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February 12, 2012

日本のファッションクリエーションを考える j-fashion journal(1)

「日本のファッションクリエーションを考える」

(1)ファッションショーが有料から招待制に変わった理由

 東京コレクションは、1974年のTD6(トップデザイナー6人)から始まったと言っていいだろう。メンバーは、菊池武夫、山本寛斎、松田光弘、金子功、コシノジュンコ、花井幸子。この6人は一定ではなく、その後メンバーの交代もあった。
 前年の1973年には、高田賢三がパリコレデビューを果たし、非常に大きな反響を集めた。それに刺激された同年代のデザイナーが、「東京でも新しいコレクションを開こう」ということで企画されたものである。
 当時(70年代半ば~80年代初頭)の日本で、ファッションショーと言えば、国内外のオートクチュールデザイナーのコレクションか、NDC、NDKなどのデザイナー団体のコレクション。あるいは、ファッション専門学校のファッションショーが主なものだった。
 オートクチュールコレクションも、デザイナー団体のコレクションも、プロモーションが主な目的であり、チケットを販売していた。当然、TD6のコレクションもチケットを販売していた。
 その後、ファッションショーは次第に大型化、興業化していく。最早、「ファッションショー」がビジネスの目的となり、服のシルエット、素材、ディテールなどを見せるという本来の目的が見失われてしまった。
 興業としてのショーから、本来のショーへ。ファッションショーをプロデューサーの手からデザイナーに取り戻そう、ということで、次第に有料のコレクションは姿を消し、招待客のみに見せるショーへと変化していった。

(2)パリコレと東コレの違い
 東京コレクションは、デザイナーが主体となってスタートした。そして、当時のデザイナーの多くは企業のオーナーだった。コレクションの目的は、あくまで自社、自ブランドのプロモーションだった。
 現在のコレクションの対象は、「プレス」と「バイヤー」ということになっているが、当時から、バイヤーはほとんどいなかった。百貨店の担当者はいたが、彼らが買い付けるわけではない。地方のFCオーナーもバイヤーと言えばバイヤーだが、コレクションが気に入ったから仕入れるというわけではない。
 プレスもパリとは状況が異なる。パリのプレスは批評を行うが、日本のプレスはほとんど批評しない。デザイナーと共に市場を盛り上げてきた仲間という意識が強いのだ。批評家とは言えないような、記事を書く媒体さえ持たないタレント、コメンテーター、ファッションフリークが最前列に並ぶことも少なくない。
 東京コレクションにおいては、「プレス」「バイヤー」と表記しているのは、パリコレを踏襲しているだけであり、本来のプレスやバイヤーではない。むしろ、「プレス」「バイヤー」なきコレクションであることが、東コレの特徴でもある。
 もう一つの特徴は、東京コレクションは孤立した存在であるということ。パリコレには新しい才能を発掘する役割がある。有名メゾンはコレクションを見て契約するデザイナーを選ぶ。新人デザイナーは、有名メゾンのオーナーに認めてもらうことが成功へのステップだ。また、パリコレに登場するブランドは、アパレル製品だけでなく、多くのライセンスビジネスを展開している。パリコレで発信されるブランドイメージは、ライセンスビジネスにも多大な影響を与える。パリコレは、デザイナーのために行われているのではなく、デザイナーを中心とした多くのビジネスや企業のために行われている。パリコレというステージは、巨大なビジネスの中核であり、ビジネスチャンスでもある。
 日本の場合、デザイナーはオーナーであり、新しい才能を発掘する必要はない。直営店とFC展開が主体だったので、バイヤーに見せる必要もない。素材メーカー、百貨店、専門店のオーナーや資本家達も、コレクションが直接自らの利益につながるわけではない。したがってデザイナー以外の企業や機関が、東京コレクションを応援する動機が見当たらない。ビジネスの広がりがなく、利害関係を共にする企業も少ないのである。
 
(3)東京コレクションとTGC
 ファッションは人が集まる。人が集まればビジネスになる。ファッションイベントを興業として成功させたのがTGC(東京ガールズコレクション)と言えるだろう。
 TGCは、いわゆるデザイナーのコレクションではない。通常のコレクションは店頭展開の半年前に行われ、そこから小売店が受注を行う。あくまでB2Bのイベントである。TGCはその場で商品を発注することができる。つまり、店頭展開とほぼ同時に行われているのだ。観客の多くは一般消費者であり、B2Cイベントである。
 また、通常のコレクションに登場するのはウォーキングを練習した身長175㎝以上のショーモデルだが、TGCのステージに登場するのは、背は低いが表情がカワイイ雑誌モデルである。
 私は、TGCを「ファッション雑誌ライブ」と考えている。ファッション雑誌に登場するモデルと商品がライブで見られるイベントである。したがって、TGCと東京コレクションを同列に語ってはならない。目的も趣旨も内容も全く異なるのだから。しかし、両者が「ファッションのプロモーションイベント」であることには変わりがない。また、一般消費者の観客にとっては、どちらも似たファッションイベントに見える。買えるか買えないか、来シーズンの商品か今の商品か、という違いだけでなのだ。
 考えてみれば、過去、パリのオートクチュールコレクションも「香水のプロモーションショー」と揶揄されたことがあった。現在は、ライセンスビジネスが拡大しているが、それでも主な目的はプロモーションである。ビジネスモデルが変化する中で、プロモーションの手段も多様化しているのである。

