My Photo

お知らせ

無料ブログはココログ

« ICTとファッション j-fashion journal(16) | Main | 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 »

May 28, 2012

産地ブランドの最低条件 j-fashion journal(17)

「産地ブランドの最低条件」

1.世界の繊維製品価格は新興工業国が基本
 日本の産地メーカーは、常に自社の製品価格を基準に考える。従って、「中国製は安い」という。しかし、既に量販店、カジュアル専門店は中国製品が主力であり、彼らが考える価格の基準は中国製である。現在、コストが上がって困っているというのも、日本国内のコストは論外であり、中国のコスト上昇が問題なのだ。
 これは、日本ばかりではない。欧州なら、東欧、トルコの価格が基準であり、アメリカなら中南米やインドが基準となる。アジアの中でも中国製品は低価格ではない。東南アジアは中国より更に人件費が安い。中国製品のコストは世界標準と考えなければならない。

 そうした世界の標準化価格から言えば、日本製品は異常に高い価格が高いということは、高級品なのであり、高級品には高級品の売り方が求められる。日本の産地メーカーには、自社が高級品を作っているという意識が低い。自分達は中級品を作っていると思っているのだ。確かに、これまでは日本の中級品を生産してきた。しかし、その中級品は世界水準で考えても非常に高価になってしまったということだ。コストから考えると、日本製品を中級品として販売することは不可能である。
 現状、日本市場の繊維製品価格は下落したままだ。しかし、今後少しずつ価格は上昇していくだろう。その原因は二つある。
 第一は、中国の生産コストの上昇である。人件費の上昇と原材料費、燃料や物流経費の上昇である。生産コストが上るので、自然に小売価格も上昇していくだろう。
 第二は、高齢化の影響である。日本の人口構成比は65歳を中心にした団塊世代が大きな比重を占めている。反面、若年層は就職難であり、正社員採用も少ない。所得水準が低いだけでなく、消費スタイルが変わってきている。たばこも酒もやらず、自動車免許も取らない。新聞も雑誌も購入せず、ファッションにも関心が低い。テレビもあまり見ないという人が増えているのだ。
 若年層は買物をしなくなっている。モノを買う世代は高齢化しており、どんなに低価格でも許容できる品質のレベルが存在する。既に、低価格商品はギリギリの品質になっており、低価格であっても売れないという現象が起きている。
 とは言っても、前述したように価格の標準は中国製であることを忘れてはならない。

2.日本の産地ブランドが成功できない理由
 産地ブランドのショップと農産物直売所は似ている。どちらも、生産者が作ったものを、そのまま売場に並べている。従って、大根のシーズンになると、大根が大量に陳列されることになる。食品の場合は、同一の野菜を大量に陳列することで「旬」を感じさせる効果がある。
 しかし、繊維製品の場合はどうだろうか。高級セレクトショップや百貨店では、同一アイテムが大量に陳列されることはない。バイヤーが顧客ニーズに合わせて商品構成をしているからだ。産地ブランドの場合も、高級品を売りたいならば全体の商品構成を考えなければならない。また、商品を選ぶことも必要だろう。高級な店とは、その店に置いてはいけないものを置かないものだ。売れそうならば何でも店に並べるというのは、露店商法であり、高級店とは言えない。 産地ブランドと言っても、その認識は様々である。本当にブランド価値を追求するのか、それとも単なる組合の商標なのか。
 ファクトリーアウトレットのように、産地の売り出しで販売したい。しかし、商標がないので売れない。だから、産地ブランドを作ろう、という場合もある。この場合は、余剰品や余剰材料で生産した商品を販売するための方便であるから文句は言わない。しかし、そういう使い方をすれば、そのブランド価値はなくなってしまう。
 産地の売り出しで使ったブランドを中国市場で販売したいと言われても、私は同意できない。しかし、中国でファクトリーアウトレットを展開したいというなら、話は別である。
 ブランドとは、老舗ののれんのように価値あるものである。同じ店名でも、いい加減な商売をしている店のものには価値がない。しかし、競争に勝ち抜いて、顧客の評判が定着した老舗ののれんには非常に価値がある。産地ブランドという時に、どんなのれんをイメージしているのか、を明確にすることが必要である。 そして、ブランド商品を農産物直売所のような売り方で売ってはならない。

