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May 03, 2012

海外展示会出展からビジネスに結びつける方法 j-fashion journal(11)

「海外展示会出展からビジネスに結びつける方法」

1.海外展示会に出展してもビジネスができない理由

 海外展示会に出展しても、いつまで経ってもビジネスにつながらないという嘆きは少なくない。一方で、展示会に出展しなくても、積極的にビジネスを進めている会社もある。一体何が違うのか。展示会出展からビジネスへつなげるにはどうしたらいいのか。
 まず、海外展示会に出展してもビジネスにつながらない理由を考えてみよう。 第一の理由は、「展示会への集客ができない」ことである。言い方を変えれば、展示会の集客力に依存しているのだ。
 こう言うと、「展示会は集客装置であり、出展すれば取引先と出会えるから価値があるのではないか」という反論が来るに違いない。しかし、広大な展示会会場で名前も知らない出展者ブースの中に入り、探している商品が見つかるというのは偶然のようなものだ。仮に欲しい商品が見つかったとしても、その会社が信用のおける会社で、そのサンプルが、本当にそのメーカーで生産されたものであるかどうかも分からない。そんな環境で、ビジネスが成立するのは偶然の偶然に過ぎない。

 パリのテキスタイル見本市「プルミエールビジョン」は、長い間、ヨーロッパ以外の出展者を受け入れなかった。しかし、その閉鎖性こそが、出展者の信用につながっていた。日本の産地展も同様である。産地の組合に所属していることが、ある意味で保証になっていた。だから、すぐに商談が成立するのだ。
 加えて、ヨーロッパの展示会では、事前にアポイントを取らなければ、ブースに入れないことも多い。商談は互いの信用が前提であり、信用できない相手とは行わないのが原則である。
 出展料さえ支払えば、誰でも出展できるような展示会であれば、そうした保証がない。日本人は相手から自分が疑われると、「私を信用しないのか」と怒るが、海外では最初から信用する方がおかしい。海外展示会では、自社が信用されていないと認識すべきである。
 ビジネスができない第二の理由は、「過去の資料を展示している」ことである。
 展示会、見本市には二つの形態がある。一つは、完成した自社ブランドの製品を展示して、その製品を販売する形態。出展者は自社ブランドを持つメーカーである。欧米の展示会の多くはこのスタイルだ。
 もう一つは、オリジナルサンプルを展示して、相手先ブランドの生産を請け負うもの。出展者はOEMメーカーであり、香港ファッションウイークや日本国内の産地展の多くは、このスタイルである。
 先進国メーカーの多くは、自社ブランドの製品を出展する。人件費の低い新興工業国はOEM生産を主体とした出展を行うのが一般的だ。OEM生産といえども、市場トレンドを予測し、最新のサンプルを出展する。ブランドホルダーのバイヤーは、サンプルそのままをオーダーすることができるからだ。
 なぜか、先進国日本の多くのメーカーはOEM生産の受注を目的に海外展示会に出展している。しかも、最新のサンプルを提示せずに、過去の試作品を並べることが多い。商談にならないのは当然である。
 ビジネスにならない第三の理由は、「展示会後のフォローができない」ことである。技術を売り物にしているメーカーは、完成品を販売するのではなく、ブランドメーカーの企画開発チームの一員として活動するという可能性もある。
 その場合、ビジネスの条件はコミュニケーション力である。言語の問題も含めて、その国のメーカーと同様の対応ができなくては、開発はできないだろう。
 ビジネスにならない第4の理由は、「ビジネスを商社に依存している」こと。日本のメーカーは、「貿易は商社が行うものだ」と固く信じているようだ。海外メーカーは社内の貿易の部署があり、社内で貿易業務を行っている。小さな企業でも貿易を行うことは可能である。できないのではなく、やらないだけだ。
 かつて、日本も繊維産業が輸出の花形だった時代があった。その頃は、各繊維産地には商社の出張所があり、輸出の主力製品は繊維だった。しかし、既に時代は変わっている。規模の大きな商社は、中小企業の繊維製品を扱うメリットがない。専門商社といえども、一定の取引単位でなければ、採算は取れない。
 そもそも世界市場の中でも、高額品になってしまった日本の繊維製品を販売するには、メーカー自らが丁寧に説明しなければならない。商社に依存するのではなく、全て自社で完結するという姿勢が必要である。その上で、ビジネスが一定の規模になってから、商社を仲介した方がメリットがあるのなら考えればいいのだ。

