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March 10, 2012

日本経済再生は『現場力』向上から j-fashion journal(5)

「日本経済再生は『現場力』向上から」

(1)日本の高度経済成長は「現場力」が基盤だった

 明治維新後、日本が急激に近代国家に脱皮できたのは、生糸や織物の輸出による外貨獲得である。開国してから短期間に、世界市場を席巻できたのは、きもので培われたテキスタイルのデザイン力と技術力の基盤があったからだ。
 そして、第二次世界大戦後の復興をなし遂げたのは、ブリキ玩具から始まり、家電、自動車へと発展した中小企業集積による高い技術力が基盤となっている。勿論、「日本株式会社」と言われた通産省と企業との官民共同体の成果は大きいが、それも中小企業の高い技術力があったからだろう。

 一方、日本の接客販売やサービスも世界に誇れる日本の強みだ。日本の強み、生産の現場、販売の現場にある。マネジメントが優秀なわけでもないし、マーケティングが優れているわけでもない。現場の「人の力」こそが、世界を唸らせたのだ。そして、現場の人の力こそが日本の最大最強の資産である。
 このことは、昨年の災害時にも変わらなかった。被災者個人個人のモラルの高さ。現場で救助活動を続けた自衛隊の使命感と能力の高さ。そして、ボランティアに駆けつけた個人の意識の高さ。一方で、政治家、大企業の経営陣には幻滅させられた。自己中心的で、決断力もなく、ミスリードした責任も取らない。この両者の姿が世界に大きく報じられたのは記憶に新しい。
 日本経済が強かった時には、強い現場が日本国内に集積されていた。そして、それらは緊密なネットワークで結ばれていたのだ。

(2)日本の経済パワーを封じ込める戦略とは?

 日本の経済パワーは、欧米の脅威となった。その脅威を除くにはどうすればいいか。私は、本当に欧米諸国が日本を封じ込める作戦を実行したかは知らない。しかし、事実を見る限り、結果的にそうなっている。日本を再度元気にするには、彼らの戦略と逆のことをしなければならない。そのためにも、欧米側に立って日本を見ることは大切だろう。
 日本経済の強さは、輸出と国内消費である。日本企業は輸出で利益を上げ、日本国内市場を独占している。この二つを切り崩すことを考えなければならない。 輸出力を削減する最も効果的な方策は為替コントロールである。円高に誘導すれば、輸出企業に打撃を与えることができる。また、円高を維持すれば、国内製造業が海外に移転し、日本の強みである現場力を弱体化させることができる。
 最も効果的なのは、円高と円安を周期的に誘導することだ。円高誘導で海外生産にシフトさせ、次に円安に振って海外工場からの輸入に打撃を与える。そして、国内に生産機能を回帰させたところで、再び円高に誘導する。この繰り返しにより、日本の製造業を弱体化させることができる。
 日本国内市場は、「日本語」という非関税障壁が存在する。日本国内のビジネスも英語で行うことができれば、海外企業にとって有利になる。それには、国際化が必要だという教育をすることと、M&Aにより、日本企業を海外資本の支配下に置くことが効果的だろう。そのためには、会計基準の国際化、企業情報開示等を進め、欧米企業がM&Aしやすいようにルール変更することも同時に進める。
 また、公共事業に外国企業を参入させるためには、日本企業間の談合を徹底的に取り締まらせる。そして、日本企業間で競争させ、企業の淘汰を進めていく。 一方で、ベンチャー企業を育成させてはならない。これについては、上場の条件を厳格化させ、資金調達の道を閉ざすことと、成功したベンチャー企業を早めに潰して大企業の傘下に入れることが望ましい。それらは、既得権を持つ大企業とも利害が共通する。
 日本の経済パワーの源泉である「現場力」を弱めるには、現場で働くよりも管理職になることを推奨すればいい。また、現場への所得配分を減らし、管理職への所得配分を増やす。なるべく、管理職を増やすことで、日本企業を弱体化することができるだろう。
 また、日本の弱みである金融とICT(情報通信技術)に、資源を投入させることも、最終的には欧米の利益につながる。日本の独自技術があれば、早めに買い取るか、潰してしまえばいいのだ。