3.高額商品、高級品とは何か?
 普通のモノだと思って生産していたのに、いつのまにか高い製品になっていた。それが日本の産地メーカーの本音だろう。
 しかし、高い製品が悪いわけではない。世の中には高い製品はいくらでもあるし、高い製品を探しているバイヤーも多い。それでも、高くなったから高く売れるわけではない。高い製品は高級品でなければならない。そして、高級品には高級品の品格が求められる。
 それではその品格とはどこから来るのだろう。まず、その商品を販売している店が高級である。高級な店は、地価の高い一等地にあり、高級な素材を使った美しいデザインの店である。働いている販売員もまた教養があり、センスが良く、美しい。包装紙やショッピングバッグも上質であり、優れたデザインである。つまり、全てにコストが掛かっているのだ。
 そして、あらゆる要素が、コストの高い店に見合うだけのブランド、商品であることを証明している。
 高級品の価値とは、商品の原価だけではない。原材料費、加工賃、物流費等を合計した商品原価に加えて、ショップの経費、販売員の経費、ファッションショーや広告宣伝の経費、本社の経費等の全てが商品の小売価格に乗せられている。というより、高額品として認知され、顧客が購入した時に満足するために、商品以外の要素に投資しているのである。
 メーカーは常にいかにコストダウンするかを考える。無駄を排除し、少しでも品質の良い材料を使い、加工には手を抜かずに、高品質で低価格を目指すことが理想と考えている。
 しかし、高級品の論理はメーカーとは異なる。むしろ、コストを掛けて、それ以上の価値を生み出すことが重要なのだ。無駄だと思うことでも、顧客の満足感が高まればいい。顧客は満足すれば、高い価格の商品でも購入するのである。
 高級品の販売にとって、最も重要なのがブランドイメージである。ブランドイメージを高く保てれば、高額商品でも売れる。しかし、一度、ブランドイメージに傷がつけば顧客は離れていく。ブランドイメージこそ、ブランドの価値であり、それが利益の源泉なのだ。
 高級品には、高級品の売り方がある。それは産地ブランドといえども、高額商品は高級品として販売しなければならない。

4.国内外で展開できるショップの最低条件
 産地ブランドを国内外で展開する時の最低条件とは何か。
 まず、各社がOEM生産ではなく、各社がオリジナルブランドを持ち、オリジナル企画の商品を生産、販売しなければならない。
 産地ブランドなのだから、産地に一つのブランドがあれば、それを共同で使えばいいと考えるかもしれない。しかし、ブランドは商品の人格でなければならない。ブランドイメージとは商品だけでなく、広告宣伝やパッケージ、サービスにいたるまでのトータルな表現である。それをコントロールするには、一人の個人が責任を持って取り組むべきだ。
 そう考えると、各企業がオリジナルブランドを持つことが望ましい。そして、産地の名前を冠した産地ブランドは、各企業のオリジナルブランドとのダブルチョップとする。あるいは、個々の会社のブランド商品を販売するセレクトショップの名前を産地ブランドとすることも考えられる。その場合は、ショップブランドということになる。
 いずれにせよ、一つのブランドには、一人の企画責任者、通常はデザイナーが必要である。企画責任者は社内の社員でもいいし、社外の個人や会社と契約してもいい。
 そして、各社のブランドは、それぞれが明確なコンセプトを持ち、独自のブランディングをしなければならない。
 そして、個性ある産地発のオリジナルブランドのセレクトショップをプロデュースする。各ブランドのイメージは各社の企画担当者が行う。そして、ショップ全体のイメージは、ショップの企画担当者が行うのである。
 ここまでの準備ができて初めて、国内外に店舗を展開することが可能になる。各社がブランドを構築せずに、適当に生産した商品を持ち寄るのでは、どんなにきれいな店を作ったとしても、農産物直売所ならぬ産地商品直売所になるだけである。

*有料メルマガj-fashion journal(17)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.3.26に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

« ICTとファッション j-fashion journal(16) | Main | 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 »

「ファッションビジネス」カテゴリの記事

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

« ICTとファッション j-fashion journal(16) | Main | 第8回12月1日土曜FB塾「一人で始めるファッションビジネス」 »