2.問屋相手のビジネスの発想を捨てる

 日本の繊維流通は、長い間、問屋が主役を担っていた。日本の繊維ビジネスを理解するとは問屋ビジネスを理解することであり、産地の多くのメーカーも問屋中心のビジネスを行ってきた。そのため、ベテランであればあるほど、問屋商売が体の隅まで染みついており、そのことが海外ビジネスの邪魔をしている。
 まず、問屋商売では互いの信用を第一とする。新規で取引を始めるのは大変だが、一度、取引口座ができて、互いの関係が構築できれば、持ちつ持たれつのビジネスが展開される。
 例えば、海外とのビジネスでは常に「競争入札」が原則である。最も品質が高くてコストが低い商品が選ばれ、調達先や供給先は常に変化する。日本の問屋商売は談合が原則だ。取引口座のないメーカーが優秀な商品を作ったとしても、直ちにそのメーカーから仕入れることはない。まず関係のあるメーカーに、サンプルやスペックを提示して、生産が可能かを確認するはずである。コストが高ければ、コストを下げるように要求する。こうして、次第に運命共同体としての系列関係が構築されるのである。
 問屋商売では、優秀な製品を作るよりも、互いの関係性を構築した方が長期的なビジネスが構築できる。その癖が抜けないために、海外市場進出においても、まず問屋のような取引先を探す。信頼できる取引先が見つかれば、長期的かつ継続的なビジネスが可能だと考えるからだ。
 言い方を変えれば、「下請け根性」から抜けきれないのである。力があり安定した取引先を見つけて、その傘の下にいれば「面倒を見てくれるだろう」と考えてしまう。自分が企画しなくても、相手が指図してくれると思う。自社で企画して完成品を作るのはリスクであり、相手が企画してくれれば相手が商品を引き取るはずだからリスク回避できる。利益は少なくても、リスクを避けて、安定したビジネスをしたいと考えているのだ。
 しかし、問屋中心の運命共同体的な談合取引は日本特有のものであり、海外には存在しない。販売代理店は、利益が上がりそうだと考えるから、取引を申し出るのであって、儲からなければ直ちに取引は停止されるだろう。各企業が自社の利益を最優先しているのであり、日本のメーカーの面倒を見る必然性は何もない。下請けとして自らを位置づけても、日本のように長期的安定的な取引を期待することはできない。相手にとって、下請け工場とは、いつ取引を打ち切られても文句は言えない存在であり、安定的な発注を保証する契約を結ぶこともないのだ。
 海外のほとんどの国は、問屋が存在していたとしても、ビジネスの主体は基本的にメーカーである。メーカーが魅力的な商品を生産し、商品やブランド等のプロモーションを行うのが常識だ。海外の取引先が、日本の問屋のように、市場動向を説明したり、商品企画のヒントを出すことはあり得ない。あるとしたら、個人が友人としてアドバイスをしてくれる場合だけだ。
 日本におけるビジネスは、会社と会社の関係が基本になっている。しかし、欧米や中国、アジア諸国のビジネスは個人と個人の関係が基本となってビジネスが行われる。人脈という意味も、日本と欧米、中国、アジア諸国では大きく異なる。個人は主張しなくては、その存在を認知されない。そして、主張し合うから、互いを尊重し、互いを認めることができる。最初からリスクを恐れ、相手の下請けになろうという姿勢では、対等なビジネスは望めない。対等なビジネスでなければ、ギリギリまで利益を搾取されることに甘んじなければならないのである。 

