My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 | Main | リクルートスーツ考 j-fashion journal(19) »

July 08, 2012

ファッションは変化なり j-fashion journal(18)

「ファッションは変化なり」

1.「変化の価値」と「不変の価値」
 変わらないことには価値がある。一つの道を極める。一つのことをやり遂げる。「不変」「不動」という言葉からは、堂々として男らしいイメージが感じられる。
 反対に「変化する」「変わる」という言葉からはあまり良いイメージが感じられない。「変わりやすい人間」というと、信用できない感じがする。「仕事が変わる」より「仕事が変わらない」ことの方が,聞こえがいい。
 私は、ファッションとは変化し続けるものと考えている。ファッションという響きの中にも、風俗的、感覚的、軽佻浮薄なイメージが感じられる。

 しかし、変化を続けることは生きていることの証であり、変化しなくなる状態は「死」をあらわす。株式市場でも商品市場でも常に変化するから投資の対象になるのであり、価値が変化しないのでは投資する意味もない。
 我々には職業の選択の自由があるし、一定の範囲内ではあるが個人の自由も保証されている。従って、変化し続けることは可能なのだ。
 変化し続けることは良いことばかりではない。ファッションがコロコロと変化するのは、資源の無駄遣いにつながるという意見もあるだろう。
 それなら、制服のように常に同じ服を着ればいいのだろうか。家具や照明器具、食器のデザインが変わらなくても、生活には困らない。合理的な生活を志向するのならば、流行に左右される服を選ぶべきではないだろう。
 ヨーロッパ人は生活スタイルがあるという。食器も一つのブランドの同じデザインのものを使い続ける。建築や家具のデザインも変化しない。日本人はヨーロッパ人のように成熟していないから、生活スタイルが確立していない。「まだ発展途上なのだ」という意見がある。
 しかし、私はそう考えていない。日本人は一つのデザインを使い続けるよりも、常に新しいデザインを求めているだけなのだ。一つの様式に安住することはない。常に新しいスタイルを模索しながら、何千年も生きてきたのだから。
 ヨーロッパ人の女の子は、日本の原宿ファッションを見て、「自由で羨ましい」「ヨーロッパでは、あんな自由な格好はできない」と言う。ヨーロッパには「こうあるべきだ」という暗黙のルールや約束事が存在する。そのデザインが好きとか嫌いだという理由ではなく、「うちの家族は先祖代々この店の食器を使っている」から同じデザインのものを使っているに過ぎない。
 インテリアやファッションにおいては、「日本人も生活スタイルの確立すべきだ」という人も食事や料理については冒険家である。日本以外の国では、ほぼ食事のメニューは決まっている。その国の料理しか食べないのが一般的だ。しかし日本の家庭では、フランス料理、イタリア料理、中華料理、韓国料理、インド料理、日本料理など、世界各国の料理を調理し、食べている。そして、ビール、ウイスキー、日本酒、マッコリ、ジン、テキーラ等々、あらゆる飲料を飲むのだ。こんなに世界中の料理を試しているのは、日本が成熟していないからなのだろうか。成熟するということは、フランス料理に行き着くことなのだろうか。
 私は、ルールに縛られず、次々と新しいファッションを生み出す国こそが、時代の先端にいると考えている。日本には、ヨーロッパの成熟とは異なる、独自の価値観がある。だから、ヨーロッパ流の生活スタイルが定着することは、何百年経ってもあり得ないと思う。

