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July 08, 2012

原価率50%のクリエイティブビジネスを j-fashion journal(20)

「原価率50%のクリエイティブビジネスを」

1.クールジャパンの誤解

 クールジャパンとは、主にヨーロッパ人が日本文化の中に、ヨーロッパ文化と異なるユニークな要素を見つけ、それを「クール」と評価したことによるものだ。その多くは、アニメ、マンガ、コスプレ、ゲーム、ストリートファッション等のように、日本国内では文化的に評価されないものだった。
 日本国内で日本独自のカルチャーが積極的に評価されないのは、多くの知識人、文化人と呼ばれる人々が基本的にヨーロッパ崇拝主義者であり、日本文化とは伝統工芸や古典芸能の中にあるものと信じきっているからである。一方で、現代社会、現代文化、現代デザインの根源をヨーロッパに求め、一方で古典の世界の中に日本文化を見つける。どちらもヨーロッパ人の評価に基づくものだ。ヨーロッパ人が評価するものを踏襲して、自分も評価してみせる。それを守ることが、日本社会の中で評価されることにつながる。

 ところが、日本の現代ホップカルチャー、あるいはカルチャーとも呼べないと思っていたものが、ヨーロッパ人に「クール」と評価された。この事実は、日本の知識人や文化人と呼ばれる人々に大きな衝撃を与えたに違いない。そして、それらの保守的な知識人、文化人と呼ばれる人々は、ヨーロッパ人が評価した「クールジャパン」には何の関わりも持っていないのである。そして、ヨーロッパ人の評価に乗っかった形で「クールジャパン」が提唱され、更に「クールジャパン」を輸出しようと考えるに至ったのである。
 ヨーロッパ人が「クール」だと感じたのは、日本人がヨーロッパ人の価値観や尺度にとらわれず、日本人の若者達達が好きだと感じたものをそのまま表現したことだ。従って、ヨーロッパ人の評価をなぞる形で、自らを「クールジャパン」と名乗ること自体が全くクールではない。それでは、物真似ジャパンに過ぎない。
 繰り返すが、「クールジャパン」とは、元々、保守的な日本人の大人が評価しなかった要素を主とする価値観である。即ち、その主体は若者の価値観でなければならない。
 クールジャパンの多くは日本をルーツとした独自のコンテンツである。従って、日本産であるとか、メイドインジャパンとは異なる価値観である。しかし、クールジャパンという言葉は一人歩きを始めている。「外国人は日本が好きなのだから、日本製の商品も買ってくれるに違いない」という論理となり、日本産品輸出のお題目として「クールジャパン」が使われているのである。

2.クリエイティブなモノ作りのために国内生産を維持する
 私は、長年、日本の繊維産地と関わってきた。いくつかの産地ビジョンを策定し、産地のあり方についても意見を述べてきた。
 その一方で、しっくりとこない部分があった。それは、「産地を活性化しよう」「日本の製造技術を守れ」と言いながら、その中身は既得権益保護の要素が強いことだ。本来、産地の活性化とは、新しいベンチャー企業が次々と生まれ、時代ニーズに対応できない企業は次々と淘汰され、文字通り常に産地が活性化されることだろう。私は健全な競争があってこそ、産地は活性化すると思う。しかし、延命策としての補助金を与え、それを既得権益者だけで配分していたのでは、産地が活性化するどころか、革新を妨げることになってしまう。
 「産地を守れ」「日本の製造業を守れ」というスローガンも、その目的が既得権益者の保護であれば、消費者は賛成することはできない。産地の問題は、産地エゴであってはならない。日本人全体の問題意識として提唱する必要があるのだ。その目的が明確に設定されない以上、私は国内製造業の保護に対して、無条件で賛成することができなかった。
 しかし、それでも日本の製造業を守る意義はある。その目的を明確にすればいいのだ。私なりにその目的を整理したいと思う。
 まず、現在の市場を俯瞰してみよう。日本人が着用する服のほとんどは中国製になってしまった。中国製になった原因は、価格の割に品質の良い製品を追求した結果である。
 その背景には、バブル時代のアパレル製品価格が品質の割に高過ぎる価格で販売されていたことがある。「高かろう、悪かろう」という風潮の中で、ユニクロやロードサイドの大型紳士服専門店が価格破壊を打ち出した。一時期、確かに消費者は激安商法に酔っていた。
 しかし、既に激安商法に新鮮味はない。むしろ、全ての商品価格が下落し、デフレスパイラルに陥ってしまった。中国生産では国内生産ほどの小ロット生産ができないため、どの商品を見ても同じような素材、カラー、デザインばかり。また、繊維の原料価格や中国の人件費が上った結果、「良いものを安く」だったはずが、次第に「品質の悪いものを安く」に変わってしまったのだ。激安商法というより、単なる安物商法である。
 そして、昨年の「3.11」が起きた。ここで我々は一度立ち止まって考える必要がある。日本人の生活は、どうあるべきか。日本人のファッションはどうあるべきか、である。
 この狭い国土の中で、日本は災害、為替変動、少子高齢化に対応していかなければならない。しかし、社会保障は不十分であり、政府にそれを遂行するだけの能力があるか否かも疑問だ。それなら、我々は日本で生産した製品を日本で消費し、お金を回さなければならないのではないか。それにより雇用が生まれ、生活が安定するのではないか。
 また、日本はどんな産業を育成していくかも考えなければならない。日本の最大の武器は、世界が評価してくれたユニークなコンテンツである。そして、そのコンテンツに基づく製品を生産、販売していくことが重要だ。但し、大量生産、大量販売ではない。こだわりのオーダーメイド、少量生産であり、あくまで日本生産のものが本物であり、最もカッコイイというストーリー作りが必要である。 日本はユニークな国であり、自由な国だ。ヨーロッパでは許されないようなデザインも存在するし、ヨーロッパでは発想できないデザインも存在する。それは、根底となる文化、発想、価値観が異なるからだ。我々が普通のモノを安く生産し、それを消費していたのでは、日本のユニークさが損なわれてしまう。海外から観光客が来た時にも、日本人はユニークなファッションを身につけ、優れたデザインのモノに囲まれて生活しているべきだと思う。それは好みだけではなく、国の産業レベルの問題にもつながるはずだ。大量生産の中国製品を使うのではなく、みんなでこだわりのモノを使う。まず、日本人がそれを実践しない限り、「クールジャパン」はネット社会か、二次元の世界に閉じ込められてしまうに違いない。
 日本で生産すればそれだけで高くなる。国際水準から見ても、日本の人件費は最高水準である。そこで普通のモノを作っても価格競争で負けてしまう。価格競争にならないユニークなオンリーワンの商品を高い価格で販売する。それには、産地は若いデザイナーと共創する必要がある。若いデザイナーからすれば、国内生産があればこそ、クリエイティブな活動ができる。そういう関係にならなければ、国内生産を保護する意味がない。