(3)「百貨店」「アパレル企業」の機能喪失

 ここで、日本のファッションビジネスの現状に目を転じよう。既に、現場力は弱体化している。
 例えば、日本の「百貨店」業態の衰退。その原因は、小売業としての機能喪失である。小売業の機能とは、商品を仕入れて、価格を決めて、販売すること。日本では、メーカー(卸)が小売価格を決定し、その歩合で取引することが多い。小売店が価格を決められないのは委託仕入れにある。委託仕入れでは、売れ残りの在庫リスクを軽減するために返品ができる。その見返りに、「価格決定権を放棄」してしまった。
 加えて、派遣販売員制度を導入した。百貨店は販売員のコストも負担しなくなったのだ。その見返りとして、社員が販売する機会を失った。結果的に、商品の「仕入機能」「販売機能」が空洞化してしまった。
 百貨店の仕事は、売場に導入するブランドを決定し、商品の納入掛け率を決めるだけとなった。つまり、実質的な仕事は駅ビル等のデベロッパーと等しい。小売店の対面を保つために、本部にも売場にも多くの社員を配置しているが、実質的な仕事をしているわけではない。結果的に百貨店は慢性的な高コスト体質となり経営を圧迫した。本来の不動産管理業務に専念するならば、大多数の社員は必要ないだろう。
 実質的に、百貨店の売場を支配しているのは大手アパレル(百貨店アパレル)である。価格決定権を持ち、納品も返品も自由にコントロールできる。百貨店の利益を賃貸料と考えれば、実質的には直営店に等しい。
 しかし、大手アパレルもまた百貨店と同じ道を辿っている。アパレル企業でありながら、「企画機能」「生産管理機能」を失ったのだ。
 かつて、多くのアパレル企業は直営に近い協力工場を組織化していた。そして、生地を仕入れて、縫製工場に工賃を支払い、アパレル製品に加工し、それを小売店に卸していた。そのため、生地や付属の仕入れ、原価管理、工場の割り振り、納期管理、品質管理等の業務に多くの人員を割いていた。
 しかし、直営店戦略が進むにつれ、店頭管理、販売管理にも多くの人員が必要となった。アパレル企業は、経営の効率、業務の「選択と集中」を考え、商社に生産管理業務を移管した。
 生産管理業務の合理化とコストダウンに加え、海外生産のニーズも高まり、商社への生産管理機能移管は一気に進んだ。この段階で、アパレル企業から「生産管理機能」が失われた。
 商社への生産管理委託により、アパレルは生地を仕入れることも、縫製工場に工賃を支払う必要もなくなった。商社が生地を仕入れ、縫製工場への工賃を支払い、アパレル企業は商社から製品を仕入れる。勿論、協力工場の組織化も必要ない。
 製品仕入れという取引形態が定着するにつれ、アパレル企業は生地を選び、デザインを落とし込む作業も放棄するようになる。提案されたサンプルを見て、仕入れるか否かを決定するのだ。こうしてアパレル企業は小売業態に近づいていった。勿論、自社ブランドを展開しているし、デザインや仕様も決定している。しかし、内容はSPA型小売業そのものである。
 SPA型小売業として割り切れば、企画も営業も更に合理化できるはずだ。現在のアパレル企業は社員、特に管理職が多過ぎる。百貨店と同じ問題を抱えている。

(4)「立場が強い存在」が「競争力のある存在」を支配している

 日本国内の製造業、特に繊維関連の製造業はいち早く空洞化が進んだ。メーカーと言っても、工場そのものは海外にあるケースがほとんどだ。つまり、日本メーカーの圧倒的多数の社員は現場の仕事ではなく、管理の仕事をしている。
 一方で、販売現場はコストダウンのために、アルバイト、パートタイマーに依存している。日本の大手流通企業の、圧倒的多数の正社員は販売しているのでなく、店頭管理、販売管理、売上管理等をしているに過ぎない。
 極論するならば、日本企業のほとんどが百貨店、アパレル企業のように、本業機能を喪失しつつあるのではないか。現場力が下がり、管理職ばかりが増えているのではないか。
 これまで多くの管理職を養えたのは、中国生産による製造コストの削減があったからである。アルバイト、パートタイマー、非正規雇用社員等による販売管理費を抑えてきたからである。しかし、それも限界に近づいている。中国の人件費は上がり、雇用改善も重要な政策課題となっている。
 最も大きな問題は、管理職ばかりが肥大している企業は国際競争力もなく、最終的には日本経済そのものが低迷していくことになる。
 日本の閉塞感の原因の一つは、国際競争力はあるのに国内で立場が弱い中小企業や個人が存在していること。国内では立場が強いのに、国際競争力のない小売流通、アパレル企業、商社が存在していること。簡単に言えば、立場だけが強い存在が競争力のある存在を支配しているという矛盾である。
 おそらく、誰もがそのことを薄々感じ取っているが、国内の慣習、常識から考えると認めることができない。認めてしまえば、世の中の秩序全体が揺らいでしまうからである。

