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July 08, 2012

リクルートスーツ考 j-fashion journal(19)

「リクルートスーツ考」

1.スーツというワーキングユニフォーム
 高島屋は、今年の入社式を「スーツ着用禁止」とした。鈴木弘治社長は「百貨店は変化に対応できず苦戦している。新しい感性で古い習慣を壊してほしい」などと述べた・・・。
 この是非を巡り、ネット上で様々な意見が飛び交っている。そこで、私もファッション業界の一員として意見を述べたい。
 まず、百貨店人の服装だが、80年代、最も輝いていた西武百貨店の商品本部に行くと、ほとんどの人がダンガリーシャツにチノパンツ姿だったのを思い出す。 当時はDCブーム全盛で、DCアパレルの営業マンもカジュアルな服装だった。当時の私も「スーツ姿はサラリーマンみたいでダサイ」と思っていた。

 80年代中頃から、各アパレル企業は季節商品として、リクールト用スーツを販売するようになった。しかし、現在のような価格訴求ではなく、あくまで期間限定商品の扱いだった。80年代後半からは、アトリエサブやファイブフォックス等が、かなりのボリュームでリクルートスーツを期間限定で展開していた。
 私は87年に、アパレル企業の面接試験に立ち会った。その時、既にデザイナーの採用にも関わらず、スーツ着用で面接に来た学生がいた。その頃から、リクルートスーツは定着していたのかもしれない。
 90年代になり、インポートブーム、イタリアファッションブームの頃から、次第にアパレル業界でもスーツ着用が増えてきた。但し、ビジネススーツというよりは、インポートブランドのスーツだった。
 私の人生の中で唯一スーツ着用の時期は、三越商品本部と契約していた87年からの数年間だったが、その時に着ていたのは、ルチアーノ・ソプラーニのスーツだった。
 90年代までの百貨店や専門店のバイヤー達は、トラッドの金ボタンのブレザー姿が多かったものだ。そこに突然、アルマーニが入ってきたのだ。
 紳士スーツが明確にワーキングユニフォームとして位置づけられたのは、バブル崩壊以後、急成長したアオキインターナショナル、青山商事等のロードサイド型紳士服大型専門店による紳士スーツの価格破壊である。2000年以降に拡大した2プライスショップにより、ワーキングユニフォームとしてのスーツが定着した。
 私は当時、「5~7万で市場が安定していた紳士スーツを、あえて半額にする意味があるのか」という意見を業界誌に発表した。価格下落分だけ市場が縮小するだけではないのか、と。
 もう一つの問題は、紳士服の最高のアイテムだったスーツのポジションを貶めてしまったということだ。スーツが低価格なら、カジュアルは更に低価格となる。
 かつて紳士スーツは百貨店の稼ぎ頭だった。しかし、その市場は完全に紳士服専門店に奪われた。高島屋の社長が入社式でスーツ着用を禁止するのであれば、「なぜ、紳士服が百貨店から姿を消したのか」を新入社員に話すべきだろう。そして、新入社員の模範となるような上質なスーツを着用し、自分が着ているスーツと現在のリクルートスーツは、どこが違うのかを詳しく解説してくれれば言うことはない。

2.「好印象」「清潔感」「目立ちすぎない」「無難」
 ワーキングユニフォーム化したビジネススーツ。その延長線上にリクルートスーツはある。あれは完全に制服だ。制服は合理的かつ経済的である。
 もし、スーツ着用を禁止するのであれば、新入社員に支度金を5万でも支給し、その中でベストなコーディネートをしてこい、というのなら話も分かる。しかし、最も経済的な制服を一方的に否定するのでは、新入社員に経済的負担を押しつけているに過ぎない。
 リクルートスーツの特徴は、「好印象」「清潔感」「目立ちすぎない」「無難」ということらしい。これこそ、日本企業の人事部や採用の担当者が理想とする新入社員像である。
 批判するとすれば、こうした価値観だろう。社長が「わが社は目立ち過ぎるくらい主張が強いプロ意識を持った人間を採用したい」というコメントをWEBで発表し、会社訪問したら、確かに型に嵌まった人がいないというのなら、学生の方もリクルートスーツを脱ぎ捨てるに違いない。
 しかし、「個性的な人間が欲しい」とコメントしても、会社の雰囲気が圧倒的にコンサバならば、学生も嘘を見抜く。
 若者が没個性と言うのならば、まず中高年社員が個性的なファッションを身につければいい。そうすれば、ファッション市場も活性化するだろう。何でもかんでも、若い奴に文句を言えばいいというものではない。
 そもそも紳士ファッションのメインターゲットは中高年であるべきだ。若者には健康的な肉体がある。Tシャツとジーンズで十分にカッコイイ。内面は充実していても体型が崩れ、経済的に余裕がある中高年こそファッションを楽しむべきなのだ。実際に欧米では中高年がラグジュアリーブランドを支えている。
 百貨店は、「中高年よ。ファッションを楽しむために、スーツを脱ぎ捨てよう」というキャンペーンを行うべきではないか。

