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April 02, 2012

新時代のビジネス発想 j-fashion journal(9)

「新時代のビジネス発想」

1.「変わらないこと」と「変わること」

 私は今年55歳になる。私が使っていた小中学校の教科書には「日本人は勤勉だ
から経済成長を実現した」「日本は資源のない国なので原料を輸入して製品を輸
出する加工貿易をしなければならない」とあった。大人になるにつれ、戦後の経
済成長は「日本人の勤勉さ」だけがもたらしたものではないことを知った。占領
国だったアメリカの対日政策が大きく影響していたのである。
 アメリカは戦後の日本にアジアにおける反共の防波堤としての役割を与えた。
そのためには、日本を経済的に自立させることが必要であり、アメリカ国内市場
を積極的に開放し、為替を円安で安定させた。

 日本経済が本格的に復興したのは、朝鮮特需、即ち、朝鮮戦争の兵站の一部を
担うことだった。同様に、韓国の経済成長、ハンガンの奇跡は、ベトナム戦争の
兵站によってもたらされた。
 中国の経済成長は、改革開放政策から始まった。経済特区に外資の合弁工場を
建て、技術導入を行った。日本企業の積極的投資と技術指導がなければ、中国経
済がここまでのスピードで成長することはできなかっただろう。中国進出に対し
ても、単に市場原理だけで動いたわけではない。日中両国政府の意志と合意が
あったからこそ、大手商社は競い合うように合弁企業を設立したのである。
 教科書は、教育の手引きである。国際情勢を解説するより、国民全員が努力し
て世の中良くなったというストーリーの方が適している。しかし、我々ビジネス
パーソンがそれを信じてはならない。学校で教えている知識や情報は、ビジネス
で役立つものではない。我々は、学校を卒業してから、再度ビジネスのための勉
強を強いられている。
 弛まぬ努力を続けることは美しいことだが、努力だけでビジネスが成功するこ
とはない。個人ではどうにもならない、政治、経済、金融、市場等を見極め、限
られた資源をいかに効率よく投入するかが問われる。個人ではどうにもならない
から、ビジネス環境には常に目を光らせておかなければならないのだ。
 例えば、商社が中国に合弁工場を建設している時に、日本のメーカーは空洞化
を警戒し、中国メーカーとの差別化を図らなければならなかった。しかし現実は、
確実に見える未来から目をそらした。不安なことは考えたくないという心理が働
くからだ。そして対応が遅れた。
 私たちは、学習しなければならない。不安なことでも目を背けてはならない。
政治、経済は常に変化する。その変化と共にビジネスも変化する。
 日本には、一所懸命、一生懸命という言葉がある。そこには江戸時代に培われ
た「変わらないこと」への賛辞がある。武士や農民は決められた領地の中で、決
められた生き方を強いられた。「状況に応じて変化すること」は商人の考え方で
あり、士農工商の身分制度の中では卑しい発想と考えられた。「変わらないこと」
を信じる生き方の方が美しく見える。天職を全うすることは評価されるが、転職
を繰り返すことはマイナス評価になる。しかし、「変わらない」美徳がビジネス
の世界では危険なのだ。
 ビジネスの世界では、「変わらないこと」は怠け者を意味する。常に互いの関
係性を守り、既得権を保護することは、アンフェアである。現代のビジネスシー
ンでは、変わらないための仕組みを廃し、常に変化し続けるための仕組み作りが
求められている。
 老舗の暖簾を守ることに価値はあるが、そのためには商品やサービスを時代に
合わせて変え続けなければならない。変わらないから老舗なのではない。変わら
ないのは暖簾だけだ。商品やサービスは変わり続けるのである。