2.変化が止まることは停滞すること
 90年代半ばから現在にいたるまで、日本人が使うあらゆる商品は日本製から中国製に切り換えられた。そして、あらゆるアイテムの価格が下落した。
 98年、ユニクロ原宿店がオープンした頃は、まさに安さが話題の中心だった。日本全国で「私のコーディネート全身で1万円しないんだよ」と自慢したことを思い出す。激安商法が衝撃的だったのは、一部の店だけが急激に安い商品を販売したことにある。この価格でこの品質、というのがサプライズだったのだ。
 あれから10年以上経った現在、最早低価格商品は驚きの対象ではない。むしろ中国の人件費や原材料費の価格が高騰している分だけ、品質が落ちており、単なる安物を安く売っているに過ぎない。
 日本中のメーカー、流通業者が激安商品に熱中している間、デザイン開発、用途開発、品質の向上等が停滞し、売れ筋商品を追いかけ、いかに安く作るか、だけが競われていた。商品そのものは変化せず、市場は停滞し、ますます価格だけの勝負になっていったのである。
 この10年、あきらかにファッションは停滞し、ファッション市場は陳腐化していった。
 コレクションデザイナーは、毎シーズン、命を削るように新しいファッションを打ち出す。その行為を無駄だと思うだろうか。日本のアパレル企業も流通企業も、デザイナーのコレクションは売れないと考え、自分達のビジネスに関係ないと思っている。しかし、変化を続けることにこそ価値があるのだ。
 私はいつの頃からか、アパレルに代わってPCがファッション商品になったと感じた。その次は携帯がファッションになった。どちらも最盛期には、半年に一回のコレクションを発表していたからだ。現在は、スマホ、タブレットPCがファッション商品になっている。
 アパレルに比べれば、デパ地下スイーツの方がはるかにファッションである。こちらも半年に一度のコレクションを発表しているからだ。
 アパレル業界は、コモディティに堕していいのだろうか。コモディティ分野で日本企業は海外企業に勝てるのか。
 量販店、百貨店のアパレル製品が売れないのは、変化が止まっているからだ。マルキュー系のファッションの人気が色褪せないのは、常に変化することを諦めていないからだ。携帯でアパレル製品が売れているのは、そこに革新があり、変化があるからだ。
 会社も変化しなければならない。新卒採用をとめた会社は変化することも止まってしまった。個人も変化しなければならない。現在の既得権を守ることだけに留まることは変化を拒否することだ。ビジネスは常に競争原理を保つ必要がある。競争しているからこそ、変化があるのだ。変化はチャンスだ。変化を恐れてはならない。

3.ファッションは変化礼賛
 ファッションには軽佻浮薄の響きがあるかもしれないが、あらゆる分野の中で堂々と変化を評価する分野であり、論理よりも感性やセンスが評価される分野であり、マイノリティを差別しない分野である。私はそのことに誇りを持っていいと思う。
 ファッション製品の競争は規模の大小に関係ない。専門学校の学生が作った服が、大手アパレルの服よりも魅力的かもしれない。品質や素材ではないし、価格でもない。トータルで価値があればいいし、顧客が好きだと思えればいい。極めて感覚的、感情的であり、それだから面白いのだ。
 売れ筋をコピーして、いかに低価格で作るか、というのがアパレルの勝負であれば、ベンチャーが生まれる隙間はない。しかし、魅力的な製品を作る競争であれば、いくらでも可能性はある。
 冒頭で述べたように、日本社会では変化することを「マイナス」と捉えることが多い。しかし、ファッションだけは変化礼賛であるべきだ。震災があっても、戦争があっても、ファッションは変化を続ける。デザイナーや顧客の心が動く限り、新しいファッションは生まれる。そして、心が動くからこそ消費が生まれるのである。
 私は最近、店頭を見ていても心が動かない。「なんでこんなに心が動かないのだろう」と考えて、商品を見る。そこには驚きがないのだ。普通の服が並んでいるだけ。そこから私の心に訴えかけてくるものはない。スペックと価格が透けて見えるモノが並んでいるだけである。
 日本のアパレル企業の服よりも、海外のファストファッションの方が心が動くこともある。「いくら何でもこの素材はないだろう」と思ったりする。それでもトレンドを追いかけて、この価格なら仕方がないなと思う。50歳代の男性としては買えない品質だが、それでも少しは心が動く。そんな面白みがある。
 そういう意味では、商品MDのバランスが良過ぎるのも問題だ。隙がないのは動きがないことでもある。変化する余地がないのだ。あえて、少しだけ甘い部分を残しておく。ある意味で無駄な商品も一定量は入れておく。それが次の変化につながる。そんな遊びさえ許されないほど、数字の締めつけが厳しいのだろうか。数字で縛ることは変化を妨げることでもある。
 再度、変化を目指そうではないか。そして、心を動かそう。