(5)日本経済強化は、「現場重視」「フラット化」「管理職削減」から

 経済とは競争である。日本経済が強ければ、他国がそれを阻止しようと考えるのは当然である。そして、日本に不利で他国に有利なようにルールを改正する。これはスポーツの世界でもあることだ。
 しかし、国際社会の中で相互依存しながら生きていくことが平和な社会を維持することであり、平和が維持されていることが日本を豊かにしているのだ。日本は新たなルールでも活用に努力するしかない。
 従って、鎖国論はナンセンスである。グローバル化の波には逆らえないし、逆らわない方が良い。日本が国際的に孤立すれば、それこそ日本を徹底的に叩き潰す理由を他国に提供することになるだろう。欧米諸国に都合の良い国際ルールの中で、どのように日本が再生するかが問われているのである。
 日本が再生するには、日本の強みを伸ばすことである。弱みの克服は効果が薄いからだ。
 日本の強みとは「現場力」である。従って、第一に「現場重視」に改革しなければならない。生産現場、サービス現場の現場力を向上させること。つまり、現場力のある人材を育成すること。例えば、大学も現場力を養えるような教育改革を行うべきである。
 また、現場力のある人材を厚遇しなければならない。いくら努力しても、社会的な地位が低く、報酬が少ない仕事であれば、それを目指す人はいなくなる。元々、現場力がビジネスの根幹なのだから、現場力のある人材により多くの利益を配分するのは当然だ。
 ファッションビジネスの世界では、現場力は女性に依存している。従って、現場力のある人材に投資するということは、女性の給与水準を上げることだ。本来ならば、男性より高くても良いのだが、まず男性と対等の待遇にしなければならない。
 現場重視を徹底するには、基本的に実力主義を貫かなければならない。学校の成績が良くても、会社で仕事ができるとは限らない。人種、国籍、性別、年齢等を問わず、同じ仕事、同じ結果には同じ報酬という原則を貫くべきである。
 第二は、「フラット化」である。フラット化には二つの意味がある。
 一つは、「流通のフラット化」である。現場力を育成することは、現場に利益配分を増やすことであり、それには流通を合理化し、フラット化するべきである。なるべく、問屋や商社の仲介を減らし、ダイレクトに取引を行うこと。
 二つ目は、「組織のフラット化」である。日本企業は年一回昇給という年功序列的な雇用条件が多い。その違いを表現するために、肩書、役職が多段階になっている。まず、年一回の昇給という制度を止めれば、役職も必要なくなる。欧米企業では、組織の合理化のために、経営トップから一般社員まで4~5階層程度に整理されているケースが多い。5階層なら「社長-事業部長-部長-課長-一般社員」というイメージである。私は、多くの日本企業も4~5階層あれば十分と考えている。中小企業なら、3階層も可能だろう。いずれにせよ、組織の階層は減らせば減らすほど、会議が少なくなり、意志決定が早くなり、コストダウンにつながる。
 第三は、「管理職削減」である。日本企業に管理職が多いのは、個人に権限を与えず、合議制にしているからである。そして、合議制を採用するのは、個人に責任を取らせずに、連帯責任を原則としているからである。
 欧米の企業組織は、「個人の役割と責任が明確な契約」を会社と個人が交わしており、実績が上らなければ契約違反として解雇する、という原則がある。そのため基本的は最小限である。ほとんどの実務は個人と個人の打ち合わせで進行するからだ。
 日本のような、責任を共有するために必要な社内プレゼンや会議資料作成もない。直接ビジネスに影響のない、社内のリスクヘッジのためだけに費やされる費用と時間は膨大である。その無駄こそが、日本企業の競争力を奪っているのだ。