3.カジュアルフライデーはどうした?
 高島屋は「スーツ禁止」の理由について、「入社式後の意見交換会で新入社員の緊張を和らげる狙い」と述べている。
 カジュアルなスタイルの方が組織の中で自由に意見が言えるし、雰囲気も良くなる、というフレーズは、カジュアルフライデー導入時にも聞いた。
 1995年、伊藤忠商事はカジュアルフライデーを導入した。確か、他の大手企業や官庁でもカジュアルフライデーを導入していたはずだ。
 カジュアルフライデーは、アメリカ西海岸のITベンチャー企業を見習って、アメリカ東海岸の企業が「金曜日だけはカジュアルなスタイルで働こう」ということからスタートした運動だ。実際に職場の効率が上ったという情報もあり、日本でも導入されたのだった。
 しかし、多くのビジネスマンは、「ビジネススーツ」「ゴルフウェア」、家で着る「ジャージー」しか所有していなかった。普段からカジュアルなスタイルに馴染んでいないため、「ノータイならいいんだろう」「ゴルフウェアでいいだろう」という人が多く、決してセンスの良いビジネスカジュアルにはならなかった。挙げ句の果てには、「金曜日は出張に行く」「金曜日は有給休暇を消化する」という輩まで現れ、カジュアルフライデーは尻すぼみになった。
 しかし、一時的であるにせよ、大人のカジュアルウェアのニーズが高まり、市場は動いた。そして、世界的に見ると、ビジネスウェアのカジュアル化は確実に進行している。

4.ファッションとしてのスーツを取り戻そう
 スーツを着ると、背筋が伸びる。スーツを着ると程よい緊張感を感じる。アメリカのビジネスパーソンは、パワーースーツという言葉を使う。商談や交渉の時に、相手を圧倒するパワーを発揮するスーツという意味だ。女性の場合なら、セクシーかつ知的で、仕事ができるように見えるスーツということになろうか。
 アメリカに限らず、日本以外のビジネスでは、個人対個人の勝負になる。従って、相手に与える印象は非常に重要だ。日本の場合は、会社と会社の関係が優先するため、『互いにサラリーマン同士ですから』という甘えが拭えない。そのため、パワースーツも必要ないのだ。
 しかし、ビジネスがグローバル化すると、個人の真価が問われる。相手に与える第一印象、外見も非常に重要である。従って、グローバルなビジネスマンは、激安スーツなど身につけてはならない。グローバル化は公用語を英語にするばかりではなく、パワースーツを身につけるべきではないだろうか。
 また、ファッション業界の課題は、スーツをワーキングユニフォームではなく、ファッションと捉え直すことである。今年は団塊の世代が65歳となり、いよいよ職場を去る年だ。これまでのスーツを脱ぎ捨て、新しい服を身につけようではないか。
 同じスーツでももっと明るい色を着るのも良いだろう。リクルートスーツに限らず、紳士服専門店のスーツ売場は真っ黒である。あまりにも色気がなさ過ぎる。ゴキブリやカラスではないのだ。大人の男よ、色気を取り戻そう。そして、ファッションを楽しみ、若い世代の模範となり、若い世代に夢を与えよう。

*有料メルマガj-fashion journal(19)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.4.9に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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