4.変化し続けることが重要だ
 ヨーロッパのファッション業界は、変化を続ける仕組みをつくり上げた。それがトレンドのシステムである。最初にカラートレンドが発表され、それが半年後の糸の展示会に反映される。そして、糸のトレンドは、半年後のテキスタイルの展示会に反映される。テキスタイルトレンドは、半年先のアパレルのコレクションに反映されるのである。こうして、各流通段階で情報発信を重ねていくことで常に変化の方向性を示し、変化を続けることを容易にしているのである。
 日本のファッション業界は、トレンドの変化よりも、新しい素材、新しい組織、新しい染色加工が注目された。それは日本の綿紡績、合繊メーカーの開発力が優れていたことも影響している。色よりも素材重視なのだ。しかし、この特徴も生産拠点が海外に移転する中で次第に失われていくのではないか。私は、日本のファッションデザイナーが海外で勝負するのであれば、日本のテキスタイルと共に打ち出すべきと考えている。常に改善を重ね、新しいモノ作りに挑戦し続ける職人気質こそ、日本のトレンドシステムである。
 勿論、ファッションデザイナーにも職人気質は息づいている。アパレルであれば、色よりもシルエット重視、パターン重視である。ここでは日本国内で縫製することが非常に重要になる。
 コスト競争、コモディティとしてのアパレル製品であれば、中国生産、アジア生産に移行するのも仕方がないだろう。しかし、ファッションで勝負するのであれば国内生産が有利だ。というよりも、日本のデザイナー、日本のバイヤー、日本の顧客が本当に満足する商品は、日本国内でしかできないのではないか、と思う。
 素材技術や職人気質が日本のトレンドシステムであれば、素材技術や職人気質のトレンド情報を発信すべきではないだろうか。あるいは、ファッションデザイナーやバイヤーは、産地のメーカーに対して、こんな素材を開発して欲しい、こんな製品を開発して欲しいというメッセージを出すべきではないか。
 勿論、一般の顧客が要望を出してもいい。現在は誰もが出版局にもテレビ局にもなれる。そういう意味では、もっとSNSを活用した情報発信を研究する必要があるのかもしれない。
 ファッションは変化することを否定しない。むしろ積極的に評価する。それは、生きることを評価することでもある。精神の自由を評価することでもある。心の動きを積極的に評価するビジネス分野なのだ。
 どうか変化を恐れずに、変化に取り組もう。変化の中にチャンスあり。全ては相対的な存在である。より積極的に動くことで活路を見出そうではないか。

*有料メルマガj-fashion journal(18)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.4.2に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 | Main | リクルートスーツ考 j-fashion journal(19) »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

坂口昌章様

はじめまして。突然の書き込み失礼いたします。
私は東京大学2年の水垣舜一と申します。

メール連絡先が分からなかったため、失礼ながら
blogへの書き込みで質問させていただきます。

私は現在ファッション・アパレルを研究するゼミに所属しており、
日本市場におけるブランド戦略の現在と展望について学んでおります。

今回メールさせて頂いたのは、ファッション・アパレル業界についての
質問について数点教えて頂きたいと思ったからです。

もし可能でしたら、お時間に余裕があるときで構いませんので、
以下の質問に解答して返信していただけると幸いです。

―――――――――――――――――――――――――

私達のゼミでは現在、顧客のセグメントを越えて展開していく
ブランドやファッションテイストの動向について調べています。

なお、ブランド(企業)のオリジナリティや伝統を重視しながら展開していくブラン
ドの展望について、
リサーチしていきたいと考えておりますので、
昨今よく見られる「次々とブランドを立ち上げ、売り上げ次第でいとも
簡単にコンセプト変更・切り捨てが行われる手法」は除外して、
以下の質問にお答えいただけると幸いです。

質問1)
メンズ中心とされていたブランドが、ウィメンズに進出した、もしくは現在している
事例があれば教えて下さい。
成功している場合でも、失敗している場合でも構いません。

例:メンズボトムスを中心に長らく20代~30歳代の支持を受けてきたブランド〇〇
(アパレル企業)が、
  20××年のFWよりウィメンズにも重点的に商品ラインナップやプロモーションを
展開した。
...など

質問2)
ウィメンズ中心とされていたブランドが、メンズに進出した、もしくは現在している
事例があれば教えて下さい。
成功している場合でも、失敗している場合でも構いません。

質問3)
メンズ中心とされていたファッションテイストが、ウィメンズマーケットに受容され
た事例、
もしくは、メンズのテイストをウィメンズに取り入れようとするトレンドの例などが
あれば教えて下さい。

例:ミリタリーブーツが200×年頃より、ウィメンズマーケットでも存在感を増して
いる。
  女性向けファッション誌〇〇で、20××年には、従来メンズ中心とされていたマ
リンテイストが頻繁に取り上げられた。
...など

質問4)
ウィメンズ中心とされていたファッションテイストが、メンズマーケットに受容され
た事例、
もしくは、メンズのテイストをメンズに取り入れようとするトレンドの例などがあれ
ば教えて下さい。

質問5)
アダルトマーケットにおいて既にブランディングを確立しているブランド(企業)
が、
キッズマーケットに進出した事例があれば教えて下さい。
成功している場合でも、失敗している場合でも構いません。


―――――――――――――――――――――――――

以上で質問は終わりになります。

お手数ですが、なにとぞよろしくお願いします。
質問の前提や意図が分からない、質問を変えたほうが良いなど、
なんでも意見があればおっしゃって下さい。

それではお返事お待ちしております。

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 | Main | リクルートスーツ考 j-fashion journal(19) »