3.国、地域によりビジネススタイルは異なる

 国、地域によって、ビジネス慣習も展示会の性格も異なる。
 欧米市場は成熟しており、展示会ではメーカーが小売店を対象に見本を提示し、商品の受注を取る。
 欧米のテキスタイル見本市では、バイヤーは一反ずつ発注することができるが、受注が最低生産ロットに満たなければ生産中止になる場合もあり、その旨は契約書に明記してある。
 最近は、展示会後の仕様変更や生産中止等の連絡はWEBで行うのが一般的になっている。バイヤーのための専用WEBを用意し、バイヤーにID、パスワードを連絡するのである。
 もし、生産中止になって困るのならば、最低生産ロットを満たす発注をしなければならない。一般的に、アパレルメーカーのバイヤーも、自社オリジナルで開発するテキスタイルと、展示会で拾い買いするテキスタイルの比率を決めている。
 日本のアパレル企業は、テキスタイルを仕入れる場合、メーカーではなく生地卸から仕入れるのが原則だった。問屋はテキスタイルメーカーに対して最低生産ロットを保証しているので、アパレルは発注したものが生産中止になることはあり得ない。アパレルとテキスタイルメーカーとの商談では、最初から最低生産ロットを指示されるので、こうした問題は起きない。従って、日本国内で欧米式の商談を行うことは非常に困難である。しかし、問屋の淘汰が進んだ現在は、メーカーのビジネスチャンスは著しく減少している。最低生産ロットを満たせるアパレルは非常に限定されるからだ。と言って、問屋のように売れるか売れないかが分からない状況で在庫を備蓄するのはリスキーである。メーカーとバイヤーが直接商談するのであれば、欧米スタイルの方が適していると言えるだろう。
 香港や中国のテキスタイル見本市は、基本的にOEMメーカーが出展者であり、大量注文を基本に最低生産ロットを設定したビジネスを行っている。一反ずつの受注を集めて、生産するというシステムではない。日本のテキスタイルメーカーも、このスタイルならばすぐに参入可能だが、価格競争が待ち構えていることを覚悟しなければならない。
 アパレルや雑貨等の展示会においても、欧米は一点ずつ商品を受注する。しかし、誰にでも直接卸売するわけではない。代理店を指定している場合も多く、その場合は、代理店から仕入れることになる。
 中国のアパレル展示会も、大きく二つに分かれている。
 第一は、自社ブランドを持つアパレル企業が出展しているCHICなどの展示会。展示会の目的は二つある。一つは、ブランド知名度を上げるためのプロモーション。二つ目は、地域単位の代理商を獲得すること。商品を一点ずつ販売することを目的としているわけではない。
 力のあるアパレル企業、アパレルメーカーは、オリジナルブランドを開発して、直営店か代理商を介した店舗展開を主としたビジネスを展開している。
 第二は、OEMメーカーの展示会であり、テキスタイル同様、最低生産ロットを提示して、受注することが主体である。こちらは主として輸出メーカーである。
 中国は、日本のように問屋流通、問屋業態が発達していない。問屋業態は存在するが、多くは現金問屋のような形態である。従って、日本のアパレル企業が中国小売店に一点ずつ商品を卸すというビジネスを志向するのであれば、展示会に出展するよりも、服装城などの現金問屋市場に出店することを考えるべきである。
 このように、海外市場と言っても、それぞれに異なるビジネスモデル、商慣習が存在している。それを十分に調査し、見極めた上で、展示会に出展しなければ成果が上ることはないのだ。
 
