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April 02, 2012

脱日入亜のファッションビジネスモデルを構築しよう j-fashion journal(8)

「脱日入亜のファッションビジネスモデルを構築しよう」

1.日本人消費者は我慢している

 ファッションに限らず、日本の小売流通ビジネスは未だに「一億総中流」を基本にしている。確かに、これまでの成功事例は大衆市場への対応だった。高額な高級品は淘汰され、最終的に価格訴求の商品だけが生き残った。
 しかし、高級品消費が消えたわけではない。その需要は、欧米のブランド商品が吸収したのだ。
 一方で、実用品、コモディティ商品は、大型専門店チェーン、量販店PB、ディスカウント店等が市場シェアを伸ばしている。その多くは、中国製品であり、最重要ポイントは価格だ。実用品、コモディティだけを見ていると、一億総中流市場は健在に見えるが、果たしてそうだろうか。

 低価格商品は大量生産が基本だ。従って、低価格商品は選択肢が狭い。日本市場は世界でも有数の競争が激しい市場であり、常に供給過剰の状態が続いていた。そのため、必要以上の商品バリエーションが存在していた。缶コーヒーでもペットボトルのお茶でも必要以上に種類が多かったように。
 品種が多いということは「多品種少量生産」を意味する。日本の国内生産は多品種少量が基本であり、しかも徹底した合理化と品質管理により、大量生産にも負けない価格を実現していたのだ。
 しかし、中国生産が主流になると、日本のような多品種少量生産は困難だ。中国メーカーにとって、日本市場はグローバル市場の中の一部に過ぎない。欧米市場は大量生産が主流であり、中国国内市場は市場規模が大きい。日本市場に合わせた多品種少量生産でも、利幅が大きいのなら取り組む意義もある。しかし、多品種少量で低コストの仕事では、メーカーにとって魅力はないだろう。
 日本市場が必要以上のバリエーションを要求したということは、日本の消費者ニーズでもある。現在のような選択肢の狭い品揃えで、消費者は満足しているのだろうか。私は、「消費者は満足していないが、コストパフォーマンスを考えて妥協している」のだと思っている。
 それでも不満が出ないのは、経済状況が厳しいからである。多分、安物を買うのも飽きている。ほとんどの日本人は、過去に品質の良い製品を購入した経験を持っているからだ。それでも安物商品で我慢している。
 あるいは、震災の被災者や停電等の不便に比べれば、「我慢すべきだ」と自分に言い聞かせているのかもしれない。現在の状況は、高度経済成長以来初めて迎えた「我慢の時代」なのではないか。
 しかし、我慢ばかりではストレスが溜まってしまう。そこで、リアルな生活で我慢しても、どこかで発散したい。それが、ゲームであり、カラオケであり、ダンスであり、ヨガであり、コスプレであり、女子会なのかもしれない。あるいは、あらゆる種類のオタク消費である。全てに共通しているのは、現実とは異なるバーチャルな空間、現実を忘れさせてくれる時間、現実から逃避できる場所である。
 その意味で、日本市場はリアルとバーチャルの二極化が進んでいる。リアル消費は限りなくコストパフォーマンスを追求し、バーチャルではコストよりも気分を重視する。リアルは大量生産商品だが、バーチャルはオーダーメイドだ。リアル空間で自己実現できない個人は、バーチャル空間で自己実現するしかない。価格競争とは異なる世界がバーチャル市場にはある。それを狙うのも重要な企業戦略だが、多くの企業はリアル市場だけに目を向けているのが現実である。