2.需給バランスと価格

 農業や水産業は、顧客の食生活に必要な食材、食料を提供する。製造業は、顧
客の欲する商品を製造する。流通小売業は、顧客の欲する商品をメーカーから調
達し、顧客に提供する。それらの活動には、常に需要と供給のバランスが存在す
る。
 貿易は、国家間で必要なものを交換する活動である。互いの需要と供給のバラ
ンスを取っているとも言える。
 あらゆるビジネスとは需給バランスの上に成り立っている。原材料や商品だけ
でなく、サービスや文化、芸術も需給バランスで動く。
 需要が供給より多ければ、商品価格は上昇する。供給が需要より多ければ、商
品価格は下落する。基本的な原理だが、忘れがちな事実である。
 例えば、製造業者にとって価格は原価であり、原価は主に原材料と加工賃を意
味する。
 原材料を輸入する場合、為替によって価格が変動する。為替は世界各国の政策
的な金利や投機マネーの動向に左右される。世界は同じように動いているのでは
ない。為替の動きがある種の調整機能を持つ以上、ある国に有利で別の国には不
利になるのが当然なのだ。
 また、各国の税制や貿易政策によっても価格は変わる。現在話題のTPPのよ
うに法律が変わるだけで、ビジネスは大きく変化するだろう。
 国内だけを考えれば、人件費が上れば価格は高くなって当然である。しかし、
人件費の低い国で生産すれば、国内の人件費には左右されない。
 価格は原価に左右されるのではない。ある地域の原価が上るならば、別の地域
で生産する。どんなに原価が高い商品でも、生産過剰になれば叩き売りが始まる。
逆に、どんなに原価が低い商品でも需要に供給が追いつかなければ価格は上昇す
る。
 単純に考えれば、原価を下げれば品質も落ちる。売上とは、単価×数量である
から、単価を落とせば、数量を上げなければならない。低価格戦略とは、品質の
低い低価格商品を大量に販売する戦略である。主な顧客は低所得者層になる。
 反対に、高価格商品を販売するブランド戦略の考え方は、品質の高い高価格商
品を少量販売する戦略と言える。主な顧客は高所得者層だ。
 過去20年間、日本企業は低価格戦略に熱中した。中国生産により、これまでよ
りも安くて良い商品が生産できるようになったからだ。競い合って低価格商品を
生産販売した結果、商品全体の価格水準が下がった。人口は減少傾向、経済も成
長期を過ぎているため、数量が伸びることはなかった。結果的に、売上、利益は
減少した。
 企業は更なるコストダウンを余儀なくされ、中国生産を増やし、正規採用の社
員を減らした。国内製造業が淘汰され、雇用が減少したことで、消費者の所得水
準は下がり、益々市場は縮小した。それを20年間繰り返したのである。

3.業態に見る需給バランス

 この間、低価格の中国生産を工場からダイレクトに調達する、多店舗展開の大
型専門店チェーンが成長した。中国生産を軸とした大量生産大量販売のシステム
を構築した企業が生き残ったのである。
 一方で、問屋や商社を介した商品調達を行い、店舗数を拡大できなかった百貨
店、量販店、中小専門店は伸び悩んだ。
 さて、現在の消費者ニーズと需給バランスはどうなっているのだろうか。そこ
に今後のビジネスの方向性がある。
 まず、低価格のコモディティ商品は供給過剰である。従って、価格は下方に向
かっている。一方で中国の人件費が上昇しているので、原価は上昇している。こ
こで選択肢は二つ。第一は、低価格路線を維持するために、中国内陸部、東南ア
ジアに生産拠点を移すこと。第二は、低価格路線からの転換である。
 アパレル市場もユニクロの市場シェアが高まるにつれ、コモディティ商品とし
てのアパレル製品は供給過剰になっている。現状はまだヒートテック等の肌着に
は顧客が殺到しているので、この分野では需給バランスは維持されているのかも
しれない。しかし、供給過剰に陥るのは時間の問題だ。今後も売上を伸ばすには、
常にコモディティの新商品を提供し続けなければならない。
 さて、コモディティ以外の需要はどうだろう。
 百貨店のシルバー対応の「よそ行き」は供給過剰である。高齢者はライフスタ
イルが多様化しており、定番商品では対応できない。登山用品や一眼レフカメラ
など、高額でも売れている商品は多い。ここに新たな専門店業態の可能性が見え
る。
 紳士スーツもコモディティは供給過剰。一方で、市場規模は少ないかもしれな
いが、スーツを着ない、プロフェッショナルの職業を持つ顧客に対しては十分に
対応しているとは言えない。
 変化の激しいヤング層にとって、需給バランスは大きく崩れていないだろう。
ユニクロやしまむらを基本にして、トレンドに対応したブランドの商品で演出し
ていく。
 アジア市場、インバウンド市場を考えると、キャリア向けファッションが重要
になる。現在の日本ではカジュアルに押されて隙間になっているが、アジア全体
を見ると、ここがファッションのメイン市場である。

