心になるだろう。そして、販売モデルもネットが中心になる。テキスタイルだけ、縫製だけ、デザイナーだけで、世界市場に打ち出すのは困難である。あくまでトータルなサプライチェーンとして打ち出さなければならない。

*有料メルマガj-fashion journal(26)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.5.28に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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Comments

はじめまして。論理的・体系的なものとは言えないかもしれませんが、2008年に次のようなものを書きました。
今も同様の研究を継続しております。

坂口様のご著書からも多くを学ばせて頂いております。今後ともよろしくお願いいたします。

http://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/tu/file/565/20111201143401/TU10066000002.pdf

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