4.商談までの流れ

 以上を踏まえて、商談までの流れを整理したい。
 まず、展示会に出展する前に、ターゲットとする市場でどのようなビジネスを展開したいのかを決定しなければならない。
 テキスタイルならば、開発型なのか、展示会販売型なのか。あるいは、OEM生産の受注なのか。
 開発型のビジネスは、コミュニケーションが重要であり、そのためのWEB、スタッフの準備が必要である。コレクションに向けてのスケジュールを把握し、自社がどのように対応するかも決めておく。
 欧米のような展示会販売型であれば、市場トレンドを理解した上で、カラーを含めたオリジナル企画のサンプルが必要になる。
 OEMメーカーとして出展する場合は、アパレルメーカーが購入できる中心価格帯を理解しておく必要がある。現在の世界市場を見ると、中国生産のコストが標準と考えていいだろう。最早、中国生産が最も安いわけではない。東南アジアやインドは更に低コストだ。
 日本生産のテキスタイルを仕入れられる中国アパレルは、全体の一割にも満たない。高級アパレルの多くは、ヨーロッパを向いているので、ヨーロッパの展示会で知名度を上げて、中国の高級アパレル市場を狙うという戦略も考えるべきだ。
 アパレルであれば、卸売を志向するのか、直営店中心か、代理商か、という選択が必要だ。
 欧米市場ならば、卸売を志向して、代理店を募集することも可能である。個性あふれるオリジナル製品であれば卸売も可能だろう。中国市場で卸売を志向するのは困難だろう。中国市場はショップ単位のビジネスが原則となる。
 中国市場の場合、直営店中心か、代理商中心か、も決めておく必要がある。いずれの場合も、最も重要なのは「プロモーション」である。知名度の低い商品は売れないし、知名度を上げるにはプロモーションが欠かせない。プロモーションに掛ける費用は、日本企業よりも中国企業の方が大きい。
 ビジネスモデルの見通しが着いたら、展示会の目的も明確になるはずである。ブランドの知名度向上、商品の受注、OEM生産の受注、代理商・代理店の募集等である。展示会では、それぞれの目的に添った商談を行うことになる。
 目的が明確になれば、どのような顧客を集めるかも明確になるだろう。そして、招待客リストを作らなければならない。招待客リストの作成は、対象とする市場調査と共に作成することが望ましい。自社で市場調査をしてもいいが、時間とコストを削減するには専門業者に外注することも検討すべきだ。
 そして、リストアップした招待客に対して、招待状を発送する。ここで言う招待状とは日本の展示会案内ではない。展示会開催を告知するのではなく、具体的な自社、ブランド、商品の紹介を行い、どんなビジネスを志向しているかを伝えると共に、相手の立場に立ったビジネス提案が含まれていければならない。
 そして、自社の担当者の名前と連絡先、メールアドレス等を明記して、返事をもらうことが重要だ。案内状を出しても、反応を期待しないのでは意味がない。反応を期待するには、それなりの準備も欠かせない。言語対応を含め、展示会前の準備が展示会の成功を約束する。
 展示会に向けては、それぞれの商談内容に添った説明資料、イメージ伝達のための資料等が必要である。展示会とは、サンプルだけを用意すればいいのではない。会社、ブランド、商品のイメージを伝えることこそ、重要な目的である。
 勿論、展示会ブースのデザイン、演出も重要である。基礎ブースに過去の資料を並べているだけというのでは、本気でビジネスをする気がないと思われるだろう。
 事前に顧客リストを作成し、ビジネスレターを送付し、アポイントが取れていることが、展示会当日、充実した商談をする条件である。勿論、通訳や営業担当者の事前のリハーサル等の準備も欠かせない。
 展示会後のフォローも重要である。ブースに来場して下さったお客様にはお礼状を出すこと。また、訪問する優先順位をつけて、訪問することも必要だろう。バイヤー向けのWEBの準備も、商談後の仕様変更や追加発注等には不可欠である。
 ここまで完璧にやったとしても、現在の日本のコスト、為替の状況では簡単にビジネスが成立するとは限らない。ここまでやって成果が上らなければ、自社の事業を根本的に見直した方が良いのかもしれない。
 何の準備もせずに、「補助金が出るから海外展示会に出展しよう」という程度の話では成果が上るはずもないし、成果を期待する方がおかしい。現在の日本のビジネス環境はそれほど生易しいものではないのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(11)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.2.13に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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