4.顧客ニーズと流通ニーズ

 顧客ニーズは時代と共に変化する。支出バランス、つまり何にお金を使うかの
優先順位も時代と共に変化する。その変化を長期的、中期的、短期的に理解する
ことが大切である。
 例えば、ライフスタイルの変化や価値観の変化は長中期的な変化として捉える。
仕事観、結婚観、世代間、ファッション観等である。
 仕事観の変化は、終身雇用が崩壊し、正規採用が増えたことが大きな影響を与
えている。終身雇用の崩壊は、計画的で安定したライフスタイルを崩壊させた。
そして、結婚や出産の減少、若年層のローンでの住宅取得も減少している。会社
の仲間と飲み歩くのではなく、自宅でゆったり過ごすことを選ぶ。社会人になっ
たらアルコールを飲めるようにしなければ、という圧力も減少し、アルコールの
消費も減少している。
 結婚観の変化は、ファミリー向けからシングル向けのライフスタイルを重視す
るようになっている。住宅、家具、食品、エンターテインメント等において、
ファミリー、カップルを基本としていた商品やサービスをシングル向けに変える
ことで新たな需要が見込めるに違いない。
 世代観の違い、世代間ギャップは益々増大していくだろう。これまで常に消費
の中心だった団塊の世代がリタイアの時期を迎えている。今後も団塊世代は重要
な顧客である一方、団塊世代への反発が若い世代に広がっているのも見過ごせな
い。
 メディアの変化も消費に大きな影響を与える。次第にテレビ、新聞、雑誌等の
メディアは影響力を失っている。インターネット上のWEB、ブログ、SNS等のメ
ディアが益々重要になり、それらをタブレット端末、スマートフォン等を通じて
閲覧することが増えている。
 こうしたメディアの変化は、ブランディング、プロモーション等の手法をも大
きく変革していくだろう。
 物流システムの進化も、ビジネスを変えるインパクトとなる。情報システムと
多頻度物流の実現により、現在のコンビニの品揃えやサービスが実現可能となっ
た。また、お取り寄せブームも、クール宅急便等のシステムが普及したから実現
したサービスと言える。
 中長期的な変化を基本とする中で、短期的変化を考える。あるいは、短期的変
化を演出する。常に変化を続けることは、常に情報発信することでもある。どん
な大量生産大量販売の流通でも、短期的変化は欠かせない。ここにトレンド発信
の意味がある。

5. 常に観察し、常に考えよう

 時代は常に変化する。顧客も常に変化する。従って、我々も常に変化を見過ご
さず、変化し続けなければならない。
 常に変化を続けるには、ルーチンワークに甘んじてはならない。先輩の仕事の
やり方に疑いを持たなければならない。結果が出ない場合は、そのプロセスに問
題があることが多い。プロセスを変えない限り、問題は解決しない。
 大企業の場合、組織が複雑であり、調整に時間が掛かる。そのため、旧来の業
務フローが変更できない。多少の人事異動や外注業者を変えても、結果が変わら
ないのだとしたら、組織と意思決定システムそのものに問題があるのだ。
 多くの日本企業は、不要な部署、役職、会議が多過ぎる。不要な会議のための
根回しと資料作成とプレゼン。それを実行するための組織と職制。その根本とな
るのは無駄な会議だ。
 会議と部署をなくしても困らないのなら、そこで働く人も必要ないことになる。
しかし、組織内の人間は、自分自身と仲間を切り捨てることができない。無駄だ
と分かっていながら、無駄な業務フローに忠実なのだ。そのことが、本社の経費
増を招く。本社の経費を捻出するために、生産コストの圧縮、外注費や販売管理
費の削減に走る。生産コストや販売管理費の合理化は、品質やサービスの低下を
もたらすことが多い。そして競争力を失っていく。
 競争力を高めるためには、現状に疑問を持ち、大胆に変革することが必要であ
る。そして、経費の直間比率を見直す。競争力を高めるには、直接経費を増やし、
間接経費、管理コストを減らさなければならない。優秀な人材は、管理部門では
なく現場に置く。現場で働く人間の報酬を高くする。それがモラルアップと競争
力アップにつながるのだ。

*有料メルマガj-fashion journal(9)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.1.30に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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