2.「我慢の時代」の価格戦略

 大量生産は、低価格で商品を販売するための一つの方法である。スケールメリットにより生産コストを圧縮する。しかし、低価格を実現するのは大量生産だけではない。例えば、余剰品を安く販売するアウトレットストア。あるいは、大幅に流通コストをカットした産地直送品等が考えられる。また、店頭在庫負担がない分だけロスがないので、店頭販売より通信販売の方が有利だろう。また、カタログ通販よりコストの低いネット通販はより有利である。
 整理すると以下のようになる。
(1)大量生産→中国生産、東南アジア生産による生産コストダウン。選択肢が狭くても気にならない実用品、コモディティ商品が主体となる。
 大量生産が最もしやすいのは、多店舗展開している専門店チェーンである。商品アイテムも絞り込むことが可能であり、調達先も絞り込めるからだ。
 量販店PBは、ベーシックな定番商品に絞れば、大量生産が可能であり、店頭を独占的にコントロールできるので有利である。しかし、商品アイテムが多岐に渡っているため、アイテム毎に見るとバリエーションを多く揃えることが難しい。店舗数は専門店チェーンに満たないし、NBのような企画開発力にも欠ける。一定の比率を超えると、直接生産するのは困難にある。メーカータイアップやコラボ商品という選択肢も残しておく必要がある。
(2)アウトレット、ディスカウント、リサイクル→余剰品、型落ち商品、不用品等。正規品ではなく、品揃えも悪い。選択肢は広いが、ニーズにジャストフィットするとは限らない。消費者に選択眼と時間が必要だ。
(3)産地直送、メーカー直送→流通コストダウン。正規品であり、品質も保証されるが、必ずしも低価格とは限らない。また、店頭でわかり易く陳列されているわけではないので、消費者自らが商品を検索し、オーダーし、決済するという手間が掛かる。
 サプライヤーにとって、ネット通販は、店頭在庫もなくローコストと言われている。しかし、WEB構築のコスト、顧客とのコミュニケーションに関するコスト、配送コスト等が掛かることを忘れてはならない。中小企業にとって、専任担当者のコストを上回る利益を出すことは意外に難しいのである。
 ブランド知名度が上れば、ネット通販で安定した売上を確保することも可能になる。そのためには、戦略的プロモーションや店頭販売等との連携が不可欠である。
 勿論、低価格戦略だけが有効なのではなく、ブランド価値が高い商品ならば、価格訴求以外の魅力を訴求できる。
 百貨店が低調なのは、仕入れを問屋に依存しているため、商品MDが同質化し、価格競争力も弱いためである。高級セレクトショップのように、世界中から商品を調達することができれば、魅力は大きく増すだろう。また、メーカーから直接仕入れれば価格競争力も維持できる。しかし、現実には販売機能、仕入れ機能が衰退しており、問屋以外からの調達は困難な状況である。
 PB商品を開発するには店舗数が少なく、生産ロットを満たせない。また、ブランドのイメージ戦略、プロモーション等のノウハウも欠如している。

3.日本メーカーは「階層市場」を前提に考えよう 

 小売流通業界は、一億総中流の大衆市場を前提に考えている。その結果、日本市場においては、中国・東南アジア等で大量生産された商品を販売することになった。
 このニーズに対応しようとすれば、日本メーカーの選択肢は二つ。第一は、自らが海外に生産拠点を構えること。第二は、技術指導などにより海外メーカーとタイアップして、自らが半製品あるいは製品を輸入すること。メーカー自身が海外生産のメリットを享受することも可能である。
 しかし、海外生産で失敗する事例も少なくない。日本と比較すれば、海外生産は低コストだが、現地メーカーと比べると、日系企業は高コストであり、価格競争力で劣ってしまう。
 日本市場だけを考えると、確かに国内製造業は著しく不利である。しかし、海外市場まで考えれば、日本メーカーにも可能性が出てくる。海外市場は階層市場である。階層毎に顧客が存在し、価格にも幅がある。
 中国、香港、東南アジアでは日本の食材の人気が高い。私が見たのは、マカオの高級百貨店だったが、「世界一」という日本のリンゴが1個1500円で販売されていた。隣は、日本のフジで1個500円、その隣はアメリカ製で1個80円だった。精肉売場でも最上級が日本産の和牛で、その下がオーストラリア産、アメリカ産である。
 このように品揃えには価格の幅が必要である。欧米市場のアパレル製品も、「プレステージ」「ブリッジベター」「ベター」「ポピュラー」「バジェット」と分かれている。
 一方の日本市場は、ほとんどが「ポビュラー」か「バジェット」である。従って、日本製のテキスタイルは使えない。日本のテキスタイル価格水準を考えると、ブリッジベターかプレステージしか該当しないからだ。しかし、考え方を変えれば、経済発展著しい新興工業国では富裕層が増えており、ブランド商品、高額商品の市場は拡大する一方である。
 また、中国市場も同様だが、新興工業国には大規模な大量生産の工場はあっても、少量の高級品を縫製する工場、高度な技術を持ったパターンメーカーは少ない。日本からテキスタイルを仕入れるだけでなく、日本で製品まで作り、日本製の製品として輸出した方が付加価値が上る。大量生産は分業が基本だが、高級な製品作りではチームが必要である。しかも、問屋がオーガナイズするのではなく、メーカー同士がネットワークで結ばれていくという形態になるに違いない。
 日本国内メーカーは、これまで日本市場を主な対象と考えてきた。従って、常に価格優先の仕事になってしまった。しかし、価格優先のモノ作りでは日本の良さは出ない。そして、海外製品に負けてしまうのだ。
 日本の良さで勝負するには、日本人が考える最高の品質、完璧なモノ作りに加え、世界に通用するデザインが必要である。そして、それを高く販売するためのマーケティング活動が必要だ。それらのほとんどは、日本国内に揃っている。誰が主体となってビジネスを組み立てるかが問題なのだ。