3.ICTで原価率を50%にする
 国内生産を維持することで、日本のユニークなコンテンツが生きてくる。しかし、これだけでは消費者に対してメリットを与えることができない。日本の製造コストは高い。従って、本来は流通の無駄を省き、流通コストを下げることで対応すべきである。
 しかし、これまでは中国生産に転換することで、原価率をより低く抑えてきた。国内生産の頃より、海外生産になった方が、卸、小売店がより大きな利益を確保することができたのである。小売価格が下がった上に、流通段階の利益も大きくなる。国内生産から海外生産に大きく転換した理由はここにある。
 産地の人間は、「国内産地を守れ」と主張した。しかし、国内産地で生産することは、小売価格を引き上げ、流通や小売の利益も圧縮しなければならなかった。産地だけが利益を得て、流通も消費者も損失をこうむる。これでは国内生産を維持しようとは考える人がいなくなるのは当然である。
 国内生産に対して消費者の支持を得ようとするならば、顧客に対して利益を与えなければならない。それには、原価率を上げることだ。そして、顧客が割安の商品を入手できるような仕組みを作ることである。
 現在のアパレル製品の原価率は20~25%である。これを50%に設定することはできないか。例えば、現在は1万円の2000円で作るが、それを5000円で作るようにする。単純計算すれば、生地も工賃も二倍払えるということだ。現在の国内生産の工賃と海外生産を比較すれば、それでも追いつかないだろうが、それでもバブル以前の服よりもかなり安く購入できるようになる。
 まず、完全受注生産にすることが原則になる。バイヤーが発注するのではなく、顧客が直接発注する。完全受注生産に対応するには、生地も1反から仕入れられなければならない。
 サンプルを生産したら、受注はインターネット上で行う。あるいは、一般顧客が発注するイベントを開催する。イベントに参加すれば、実物を見ることもできるし試着することもできる。イベントに参加できない人はネットから発注する。既に、ネット通販が実現しているのだから、技術的には全く問題がない。
 ここでのポイントは情報公開である。テキスタイルメーカー、デザイナー、パターンナー、縫製工等を公開する。また、できれば全ての原価表を公開したい。 商品原価の中にはテキスタイルメーカーの利益、縫製工の利益は含まれている。含まれていないのは、通常経費として落とされる、MD、デザイナー、パターンナーの報酬と商品撮影の費用、WEBの制作運営経費、会社の運営経費等である。そして、出資してもらうならば配当も考えなければならないし、会社経営のための経費も差し引くことになる。これらを全て公開したいと思うのだ。
 もし、中国のように分割の支払いを顧客が認めてくれれば、展示会で予約した段階で半金を入金してもらい、完成時に半金を支払うことで、資金調達もほとんど必要なくなる。最初の半金で生地や付属を仕入れ、完成後に利益を配分するというビジネスモデルである。

4.全てを公開することによる変革を!
 このビジネスモデルのポイントは情報公開である。そして、利潤を追求するビジネスモデルではなく、クリエイティブ商品を継続的に作り続けるビジネスモデルを構築することにある。リターンを期待する投資家ではなく、通常なら商品として世に出ない商品を具体化し、日本を面白くするための投資家を募ることである。
 日本が面白くなれば訪日観光客も増えるに違いない。また、クリエイティブな仕事で生活できる若者が増えれば、雇用確保にもつながるし、税収にもつながるはずだ。そう考えると、真の意味で公的なプロジェクトと呼べないだろうか。 また、繊維産地の企業にとっても、価格競争に陥らず、事業継続できるようになる。そして、若いクリエイターと共創することで競争力も増すだろう。
 全てを公開することにより、公平なリスク配分と利益配分を考えることもできるのではないか。
 何よりも、現在市場に溢れている粗悪品を排除することで、日本人が豊かな生活を手に入れることができると思うのだ。ファッションが変われば、発想も変わるだろう。他人と同じ服を着るのではなく、皆が個性を追求するようになれば、日本国内に様々な発想による新ビジネスが生まれるだろう。
 その第一歩をファッションが担おうではないか、という提案をしたいと思う。

*有料メルマガj-fashion journal(20)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.4.16に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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