(4)「FNO」の盛り上がり
 プロモーションイベントの中でも、最もダイレクトで効果的だったのが、2011年11月5日に東京で開催された「ファッションナイトアウト(FNO)」だろう。
 2009年、アメリカのファッション市場は、2007年のサブプライム問題、2008年リーマンショックを受け、大きく落ち込んでいた。そんな中でファッション業界の活性化のために、アナ・ウインター=米版ヴォーグ編集長の呼びかけで始まったショッピングイベントがFNOである。
 3回目となる今年は、東日本大震災復興支援の意味を込めて、11月に東京で開催されることとなった。世界17カ国の「ヴォーグ編集長」が集結し、海外からも数多くのデザイナーが来日。約420の店舗が参加した。
 今回のFNOによって売上の記録を更新した店舗もあり、表参道・青山エリアの店舗を中心にかなりの経済効果があったようである。
 FNOは既存の店舗が既存の商品を販売しただけだが、そこに明確な目的=大義名分があり、世界のファッショニスタが集まったことで大きな効果が現れた。
 最早、新しいコレクションの発表だけがファッションイベントではないことを感じさせるに十分な一日だった。

(5)東コレ活性化案①「東京リアルクローズ」
 さてここで、東京コレクションを活性化するにはどうすればいいのか、を考えたい。
 第一の視点は、東京コレクションが日本人デザイナー展である必要はないということ。パリコレに参加するデザイナーはフランス人ばかりではない。世界中のクリエイティブな才能が集う最も華やかなステージである。パリコレに参加している日本人デザイナーは多いし、いつかはパリコレと考えているデザイナーも少なくない。
 パリコレが頂点でパリコレに出られない日本人デザイナーが集うのが東京コレクションなら、東京コレクションはパリコレの二軍に過ぎない。誰が二軍のコレクションに投資するだろうか。また、そのコレクションを期待するだろうか。
 現在の東コレは、日本のほんの一部の専門店が注目するイベントであり、国内のデザイナーがプロモーションを仕掛けるイベントに過ぎないのではないか。
 東京でコレクションをするには必然性があるべきだ。世界のデザイナーが東京でコレクションを発表したいと思うアイデンティティが必要である。
 例えば、原宿に見られるようなゴスロリやストリートカジュアルを含む「「リアルクローズ」のデザイナーが原宿に一堂に集結し、路上ファッションショーやパーティーなどのイベントを展開する。勿論、海外のデザイナーにも呼びかける。イベントは有料、無料を問わない。情報だけを集約し、検索可能にする。
 あるいは、世界中の日本マニアに呼びかけて、自作の服、自分のコーディネートを着たモデルや本人が歩いている動画を投稿してもらう。それを編集し、原宿に巨大な画面を設置して公開する。また、人気投票を行い、表彰する。
 あるいはあるいは、東京のセレクトショップをステージとして設定し、一定期間のみコレクションを展示し、受注を取る。その製品はセレクトショップを通じて販売すれば良いだろう。
 既に、ランウェイを歩くだけがファッションショーではない。世界を興奮させる様々なアイディアが必要である。また、東京コレクションというならば、行政の支援が欠かせない。支援と言っても、経済的支援ばかりではない。人的支援、様々な許認可の緩和、行政が所有する施設やスペースの活用等々、様々な支援が考えられる。
 行政が支援する根拠は、ファッションイベントは人が集まり、地域のプロモーション効果が期待できること。観光客誘致や経済効果などの直接的な効果も期待できることがある。

(6)東コレ活性化案②「ウェアラブル・テクノロジー」
 海外のデザイナーが日本でコレクションをやりたいと考えるもう一つの切り口は、ハイテク素材ではないだろうか。日本の紡績、合繊メーカー、染色加工場、繊維機器メーカーは世界最高水準の技術を持っている。それらを自由に活用できて、コレクションとして発表できるならば魅力的だろう。既に、コレクションを行っているデザイナーでも、日本のハイテク素材で作ったコレクションを加えることができるからだ。
 例えば、コレクションの半年前にデザイナーがノミネートし、何らかの選抜を行う。その後、1週間ほど日本に滞在させ、工場見学や素材セレクトを行う。その後、再び来日し、デザインをプレゼン。素材とのマッチングを行う。それも一つのイベントとして公開していく。その後、デザイナー自身で、あるいは日本国内の協力縫製工場等で製品化しコレクションを仕上げる。
 これを毎シーズン5人でも10人でも行うことができれば、日本テクノロジーの大きなプロモーションになるだろう。また、最先端素材の発表とこのコレクションが同時に開催できれば、世界に対する大きな情報発信にもなるに違いない。

*有料メルマガj-fashion journal(1)を2カ月遅れで紹介しています。本論文は、2011.12.5に配信されたものです。リアルタイムでの講読をご希望の方は、http://www.mag2.com/m/0001355612.htmlよりお申し込みください。

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