(6)海外ビジネスで「現場力」を発展させる

 日本の強みは、生産から販売までのサプライチェーンの現場が国内で完結していたことにある。しかし、既に生産機能の海外移転は進んでしまった。それをどのように考えればいいのか。
 私は海外生産を否定していない。日本企業が海外生産にシフトしたのは、コストダウンだけではない。為替の影響を受けない生産基地が欲しかったこと。日本国内で労働力を確保することが困難だったことが契機となったケースが多い。
 問題はメーカーが海外進出したことではない。むしろ、メーカーが進出しなかったことに問題がある。
 まず、商社が中国と合弁企業を設立し、日本の技術者を送り込んだ。これが技術の流出を加速化させたことは間違いない。しかし、それでも共同経営者となり、事業を継続させたのなら良い。多くは初期こそ技術指導を行ったが、最終的には現場からは手を引き、管理だけで利益を得ようとした。商社としては、当然の考え方である。しかし、中国側にとっては、利益だけを吸い上げられる存在は必要ないのだ。結局、真の共同経営の合弁企業は残っているが、多くは解散、撤退を余儀なくされた。
 最近では、全く資本を投じずに、工場の生産ラインだけを確保する委託加工が主流になっている。これらは条件が合わなくなれば、仕事が入らなくなる。既に、仕事を断られるケースが出てきているのだ。
 もし、日本のメーカーが中国に進出しているのならば、中国の工場から世界市場を狙うことができるだろう。しかし、商社や小売店が中国工場から商品を調達し、日本市場で販売しているだけなら、何の発展性もない。国内工場は淘汰され、雇用が失われ、消費活動が停滞するだけだ。小売店は中国の工場から商品が入って来なくなれば、別の国から調達しなければならない。継続的なサプライチェーンを構築することもできず、その場しのぎのビジネスになってしまうのである。
 日本の経済発展は、製造の現場にあった。それなら、製造の現場が海外で発展し、日本企業のビジネスを発展させなければならなかったはずだ。部分的な一企業の利益を優先し、日本のサプライチェーン全体を考えなかったために、今になってサプライチェーンが破綻しようとしているのだ。
 日本は現場力の強さが国際競争力なのだから、海外生産でも現場から手を引いてはならない。あくまで現場を尊重し、現場で現地の従業員と共に働くことが重要である。管理職用食堂を作るのではなく、従業員と同じユニフォームを着て、同じ食事を取ることが必要である。そして、それができる人材を育てなければならない。
 中国市場進出も同様だろう。日本の生産の現場力が確保できれば、品質の良い商品が調達できる。それを日本の販売の現場力で事業化する。但し、ここでも、中国人に仕事だけをやらせて、日本人は利益だけを徴収するという仕組みでは成功しないだろう。日本人も中国人も差別せず、対等に働いて会社を発展させる意識を持てれば成功は難しくない。

(7)「欧米の統治」と「日本の共生」

 欧米は歴史的に統治に長けている。自らも支配し、支配される歴史を繰り返し、支配者は領民をどのように統治するか、というノウハウが蓄積されている。しかし、日本人は統治能力が低い。海外に植民地を持った経験も少なく、アジアの国々を植民地化した時でも、統治するというより、日本と一体化しようとした。それが国によって成功したり、失敗したのだろう。親日、反日もそのあたりに原因があるのかもしれない。
 日本人は外国人を支配することが苦手である。その代わり、日本人と同じように扱い、共生することは可能だ。良い事例が大相撲だろう。相撲の世界は、現代の日本社会とは隔絶しており、日本人力士でさえも独特の規律と環境の中で生活している。外国人力士も同様であり、日本人と外国人の差別はない。従って、外国人も納得できるのである。
 日本企業も同様だろう。私は会社の公用語を英語にする必要はないと考えている。会社が外国企業に買収され、外国人の経営者がやってくれば話は別だ。
 日本企業でのコミュニケーションを日本語で行うことは自然である。ビジネスが国際化するのなら、日本語が話せれば外国人も全く平等に扱えば良い。その時に、前述したように学歴主義や年功序列は邪魔になる。生え抜きでも途中入社でも平等に扱わなければならない。それが徹底しているから、大相撲は多国籍の力士がやってくるのだ。
 日本の中小企業でも、採用の門戸を外国人に開放すべきである。日本語が不自由なく話せて、仕事ができれば採用すればいい。しかし、外国人だから給料を低く抑えるというのは差別である。あくまで平等にしなければならない。
 私は、日本という国は、元々こうした考えが根付いていたと思っている。古代日本は現代よりもアジア諸国からの移民が多かった。現代でも、農村には外国人花嫁は少なくないが、日本人と同じ言葉を話し、日本人と同様の生活をしている限り差別されることも少ないだろう。
 そう考えると、日本人が中国の現地法人で、中国人だから給料は安くて当たり前、日本人だから高くて当たり前と考えているのは間違いである。日本企業で働いている社員は、全員日本企業人なのだ。特定の宗教ということではなく、企業の理念や哲学を共有し、共生する仲間なのである。
 2012年はここから始めたい。私は、日本政府にも大企業にも期待していない。しかし、若者には期待している。国を変えるのは、一人一人の個人なのだ。個人の心が変わることで、我々も日本という国も大きく成長することができると確信している。

*有料メルマガj-fashion journal(3)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2012.1.2に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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アパレルで私にできることないでしょうか。
ファッション販売能力検定3級、ファッションビジネス能力検定3級、販売士検定3級、色彩コーディネーター検定2級

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