4.脱日入亜の発想を持とう

 日本の製造業が得意なのは、最高品質の「素材」「部品」である。最近、アップル社製品の部品供給者が公開されたが、多くの日本企業が含まれていた。
 一方で、日本市場でビジネスをしているメーカーや流通業者は、価格優先なので「素材、部品の現地調達」を進めている。日本市場に依存しているために、「日本が得意な最高品質の素材や部品を駆使して、最高の製品を組み立て、世界市場で勝負する」という発想がない。素材や部品は優秀でも、完成品、ブランドとして世界に誇るものは少ない。
 そして問屋や商社に依存していた日本のメーカーもまた、自らの技術を生かした高品質、高性能の素材や部品、技術を製品にすることができない。結局、どこでも作れるような製品を作り、価格競争に巻き込まれているのが現状だ。
 戦後の日本は、一億総中流市場と呼ばれるように均一な大衆市場を形成し、その成功体験だけが記憶に残っている。高額品、高級品が大衆商品に淘汰されたのが、戦後の日本市場の特徴である。しかし、戦後の成功体験が、中国生産とデフレスパイラルを生み出し、結果的に自らの長所である精密な製造技術を放棄しようとしている。
 私たちは、自らの強みと弱みを理解しなければならない。製品を作り、流通させるのならば、日本の素材、部品を活用するべきである。それだけで特徴を出すことができるからだ。日本の製造業の生産は著しく減少している。逆に言えば、希少価値があるということだ。海外企業が調達するよりも、我々日本人の方が地理的にもコミュニケーション的にも有利である。
 中国と隣接しているという地理的条件も有利である。我々は中国で生産することもできるし、中国市場に参入することもできる。欧米諸国よりもはるかに有利なのだ。
 そして、中国を猛追しているのが東南アジア諸国である。発展途上の地域なので、今後は中国以上に投資が集まるだろう。規模は小さいが成長スピードは早いはずである。ありがたいことに東南アジア諸国の対日感情は悪くない。日本人の方から手を差し伸べれば、ネットワークを構築するのも難しくはない。
 我々は、一度、日本という地域、日本企業、日本人という柵から抜け出して、アジアという枠組で全てを整理し直す必要がある。
 法律や制度、人材、地理的条件から、どこを拠点にビジネスを展開すべきか。どこから原料を調達し、どの国で加工し、どの市場をターゲットとするのか。あるいは、どの市場に対して、どんなサービスを提供するのか。
 アジアにはどんな企業があり、どんな経営者がいるのか。彼らと取り組むことはできるだろうか。それには、どんなビジョンを提示すればいいのか。

5.最終的には日本ブランドを目指す

 日本製造業の特徴は「素材・部品の強さ」だが、それだけでは雇用を支えることはできない。自動車産業、家電産業のように複雑な製品の組み立てメーカーは、技術や雇用の裾野が広い。かつては、繊維産業も裾野が広かったが、自動車産業のように組み立て企業が力を持たなかった。
 合繊メーカー、紡績などの素材メーカーに資本や人材が集中し、テキスタイル加工の系列構造は生み出したが、アパレルに進出することはなかった。そして、それ以上の広がりがないままに、海外に生産拠点を移してしまったのである。
 結局、日本の繊維産業は素材産業から脱することはできなかったと言えよう。そして、アパレル企業は国内の大衆市場に安住し、欧米のラグジュアリーブランド企業と棲み分けを進めた。その結果、低価格戦略を採用し、輸入品、海外生産を主体とした製造小売業のビジネスモデルを採用したのである。
 私は、日本の大手アパレルや大手流通企業に対して、日本ブランド構築の期待をしていない。輸入ブランド、ライセンスブランド、価格訴求のPBしかできないと思うからだ。
 むしろ、戦後経済成長時代の成功体験を持たないグローバルな視野を持った若い経営者に期待している。才能あふれる若いデザイナーに期待している。
 成長するアジア市場は、高級品、ブランド消費のニーズが高まるだろう。アジアの消費者は、欧米ブランドだけではなく、日本ブランドにも期待している。現在、その期待に十分応えていないだけだ。

*有料メルマガj-fashion journal(8)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.1.23に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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